Dominance&Submission

一晩中

 

 

 

 

 

「あ……」

 僚が息を飲むのと、男が彼の中に入るのと、ほぼ同時だった。
 ひゅうと喉を鳴らし、僚は狭い孔を抉じ開けて入り込んでくる熱茎に目を見張った。
 ずぶずぶと、迷わず奥を目指し入り込んでくる怒漲に頭を持ち上げ、圧倒的な存在でもって自分を征服してくる男のそれを見ようとする。
 僚は震える手を伸ばし、繋がった部分に触れようとした。
 神取は誘導し、薄く笑った。目を上げた僚は、男の顔に浮かぶ表情に釘付けになる。支配者の貌に浮かぶ微笑から目が離せなくなる。
 神取は僚の手をそこにとどめて、腰を前後させた。一度ずつ、奥の奥まで強く押し込んでは引き抜き、また押し込んで先端で内襞を抉る。

「あ…はぁ……あぁ……あああ」

 男が奥まで入ってくる度、僚は深いため息をついてぶるぶると悦んだ。狭い孔を一杯に拡げて押し入ってくる熱茎の硬さを感じようと、指で挟むように力をこめる。びっくりするほど熱く、そして硬い。それが自分の中を満たしているのだと思うとたまらなく脳天が痺れ、僚は仰け反ってわなないた。

「あぅ……ああっ、やぁ」

 高い声が僚の唇からひっきりなしに零れる。背筋をくすぐる甘い嬌声に聞き惚れ、神取は奥を突き続けた。熱く絡み付いてくる内襞の蠢きがたまらない、もっと感じようと、腰を使って激しく突き込む。

「ひっ…ああぁ……いや、あぁ」

 髪の先まで伝わる揺さぶりに耐え切れず、僚は半ば無意識に男を押しやるように手をあてがった。神取はその手を掴んで口付け、ベッドに押し付けて封じた。指を組み合わせ、頭上に引き上げて覆いかぶさる。

「たかひさ、あぁ…あ、あ、あぁ!」

 いやいやと首を振るのも構わず、彼の一番弱い最奥を執拗に押しこくる。そうしながら首筋や頬を唇でついばみ、より反応の濃いところを繰り返し吸った。

「あぁっ…た、たかひさ……」

 僚は顔をずらし、キスをねだった。神取は掴んでいた手を自分の背中に回させ、自分も腕を回して抱きしめ、口内を貪った。
 突く動きに合わせて僚が上げる悲鳴を読み込むように何度も舌を食み、絡め取る。僚は今にも泣きそうにきつく眉根を寄せ、喘ぎ喘ぎ男のキスに応えた。次々送り込まれる強烈な快感に疼きが止まらない。
 神取は背中に回していた手で乳首を摘まみ、もう片方は唇に挟んで、更に僚を泣かせた。

「や…あ、だめ……もうやだぁ」

 後孔と乳首を同時に責めてくる男に甘ったるい声を上げ、僚は悩ましく身悶えた。どんなに身をよじっても手は離れず、小さな突起を意地悪くひねって泣かせてきた。後ろを一杯に満たした熱塊は嫌というほど奥を突き、繋がったかのようなあの錯覚に僚は悶え狂った。

「嫌じゃないだろう……僚」
「あぅ…ううぅ……」
「ほら、素直に気持ちいいと言ってごらん」

 すっかり尖った乳首を親指で軽く押し潰し、複雑に蠢き食い締めてくる後孔を先端で捏ね回し、神取はしっとり汗に濡れた身体をたっぷりと可愛がった。 
 指で浅い個所をくすぐられていた時、あんなに欲しかった刺激は僚をこれでもかと翻弄し、急速に高みへと押しやった。腰の奥から強烈な疼きが込み上げ、あっという間に追い詰められる。

