お買いもの
夕飯の買い物、ハロウィン限定お菓子。
ある日のお泊まり鳥斉。
どっちもいる
学校帰り、オレはスーパーのお菓子売り場で首をひねって悩んでいた。 今日は斉木さんちにお泊まりで、斉木さんに頼まれた夕飯の買い出しに来たのだ。 斉木さんは、燃堂らといっしょに一足先に帰っていった。 夕飯の材料はすでに揃えたが、他にも買うものがあり、それについてこうしてじっくり考え込んでいるという訳だ。 しゃがみ込んでどれにしようか迷っていると、近寄ってくる人の気配があった。オレは邪魔にならぬよう棚に寄って小さくなった。 が、なんとその人物はオレの足を踏んづけてくるではないか。 オレが邪魔だったにしても、こんな抗議の仕方は許しがたい。 カッとなり、オレは即座に顔を上げた。 「おい、ちょ……斉木さん!」 『なにしてんだ変態』 心に湧いた怒りはたちまちの内に霧散し、代わりに浮かんだ喜びにオレは頬を緩めた。 「結局来たんスか。来てくれて嬉しいっス……てか、いい加減足どけてほしいんスけど」 『ああわかった』 しかし斉木さんはどけるどころか、じわじわと圧力をかけてきた。 ちょストップ、やめてください! 『ああ、今どける』 早くどけてぇー! ようやく解放され、オレは冷や汗を滲ませながらふうと息をついた。 『で? なにしてるんだ?』 オレは立ち上がって向き合い、斉木さんに説明した。 「いやホラ、ハロウィン近いじゃないっスか。んで斉木さんに、お菓子あげるからいたずらさせてくれってお願いするために、色々見てるとこだったんスよ」 『なんだそれは……もはや原形を留めてないじゃないか』 「しょうがないっスよ、そこは日本人なんで」 『お前だけだろうが。くたばれこの変態クズ野郎』 さっき踏まれた足が、今度はつま先で小突かれる。 くそ……負けるか。 買ったものを一つずつにばらして、袋に一種類ずつ詰めて、それをたくさん作って、一回やるごとに渡す予定なんスけど――、 「斉木さんは抹茶とパンプキンと、どっちがお好みっスか?」 両手に持ったチョコレート菓子のパッケージを見せながら、オレは尋ねる。どちらの箱にも、お化けやコウモリといったハロウィンらしい絵が可愛らしいタッチで描かれていた。 『変質者から貰う菓子はない』 「じゃ要らないっスか?」 『いる。どっちもいる』 「はは、了解っス」 オレは二つの箱をかごに入れた。 |
その後斉木さんと一緒に棚を移動し、あれも欲しいこれも欲しいとねだられるまま、かごに放り込んでいった。 「結構な量になりましたね」 でもまだ、斉木さんは欲しがる。 次に向かったのは飴売り場。斉木さんが、とある棚の前で立ち止まる。 「あ、そこにも何か、お好みありました?」 こくりと頷く斉木さん。 『もっと、おかし、くれよ』 近くに行こうとした時、少し低音のテレパシーが寄越された。たちまちオレの身体がぞくっと反応する。 なんて目で見てくるんスか、斉木さん。 オレは斉木さんの希望する袋を引っ掴んでレジに向かい、そわそわしながら会計を済ませると、待っている斉木さんの元に駆け寄った。 |
お邪魔しますと小さく呟き、オレはまっすぐキッチンに向かった。 買い物袋を片手に提げたまま、冷蔵品を取り出しては冷蔵庫に押し込む。 その様子を斉木さんが傍で見ている。 じりじりと、まるで焼け焦げるような熱い視線を身体に感じる。見なくても、斉木さんがどんな目をしているかわかった。 少し暗い、どろりとした欲を素直に浮かべているに違いない。 どうにか買い物を整理し、これで二階に行けると振り返ろうとした時、それより早く斉木さんに肩を掴んで振り向かされ、オレは冷蔵庫に身体を押し付けられた。 気付いた時には唇を塞がれていた。 最初こそ斉木さんの勢いに気圧されたが、オレはすぐにはっとなり主導権を取り返す。 しかし、同じくらい欲望を滾らせているなら、超能力者の方が何かと上回る。 一瞬の内に斉木さんの部屋に移動した事に、オレがすぐに順応出来ない隙を突いて、斉木さんはベッドに押し倒していた。 負けん気を刺激され、オレは少し嗜虐的な気分に駆られた。 けれどそれも、斉木さんをひっくり返して嬲る寸前までで、結局はいつものように、この人の望むように、可愛がってしまうのだが。 オレの心を読んだのか、そっと撫でるオレに、斉木さんは笑うように目を細めた。 |
