Dominance&Submission

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 神取は抱きしめた少年の背中を緩慢にさすりながらキスに耽った。舌を吸い、絡めると、彼がさっき言ったように、ほんのりとレモンが漂ってくるのが感じられた。お互い錯覚かもしれないが、薄れたそれを追うと鮮烈な黄色と清々しい香りが鼻腔をくすぐってくるようで、神取は夢中になってキスを続けた。
 僚もまたキスに溺れていた。力強く口腔を貪ってくる男の熱い舌に、頭の芯がぼうっと霞む。次第に呼吸が苦しくなっていく。合間に必死に吸い込みながら男と舌を絡め、戯れていると、背中を撫でていた手が下半身に移った。いつの間にかホックが緩められ、中に手が入り込んできた。下着越しに、今にも触られる寸前、僚は反射的に腰を引いた。抱き合ってのキスにどれだけ興奮したかを知られるのが、思い知らされるのが恥ずかしかったのだ。逃げてもあっさり男の手中に収まり、かっと頬が熱くなる。

「っ……あっ」

 ひと撫でされ、僚はため息を零した。笑うような息遣いを聞き取り、また息をもらす。
 神取はすっかり成長した僚のそれをひと撫ですると、手を後ろに回し、下着の奥に潜り込ませた。直に尻に触れると、腕の中で身体がぎくりと硬直した。口内の舌もが根元まで強張り、熱いため息が僚の口からもれた。
 キスを続けながら、僚の丸い尻を手のひらでさすった。もう一方の手で僚の頭をしっかり固定し、後孔の際どいところを撫でる度震えてしまうのを阻む。そうやって逃げ場をなくしていやらしい接吻を与えると、たちまち僚は甘い声で喘ぎを放った。
 うっとりと聞き惚れ、僚の口内に舌を差し入れ、人差し指を後ろに埋め込んだ。

「あ、あぁ――」

 身動ぎ出来ない中で与えられる二ヶ所への愛撫に、僚は止まらない震えを放った。決して嫌なのではないが、刺激が強すぎてつい身体が逃げようとしてしまう。男はそんな自分を面白そうに眺め、ひどく卑猥なキスをしながら後孔を弄った。
 ねちねちといびられ、その度に腹の底が重苦しい疼きに包まれる。首筋にまで這い上がって切ない気持ちにさせるそれに、僚は切れ切れによがった。
 どんなに首を振りたくってもすぐに捕らえられ、わななく舌を吸われ甘食みされ、背筋がぞくぞくと痺れてたまらなくなる。脈動する痺れは溜まって下腹に折り重なり、二本に増やされた指で弄ばれる後孔からの甘美な刺激とあいまって更に僚を震えさせた。

「ああぅ…あぁっ、あ、あ、あぁ……あ!」

 指先で内襞を引っかかれると、自分でも恥ずかしいほど高い声が溢れ出た。強く、しかし無遠慮でない絶妙な力加減で内部をほぐされる。膝ががくがくと震え、ともすると今にもしゃがみ込みたくなるほど強烈だった。皮膚の下でぞわぞわと、切ないような感覚が絶え間なく走り抜ける。それはひたすら気持ちいいもので、どこまでも溺れてしまいたくなる。

「いい声だね」
「う、うぅ…あ」
「僚は、ここが好きだものね」
「だめ――あぅっ!」

 殊更強く押しこくってくる指に身を強張らせ、僚はひっひっと喉を引き攣らせた。
 その反応だけでも十分満足するが、神取は言葉を欲して尚も僚を苛めた。
 自分の口で言ってごらん、どこをどうされるのが好きか、言ってごらん…囁きと共に唇の端を舐られ、僚はますます喘いだ。
 身動きを封じられた中での強烈な快感は、それだけで僚を絶頂に押し上げるほどだった。抵抗出来ない状況に置かれた自分というのが、この上なく僚を興奮させた。欲しい以上に与えられ、息も出来ないほど追い詰められるのが、たまらなく快い。男に完全に支配されていると、より強く思わせてくれる。脳天が痺れて、どうにかなってしまいそうだった。

「ほら、言うんだ……僚はどこが好き?」
「あ、あぁ……」

 僚はふらふらと頭を揺らし、今にも涎を垂らさんほどに緩んだ顔で男を見つめ、どこが好き、どうされるのが好き…途切れ途切れに言葉を綴った。
 素直な態度に神取は目を細めて喜び、頭を優しく撫でた。

