Dominance&Submission
おかわりはいかが
男の腕に抱かれ寝室に運ばれる間、僚はふわふわと夢うつつを漂っていた。興奮は大きく膨れ上がり、今にも胸を破って飛び出しそうだ。そんな状態では、ただ腕に抱かれるだけでも感覚が鋭敏になり、男と触れ合う箇所から込み上げる熱さに浮かされるばかりになる。 はっと気付いた時には、上も下も脱がされ全裸でベッドに横たわっていた。目の端で服を身に着けていない自分を見て取った僚は、いつの間にという驚きと戸惑い、そして羞恥に、シーツをひっかくように手を握った。 神取はその様子を、ベッドに腰かけじっくり眺めた、恥ずかしそうに唇を動かし、何か云う言葉を飲み込む僚に、口端を緩める。 「いい顔だね。何を見ていたのかな」 「あ……いや」 別に何も、と反射的に言葉を紡ぐ。そんな言葉でごまかしても、男にはすべてお見通しだろう。自分が寝室に移るまでの間、どこに漂っていたかなんて、男はとっくに見抜いている。自分の事は、全部知られている。これ以上筒抜けにならないよう、僚は目を合わせずにいた。全てを暴かれた今でも、恥ずかしいと思う気持ちは変わらない。 男がゆっくりと覆いかぶさってきた。僚はわずかばかり身を固くし、すぐに力を抜いて、接吻を受け入れた。優しい動きで抱きしめてくる男の背中を抱き返し、肌に触れる滑らかな布地の具合や、唇を覆う熱い感触にうっとり浸る。 互いに舌を伸ばして絡め合い、互いに相手の身体を抱いてまさぐり、舌や唇や手のひらに触れる様々な感触を楽しんだ。 神取は、手のひらに心地良い少年の瑞々しい頬の柔らかさや息遣いの甘さに酔う。 僚は、肌を滑る上質な織のシャツや何度も押し付けられる唇の熱さに酔う。 時折もれるため息がどちらのものかわからなくなるほど、二人はお互いを貪った。 神取は思う存分舌を吸うと、唇から顎にかけて、ついばむようなキスを繰り返しながら顔をずらしていった。 「んっ……」 それが喉仏を通り過ぎる時、くすぐったさから僚は湿った吐息をもらした。 僚の笑う息遣いに神取も笑みを浮かべ、より濃厚に舌を這わせた。かすかな声がもれる度上下するそれを追って、軽いキスを繰り返す。 寄越される愛撫に酔って、僚は緩慢に手足を動かし、より感じる時にはびくつかせた。乳首を口に含まれると、一層身体が震えた。男の頭をかき抱き、ぞくっとする瞬間ごとに喉の奥で短く鳴く。うなじの辺りが切なくなるような、奇妙な快感にうっとりと浸る。柔らかい舌で潰され、少し痛みを伴う刺激は、後孔へと届いて僚を泣かせた。 乳首ほどではないが、脇腹やへその際も弱い。ついばむように吸われる度、息を飲み込む。 次はいよいよ中心に触れてもらえると思ったが、男の顔はそこを素通りして、膝へとキスしてきた。 僚は首を曲げ、男を見やった。 「少し赤いね」 同時に声をかけられ、思い当たる節が無い僚は返答に困り目を瞬いた。 「硬い床に座ったせいだね」 そう言って優しくさすってくる男に、ようやく得心する。男を喜ばせるのに夢中で、まったく気にしていなかった。わかった今も痛みが込み上げてくる事は無い。平気だと、僚は小さく笑った。 神取はいたわりを込めて一つキスをすると、目を見合わせて笑った。そして足を開かせ、腿の内側を舐める。 薄い皮膚を這う舌の感触に、僚はぶるりと震えを放った。段々と中心に向かう接吻に期待を膨らませ、僚は自らも足を開いて招いた。 手の中に柔らかく包まれた時、思わず吐息が零れた。 僚はしなやかに背を反らせ、とうとうやってきた瞬間を悦んだ。すぐにはっとなり、握り拳を唇に押し付ける。こうでもしないと、男ほど我慢強くない自分はすぐに恥ずかしい声を出してしまう。 しかしそんな抵抗も、男の口に飲み込まれた途端呆気なく崩れた。 「あぁあ……」 頭上から聞こえる湿った喘ぎに神取は口端を緩め、口淫に耽った。硬く張り詰めた若い雄を吸いながら、ぽってり重たい袋を撫でる。 「あぁ…気持ちいい」 好き、と吐息で綴られ、内股が痛いほど引き攣る。