後ろから斉木さんを抱きしめ、足を大きく開かせて、その中心にある小さな孔を二本の指で念入りにほぐす。 お互いもう素っ裸で、お互い、かなりの興奮に包まれていた。 『鳥束、気持ち良い…ああ、気持ち良い』 「うん、斉木さんの顔も、ここも、すっげぇトロトロ……」 オレは紅潮した頬に唇を押し付けた。見た目通りすごく熱くて、いやらしくて、とても美味しそうに見えた。欲求の赴くままぺろりと舐める。 斉木さんはそんな刺激にも敏感に反応して、びくんと肩を跳ねさせた。 オレの腕に指を食い込ませ、気持ち良いと素直に鳴きながら、身悶える。 「はっ……っ」 「ほら斉木さん、ちゃんと足開いて」 オレは空いた方の手で膝を掴んだ。 極まりが近いのか、段々と膝が寄ってきている。腰も、ずっともじもじと落ち着きがなく、声ももれがちだ。 「もういきそうっスか?」 『あ、いく……もう少し…鳥束』 「ぅ……ふっ……」 (ああ、斉木さん……たまんないっス) (すっげぇやらしー…もっと見たい) オレはローションを足すと、わざとぐちゃぐちゃいやらしい音を立ててかき回し、斉木さんの可愛らしい声がもっと聞けるようにした。 「うぅ――!」 小さな穴が、オレの指を折りそうなほどきゅうきゅうと締め付けてくる。 (ああ、ここに入れたらマジ気持ち良いだろうな) (今ので、いっちゃってるわ) オレはごくりと喉を鳴らした。 とりつか、とりつか。 口からもれる斉木さんの声が、いよいよ切羽詰まったものになる。 オレはそこで指を引き抜いた。 ぶるりと震え、斉木さんはうかがうようにオレの方へ首を曲げた。 「いきたいなら、斉木さん、続きは自分でしてみせて」 斉木さんの両手を掴み、股間へと向けさせる。 『お前……なに』 「斉木さんが自分で弄っていくとこ、見たいんスよ」 見せてくれませんか 片方に性器を握らせ、もう一方は孔へと導く。 「もう我慢出来ないでしょ? ほら、自分で弄って、いくとこオレに見せて下さい」 斉木さんの手ごと性器を握り、やや強引に動かす。 『くそ……お前』 「オレはこっちを、可愛がってあげますから」 かちかちに尖った乳首を少し強めにつねる。 「!…」 逃れるように斉木さんは身をよじった。だがそれは嫌がっての事ではなく、ひどく感じてしまったからだ。 「ほら、二人でやればこうして、斉木さんの気持ち良いとこ全部触れますね」 やって、斉木さん、自分で弄っていくとこ、全部オレに見せて 促すと、斉木さんは一呼吸の静止の後、手を動かした。 感じ入ったため息に、背筋がぞくぞくっと疼いた。 斉木さんの指が小さな孔に飲み込まれていくのを、オレは瞬きもせずに見入った。 (あーやべ……斉木さんエロイ…エロすぎ) 『鳥束……いく、いく!』 自らかき回しながら、斉木さんはきつく背を反らせた。 オレはとろけきった斉木さんの顔を見たまま、指先で乳首を扱いた。 「あ、……!」 ひときわ高い声をもらし、斉木さんは白いものを飛び散らせた。 そのまま数秒身体を硬直させ、ふっと力を抜いて、オレにもたれぜいぜいと胸を喘がせた。 |
斉木さんの手首を掴んで指を引き抜くと、オレはそこに自分のをあてがった。 『あ、鳥束の……ほしい』 早く、早く。 斉木さんの熱烈な訴えに首の辺りが痺れた。 焦らさずオレは、ずぶずぶとゆっくり埋め込んでいった。 『鳥束の……とりつかの』 「オレの、気持ち良いっすか?」 赤い顔で斉木さんが頷く。 「好きっスか?」 今度は二度頷いた。 あああ…斉木さん、斉木さん。 「オレもサイコーに気持ちいいっス……アンタの中、飲み込んでくみたいに動いて、オレを締め付けて、もう堪んないっスよ」 根元まで咥えさせ、更に強く突き上げる。 「っ……――!」 『いいっ…もっと、強く』 しなやかに背中を反らせて、斉木さんがねだる。 もっと強く、中をぐちゃぐちゃに突いてほしいんスか? いいとこ、沢山擦ってほしいんスか? 『早く……はやく!』 がくがくと頷きながら、斉木さんは自らも腰を押し付ける。 そんな風に求められたら、もう動かずにいられない。 オレは息が止まりそうなのも構わず、斉木さんの小さな孔をこれでもかと突いた。 がちがちになった斉木さんの性器や乳首を交互に弄りながら、音がするほど腰を叩き付ける。 ひっひっと息を引きつらせ、斉木さんはとろけきった顔で喜んだ。 ああ可愛い…可愛い、オレの斉木さん、可愛いよ もっともっと喜んで、ねえ もっと気持ち良くしてあげますから、もっともっと声聞かせて (ああやべぇ…×××溶けそう、斉木さんの×××××も溶けそう、ぐちゃぐちゃになってる) (くそ、アンタどこもかしこもエロイな……こういう時だけ、そんな顔して) (それ、オレ以外に見せんなよ、こんなの……こんなの絶対、他の奴らには、ぜったい……) 『うるさい……とりつかぁ』 「なんだよ……」 オレは、身体を抱えて四つん這いにさせ、背中に覆いかぶさってがんがん突きながら耳元で囁いた。 