「あぁっ…おく、おくが……!」
「どうなっている?」

 答えようと口を動かすが喘ぎしか出せず、僚はその整った顔を泣きそうに歪め、男に縋り付いて首を振った。

「ほら、答えなさい僚……どうなっている?」

 小刻みに繰り返し奥を突く。自分の先端で最奥にキスを繰り返しながら、神取は口端を緩めた。

「ああもう……いきそ、いきそう――!」

 我慢出来ないと身動ぎ泣き声を放つ僚に笑みを深め、神取はぴたりと動きを止めた。

「え、あ……」

 どうしてと問う眼差しで僚は見つめた。あと少しなのに。じっとしていられず、僚はもじもじと腰を揺すりたてた。

「いい顔だね……僚」

 うっとり呟く男が憎らしくて、僚はきつく眉根を寄せた。見るなとばかりに顔を背ける。しかしそうやって腹を立てても、男を飲み込んだそこは自分の意に反して男を愛撫し悦ばせた。

「いいよ……もっと締め付けて。君の身体は本当にたまらない」

 悔しさに腹の底が燃えるように熱くなるが、滾っているのは怒りではなかった。内部で、男のものが時折わななく。伝わってくるそれに敏感に反応し、僚は口からため息をもらした。奥の方でのたうつ男のものがたまらなく愛おしく思え、僚は自らも力を込めて愛撫を加えた。へその下に意識を向け、そこにいる男を抱きしめる。強く締め付け、しゃぶり、根元から先端まで逃さず絞り込む。微かに、男のため息がした。自分の技巧で男が感じていると思うと無性に嬉しくなり、僚は目の奥がじわりと熱くなるのを感じた。

「も……動いて」

 喘ぎ交じりに訴える。
 神取は薄く笑み、ゆっくり腰を引いた。いやだと濡れた声に聞き惚れ、完全に抜き去る。

「あぁ……」

 僚は悲しげに喘ぎ、急激に冷えていく身体に震えを放った。
 神取は肩を支えてうつ伏せの姿勢にさせると、まだいくらか緩んでいるそこにあてがい再び貫いた。

「ああぁ……」

 たまらないと訴える僚の甘い喘ぎに神取は口端を緩めた。彼の悦ぶ声がたまらない。腰が熱を帯び、脳天がびりびりと痺れるようだった。興奮のまま彼を抱く。粘膜をねちねちとかき回し、弾むように腰を打ち付ける。

「あ、あ、あ……きもちいい…おく、いい……!」

 繋がった個所から聞こえてくる粘ついた水音に息を乱し、僚はもがくように喘いだ。いっときもじっとしていられず、腰を掴む男の手に縋ったり、頭を抱えるようにうずくまってはまた腕を突っ張らせたり、全身で快楽に応えた。

「僚は、ここを突かれるのが好きだね」
「あうぅ…すき……いい」

 男が腰を使って奥まで押し付けてきた。全身の力が抜ける強烈な快感に僚は喉を震わせた。

「素直ないい子だね」

 言葉と共に神取は手を振り上げた。痛みを与えるのではなく、ほんのり色付かせる力加減で、彼の瑞々しい肌を平手で打つ。

「……あっ!」

 反射できゅっと締まるところを抉じ開けるようにして、神取は激しく穿った。僚の股間で、張り切った性器が突き込みに合わせてゆらゆらと踊る。

「あぁっ、いや、やだ……ああぁ!」

 悲痛な声で僚は打たれた尻を振りたてた。嫌という言葉を無視して神取は再び手を振り上げ、二度、三度と繰り返し打ち据えた。自分の下で、僚が弱々しくすすり泣く。そうやって一方的に尻をぶたれるだけの、哀れに従うしかない者の仮面を巧みに使って、僚はこの場を支配する。神取は、自発のようで無意識に強要されている境界の曖昧な空気に酔い痴れ、傷付ける為でなく最愛の人を打った。

「ああ、も……あぁ!」

 わずかな痛みと衝撃と強烈な快感に、僚は激しく身悶え高い嬌声を上げ続けた。達する寸前で取り上げられた不満は遠く霞み、目前に迫った絶頂めがけて突き進む。
 恍惚とした表情で、僚はあの白い閃きの瞬間を待った。
 直後、見計らったように神取はぴたりと動きを止めた落差に目をくらませ、僚はもがくようにして自ら腰を振り出した。

