Dominance&Submission

ご機嫌いかが

 

 

 

 

 

 デスクに両手を突っ張らせ、僚は後ろから男に貫かれていた。
 男の指によって柔らかくほぐされた孔は、嬉しそうに熱塊を飲み込み小刻みに震えていた。抜き差しの行き来で擦られる事に悦び、奥まで暴かれる事に悦び、一杯まで拡げられる事に悦ぶ。
 お互い、最低限の箇所しか晒していない。どちらもつまり服を着たまま、前を緩めて少しずらしただけだ。
 片方は尻を出し、もう一方は性器を引っ張り出しただけ。
 早く繋がりたくて仕方ない恰好で、二人は行為に耽っていた。

「あ…んっ……ん、ん、うぁ」

 深くまでねじ込んでくる男に、熱い吐息がもれ出て止まらない。僚は何度も口を噤んで堪えようとするが、男は巧みに腰を使って口をこじ開けてくる。捏ねるように腰を動かされ、恥ずかしいと思いながらも僚は抑えきれず、嬌声をまき散らした。
 何度か緩い突きの後、ぐりぐりと奥の方を捏ね回される。

「ああ、それっ……だめぇ」

 僚は今にも崩れそうになる肘を懸命に突っ張り、手の位置を変えて、後ろからの強烈な快感に身悶えた。ともすると膝から崩れてしまいそうになる。それほどに快いのだ。

「駄目? 君の好きなところはここじゃなかったかな?」
「あぁあっ……いい、そこ気持ちいい……ああぅ」
「気持ちいいんだね。もっとしてあげよう」
「ああ……たかひさぁ……」

 深いところをぐいぐいと抉られ、甘えた声で鼻を鳴らし仰け反った。
 その様に満足したのか、男は同じ責めを繰り返して貪った。
 腰が抜けそうなほどの強烈な快美感に、僚は甘く鳴きながら二度三度と髪を振り乱した。
 と、服の裾から潜り込んだ手が、乳首を捉える。

「あっ…だめ」

 男は弾むように腰を打ち付けながら、乳首と深奥とを同時に責めた。

「ああ、それ……だめだ、だめ……感じすぎて……あぁ!」
「駄目なものか。好きなだけ感じるといい」
「やだ――だめ」

 聞き入れず、神取は両手で乳首をいじくり回し、ひたひたと軽やかに腰を突き込んだ。
 やめて、と切羽詰まった声が上がるのを、楽しげに聞く。
 しばらく高い声が続くのを愉しみ、神取は一度強くつねってから手を離した。

「あぅっ!」

 当然ながら鋭い悲鳴が上がる。それを聞き神取はうっとりと口端を緩めた。
 僚はぐすぐすと鼻を鳴らし、ようやく解放された乳首に残るじんじんとした重い疼きに首を振った。

「痛かったかい?」
「ん……」

 背後からの問いに、僚は少し拗ねた声音で顔を俯かせた。男の手が優しく髪を撫でる。それだけでほだされてしまう自分が何とも腹立たしいが、男に触れられて心が動かないわけがない。
 僚はまた小さく鼻を啜った。
 男の手は今度は腰にかかり、それまでのゆっくりとした動きから一転して激しい打ち込みへと変わった。

「やっ……おく、あ、あぁ……きつい、あぁ!」
「そのきついのが好きだったね。気持ちいいかい?」
「う、んぅ……いい、あぁっ……うぐ」
「素直でいい子だ」
「あ、あぅ…あっ、あっ、あぁ……きもちいい」

 デスクについた手を少しずらし、僚は背後からの責めに耐えた。
 そこではっと、手の下に書類らしきものがあるのに気付いた。幸い折れ目はついていないようだが、このままでは手の熱で紙が歪んでしまう。大事な書類に違いないそれらに無造作に手をついている事に気付いた僚は、わずかに引く血の気に目を眩ませながら、慌てて何もないところへ手を退けた。

「いい子だね。ようやく仕上がった書類なんだ、協力頼むよ」

 背後で男が言う。
 だったらここではなくベッドに移ればいいのに。

「一秒だって中断したくない。君の中はそれくらい具合がいい」

 小刻みに尻を打ちながら、男は小声で囁いた。少し切羽詰まった声音に僚はぶるりと震えを放った。
 男にそんな事を言わせる自分が、たまらなく……。
 もっと感じてほしいと、僚は背後に意識を集中させた。
 と、腰にあった手が再び胸元に這い上がる。

「また……だめ」

 僚は咄嗟に手を掴んだ。片手で身体を支えるのは難しく、デスクに身体が崩れる。神取は構わず指先に捉えた乳首を優しくいじくり、後ろからも刺激を与えた。
 先端まで引き抜き、ずぶりと一気に奥まで突き込む。何度も何度もそれを繰り返しながら、神取はすっかり硬く凝った乳首を転がして遊んだ。
 男が腰を突き込む度、ねちねちと粘膜の擦れる音がする。
 恥ずかしさと、肉に受けるとろけるような快感とに、僚は肢体をうねらせ悦んだ。

