Dominance&Submission

一晩中

 

 

 

 

 

 翌朝、ぬくぬくと暖かい毛布の中で僚は目を覚ました。柔らかい肌触りと適度な重みが心地良く、また眠りに落ちそうになる。深く息を吐き出したところでふと隣が気になり、小さく首を曲げて見やる。仰向けになって、男が眠っていた。目も口も閉じて、息をしていないように思えたが、しばらく見ていると胸の辺りが微かに、間違いなく上下していた。わかってから数回、それを見守っていると、猛烈な勢いで愛しさが込み上げてきた。
 昨日…いや、もう今日に変わっていただろうか、一晩中という言葉通り、飽きる事無く互いを貪った。自分はすっかりくたくたになって、男の手を借り風呂に入った。男も疲れていただろうに、いつもと変わらぬ優しい手で身体を洗い、丁寧に髪を乾かして、ベッドまで抱いて運んでくれた。風呂を上がる頃にはすっかり眠気に襲われ、途切れ途切れにしか覚えていないが、しっかりした足取りと、力強く優しい腕の感触は覚えている。あれは夢ではない。
 脳裏を過ぎる記憶に、僚は様々に表情を変えた。いくらか熱くなった頬にだらしなく笑っていると、隣から声がした。

「起きたかい」

 途端にぎくりとして目をやる。そこで男は目を開いて、微笑を寄越してきた。

「……うん。おはよう」

 僚は声の調子に気を付け、返した。飛び跳ねた鼓動がまだうるさく騒いでいる。大丈夫、落ち着け…目を閉じていたのだから、間抜けな百面相は見られていないはず。必死に自分に言い聞かせる。

「気分はどうだい」
「うん、もう少ししたら、完全に起きる」
「腹の虫は大丈夫かい」

 からかってくる男を横目で睨み、誰かさんのせいで大変だと唇を尖らせる。

「悪い奴がいるものだ」

 笑い交じりにのんびり喋るものだから、ますます憎たらしくなる。

「ほんと、すごい悪いんだよ。鷹久、こらしめてやってよ」

 本気で憎い訳でも、腹を立てている訳でもないので、言う内におかしくなって僚は笑い交じりになった。

「こらしめる代わりに、朝食の用意をしてくるよ。出来たら呼びに来るから、ゆっくり休んでいなさい」

 そう言って起き上がった男に、僚も慌てて身体を起こす。

「俺も手伝うよ」

 暖かい毛布を手放すのは未練があったが、一人残されるのはもっとつらい。寂しい。落ち着かないし、きっと美味しく感じられない。何より、起きているのに一緒に過ごさないなんてもったいない。

「そうだね」

 神取はにっこり笑った。僚も笑い返し、そうと決まれば一秒でも惜しいと、きびきび動き出した。
 朝から元気いっぱいだと神取は眩しそうに見つめ、微笑んだ。

 

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