Dominance&Submission
よしよし
互いの口の中でふわっと、甘いケーキの匂いが満ちる。柔らかく熱い舌と甘い匂いにうっとり酔い、僚は味わうように男の舌を舐った。拒もうと上げた手は、いつのまにか、男の腕の辺りにしがみついていた。 神取は気分の乗ってきた少年をよりしっかり抱きしめると、キスを繰り返し、舌を絡め合いながら身体を撫でさすった。 「っ……」 僚は喉の奥で淡く喘いだ。男の手が肩から腰へ下り、また持ち上がって髪を撫で、ピアスを軽く引っ張る。 どこを触られても何をされても、胸がずきずきと痛いくらいに疼いた。執拗に舐ってくる舌にも頭の芯が痺れる。キスされながら身体を撫でられ、それだけで下腹が硬く張り詰める。脈打ちが増えるごとに硬さを増していくのがわかった。自覚した途端、早く触って欲しくてたまらなくなる。 僚はしがみついていた手をずらし、自ら慰めにかかった。半ば無意識の行動であった。 神取は身動ぎで気付き、キスの合間に唇の端で笑った。彼の手に自分の手を重ね、優しくだが有無を言わさぬ力で退けさせる。 取り上げられ、僚はわずかに抵抗するが、封じる手に従い脇に置く。そうするとより欲求が増して、じっとしていられずもじもじと腰を揺すった。 神取は頭を支えてソファーに寝かせると、もどかしそうに顔をしかめる僚の表情を上からじっくり眺めた。 「………」 まだ息はそれほど乱れてはいないが、とろんと潤んだ目が恨めしそうに見やってくる。嗚呼なんて可愛いのだろう。 引き寄せる力に抗わず、接吻する。 僚は覆いかぶさってくる背中に手を回して抱きしめ、キスに応えた。 甘い匂いが、二人の間でふわりと舞う。 「ん、ん……」 男の手が服の裾から潜り込み、肌を直接撫でてくる。熱く、少し湿った手のひらが気持ちいいとうっとり酔い痴れる。するとますます下腹が張り詰めた。 まだかな。 いつ触ってくれるんだろう。 「わぁっ……!」 脇腹をくすぐられ、不意の攻撃に僚は高音を発した。間抜けな声が恥ずかしく、照れ隠しに首を振る。 「悪かったね」 くすくすと笑いながら神取は首筋に顔を埋め、ねっとりと舌を這わせた。 「ん……べつに」 耳朶に男の吐息がかかる。くすぐったい、気持ち良い。背筋がぞくぞくする。込み上げる気持ちに任せ、僚は腕に抱いた男の背中を何度もまさぐった。髪を撫でた。自分の身体を愛撫する優しい手をさすり、口からは絶えず熱い吐息を紡ぎながら、時々跳ねてしまう息遣いに交えて、気持ち良いと呟く。 「あうぅっ」 指先で乳首を転がされ、息が引き攣る。小さな一点から広がるたまらないほどの疼きが、身体中を痺れさせる。僚は腰をくねらせた。 「味見をしても?」 「……どうぞ」 ややぶっきらぼうな僚の返答に微笑し、神取は服を捲し上げた。その様子を僚がじっと見つめる。早く欲しいと訴える熱っぽい眼差しをちらりと見やってから、神取はそっと唇で挟んだ。 「あぁ……」 敏感な一点を熱い粘膜に包まれ、背骨が溶けてしまいそうになる。もっとしてほしいと頭では思うのに、刺激が強くて、つい反射的に逃げてしまう。 いつもの可愛らしい反応に目を細め、神取は押さえ込むようにして抱きしめ執拗に乳首を味わった。 「あぁ、ん……んん」 僚は緩慢に頭を左右した。そう集中して責められると、後ろがじんじん疼いてたまらなくなる。はしたないと自身をなじりながら、力んでは緩めて慰める。そうするほどに切なさが募っていった。 「くぅ……」 強く吸われ、呼応して後孔がわななく。