「うるさいのが、好きな癖に」 少し強めに乳首を摘まみ、引っ張る。たちまち斉木さんの喉からひいっと息がもれ、よりオレを興奮させた。 「痛かった? 強すぎた?」 昂ったが、反面少し心配になる。腰の動きを弱めて、オレは頬に口付けた。 斉木さんの顔が少しオレの方に向き、口から、笑うような息遣いが零れる。 『ばーか』 バカって、なんだよ。心配なんだよ、気持ち良くなりたいんだよ。自分だけじゃなくて、アンタと一緒に。 『だったら、もっと寄越せ』 「痛くない? 平気? これが好きなの?」 『痛いに決まってるだろ』 さっきと同じ強さでしていると、斉木さんからそう寄越される。オレは慌てて手を止めた。 そこに、斉木さんの手が重なる。 『でもお前にされると、気持ち良くてたまらない』 |
小さく目を見張る。 「……アンタも大概、変態っスね」 『……コロス』 「はは……じゃあその前に、気持ち良くならないとっスね」 肩口に接吻する。ややあって、斉木さんが小さく頷いた。それに力を得て、オレは斉木さんの腰を掴み小刻みに奥を突いた。 『とりつか……』 「なんです?」 『いきたい……いきそう』 オレは斉木さんの望む通り、最も感じる個所を突きまくった。 いくらもしない内に斉木さんの身体がびくびくっと跳ねる。いったのを察したオレは、だらしく笑って見つめていた。 汗でしっとりと濡れた肌はとてもやらしくて、もうたまらなくて、一刻も早く中に出したくなった。 オレを呼ぶ斉木さんの声が、頭の中でするのか耳に響いているのか、もうよくわからなくなっていた。 全身が熱く、痺れて、何もかもが溶けて一つになったみたいだ。 「っ…、っ……またいく!」 堪えきれずにもれた叫びに、オレも限界を迎える。 「あ、あぁ…斉木さん……さいきさん」 オレはだらしなく腰を前後させながら、中に全部出し切る。 眼下では、同じように達した斉木さんが、びくびくといやらしく腰を跳ねさせて、絶頂の余韻に浸っていた。 |
ようやく全て注いで満足したオレは、ゆっくり身体を離した。支えをなくして、斉木さんが四肢を投げ出し倒れ伏す。 オレはそっと仰向けに寝かせて、顔を近付けた。斉木さんの両手が、しがみつくようにオレの首に回る。それをとても幸せに感じ、オレはため息交じりに告げた。 「好き……好きださいきさん」 静かに顔を離すと、斉木さんの目がオレから横へと流れる。何を見ているのかと目線を追うと、床に置かれた買い物袋、その口からあふれ出るたくさんのお菓子の袋。 斉木さんはそれらを見ていた。 そうだ、ここに瞬間移動した時、一緒に持ってきたんだった。 オレは、お互いどんだけ焦ってたのかよくわかる袋の有様に、小さく笑った。 「食べたいの? 斉木さん」 いいっスよ、どれでも取りますよ。どれにします? その時手首を掴まれ、オレは斉木さんに目を戻した。 今の今までお菓子を見ていたのに、今は、まっすぐオレに注がれている。 『お前』 頭に響く低音に、全身が熱くなった。 「……斉木さん」 引っ張られるまま、オレは横たわる身体に覆いかぶさった。 全然満足してなかったと、斉木さんに思い知らされる。もっとほしくて、喉が鳴った。 「お菓子はいらないんスか?」 『いる。どっちもいる』 ちょっと笑って、斉木さんはキスをした。 欲張りっすね、オレもアンタも。 「ああでも斉木さん、夕飯前だから、お菓子は後にしましょうね」 そう言うと斉木さんはみるみる不機嫌になり、ふてくされた子供のツラになった。 あまりの可愛さに、オレは額を押さえて唸った。 そんなオレを、斉木さんはまるで重い荷物をどかすように払いのけてベッドから降り、服を着始めた。 「斉木さん、ごはんの後なら、いくら食べてもいいっスから」 だから機嫌を直してくれと訴えるが、斉木さんの乱暴な動きは収まらなかった。 しょうがない、こうなったらお菓子を食べるまで、機嫌は直らないだろうな。 オレもベッドを出て、脱ぎ散らかした服に手を伸ばす。 「あ、こら――!」 ご飯前はダメって言ったでしょ! 目にもとまらぬ速さでお菓子の箱を開けるものだから、止める暇もなかった。と、振り向きざま口に何かが押し込まれる。何かと思えば、今しがた斉木さんが齧ったスティック菓子の半欠けだ。 『お前もな』 つい反射で噛みしめたところで、斉木さんがいたずらっ子のように笑って言った。 「……もう!」 『ほら、さっさと夕飯にするぞ』 「……はいっス」 買い物袋を手渡される。オレは恥ずかしいやらのぼせるやら、混乱しながら斉木さんについていった。 |