「ああ、いい子だ。もっとしてほしい?」

 僚はがくがくと頷き、自らも男の指に噛み付いて締め付け、目前に迫った絶頂を目指した。
 神取はにやりとほくそ笑むと、激しかった指の動きを緩めた。当然、僚の口から不満を含んだ呻きが零れる。ちらりと下腹に目をやると、彼のそこは腹につかんばかりに反り返り、先端から涎を垂らしてわなないていた。早く解放させてくれと訴えるように揺れている。
 今すぐ口に含んで強く吸って、一滴残らず飲み干してやりたい。彼の可愛い声を聞きながら、ふやけるまでしゃぶっていたい。
 そんな妄想の一方で、もどかしさにすすり泣く彼の涙も味わいたいと、欲張りな自分に呆れて笑う。

「やだ……もっとつよく」

 恨めしそうに見やってくる僚に微笑み、神取は唇を塞いだ。不満げな呻きをキスで封じ、ゆっくりと後ろの指を動かす。
 時折気まぐれに強く揺すると、ここぞとばかりに僚は締め付けて貪った。緩めるとまた低く呻き、腰を揺すり、泣き愚図る。

「やだぁ……もう」

 鷹久、と濡れた声が縋る。
 何度か繰り返した末、これ以上はもう我慢出来ないと僚は子供のように甘えた声で泣いた。駄々をこねる様は子供のそれで、しかし身体はすっかり仕込まれた雄のもの。好みに躾けられ、覚え込み、惨めさに泣きながらもそういう扱いに柔軟に応えるいくつもの仮面を持っている。
 神取は背骨がびりびりと痺れるのを感じた。彼を焦らしてもどかしい気持ちに追いやって遊んでいたはずが、自分が追い詰められ余裕をなくしていた事に気付く。気付かされる。
 これだから、彼と遊ぶのがやめられない。
 この場を支配しているのは自分ではなく、彼の方。
 彼こそが自分の――嗚呼、たまらない。

「たかひさ……」

 呟きと共に僚が見上げてくる。涙こそ零してないものの、すっかり潤んで、熱を帯び、この上ない色気を纏っている。先程茶化して濁したあの挑発も、今の状態で言われたら、きっと自分は我を忘れて彼を貪った事だろう。茶化して笑ったものでさえ、この有様なのだ。
 彼が欲しくてたまらない。
 しようもなく。
 後ろの手はそのままに神取は背を向けるよう僚の姿勢を誘導すると、ふらつく身体をしっかり抱きしめ、背に覆いかぶさって少し火照った頬に唇を寄せた。

「あっ……」

 薄い皮膚が触れてくるのに、僚は淡い喘ぎを放った。

「やだ、いきたい……おねがい」
 もう入れて

 もじもじと腰を揺すり、内部の指に何度も噛み付く。大好きな男の手だけれど、もうこれだけでは満足出来ない。男のもので深くまで貫いて、泣くほど抱いてほしい。
 僚は片手を後ろに回し、男のそれに触れようとした。神取はそれを寸前で取り上げ、少し抵抗するのを封じて目の前の壁につかせた。もう一方の手も隣に揃えてつかせる。

「う、うっ……」
「ここに、入れてほしい?」

 神取は咥えさせた二本の指でぐいと内部を抉り、同時に片手で尻を割り開いてどんな風に締め付けているか露わにする。たちまち、見るなとうろたえた声が上がる。引き攣る呼吸に緩く笑み、神取は視線を注いだ。

「やだ……」
「ああ、ひくひく震えているね」

 嫌がって腰を振る様を愉しみながら、ゆっくり指を前後させる。熱を帯びた内襞がねっとりと指に絡み付き、押し込むとより奥へ誘うように蠢き、引くと逃すまいと締め付けてくる。まとわりつく感触を脳内に巡らすと、自分のもので彼を貫いている錯覚に見舞われ、神取は腰の奥が熱く疼くのを止められなかった。

「ああぁ…入れて、後ろに」

 僚は息を啜りながら訴えた。手のひらが、全身がじっとりと汗ばみ、いっときもじっとしていられない。半ば無意識に足を開いて男を誘い、拷問のように緩い愛撫に見悶える。

「君は、こうして苛められるのも好きだろう?」
「いや――そこだめっ!」

 鋭く制する声を無視して、神取は服の中に手を潜り込ませ指先にそっと乳首を摘まんだ。ひときわ大きな震えが僚を襲う。埋め込んだ指をきりきりと食い締め、僚はきつく硬直した。
 同時に、なんとも甘いしっとりとした喘ぎが吹き上がる。

「あうぅ!」
「……ほら、そのいい声が何よりの証拠だ」

 神取は口端を歪め、指先で乳首を転がしながら後ろの指で彼の泣きどころを集中して責めた。息を飲む音の後すぐに、僚はびくびくと背骨を引き攣らせて射精を迎えた。
 散々我慢させられた身体で、双方を責められてはひとたまりもない、僚は一気に絶頂まで引き上げられ、白濁をまき散らした。言葉を放つ余裕もなく、一秒二秒きつく力んだ後弛緩し、ああ、とため息を吐いた。

 

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