神取はぶるりと背骨を震わせた。彼のそこは、吸っても吸っても新たに先走りを滲ませ、まるで溺れさせようというかのようであった。軽く扱くとぴくぴくとわななき、同時に可愛い声が溢れ、反応の一つひとつがひどく興奮させる。 今すぐ、我を忘れて貪りたいが、もっともっと彼の可愛い声が聞きたい。泣き声に酔い痴れたい。 神取はサイドボードから取り出したローションを僚のへその辺りにたっぷりと垂らすと、性器に塗り付けながら乳首に口付けた。 「あ、やっ!」 びくびくと、立て続けに僚の身体が震える。神取は気を良くし、愛撫を深めた。 神取は根元からくびれから先端から、余さずローションを塗り付けにちゃにちゃと手を滑らせた。袋も一緒に可愛がり、きつく反り返った若い雄の感触を味わいながら、じっくり手を動かした。 そうしながら、乳首を舐め転がす。 「あ、あっ…だめぇ、そこ!」 「どこがだめ?」 「ふうぅ……ちくび、あぁだめ、噛むのだめ……」 力が抜けたような声があんまり可愛くて、神取は笑いを堪えられなかった。 「どうして? 君の好きな一つなのに」 そう言ってまた、そっと歯を当てる。ああ、とうろたえた声を上げ、僚はびくびくと仰け反った。 思った以上に甘い声で鳴いてくれる彼が愛しくてたまらない。もっと感じさせたい。溺れさせたい。自分に。 神取は、手の中で十分に育った熱く硬いそれをゆるゆると扱き、軽く握り込んで根元でくるくると手を捻った。忙しない息遣いと、熱い嬌声を聞きながら、唇に挟んだ乳首の先端を舌でかすめる。 また僚は息を乱した。 始めの抵抗はすっかり忘れたようで、時にシーツをひっかき、時に抱き付いて、どれだけ感じるかを教えてくれた。 彼は嗚呼どこを触ってもいい反応をする。 「……たまらないね君は」 「あ、あぁ……たかひさ」 支配者の貌で微笑を寄越す男に、僚はぐすぐすと鼻を鳴らした。乳首が摘ままれ、絶妙な力加減で捻られる。後ろの孔がずきずきと疼きっぱなしで、これ以上我慢出来ない 僚は自ら膝を開き、誘った。 「さわって……ねえ」 「さて、どこに触ればいい?」 意地の悪い男の薄笑いに唇を引き結び、僚は一つ息を飲み込んだ。 「く、う……ここ、を」 いじって 立膝になり、ほんの少し腰を浮かせて示す、欲しがって、浅ましくひくついているのが自分でもわかった。僚は頬を熱くさせ、喘ぎ喘ぎ男に告げた。 「おねがい……」 「まずは、自分で弄ってごらん」 「や、だっ…や」 「大丈夫、ほら、ここだ」 神取は手を導いて自ら触れさせ、やや強引に埋め込んだ。入れるまでかいくらか抵抗があったが、よほど待ちきれなかったのだろう、すぐに僚は自分から指を潜り込ませていった。 こういう姿を見せる自分に、酔ってもいるようだ。強制と自発の境目を曖昧にして、支配されている自分に酔い、思う存分楽しむ。彼の素質は、本当に素晴らしい。 神取はじっくり視線を這わせた。自分の指を咥え、更に強い刺激を欲しがってひくつく孔に視線を注ぐ。 「良さそうだね」 「ああ……うん」 僚は歓喜に震えながら頷いた。しかし顔には、いくらかの不満が浮かんでいる。体勢が苦しいせいで、思うように手が動かせず、欲しいところに届かないのがもどかしいようだ。 ならばと神取は、僚が埋め込んだ中指を挟むようにして二本の指を揃えると、中指に沿って僚の後孔に埋め込んでいった。 「うぅ、んむ!」 拡げられる衝撃にうろたえ上がる声を、キスで塞ぐ。口内で、僚の少し高い声が響いた。頭蓋で反響してたまらなく心地良い。彼の声に包まれているようだ。 「く、うあ……きつい」 僚は唇を振りほどき、強く眉根を寄せた。 縋るように見つめてくる僚の視線を絡め取り、神取は薄く笑った。 「大丈夫だ、いつもするように息を合わせて」 「あ、あ……」 僚はせめて自分の指を抜こうとしたが、男に上から押さえ付けられ、叶わない。懸命に喘ぎ、息を取り込む。 神取はゆっくりと慎重に指を進め、根元まで押し入れた。 