もう我慢しきれないと、僚は自ら足を開いて誘った。 「……さわって」 投げつけるように言葉を発する。どこを、と男のとぼけた声に眉根を寄せた直後、下腹に手が覆いかぶさった。キスだけで形を主張し始めたそこへの緩い刺激に、僚はびくりと腰を跳ねさせた。布地の下にあるものを、神取はゆるゆると撫でた。 「あ、んん……」 困ったように目を揺らす僚を見て、神取はふと笑いをもらした。ここを触ってくれと言ったのではないが、先ほどからのもじもじと落ち着かない疼きはここにもあり、触ってもらえて嬉しいのともどかしいのとないまぜになって、どうしてよいやらわからない…そう云っているのがありありとうかがえ、たまらなく可愛かった。 戯れにぐっと力をこめると、曖昧に揺れていた腰がびくりと強張った。 「あっ……いい」 僚は湿った吐息をもらして応えた。重苦しい痛みがかえって気持ちよかった。 思いがけない反応に神取は小さく目を見開いた。身の内で、ぞくぞくした喜びが広がる。 「ここを苛められるのが好き?」 「……そうじゃ」 僚は唇を引き結んだ。そうじゃないと、はっきり言いきれない自分に焦れる。 また、強めに握られる。身体の芯までずしんと衝撃が走るが、痛いばかりで何も感じない…というわけではなかった。 「少し、痛くされるのが好き?」 神取はホックを外し、ファスナーを下げ、下着一枚だけのより明らかになった僚の輪郭を手の中に収めた。 「そんなこと……」 僚は何度も目を瞬いた。平手で叩かれたり、力任せに握られたり、そうやって痛みを与えられるのは嫌いだ。ちっとも好きではない。もちろん男は、そんな風に扱う事はしない。好きでない事は決してしないと最初に約束した。でも、男がするなら、自分はおそらくいや間違いなくそれを好きになるだろう。 支配され、従う者として受け入れ、どんな痛みも苦しみも快感にすり替えて、気持ち良いと鳴いてしまうだろう。大嫌いな事なのに、男がするなら怖さも感じず溺れるだろう。 「味見をしても?」 神取は下着をずらし、露わにした僚のそれにそっと指を絡ませた。 「あは……あ」 絶妙な力で締め付けられ、僚は腰を引き攣らせた。首を曲げ、視界に収める。そうするとより快感は増し、目の奥にじわりと熱いものが滲んだ。 「……して」 何度も頷きながら呟く。 神取はゆるゆると扱きながら先端に口付け、何度も唇を押し当てながら竿全体を愛撫した。たちまち僚の口から、熱く甘ったるい声が溢れた。 どこを吸うとより良い声が出るか、神取は余さずキスして確かめた。口付け、軽く扱き、湧き出す先走りを舐め取って、神取は味見を続けた。 「あぁ…いい、やだ……ああぁ……あぅ」 なんでこんなに恥ずかしい声を出してしまうのかと、僚は拳を押し付けて封じようとした。しかし男の熱い舌と唇を受けると、あっという間にほどけてしまう。先程まで身体の底でとろとろと曖昧に流れていた衝動が、はっきりとした欲望となって表面に浮き立つ。 熱い、火傷してしまいそうな粘膜に包まれ、吸われ、その度に僚は髪を振り乱して応え、男の肩や頭を手当たり次第に探ってはびくびくと指先に力を込めた。甘えた喘ぎを零してしまうのが恥ずかしく、何度も噛みしめて堪えるのだが、喉奥まで咥えられて締め付けられ、強いキスを受けると、呆気なくほどけてしまう。 そうやって何度も鳴かせた後、神取は身体を起こして手淫に切り替え、覆いかぶさって再び僚の口内を舐った。 「……やだ」 男が手を動かす度、唾液と先走りが混じってにちゃにちゃと恥ずかしい音を立てた。