「いや……」

 解放を求めて淫らに悶える様は、男の胸をこの上ない悦びで満たした。唇がいやらしく歪む。

「やだっ、こんな……どうして」
「私は気持ちいいよ、僚」
「……たかひさ」

 どうしてこんな風に冷たく突き放すのかと、僚は啜り泣き震えて、背後の男に訴えた。きつく手を握り締める。
 何度か平手を浴びせた尻に、神取はそっと手のひらを当てた。びくりと肌が緊張する。撫でると、またひくひくと足の方まで震えが走る。反応に満足げに微笑み、神取は労わる手付きで尻や足を撫でさすった。

「いやだ……」

 すっかり追い詰められ、鋭敏になった僚にはそんな些細な接触もひどく感じるものになってしまい、堪えがたい疼きとなって腰を熱く噛んだ。もどかしさに腰をうねらせる。

「どうしてかわかるかい?」
「っ……たかひさ」

 僚は首を曲げ、自分を支配するものに目を凝らした。滲んだ涙で霞みよく見えない。何度も目を瞬き、縋るように見つめる。
 神取は背中に覆いかぶさり、顔を近付けた。恨めしそうに見つめてくる目付きがたまらない。

「そうやって苦しそうに悶えている君を見るのが、好きだからだよ」

 鼻を啜り、僚は悲しげに唇を歪ませた。小さく、変態、と絞り出す。

「そうだね……でも違うよ」

 僚は正面に顔を戻し、零れた涙を手の甲で拭った。
 そして吐息ほどにささやかに「知ってる」と呟く。だから、今、足を撫でる手が優しいのだ。追い詰めて、慈しんで、大いに自分を悩ませる。悲しいからではなく泣きたくなり、堪えに堪えて僚は涙を零した。制限され、支配され、完全に男のものになった自分に震えるほどの喜びが込み上げる。切なさに身体じゅうが疼いてたまらない、それ以上に、男への愛情が胸を満たし、今にもはちきれそうになる。
 もっと、もっと。

「もっと…おれの、身体で……感じて」

 気付けば口に出していた。
 神取は背を屈めて、しっとり汗ばんだ僚の首筋に唇を寄せた。触れると、僚は切なげな吐息と共に小さく身震いを放った。そんなささやかな反応すらたまらない。
 神取は静かに己を引き抜き、頬の涙を拭っている僚の手を取り、仰向けにさせた。そしてすぐに、緩んでひくついている窄まりにあてがい、のしかかるようにして貫いた。

「あぁ……」

 深いため息が僚の唇から零れる。自然に背中に回された腕に神取はうっとりと目を細め、自分も抱き返して、そのまま静かに起こした。

「あう、ぅ……」

 自らの重みで更に奥まで穿たれ、少し苦しげな声で僚は喘いだ。

「つらい?」
「ん、う……」

 最奥を暴かれるつらさと、未だに解放されないつらさを合わせて、僚はゆらゆらと頭を動かした。神取は楽しげに笑い、戯れに僚の乳首をそっと摘まんだ。

「あうぅ!」

 振りほどこうと僚は身をよじらせた。しかし男に穿たれた状態では大きく動く事も出来ず、かえって自身を追い詰めるだけで、余計つらかった。男の指に力がこもる度、内部も複雑に蠢き、ますます僚を悩ませた。

「いや、だ……だめ、もうやだ……」

 僚は半ば無意識に腰を揺すりたてた。片方の刺激はもう片方欲しくなる、両方同時に責めてもらいたくなる。そのように何度も躾けられた。どうしても身体が動いてしまう、欲しくてたまらなくなるのだ。
 神取はそれを知っていた。他でもない自分が彼をそのようにしたのだ。彼をより悦ばせる事が出来るし、こうして苛める事も出来る。どちらも彼は好きで、いつも、甘い声で愉しませてくれる。

「もっ…いきたい……いかせて」
「いきたい?」

 お願い、お願い。はあはあと胸を喘がせ、僚は懇願した。

「なら、自分で腰を振って、いくところを私に見せてごらん」

 好きなように動きなさいと優しく微笑む支配者に、僚はわなわなと唇を震わせた。恥ずかしさもそうだが、抱いてくれない寂しさに胸が軋む。

「君は本当にいい顔をするね……大好きだよ」

 きつく寄った眉根が、その言葉でふっと緩む。こうまで追い詰められたのに、甘い低音で好きだと囁かれただけで浮かされてしまう自分が情けなかったが、それ以上に、男が愛しくてたまらなかった。どんなにひどくされても、本当には嫌な事をしないと信頼している、築かれているからこそ、たったひと言で愛しさが込み上げてくるのだ。