「両方は…もう、ああぁ……!」
「両方? どことどこ?」
「ああ、ちくびと、奥が……」
「どこの奥?」

 神取は、絶えずよがり穿たれる腰を痙攣させる様に満足げに笑いながら背中に覆いかぶさった。より深くまで腰を密着させ、更に声を出させる。

「あぁう! 尻の、おくが……もう、ああぁ……」
「もう、なに?」
「や……気持ちいい……鷹久のかたいのが、ああ、たまらない」

 湿った吐息と共に告げ、僚は引っ掻くようにデスクに爪をたてた。そこに書類があるのを目にし、慌てたように手を退ける。

「ああだめ……」
「しっかり立ちなさい」

 優しい声と共に尻に平手が飛ぶ。

「あぅっ……ごめんなさい」
「そうだ、やれば出来るじゃないか」

 慌てて背を伸ばした僚に口端を歪め、神取は更に尻を打ち据えた。

「やっ……い、いた……あぁ!」

 僚は尻に衝撃を受ける度肩を強張らせ、瞬間的に弾ける痛みに耐えた。ごめんなさいと許しを乞うが、男の手は止まらない。止まらないのは、男の手だけではなかった。尻を叩きながら、硬いもので奥を貫かれる。叩かれて反射的に狭まる後孔を強引に抉られ、腰が抜けるようであった。

「あ、あっ……いたい、ごめんなさい――もう、ぶたないで」
「痛いだけかな?」
「い、いたい……いや、お願い……あぁ!」
「なら、どうしてそんなにいやらしい声を出す?」
「あ……おれは」

 言い淀む僚に笑みを深め、神取は一旦手を止め胸に移した。指先でそっと突起をつつく。たちまち僚の口から、とろけんばかりの甘い嬌声が迸る。すかさず神取は腰を突き込み、更に声を上げさせた。

「あ、あっ、あ、たかひさ……!」
「ここだけじゃない、こちらも……ふふ、こんなに涎まみれだ」
「あぁっ!」

 濡れそぼった熱塊を握り込まれ、僚はびくびくっと腰を弾ませた。

「……そんなに締め付けてくれるな」
「ちがう……俺は」
「否定しなくていい、君のこの身体が好きだよ」
「あ……たかひさ」
「だから、好きなだけ泣いて、感じて、悦ぶがいい」

 ひと際強く打ち付け、手を振り下ろす。
 とろけきった悲鳴と共に僚の肉襞がぎゅっと締まり、強く弱く愛撫するのを、神取はだらしない笑みで悦ぶ。

「だめ……もういく、いきます……!」
「ああ、いきなさい。尻を叩かれて悦ぶ恥ずかしい姿を、私に晒すといい」
「いやだ、いや……たかひさ、あ……うぅ――!」

 こもった呻きと共に、僚は吐精した。
 神取は痙攣する身体をきつく抱きしめ、手にした熱塊を扱き最後の一滴まで搾り取った。自身を飲み込んだ後孔も同じようにびくびくと収縮し、射精を促してきた。

「く、ふぅ……」

 絶妙な力で絞り込んでくる肉襞の蠢きに耐え切れず、神取は己の欲望を開放する為に動いた。
 抱いた僚の身体をデスクに押し付け、片腕を掴み、引っ張りながら腰を叩き付ける。

「だめぇ……ああ、ああぁ!」

 絶頂に振り切れた身体を乱暴に揺さぶられ、度を超えた快感に僚が泣き叫ぶ。構わず神取は高みを目指し、激しく腰を突き動かした。
 逃れようと僚が足掻くのを押さえ付け、神取は尚も深奥を貪った。痙攣する奥の方を穿つ度僚は泣き、善がり、ますます男を昂らせた。

「も、だめ、ひ、いぃ……またいく、いく……いく、ああぁ――!」
「ああ、何度でもいきなさい。君の可愛い声をもっと聞きたい」
「あ……たかひさ、鷹久……奥が、ああぁ!」

 じっとしていられないとばかりに脚をばたばた踏み鳴らし、僚は悲鳴を上げた。もう、デスクに散らばる書類は目に入っていなかった。それは男も同じだった。お互い肉の悦びにすっかり溺れ、互いに与えもたらされるものに酔いきっていた。
 神取は押さえ込んでいた身体を抱き直し、顔を自分の方へ向けさせた。途中で意図を察した僚は自分からも首を曲げ、伸ばし、近付いてくる男の唇に吸い付いた。噛み付かんばかりに吸い合い、貪り、舌を絡める。

「ん、んむっ…ん……んん――!」

 腰の深いところで、男のものが一段膨らむのを感じ、そのぞっとする感触に僚は背筋を引き攣らせた。
 神取はぐっと強く腰を押し付け、一番深くで精を吐き出した。
 重ね合わせた口の中でこもった叫びが弾ける。
 熱いものを吐き出しのたうつ怒漲に、僚もまただらだらと白濁を溢れさせた。

 

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