Dominance&Submission
君としか出来ない事
柔らかくほぐされた後孔に、ずぶずぶと遠慮なく異物が入り込んでくる。おぞましい感触に僚は間延びした声を上げ続けた。 「やだぁ……あ、あぁ……抜いて」 「そんなにいい声を出して、何がそんなに嫌かね」 根元まで埋め込み、神取はスイッチを入れた。 「だめ、こんな……これやだぁ!」 たちまち内部でくねくねと踊り出した性具に、僚は何度も首を振った。性具の先端が腹側を抉り、背中側を押しこくる。その度に身体が反射的に跳ね、僚の声も高く飛び跳ねる。 「君のお気に入りの一つだよ」 「だめぇ鷹久……おねがい」 「いい声……いい顔だ」 髪を掴んで自分へ向けさせ、肉欲に溺れる美貌をじっくり眺めまわす。 口では拒みつつも侵食してくる快感には抗えず溺れる自分を恥じて、戸惑っている貌がたまらなくいい。 「嫌だと言いながら、随分気持ち良さそうだね」 「あ……だって」 「いいさ。君のその身体が好きだからね。もっと感じるといい」 「やだ、これ……!」 湿り気を帯びた声に神取は嬉しげに目を細め、じっくりと手を動かした。単調な抜き差しを繰り返した後、奥まで突っ込んで動きを止めて僚を喘がせ、そのまま奥を抉って更に善がらせる。 綺麗な肌をした背中がしなやかに反り返り、たわんだ。時折小刻みな震えが混じり、やがて、甘ったるい喘ぎが切羽詰まった切れ切れのそれへと変化する。 「い、あぁ……やだ、たかひさ……あ、あぁ…い、いく――あっ……?」 「まだだ」 神取はあっさりと性具を引き抜き、孔の周りを擦って遊んだ。 「あ、あ……」 なんで、と僚の目が非難に染まる。 伸び上がって覗き込み、神取は楽しむ形に目を細めた。 「いきたかったかい?」 「っ……うん」 「残念だが、まだ駄目だ。本当は好きなのに、嫌だなんて言った罰だよ」 「あ……そんな!」 くねくねと蠢く性具の先端をあてがわれ、僚はおののいた様子で身じろいだ。 |
「いやだっ!」 逃げるのも構わず、神取は再び性具を埋め込んだ。ゆっくり捏ね回したり、根元まで一気に突き込んでうろたえさせたりして遊び、彼が達しそうになるとぴたりと止めた。 「くっ……うぅ」 僚は苦しげに呻き、緊縛された身体を揺すった。 腕や胸、手首に渡る縄はがっちりと肌にはまり、びくともしない。ここで無理に動けば擦れて傷が付き、以前のような、ひりひりとした痛みに長く苛まれる事になる。知っている。あの時の縄よりもこれはずっと柔らかくしなやかで、力任せのがんじがらめではないのもわかる。それでも、無理に動けば余計な傷を負うだろう。だからなるべく最小限に抑えたいのだが、機械で強制的に追い詰められると、余裕などあっという間に吹き飛んでしまうのだ。 泣きそうになるのを堪え、僚は息を飲み込んだ。そこへまた、強烈な振動とくねりが襲ってきた。 「うう……くうぅ、いや……ああっ、そこ…そこいい……もっと、おねがい、おねがい――!」 拒んで振り払おうとするも、すぐに飲まれ、僚は我を忘れて叫んだ。性器はすっかり反り返り、血管を浮き上がらせて、先端からは白いものが混じった涎をたらたら溢れさせていた。 今にも弾ける寸前、全ての刺激が遠のいた。途端に燃え上がっていた感覚はすっと引いて、残り火がぐずぐずと僚の腰を炙った。 激しい息遣いと啜り泣きを聞きながら、神取は今の今まで性具を咥え込んでいた後孔を見やった。閉じきれずに緩んで、きゅっきゅっと収縮する様は、ここにもっと刺激をくれとねだっているかのようだった。スイッチを切って、先端で突いてみる。その度に僚は腰を跳ねさせ、自ら腰を突き出してきた。先端を少し飲み込ませると、待ちかねたように締め付けて、ともすれば持っていかれそうなほどだった。彼が意識して力んでいるのが、性具を通して伝わってくる。 神取はしばしの間、内部の手応えを愉しんだ。ある時、か細い声が聞こえてきた。 「おねがい……だから」 いかせて 今にも消え入りそうな声に、神取は彼の顔へと目を移した。 「充分、反省出来たかな」 「あっ……」 「反省出来たなら、いかせてあげよう」 「ごめんなさい……うそ、ついて……おれ」 一杯の涙で潤んだ瞳がきらきらと煌き、普段は褐色の奥にある金や緑が美しく目を射た。神取は彼の中に流れる異国の血にしばし見惚れた。 「僚、片足を上げて」 犬が小便するように、と加えられ、僚はきつく眉根を寄せた。 衝撃に頭が眩む。 なんでそんな恰好をと混乱しつつも、僚は従って脚を持ち上げた。 「もう少し開くかな。頑張ってごらん」 手で身体を支えられない分不安定だ。僚は転げてしまわないよう何とか踏ん張り、言われる通りの格好を取った。 「ああ、見えた」 「!…」 その言葉を聞いて、何の為の指示だったかを理解する。理解した途端、頬が、全身がかっと熱くなった。慌てて脚を閉じようとするが、男の手がかかり阻まれる。 「あっ」 その弾みで身体が仰向けになる。ぶるりと、股間できつく勃起した性器が揺れた。しようもない羞恥に僚はさっと顔を背けた。 もう数えきれないほど、こんな様を見られている。男のだって目にしている。今更お互いに隠すものはないが、恥ずかしくない時もあれば、たまらなく恥ずかしい時もあった。 今も、身の置き所がないくらい恥ずかしく感じて仕方なかった。 嫌だと拒んだ玩具で感じて、絶頂まで上り詰めてしまった自分自身を見られ、消えてしまいたくなる。 「もっとよく見せなさい」 膝を閉じて隠そうとするのを阻止し、神取は寝転がった身体を抱き起した。 「う、う……」 そのまま強引にベッドの縁に座らされ、僚はきつく目を閉じた。そうやって視界を閉ざしても、男が何をどこを見ているか、手に取るようにわかった。 重力に逆らってどれほど反り返っているかを、斜めに見下ろされる。 「なるほど。涎まで垂らしているね」 「……言うな」 「いきたい?」 「………」 僚は薄く目を開いた。 「思い切り出して、すっきりさせたい?」 こんな風に聞く時は、何かを企んでいる時だ。それでも僚は、隣の男に縋った。すんなり望み通りにならないのは知っている。たどり着くまでにどんな目にあわされる事か。 それでも、だからこそ男に縋るのだ。 二人にしか出来ない事をしたい。 もっと、もっとたくさん |