自分がどれだけ感じてしまっているかはっきりわかるいやらしい響きに、いたたまれず僚は顎を震わせた。キスから、つい逃げがちになる。 神取は何度も追って、僚の舌と戯れた。 「あはぁ……ああ、あ…きもちいい」 「私も気持ちいい…それにとても美味い」 下唇を軽く吸い、神取は囁いた。肌をくすぐる甘い低音に、僚はぶるりと身震いを放った。 「あっあぁ…」 男の手は先端から袋から余さず撫で、僚の身体を痺れさせた。 五指がすっかり濡れた頃、神取はキスをやめ、下へと身体をずらした。同時に手も、下方にある窄まりへと移す。 「うぁっ!」 乳首への軽い接吻すら、僚には悲鳴を上げるほどの強い快感であった。そこまで昂った身体で、後ろと乳首を同時に責められたら、どうなってしまうだろう。 身を衝く瞬間的な恐怖に、半ば無意識に抵抗の意を表す。 男の身体を押しやろうとするのとほぼ同時に、小さな口に指先が触れてきた。 「んっ」 「味見をしても?」 「……だめ」 「いいかい」 「だめ、だめ……」 胸元で微笑む男に、僚は困ったように眉根を寄せた。言葉は口先だけで、身体の方は早く早くと急いていた。そんなもの、男はとっくにお見通しだろう。面白そうに笑う顔が何とも憎たらしい。奥歯を強く噛み合わせ、低く唸る。 「して……あ――!」 じわじわと後ろに入り込んでくる長い異物と、乳首をねっとり包む粘膜とに、僚は大きく仰け反った。乳首を吸われながら、指で孔の上を少しくすぐられる。 「あうぅ……!」 たちまち、凄まじい勢いで眩しい塊が込み上げてきた。僚は喉の奥で唸り、びくびくと大きく震えながら白いものを吐き出した。 先端から放たれる灼熱に、やや遅れて気付く。僚は半ば呆けたように声をもらした。 「う……あ」 「いい感度だね」 好きだよと笑う男に僚は頬を真っ赤に染めた。その顔がぎくりと強張る。男の手の動きが、より速まったのだ。一度達したくらいでは解放しない。満足するまで…味見が終わるまで、動きは止まらない。 「もっと見せてごらん」 「いやだ……」 男の下でもがくが、滑らかに動き出した指に力は奪われ、されるがままに悶えるしかなかった。 神取は二本の指を咥えさせると、彼を泣かせ悦ばせる一点を集中して責めた。同時に胸の左右の一点ずつを交互に舐め転がし、時に強く、時に柔らかく刺激し、愛撫を続ける。 「そこ…ああだめ、そこ…ああ気持ちいい…いい」 乳首と後孔の二点が繋がり、互いに高め合って、僚をどこまでも快感の海に沈めた。唇から絶えず嬌声を放ち、身悶え、声と仕草とで男を満足させた。 本当に溺れてしまったかのように息を荒げ、僚は男の寄越す強烈な歓びに何度もよがりのたうった。 「またいく……だめ、いくいく!」 涙交じりに叫び、何度目かの射精に身を突っ張らせる。 熱く、腫れぼったくなった乳首に軽く歯を当て、神取は孔の奥の方をごりごりと抉った。達する瞬間、より強烈な締め付けが指を噛んでくる。 嗚呼早く入れたい。自分のもので味見がしたい。 白液を飛び散らせ、僚は繰り返し上ずった喘ぎをもらした。 神取は散々に苛めたそこから静かに指を引き抜くと、ぜいぜいと息を荒げ疲れた様子で横たわる僚に視線を這わせた。下衣は全て脱がせ、上半身も、喉元まで捲し上げて肌が露わになっている。胸や腹に、白いものが無数に飛び散っている様が、何とも卑猥でたまらない。しばし目を奪われはたと我に返る。 もったいないではないか。 一滴残らず自分のものにしたいと、欲求に衝かれるまま、舌を伸ばす。 「あ…だめだ」 覆いかぶさってくる男が何をしようというのか察し、僚は慌てて手で遮った。