Dominance&Submission

それはよくない

 

 

 

 

 

 シャワーを浴びて出てくるところまでは自力でこなせた僚だが、洗い髪を乾かすところで急にひどく億劫になり、腰かけた椅子の上でもたもたと戸惑っていると男が代わりに引き受け、あっという間に済ませてしまった。
 ありがとうと鏡越しに伝えるのがやっとなほど、どっと疲れが押し寄せ、そのままそこで眠ってしまいたくなった。
 神取はその様子にひと息笑うと、難なく抱き上げベッドに運び、優しく横たえた。
 僚はふんわりかけられた毛布の中で丸くなり、傍に座る男の方に身体を向けて緩んだ笑みを浮かべた。
 撫でたくなるほどの可愛さに、神取はそっと手を伸ばした。
 髪をすく男の優しい手にうっとりと酔って、僚は大きく息を吐いた。

「寒くはない?」
「うん…毛布あったか」
「身体に、どこかおかしなところは?」
「特に、ないよ」

 頭を枕に乗せたまま、僚はごろごろと動かした。実際は腹の奥の方に痛みという程ではない痺れたような重みがあったが、とりたてて不快さはない。男とした後はいつも大体こんな感じで、いつの間にか薄れて消えていくので、口にはしない。
 平気だと、淡く笑う。

「ねえ……明日もさ」
「うん?」
「明日も練習、いいんだよな」
「もちろんだとも」
「よかった」

 ほっとしたと熱いため息交じりの声に、神取は嬉しげに口端を持ち上げた。

「明日もたっぷり練習して、たっぷり君を可愛がってあげよう」
「それは……よくない」

 たちまち僚の顔が険しくなる。
 神取は軽く目を瞬いた。

「よくない?」
「……うるさい、変態」

 尖らせた口の先で、僚はもごもごと呟いた。男は嬉しそうに目を細め、いつものやりとりをなぞった。そうだね、でも違うよ…優しい響きに僚はごろりと背中を向け、知ってると、大きく息を吐くついでに言った。
 少ししてふわりと空気が動き、頭に手が触れてきた。髪を撫でる甘い手付きにいつも負けてしまう。
 そんな自分を悔しいと思いつつ、僚は穏やかな時間に浸った。

 

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