ⅲ-2
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『さすがはあれになる器だな』 頭の中に響く、どこか楽しげな「彼」同様、神取もまたこの状況を面白いと、感心していた。 支社長室の床に押し倒され、のしかかられ、首を両手で掴まれている。 のしかかっているのはもちろん真物。 ひどい興奮状態に陥り、苦しそうに喘いでいる。 そのせいか、首にかけた手にはほとんど力は入っていなかった。 はじめから、彼の手には全く力などこもっていなかった。 「どうした、教えただろう？ ここを潰せば人は死ぬと」 神取は首にかかる手を掴み、親指の位置を直してやった。 「………」 すると、自分の方こそ殺されるような顔をして、真物は浅く喘ぎながら首を振った。 『ふむ、こういう恐怖と絶望もうめぇな。たまにゃ挑発してみるもんだな』 異様に長い舌でべろりと舌舐めずりして、「彼」が嗤う。 不意に真物の手から力が抜け、次の瞬間、どさりと倒れ込んできた。 重みを感じると同時に、肺を病んだ人のような痛みが走り、神取は不愉快そうに顔をしかめた。 どこからくるのか分かっている――否分からない。 痛みを無視して起き上がる。 気絶した真物の身体がずりおちないよう、しっかりと抱えて。 神取はその軽い身体をソファーに運び横たわらせた。 しばし見守っていると、わずかに呻き真物は目を覚ました。 「！…」 途端に喉を引き攣らせ、許して下さいと懇願する真物を、男はじっと見下ろす。 「済みませんでした…許してください……ゆるしてっ……言わないで――！」 己の過ちにおののき、真物は顔を覆って何度も謝罪した。 男は、混乱状態にある少年の胸倉を掴むと、強引に引き起こした。 真物はひっと息を飲み、肩を強張らせた。 「お願い…言わないで……ゆるしてくださ――」 「黙れ」 顔をかばう手をひきはがし、神取は怒りを含まぬ静かな声で言った。 わななく唇を引き結び、真物はただ身を固くした。 神取は怯える少年の顔を両手で掴むと、上向かせた。 「私を見なさい、真物」 「………」 恐怖に震えながら、真物はおどおどと目を上げた。 涙の滲む瞳が、真っ向から男をとらえる。 怯えの向こうに確かにある光が、男を照らす。 その瞬間また痛みが胸を突き刺した。 気付かないふりをする。 「今のは、私が悪かった。少し冗談が過ぎた。お前は、何も気にしなくていい」 薄く笑って頭を撫でてやりながら、続ける。 「今まで通り、君達兄妹の一切を引き受けよう」 「で、も……」 何か云いかける唇を塞ぎ、神取は深く口付けた。ゆっくり舌を差し入れ、縮こまる真物のそれを絡め取る。 「んっ…ふ……」 「君の大事な妹御には何もしないし、何も言わない」 また舌を吸う。今度は噛み付くように荒々しく。 次第に真物の息が上がる 「んく……！」 「君がこの身体で私を満足させてくれれば、それでいい」 三度口付け、ようやくとろけてきた舌をねぶる。同時に頬から首筋にかけて指先を滑らせ、胸元を撫で、腰を引き寄せる。 「この、身体で……」 「あ…んぅ、ん……」 唇の上で囁かれ、真物は小さく身震いした。 「さあ、きなさい」 神取は手を差し伸べた。 |
| 机に寄りかかった男の股間に顔を寄せ、真物は手を使わず奉仕していた。 「すっかり上手になったな」 頭上からの揶揄に睫毛を震わせ、真物は必死に口淫に没頭した。唇で何度も扱き、裏筋を舐め、先端を舌先でくじる。そして吐きそうになるほど喉の奥まで飲み込み、そこで愛撫する。 「熱くて…とてもいい」 言って神取は顔がよく見えるよう髪をかき上げた。 わずかにえずきながらも、健気に口淫に耽る様に段々と腰が熱くなってくる。 「んっ…む……ぅ」 男の太ももにかけた手を時々震わせて、真物は、口いっぱいに含んだ怒漲をねぶった。 と、頭を両手で掴まれる。 真物はびくりと肩を弾ませた。 「少し苦しいが…我慢出来るか？」 それをされるのは初めてではない。目を閉じ、小さく頷く。 悲しげに目を瞑った真物に薄く笑い、男は腰を使って喉の奥を何度も突いた。 「ぅぐっ！ え、えぅっ！」 途端に上がる拉げた呻きに笑みを深め、男は尚も熱塊を突き入れた。苦しさに眦に涙を溜め、それでも妹の為にと手を握りしめ懸命にこらえる姿に、射精欲が勢いよく背筋を駆け上がる。 そして何度目かに深く突っ込み、動きを止める。 「――！」 口中に勢いよく放たれる白液に、真物はびくっと身を強張らせた。 「…んぐ…うっ……おぇっ……！」 男のものを口に含んだまま、出されたそれを残らず飲み込む。あまりの苦しさに涙が零れた。 神取はそれを、真物が拭うより先に指先で拭ってやった。 「……いい子だ」 濡れた指先を舐め、囁く。 ようやく真物は口を離した。