「上手に出来たら、ご褒美を上げよう」
「あぁ…あ……」

 悠然とした微笑に見とれ、僚はゆっくり動き出した。始めはぎこちなかったが、すぐに動きは大きく淫らになり、熱い吐息を零しながら、僚は男の膝の上で妖しく踊った。
 しなやかにくねる肢体に神取は目を細め、執拗に胸の突起を嬲った。片方だけでは不公平だろうと、唇と歯を使い同時に刺激する。

「い、いい…気持ちいい……ああぁ!」

 うっとりと酔い痴れた声で僚は喘いだ。少し強めに歯で挟むと、まるで雷を浴びたように背筋が引き攣り、口からは苦鳴が迸ったが、たっぷりの甘さを含んだそれに神取は笑いを零した。嫌がる声でないのは、もっとしてくれと胸を押し付けてくる動きでわかった。すっかり溺れているのは一目瞭然だった。
 緩み切った顔を見ていると、男も同じだけ脳天が甘い痺れに包まれるのを感じた。上下に動く腰で扱かれるのもたまらない。とろけてしまいそうだ。
 やがて内部が変化を見せた。燃えるように熱くなった内襞が、きゅうきゅうと複雑に蠢き出したのだ。絶頂が近いのを感じ取り、神取はより強く乳首を責めた。頭上から零れる嬌声が切羽詰まったものに変わる。

「いく……たかひさ――!」

 僚は何度も歯噛みして、真っ白に弾ける瞬間に陶酔した。

「っ……」

 強くしがみ付き、針の振り切れる快感に浸る僚の熱い抱擁に、神取もまた酔い痴れる。

「……いい子だね。ご褒美を上げよう」

 抱き付いたまま硬直する僚を仰向けに寝かせ、まだびくびくと痙攣している内部を神取は休まず責め始めた。

「まって、いや――!」
「嫌じゃない…君の好きな事だ」

 鋭く引き止める声に思わず笑みを浮かべる。
 達したばかりで過敏になった身体を容赦なく揺すり、神取は深奥に刺激を送り込んだ。
 激しく抉ってくる熱茎に高い悲鳴を上げ、僚は大きく仰け反って髪を振り乱した。
 左耳のピアスがちかちかと閃き、男の目を眩ませる。誘惑かと神取は薄く笑い、耳朶に軽く噛み付いた。

「あ、あぅ!」

 ピアスによって右より敏感になった耳に、男の舌がねっとりと這う。ぞくぞくっと背を走る甘い痺れに僚は首を振った。しかし男の手がそれを許さず、押さえ込まれてより濃厚に愛撫される。身体も抱きすくめられ、わずかな身動きしか出来なくなった僚は、ひたすらよがり声を上げ続けた。そうやって逃さなければ、頭がおかしくなってしまいそうだった。

「また――いく!」

 びくびくと腰を引き攣らせ、白液を飛び散らせる。
 それでも神取は動きを止めなかった。
 休みなく高みへと追い詰める男の怒漲に、僚は咳込むようにして喘いだ。

「あぐぅ……あぁ!」

 男の手が膝裏を掴み、強く胸に押し付けてくる。少し窮屈な姿勢で容赦なく穿たれ、僚はただ泣き叫ぶしかなかった。達しても解放されず、痙攣する腰を熱く硬いものでごりごりと穿たれ、脳天が痺れてたまらなかった。
 許して、だめ、もうだめ。
 懸命に訴えるが、泣いて縋る様を楽しむ支配者の冴え冴えとした美しい微笑は少しも揺るがなかった。むしろ、深まりさえした。
 押さえ付けてくる腕をまさぐり、僚はひたすら喘ぎ続けた。これ以上はもう堪えられないと思うのに、男に責められる身体は悦び、迎え入れた奥の方は震えながら男を締め付け、絶妙な力加減で絞り込んだ。そんな風になってしまう自分の身体が恐ろしいと、僚は何度も目を瞬いた。腰から下がどろどろにとろけてしまったようで、ひどく熱い。
 だらしない喘ぎをもらし、僚は緩んだ顔で仰け反った。