「あうぅ……くっ」 「そう、息を止めずに」 強張る身体が少しでも楽になるように、優しく頭を撫で続ける。 やがて、きつく締め付けるだけだった後孔がふっと緩む。また締まるが、馴染んできているのが分かった。 神取は起き上がり、僚の足を片方掴んで持ち上げよく見えるように暴くと、僚の手を伴って抜き差しを始めた。 「や、だ……みるなっ」 「ほら、暴れない。身体を楽にして」 「あ、んぅっ…く、くぅ……あぁ」 「よくなってきたかな」 「や、あっ……あ、あ、きもちいい……いい」 始めはどこか苦しげだった声も次第に緩み、段々と高まってゆく様に、神取は満足して微笑んだ。見ると、触ってくれと言わんばかりに乳首が尖っていた。掴んだ足を肩に乗せ、空いた手を伸ばして摘まむ。 僚は寸前で気付き身をよじるが、それより早く男の手に捕らえられる。 「あぁっ!」 「いい声だね……好きだよ」 高い悲鳴と共に後ろが締まる。神取はそれをゆっくり拡げ、傷付けないよう慎重に動かしてほぐしにかかった。 内部の熱でローションが緩み、手を動かす度卑猥な音が響く。神取は殊更大きく指を動かして音を立て、僚の羞恥を煽った。 僚が真っ赤な顔で首を振る。感じている赤と恥じ入る紅とに、神取は喜んだ。 「や、だ…そこ、あぁっ」 「そう…ではこちらにしようか」 「浅いとこだめっ…だめぇ……ああぁ――あ、あ……あ!」 「やはりここが好きだね。もっとしてあげよう」 「だめ、だめ……ああ…いい……いいっ」 「そうだ……もっと聞かせてごらん」 「やあぁ……きもちいい……いい、そこ」 そこ、と僚が言う箇所を狙って、内襞の一点を指先で捏ねる。とろけた顔、とろけた声がたまらない。指先で転がす乳首はすっかり膨れ、こちらも好ましい反応を見せた。 神取は双方を同時に責め、可愛がった。 ふと視線をずらすと、放っておかれている性器の先端から、たらたらと絶え間なく熱い雫が滴っているのが見えた。少し擦るだけで、きっとすぐにも弾けてしまうだろう。 肩にあった足が、脱力で肘までずるずると下がっていく。神取は関節を痛めてしまわないよう目を配りつつ、尚も僚を鳴かせた。 「後ろもすっかり柔らかくほぐれたね。とても柔らかい…柔らかいのに、きゅうきゅう締め付けてくる」 「う、ふっ……もぉ入れて」 鷹久のが欲しい。 僚は首を曲げ、自分の下腹と男の顔を順繰りに見やった。 「では、おねだりしてごらん」 「……ああっ」 指がゆっくり引き抜かれる。去っていく感触は少しおぞけがするもので、僚はたまらずに喘いだ。遅れて、自分も指を抜く。もう何もなくなったが、まだ何か嵌っているように感じ、腰が落ち着かない。 僚は身悶え、もがくようにして手足を動かすと、自ら膝を抱える格好になった。 「ここに……入れて」 更に両手を中心に伸ばし、恥ずかしさに顔を歪めて、自分で引っ張って孔を拡げる。あまりの浅ましさに意識が遠のきかけるが、こんな真似をする自分はいっそ心地よかった。 「ああ……いい子だ」 神取は陶然とした笑みを浮かべた。泣きそうな顔で従う僚に、胸がはち切れそうになる。今にも泣きそうに追い詰められていたのに、自分の発したたったひと言でうっとりとした笑みを見せる彼が、たまらなく愛しい。 神取は取り出した己のものを軽く扱くと、後孔にあてがった。もじもじと、ひくひくと蠢いて待ち構えているのが、先端に伝わってきた。 「おくまで、お願い……入れて」 潤んだ目で一心に見つめ、そう言われては、さしもの神取もこれ以上は我慢出来なかった。ゆっくりと先端を飲み込ませ、最も太い個所が彼の孔を拡げるのを感じ取った後、ひと息に押し入れる。 「……あぁっ!」 拉げた呻きを上げ、僚が仰け反る。済まないと思う一方で、込み上げる征服欲に背筋がぞくぞくと騒ぐ。 神取は腿をしっかり抱き支えて根元まで埋め込むと、しばしの間じっとしていた。複雑に蠢き包み込んでくる肉襞があまりに心地良くて、下手に動くといってしまいそうになる。彼に持っていかれそうなのだ。息が整うまで、動きを控える。 |