Dominance&Submission
禁断症状
ソファーに座った男の膝の上で、僚は絶え間なく熱い吐息をもらしていた。向かい合うのではなく男に背中を預けてもたれ、足の片方はソファーの肘掛けに乗せている。自分からそうしたのではなく、男の誘導によるものだ。 「あ、あっ……」 男の手が動く度、息遣いが弾む。下腹の奥に伸ばされ、普段は慎ましく閉じている孔に潜り込んだ指が、内部をしきりに弄り回しているからだ。浅い個所を探ってくねくねと動き、時に抜き差しされる。たっぷりのローションで濡れた指で内襞を撫でられる度、背筋にぞくぞくっと快感が這いずり、声が飛び出た。 自分の口から高い声がもれるのを恥ずかしがって僚は口を噤むが、男の指は巧みに感じる箇所をつついてきて、声を出さすにいられなかった。ぐっと口を閉じては開かされ、そうする内に段々とほてっていく身体に、僚はますます息を乱れさせた。 「ん、んっ…あぁ」 狭い後ろの孔に入り込み、熱い内臓を直接撫でてくる男の指に、僚は潜めた喘ぎを途切れ途切れにもらした。 神取は窄まった僚のそこにまとめた二本の指を咥えさせ、根元まで押し込んでは指先まで引き抜き繰り返しながら、しっとりと汗ばみ始めた肌を手のひらでくすぐった。 弱い乳首を摘まんだ時、身体の奥にある最も感じやすい悦びの火種を指先が探った時、肘掛けに乗った僚の足がびくりと跳ねる。同時に孔も締まり、神取をより愉しませた。 「ほら、足を閉じない。しっかり開いていなさい」 「あ…でも」 僚は言い淀み、息を啜った。 部屋には自分たちしかいないとわかっているが、あられもなくさらけ出し全て見えている状態が、僚にはひどく恥ずかしかった。 男の指は僚の身体のどこがどう弱いか全て知り尽くしていて、的確に責めてくる事もあれば、わざとずらしてもどかしくさせる事もあった。 狭く敏感な孔の中でぬるぬると自在に蠢き、僚を泣かせた。 男に後ろから抱かれ、大きく足を開き…開かされ、好き勝手孔を弄られている。そんな有様で感じている自分が僚には浅ましく思えてたまらないのに、そうされるほどに身体はとろけていく。頭がずきずきするほど鼓動は乱れ、それにつれて息も上がりどうにも出来ない。 「もっと開いて」 「や……やだ」 「誰もいないのだから、恥ずかしくないだろうに。それとも、誰かに見られているはしたない想像でも、しているのかな」 「そ、そんな事……」 「そんな事ない? 本当はそこに誰かいるのだろう? 誰を思い浮かべている?」 「ち、ちが……誰も…あぁ、そこ!」 男の指が内部の一点を強く抉る。僚は四肢をびくつかせ、敏感に反応した。 「そこばっか……そこやだ……やぁっ!」 「ここがいい?」 「あぁっ!」 僚はきつく仰け反った。 身体にかかる僚の重みを心地良く受け取り、神取はより重点的に抉った。汗ばみ匂いの濃くなった僚の首筋に唇を寄せ、赤くなった耳朶を甘噛みする。色を塗ったように赤い耳朶に歯を当てると、ああ、と何とも言えぬ愛くるしい声が上がり、それが聞きたくて神取はしつこくそこばかり狙った。嫌だと弱々しい抵抗など見せるものだから、余計追いたくなってしまう。彼の反応は一つひとつがたまらない。 「ほら、気持ち良いと言ってごらん」 「ああだめっ…きもちいい……すごく、いい、いく…ああもういく……出る」 「可愛いね……もう少し我慢して」 「ん、あっ…あぁ!」 後ろをごりごりと強めに擦りながら、乳首を摘まむ。感じた分だけきりきりと孔が指を食い締めてくる。同時にただでさえ忙しない呼吸が、引き攣ったように乱れた。 「あ、ああぁ……あ、だめ! そんな、したら……いっちゃう…からぁ」 「まだだよ、まだ我慢して。出来るね」 「んんんっ!」 僚は口を噤み、小刻みに首を振った。全てを知り尽くしている男の指先が、自分の弱いところを狙って動き回る。僚は腰が抜けてしまうのではないかという錯覚に目眩を起こし、震え上がった。 「君のいい声をもっと聞きたいんだ。ほら、聞かせて」 「あぁ鷹久……もうだめ、んん……いく、から……」 「まだだ」 「やだぁ……」 濡れた声を上げ、僚は腰をうねらせた。もうそこまで、限界は迫っていた。これ以上弄られたらいってしまうほど追い詰められていた。だのに男は一切手加減せず、身体を煽ってくる。 無理だと分かってはいるが、僚はどうにか堪えようと必死にあがいた。 背後で、ぴったりと肌を寄せ合っている神取には、その様子がよくわかった。少しだけ手を緩めると、ほっとしたように僚の身体が弛緩した。可愛らしい反応にひと息笑い、片手で僚の目を覆い隠す。 「あ、あっ……」 僚はびっくりしたように身体を弾ませ、反射的に男の手を掴んだ。 神取は耳元で静かに囁いた。 「僚、気付いているかい?」 「な、なに?」 「自分から足を開いている」 「う……あぁ、そんな」 「誰に見せているのか、教えてくれるかい」 「そんな……そんなのじゃ……」 「正面で君を見ているのは、一体だれ?」 僚の息遣いがますます荒くなる。視界を塞いだ事で、想像がよりくっきりと脳裏に展開したようだ。神取は声を抑え、静かに語りかけた。 「誰がいるのか、言ってごらん」 「見てない……だれも」 鼓膜を犯す甘い低音にぶるりと震え、僚は唇をわななかせた。 「それは違うだろう? さっきはあんなに閉じたがったのに、今は自分から見せつけるように開いている」 「違う……誰も、だれも……」 「誰に見せたい?」 「だれも……ああ、あ……鷹久がいるの」 僚は熱に浮かされたように、ぼんやりとした声で綴った。それを聞き、神取は小さく目を見開いた。 「正面に座って、見てる……おれのこと、……とても、嬉しそうに」 神取は正面に目を凝らし、彼が見ているだろう自分によく見えるように、僚の身体を抱え直した。腰をもう少し前にずらし、指を咥え込んだ孔がどんな風に歪になっているか、どれだけ悦んでいるか、見せつける。緩めていた手を速め、ぐりぐりと内部を抉った。 「や、あっ! だめ、そこ…もう、いく――!」 僚はおこりのように身体をびくつかせ、ほどなく白液を迸らせた。低く唸りながら二度、三度と身体を跳ねさせ、硬く張り切った先端から熱いものを噴き上げる。 勢いが鎮まった頃、神取はそっと手を退けた。 射精の悦びに震え、僚はうっとりと目を潤ませた。 ひくひく痙攣しながら指を食い締めてくる僚の後孔に、神取は薄く笑った。 「まだだと言ったろう?」 「……あぁ」 「言い付けを守れない子には、お仕置きが必要だね」 「……はい」 ごめんなさい…僚は小さく呟き、達して力の抜けた身体を男に預けた。 汗ばんだ身体を抱きしめ、神取は薄く笑った。 |