先端にかけて唇をすぼめてゆっくり撫で、残らず吸い取る。全て、男に教えられたもの。その通りなぞっている自分がひどく惨めで、情けなくて、それなのに…この後の行為を待ちわびている。 後ろから突っ込んでもらう為に、真物は口淫を続けた。睾丸を唇で撫で、先端に向かって舌を這わせる。 ようやく準備が整い、立って、背中を向けろと言われた時、腹の底がずきんと疼いた。下腹が痛い程引き攣る。 「……入れてほしいか？」 「んっ……！」 男の手が前に回り、ペニスを掴む。真物はわずかに呻き、身を震わせた。何もしていないのにすでに勃起している自身のものに顔を熱くし、俯く。 「ここに……ほしいか？」 尻の穴に熱くそそり立った男のそれが擦り付けられる。同時にペニスをゆるゆると扱かれ、真物は切なげに喘いだ。 「あ、ぁ…く……」 自分でも、そこがひくついてしまっているのが分かる。 「っ……」 机に這いつくばって深くうなだれ、真物は頷く。 背後で小さな嘲笑が漏れた。 「なら、自分の口で言うんだ」 入れて下さい、と。 惨めさを煽る言葉に眉根を寄せ、更にうなだれる。 真物は唇をわななかせ、消え入る声で求めた。 「いれて……ください」 途端に目の奥が熱くなった。 悲しいからか。 それともいやらしく身体の芯が疼いたせいか。 もう、どちらか分からない。 「んんぅっ……！」 しかし、狭いそこをぐぐっとこじあけて熱いものを含まされると、たちまち喉を晒して仰け反り、甘い声を漏らす。 聞こえてくる吐息を愉しみながら、神取はゆっくり自身を埋め込んだ。 「あ、あ、あぁ……」 きついそこを押し広げて入ってくる感触に、真物は声を抑えきれなかった。机から起き上がろうとするように手を付き、身悶える。 「ああぅ、んん……んっ！」 内襞をかたいものが何度も擦る。ぞくぞくと背筋をくすぐる愉悦がたまらない。 そんな自分に一瞬悔しげに顔を歪ませた真物だが、男が腰を使って奔放に突いてくると、それも忘れてのめり込んだ。 「あ、あぅ！ んん…い、いい……あぁあ……」 とろんと目を潤ませ、唇からしとどに熱い吐息を漏らして喘ぐ。 「そうだ……もっと声を出せ」 神取は片足を腕に抱え、より深く押し込んだ。 重苦しい突き上げを食らわせ、悲鳴を上げさせる。 「あぐ！ ああ、うっ！ くぅ！」 どこか甘い響きを含んだ苦鳴にうっとりと顔を綻ばせ、男は執拗に同じ責めを繰り返した。それでも依然張り切ったままの真物のペニスを扱き、煽る。 「んっ…んん！ あ…んぅ」 真物はびくんと腰を跳ねさせ、たまらないと言うかのように鼻にかかった甘い声を溢れさせた。 「あぁっ…背中、やだ……んんぅ！」 傷跡を舐めてやると、少しくすぐったそうに身じろいで反応する。後孔までもがきゅっと締まって、それがたまらず、神取は鞭の跡に舌を這わせながら弾むように腰を突き込んだ。 「あ、あ、あぁ…だめ、も…うっ…いっ、いく……いく、出る…あぁ、あ……あああ！」 後孔を抉られながらペニスを激しく扱かれ、真物は目前に迫った絶頂に何度も身を震わせた。よがる声が段々と高く、上ずっていく。 「……好きなだけいくといい」 「ああぅ――んんん！」 深奥を強く捏ねくられ、脳天を直撃する強烈な愉悦に酔い痴れながら、勢いよく白液を吐き出す。 「はぁっ……あぁ……はぅ……」 深く喘いで余韻に浸る真物に、神取はしばし動きを止めた。達した事で後孔が不規則に収縮し、まるで愛撫するかのように締め付けてくる。 神取はそれを愉しんでいた。 やがてゆっくり動きを再開し、すぐに、自身の射精に向けて腰を突き込む。 「う、う…ぐっ…んん！」 無慈悲な揺さぶりに真物は歯を食いしばって耐える。 神取は抱えていた片足を下ろし、腰を掴んで、より激しく突き上げた。 真物の口から悲鳴が溢れる。甘い悲鳴が。 苦痛を味わうばかりの責めさえも悦ぶような、そんな身体になっていた。 最後により深くまで咥え込ませて覆いかぶさり、低く呻いて、神取は熱いものを放った。 「うぅん……」 どこかうっとりした声を漏らし、真物は、注ぎ込まれる熱い白濁に大きく身を反らせた。 少しして萎えたものが引き抜かれる。途端に真物はくたりと膝を折ってその場にうずくまった。 乱れた息に胸を喘がせていると、中に出された男のものが緩んだ後孔からとろとろと溢れ出てきた。惨めさを噛み殺し、わずかに身じろぐ。 そこで不意に髪を掴まれ、真物はびくりと肩を強張らせた。今度は何をしろと言われるのか、震えが止まらない。 身を縮ませ、おどおどとわななく少年の頭を撫でながら、神取は静かな声で言った。 「次の機会には…その時は、躊躇せず私を殺すといい」 やや置いて真物はぎこちなく目を上げ、信じられぬ言葉を吐いた男を凝視した。 視線の先にあったのは、何とも言えぬ…穏やかな微笑だった。 |