しかしやすやすと組み敷かれ、身体のそこかしこにへばりつく射精の跡に、吸い付かれる。 「だめだって……」 泣き声に喉を震わせる。どうしても、汚い気がするのだ。男を汚してしまうのが嫌で、僚はじたばたともがいた。 そんな反応を楽しみながら、神取はじっくり舌を這わせた。 「じっとして」 「たかひさ……」 「味見をしている」 「うぅ……」 神取は肩を押しやろうとする手を取ると、やや強引に指を組み合わせ握りしめた。すぐに、僚の方からも繋いできた。満足げに笑い、一滴残らず舐め取る。 「ああ……」 申し訳なさに何度も目を瞬かせる。しかし終わるまでじっとしているしかなく、僚は潤む目で天井を見続けた。時々、くすぐったさに腹筋が引き攣った。すると男は小さく笑って、そこを狙って吸ってきた。申し訳ないのか、くすぐったいのか、恥ずかしいのか…気持ちいいのか。どんどんわからなくなっていく。恥ずかしさに縮こまっていた気持ちは、いつしか男の悪戯交じりの愛撫にすっかり酔っていた。男と組み合わせた手は、最初こそ抵抗の意味があったが、今では、感じた時により強く握って、伝える意味で、繋いでいた。口からも、素直に気持ちを伝える。 熱い。 気持ちいい。 好き。 告げると、どうしてか目の奥にじわりと涙が滲んだ。 「私も好きだよ」 「……俺も味見する!」 男からの返事にうっとりした直後、閃きが過ぎり、気付けば叫んでいた。繋いでいた手を振りほどいて起き上がり、男の下部に伸ばす。 「ここを――……あ」 勢いは、自分の大声に目を瞬かせている男の顔を見た途端、引っ込んだ。たちまち恥ずかしさが込み上げてきたが、僚は振り切って屈み、一直線に目指した。 気持ちはこんなに急いているのに、思うように動かない指が恨めしい。どうにか緩め下着から引きずり出し、こちらを散々苛めて興奮した男のそれに舌を這わせる。鼻から入り込んで脳天を直撃する男の臭いに、頭の後ろがずきりと疼いた。 「ん、は……」 何かが肌から沁み込んでくる錯覚に、僚は瞬きを繰り返した。もっと男のものになりたいと、口中に受け入れる。 「君の口、とてもいい」 しがみ付くようにしてうずくまり口淫を始めた僚に、お返しと、神取は乳首を摘まんだ。 「んんっ」 そのまま何も考えず男の愛撫に溺れたいが、今度は自分の番だと奮い立ち、僚は技巧の限りを尽くした。自ら喉を塞ぐほど深く飲み込み、唇と舌で一杯に男を愛する。すると男の手の動きが少しおろそかになる。もっと圧倒してやりたくなり、僚は夢中で頬張った。舌と唇で竿やくびれを刺激し、頬の内側に先端を擦り付け、男の悦びを煽った。息苦しさに少し涙が滲んだが、男の息遣いが乱れるのを耳にすると、窒息してもいいとさえ思った、それほど、嬉しさで胸が満ちるのだ。ぎりぎりまで呼吸を我慢してしゃぶり続け、ついに口を離した時、抱き起される。 肩を支える手に従い身を起こし、僚はゆっくり目を上げた。弄られ続けた乳首がじんじんと疼きを放ち、自然と身体が震えてしまう。再び男の手が伸びて、小さな一点に触れてきた。 「あぁっ」 ひと際大きく震えを放ち、僚は咄嗟に身を竦めた。 神取は手を動かしながら、やや強引に頭を抱き寄せ唇を塞いだ。親指の腹で押し潰すように刺激すると、口中で僚の可愛い叫びが弾けた。放せというように手が掴まれる。神取はその手を掴むと自分の首に回させ、自分からも抱きしめて、しばし一つの影となった。 僚は届く限り舌を伸ばして口内を貪った。男の手が髪を撫でる。