Dominance&Submission

それはよくない

 

 

 

 

 

 神取は唇を寄せて塞ぐと、ゆっくり舌を食みながら腰を動かし始めた。
 引き抜き、一気に突き入れる。口の中で僚の叫びが弾けるのと同時に、張り切った先端からも欲望が弾けた。

「うぁあ……あああぁ……」

 だらしない喘ぎをもらし、僚は激しく身震いを放った。内部も同じように痙攣し、飲み込んだ男を何度も締め付けた。
 神取は二度、三度小さく息を吐き、低く呟いた。

「……たまらないね」
「もっと……」

 僚はわななきうわ言のように零すと、自ら腰を押し付け、ここに欲しいと訴えた。散々に焦らされ我慢を強いられたのだ、一度出したくらいではとても満足出来ない。満足するどころか、もっと欲しくて堪らなくなった。もっと強く、激しく苛めてもらいたい。
 そうでなければもう、身体が収まらない。
 肩にしがみつき、ぐすぐすとしゃくり上げる僚としばし目を合わせ、神取は緩く笑った。

「もっと……?」
「ああ……もっとしてっ」

 咳込む勢いで叫ぶ僚の背中に腕を回し、神取は求められるまま、大きく腰をうねらせた。
 たちまち僚は甘ったるい声を零して、しなやかに背を反らせた。

「あぁ、おく…が……おくに、ああぁ……!」
「おくに、なに?」

 神取は動きを止めず聞いた。
 僚はわなわなと唇を震わせ、切れ切れに声を絞り出した。

「鷹久の……あぁ、かたいの……う、くぅ…気持ちいい!」

 呻くのに合わせて、後孔が複雑にうねり男のものを絞り上げる。
 まるで吸い付くような蠢きに神取は軽い目眩を起こす。僚の小憎らしい反応に興奮し、神取は強く腰を打ち付けた。

「だめ、くる――い、いくっ!」

 いくらもしないで、僚はまた絶頂を迎えた。
 ぜいぜいと全身で喘ぐ僚を抱き直し、神取は更に大きく身体を揺さぶった。

「だめっ……あぁ、まって…まって――!」

 吸っても吸っても尚息苦しくて、僚は必死に喘いだ。こんなに苦しくてたまらないのに、身体は男を求めて止まらない。
 きつい突き込みにただただ耐え、腰が砕けそうなすさまじい快感に翻弄されていると、男の指が下の歯にかかった。はっと目を瞬き、僚は反射的に甘噛みして舌を絡ませた。

「ん、んっ…あむぅ……」
「君の口も素晴らしいが、こっちはもっとたまらない」

 大きく腰を使いながら、男がうっとりと呟く。
 それを聞いて震えが止まらない思いだった。立て続けにいかされて頭がぼんやり霞んでいたが、自然と笑みが浮かぶ。
 つぼみが開くようにほころんだ僚の表情に見惚れ、神取は唇を寄せた。
 僚も応え、抱き合って互いの舌を貪る。
 汗ばんだ肌をかき抱き、僚は仰け反ってよがった。

「やだぁ……あぁ……もうくるしいっ――!」

 角度を変えて責めてくる男の怒漲に悲鳴を上げながらも、離すまいと脚までも絡めて僚は訴えた。
 目に涙を溜め、ぐすぐすと鼻を鳴らして悶える様がなんともたまらない。
 仰向けに寝かせて上から叩き付けるように抱き、膝に乗せて深くまで貫き、這わせて後ろから挑み、また仰向けにして片足を抱えて腰を打ち付ける。どれだけ欲望をぶつけても収まらない。
 僚も、息も絶え絶えによがり応えて、これ以上は身が持たないと思いながらも男を求める。
 狭い孔に潜り込み、嫌というほど奥を穿つ男の逞しい怒漲に頭の奥がくらくらする。
 真っ白な瞬間は途切れる事無く身を襲い、あれだけ苦しかったのに今はうっとりするほどの幸せに包まれている。
 男と身体を重ねて、唇を合わせて、舌を吸い合って、足りないものを互いに与え合うこの時間に、僚は身も心もどっぷりと溺れ切っていた。

「……あぁうっ!」

 身体の深いところで、男の欲望が弾けた。おびただしい白液をまき散らしてわななく熱塊に腰がとろけそうだった。

「くぅ……う」

 神取は最後の一滴を吐き出すまで静止し、それからゆっくり腰を引いた。
 眼下には、うつ伏せて手足を投げ出し、自分と同じように荒い息をつく少年がいた。手も足も背中もしっとりと汗に濡れ、甘く匂い立ち、ぞっとするような色気を放っている。
 僚はわずかに頭を動かして振り返り、キスを求めた。本当は起き上がって、腕を伸ばして抱きしめて、思う存分唇を吸いたかったが、首を動かすのが精一杯だった。
 それを見て取った神取は代わりに抱き起し、汗で貼り付いた前髪をすいてやると、まだ息の整わない唇にそっと触れた。

「あぁ……」

 キスの合間に、僚の口端から淡いため息が零れた。安心したような息遣いを耳にした途端、欲望を放って一度は満足した自身がまた芯を帯びる。瞬く間に張り詰め、縁股が痛い程引き攣るのを感じ取った神取は、己の底なしぶりに小さく笑う。
 どうにか腕に触れてきた僚の力の抜けた手を取り、神取は自身の下腹へ導いた。

「!…かたい」

 指先に触れた熱いそれに、僚は喉の奥で小さく呻いた。あれだけ自分の中で暴れ、大量に吐き出したというのに、もう元に戻った男の勢いに目を瞬く。しかし、探るように男のそれを扱く内、身体の芯がたまらなく熱くなっていくのを僚は感じた。

「入れて……後ろに」

 気付けばそう囁いていた。それだけ後ろが疼いて堪らなかった。手の中の硬い漲りを確かめるほどに、さっきみたいに抱いてもらいたいと、身体が昂ってしようがなかった。
 確かめるように見やってくる男に焦れ、僚はやや強引に男に乗っかった。驚きの混じった微笑に、無性に腹が立つ。僚は噛み付く勢いで男の唇を塞ぎ、もう一度入れてほしいとぶつけた。

「……すぐに」

 男が応え、しばらくして、部屋にまた甘い喘ぎ声が満ちていった。

 

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