「ああぁ…もうやだ……あ、あっ……もうゆるして……」
「まだいけるだろう、ほら」
「だめっ…こするな――!」

 すっかりとろけ、涎を垂らして悦ぶ様に神取はますます興奮を募らせた。薄まった精液をたらたらと垂れ流す性器に指を絡め、大きく上下に扱く。溢れた先走りと精液とが混ざり、動かす度ににちゃにちゃと卑猥な音がした。

「いやだぁ……ああぁ――」

 それにすら感じてたまらないと、僚は間延びした喘ぎをもらした。その声を、神取はキスで塞いだ。

「うむぅ……!」

 声を封じられたせいで逃す事が出来なくなり、僚は半ば無意識に後ろを締め付けた。男の大きさに目の眩む思いを味わう。とてもキスに応えられる状態ではなかった。度重なる絶頂で疲れた身体は思うように動かず、もどかしくなる。
 構わず神取は深く貪り、ひっひっとしゃくり上げる息遣いもろとも愉しむ。
 何も返せない自分が悔しくて、僚はきつく眉根を寄せた。せめてものお返しに技巧を尽くす。

「!…」

 射精を促すように絞り込んでくる内襞に、神取は背骨を震わせた。間近に目を覗き込むと、喘ぎながらも挑むように僚は見つめてきた。ぞっとするほどの色気に目が眩む。神取は猛烈な勢いで迫る射精欲に抗いきれず、彼の深いところに先端を押し付けて熱いものを吐き出した。

「……あぁ!」

 もう何をされてもいってしまうほど過敏になった僚は、身体の奥に浴びせられた男の精液に大きく背を反らせ、びくびくと痙攣した。

「あ、あ、あっ……」

 放っても尚硬いままの男のそれに喉が引き攣る。自然と腰が逃げがちになるが、男はそれを許さなかった。

「やだ…も……できない」
「ほんとうに……?」

 昂ぶり、熱っぽく見つめてくる男の眼差しに捕らえられ、僚は一瞬呼吸を忘れてしまった。動き出され、はっと我に返る。二度目の絶頂に向けて激しく突き込み、先に放ったものをかき回すようにして動く男に、僚は半狂乱になって首を振りたくった。

「あ、あっ…も、だめ…いやだ……やだぁ!」

 じたばたともがく手足をしっかり腕に抱いて封じ込め、神取は容赦なく最奥を穿った。泣きじゃくり、激しく乱れる僚の痴態に、男のものが硬く張り詰める。

「や、だ……あぁ…たかひさ」

 僚の弱々しい啜り泣きが男の胸を妖しくかきむしる。
 再び熱いものを注がれ、僚はかすれた悲鳴に喉を震わせた。胸に広がるのは悲しみではなく、溺れそうなほどの喜びだった。抱きしめてくる男の腕はいつの間にか余裕をなくし、がむしゃらにしがみ付いてくる。
 こんなにも全身で求められて、喜び以外に何があるだろう。こんなにも激しい陶酔と恍惚感は、他では決して得られない。男と積み上げるからこそ得られるものだ。
 自分をこんな風に導いてくれた男への想いが溢れ、僚は抱きしめずにはいられなかった。
 ようやく、呼吸が元通り鎮まってくる。
 力いっぱいという風だった男の腕が静かにほどかれ、目を覗き込まれる。少し余裕をもって見つめ返す事が出来た。
 男の目に、自分はどんな風に映っているだろう。自分が今見ているように、求めて昂っているのが伝わっているだろうか。
 僚は少しだるいのを我慢して、男の頬に手を差し伸べた。しっとりと汗ばみ熱い頬に触れると、男の顔にくすぐったくなるような笑みが浮かんだ。
 僚も微笑み、口付けをせがむ。
 しばし静寂に包まれていた部屋に、また甘い喘ぎが満ちていった。
 二人は飽きる事無く互いを求めて貪り、夜通し抱き合った。

 

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