いつも、なんでこんなに優しいのだろう。嬉しくて泣きたくなるような愛情に、胸がいっぱいになる。 「あ……!」 と、後孔に熱いものが押し付けられた。火傷しそうな塊に一瞬慄き、すぐに力を抜いて、僚は間近に男の顔を見つめた。 「味見をしても?」 僚は呆けたように目を潤ませ、緩慢に頷いた。 熱っぽい瞳で見つめてくる愛しい人の頬をそっと撫で、神取は一度軽く口付けた。そしてゆっくり、自身を飲み込ませた。 「ああぁ――ああ」 力強く後孔を拡げる熱塊に、僚は間延びした声を迸らせた。昨日もおとといも、続けて抱かれているからか、身体にほとんど負担はない。奥へ奥へ進んでくる圧倒的な存在に、声が止まらない。 僚は目の前の身体にしがみ付き、何度も叫びを上げた。 「あぁ……ふかい、あぁっ…だめ!」 男の膝に乗っかる格好で貫かれ、じわじわと奥まで侵略される。いっぱいまで拡げられる鈍い痛みの衝撃につい腰が逃げてしまうのを、男は許さずに掴んで阻み、更に飲み込ませた。 「ああぁ……」 自身を圧倒する男の大きさに腰が抜けそうだと、僚は震えながら喘いだ。 根元まで埋め込まれた瞬間、すさまじい勢いで射精欲が背筋を駆け抜けた。脳天にずしんと衝撃を感じた時には、熱いものが迸っていた。 はあはあと大きく息をつく身体をしっかり抱きしめ、神取は落ち着くまで待った。布地の向こうから、汗ばんだ肌の感触が伝わってくる。瑞々しく、しっとり濡れた身体が愛しくてたまらない。 「やだ……もうおわり?」 怯えたような声が聞こえてきた。少しかすれて、呆然としている声音に、笑いが込み上げる。 そんなわけがない。 まだまだ足りない。 お互いに。 貪欲な彼と自分とに違うと言い聞かせ、神取は抱きしめた身体を静かに横たえた。 「しっかり抱いて…そうだ」 首に巻き付いた僚の腕を確認し、神取は一度強く突き込んだ。高い悲鳴が上がる。思った以上に心地良い喘ぎに、衝動がどこまでも膨れ上がる。 「苦しい……」 狭い器官一杯に満ちた男の熱に、僚は唇をわななかせた。 「つらい?」 「そんなこと……」 強気に睨み付けてくる僚にひと息笑い、神取は唇を寄せた。あんなに嬉しそうに「苦しい」と告げるなんて…嗚呼本当に可愛くてたまらない。 柔らかい皮膚を重ね、深く貪ろうとした時、僚はやや強引に首を振って逃れた。 「も…と、味見して」 一瞬過ぎった寂しさは、僚の唇から放たれた言葉によってすぐに嬉しさに変わった。なんてことだ、彼は、こちらを泣かせる才能に満ちている。 「ああ、もちろん」 「うあぁっ!」 根元まで埋め込んだ腰をうねらせ、彼の好きな最奥を味わう。たちまち気持ちいいと声が弾けた。首筋がぞくりと、甘く疼いた。もう一つ欲しくて、もう一度奥を突く。もう一度、もう一度。 その度に僚は艶のある声を上げ、目を奪う色気に満ちた表情でよがり、悶えた。 もう止まらなかった。 込み上げる衝動のまま、神取は唇を塞いだ。奥まで咥えさせた自身のもので嫌というほど内襞を抉りながら、口の中いっぱい、舌や唇や歯の根元まで、噛み付くように貪る。 「あぁだめっ……たかひさ、はげしい……んむ、いやっ、ああぁ……ああ!」 男の寄越す受け止めきれないほどの快感に、僚は上ずった悲鳴を上げてのたうった。穿たれた灼熱の塊に腰が抜けそうになる。しかし感じるのは痛みではなくどこまでも膨れ上がる快さだった。自分の上で男が昂奮している、同じように息を荒げているのを目にして、また震えが身を過ぎった。 「ああだめ……きもちいい…ああぁ!」 僚は涙交じりに叫んだ。 