Dominance&Submission

よしよし

 

 

 

 

 

 事後の処理を済ませ、身体の汚れをトイレで念入りに拭い戻った僚は、鼻先がくっつくほどソファーに顔を寄せ、どこも汚していないか念入りに確かめた。指先でもたどり、染み一つないのを確認して、ようやく肩を落とす。
 安心してソファーに腰かけた僚に、神取は薄めのカフェオレを差し出した。

「まったく、誰かさんが苛めるからさあ」

 ありがとうと受け取った僚は、男にちらちら目配せした。
 何度もぶつかってくる視線を笑顔で受け流し僚の隣に腰かけ、神取は自身のカップをひと口傾け、テーブルに置いた。そして、君も中々大変だねと、他人事の口調で話しかける。

「ほんと、大変だよ」

 嫌味も通じないのだから大変だ。僚は思い切り唇をひん曲げ、それからカフェオレを啜った。甘さがちょうどよく、身体にすっと入り込んでくる。好み通りの温かい飲み物に、もっと嫌味をぶつけてやろうという気持ちが嘘のように溶けていく。まったく、これだから男はすごい。
 穏やかな表情になった僚にひと息笑いかけ、神取は口を開いた。
 確かめてみたが、と切り出す男に、僚は小さく顔を傾けた。

「確かめてみたが、どちらも好きだとわかった」

 甘いケーキと、甘い君と、どちらもこの世になくてはならないね。

「そんな、大げさだろ」
「いたって本気だ」

 強い眼差しがそうと語っているのを、僚は斜めに見やった。
 まあ俺も、ともごもご口を動かす。

「どっちも欲しいな」
「欲張りだね」
「鷹久が言うなよ」
「まったくだ」

 おどけた顔で目を見開き笑う男を、僚は嬉しそうに見つめた。

 

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