神取は音がするほど腰を打ち付けながら、顎も、頬も、耳朶も…届く限り僚の身体じゅうを愛撫した。先の刺激で膨れたままの乳首の際を吸うと、中心を苛めてほしいと言わんばかりに僚は甘くぐずった。神取はあえて無視して周りばかりを唇でくすぐり更に泣かせ、最後にひと噛みをくれた。 「うあ――!」 その刺激で、僚はまたも絶頂を迎えた。 ぼう然と宙を見つめ、僚は真っ白に包まれる瞬間に酔った。小刻みに震える四肢と、自身を包むうねる熱い内襞に神取もまた恍惚に見舞われた。複雑に蠢き、絶妙な力で絞り込んでくるのがたまらない。 もっと味わいたい。 もっと深く、満足いくまで。 「っ……」 小さくため息をつき、神取はゆっくり自身を引き抜いた。 僚の顔に一瞬、不満が過ぎる。 気持ちが重なり合っているのを見て取り、神取は微笑みかけた。不機嫌そうに見上げてくる僚の頬に口付け、身体を支えて這わせる。 目配せと手の動きで男の意図を読み取った僚は、顔に出ていた物足りなさをすぐに引っ込め、ソファーにうずくまるようにして這うと、再び貫かれるのを今か今かと待った。恥ずかしさがちらりちらりと頭を過ぎるが、それよりも身体の熱を鎮めてほしくてたまらない。我慢出来ないほど後ろが疼く。 もっと深くまで味見をしてほしい。 いつもするように、力強く自分を支配してほしい。 この身体が誰のものなのか、男に知ってもらいたい。 「……あっあぁ」 前触れなく分け入ってきた怒漲に僚はおののいたように顎を震わせた。反射的に身体が前に逃げてしまう。 神取は片手で自身を支えもう一方で肩を押さえ付けると、ゆっくり腰を進めた。 全部入りきるまで、僚は甘ったるい間延びした声で応えた。耳にする自分のひどい声に何度も唇を噤むのだが、腰をとろけさせる男の熱塊を感じると声を出さずにいられなかった。噤んではほどき、咳込み、僚は泣きそうに顔を歪めて支配される悦びに浸った。 頭の中は滅茶苦茶に散らかり、どれ一つまともに考える事が出来ない。ひどい声、恥ずかしい、駄目だもっと欲しい、早くいきたい、息も出来なくなるほどしてほしい、全部食べつくしてもらいたい…てんでに飛び交う欲望に衝かれるまま、僚は自ら締め付け男を煽った。 挑発に乗り、神取は音がするほど強く腰を打ち付けた。僚の口から弾ける鋭い悲鳴にうっとりと目を細め、しばし同じ責めを繰り返す。散々に内部を抉って声を出させると、背中に覆いかぶさるようにして抱きしめ、片手を下腹にもっていった。 「あ…あっ!」 同時に乳首を摘ままれ、身体のあちこちから襲ってくる甘美で毒々しい刺激に、僚は支えていた腕で頭を抱えるようにしてうずくまった。 「しっかり踏ん張りなさい」 言葉と同時に神取は手を振り上げ、強張って震える尻を一つ叩いた。 「あぅ……はい」 僚は起き上がろうともがくが、瞬間的な痛みの後にやってきたとろけるような快感に力が抜け、思うように動けなかった。 悔しそうな声を出しながら緩やかに悶える様を面白そうに眺め、神取は再び命令を出し、すかさず彼を打った。そうされては余計に動きにくいのはわかっていた。そのように仕向けているのだ。だって、彼を支配するのは何より楽しい。独りよがりでなく、傷付ける為でなく彼を打つのは本当に楽しい。 「あ、あ、あぁ……だめ、も…ぶたないで……あぁっ」 僚はぜいぜいと胸を喘がせながら、背後の支配者に必死に訴えた。叩かれるのが痛くて耐えられないからではない。確かに痛みはあるが、瞬間的な熱と衝撃はそれほどこらえ難いものではない。堪えるのは、体内の奥で奔放に蠢く男の怒漲だった。衝撃を受ける度、自発ではなく反射的に身が引き攣り、ねじ込まれた男のものをきつく締め付ける事になる。硬さと大きさを嫌というほど思い知らされ、腰が抜けそうなほどの快感に意識が霞んで揺れる。 「あぁだめ……いくっ」 「まだだめだ」 「やだ……!」 動く気配を感じ取り、僚は身を固くした。直後尻を打たれ、同時に腰を使って最奥を捏ねられる。 「ああぁ……」 すすり泣きに唇を震わせ、僚は力なく首を振った。 引き攣れた激しい僚の息遣いに神取は満足げに微笑み、更に三度手を振り下ろした。 「いたい…もうやだ」 弱々しくもれた声には、痛みはまるで含まれていなかった。甘える響きのそれに、神取は息も満足に吸えないほどの愉悦を味わう。自分が望む以上に彼は巧みに仮面を使い分け、欲しい以上に与えて満たしてくれる。そういった精神的な面での安心感と、直接的な肉欲を、彼はもたらしてくれた。 とろけそうに熱い内襞が、うねりながら絞り込んでくる。僚がしきりに限界を訴えてくるが、自分こそ、もうもちそうになかった。それでもぎりぎりまで彼と遊ぶ。 「もう我慢出来ない?」 「だめ……いく、いく…いきたい」 「構わんよ。思い切りいくといい」 その言葉に僚は歯を食いしばり、低く唸りながら首を振った。眼下で、少し癖のある黒髪が振り乱される。どうしてと問うまでもなく、神取はわかっていた。すっかり追い詰められ、あとひと突きで弾けてしまいそうなほどなのに、拒む理由。にやりと口端を歪める。 神取は前後させる腰を少し緩め、耳朶に軽く噛み付いた。 「やめろ……」 ぞくぞくっと首筋を駆け抜ける快美な痺れに背骨を引き攣らせ、僚は声を絞り出した。ああと力なくわななき、むき出しの己の下腹に手を伸ばす。しかし寸前で手を引っ込め、どうしてよいやらわからないとまた首を振る。 その内に、男の動きがすっかり止まってしまった。途切れた刺激を身体が恋しがり、僚は葛藤しながらも腰を揺すった。 汗ばんだ背中が淫らに蠢き、男の目と心を楽しませる。先程何度も平手をくれた尻はほんのり朱に染まり、妖しく揺れている。嗚呼こんなものを見せられては、我慢が出来ない。ずるずると自身を引き抜き、一気に突き込む。たちまち迸る高い叫びがなんとも心地良い。 神取は思う存分僚の身体を揺すり、泣かせ、追い詰めた。 「ほんと…に、だめ! 許して!」 「いきたいのだろう?」 「いきたい……もうだめ、いく、出る!」 僚は懸命に手を伸ばし、男を押しやろうと突っ張らせた。神取はその手を掴みやすやすと振りほどくと、頭上に引き上げて押さえ付け、さらにきつく腰を打ち込んだ。ぎりぎりまで責め、不意に身体を離す。 「あっ…あ……」 うろたえた声をもらす僚を仰向けにさせ、すかさず飲み込ませる。下腹できつく反り返り存在を主張するそれに指を絡め、自身の動きに合わせて扱いた。 「あは……ああぁ!」 いくらもしないで、僚は絶頂を迎えた。堪えに堪えた後の刺激はあまりに強烈で、腹に胸に飛び散っているのも気付かぬ様子で、低く呻きわなないていた。 同時にまた神取も極まりを迎え、数度激しく打ち込んだ後動きを止め、先端から欲望を解き放った。 「……ああ」 身体の奥深くに放たれた熱いものに僚はため息をもらし、半ば無意識に腹を押さえて淡く笑んだ。のろのろと目を上げて男と視線を絡ませ、今度はよりはっきりと笑う。 神取も唇に笑みを浮かべると、詰めていた息をは、と吐き出した。 二人はしばし見つめ合ったまま、満ち足りた空気を共有した。 |