Dominance&Submission

特別席

 

 

 

 

 

 すっかり汗ばんだ身体を腕に抱き、神取は静かにベッドに横たえてやった。まだ呆然としている僚の尻から玩具を抜き取り、自分のものをあてがう。
 熱く硬いそれに、僚はびくりと反応した。神取は目線が向くのを待って、静かに腰を進めた。玩具によって柔らかくほぐれ、達したばかりで複雑に蠢く内部を存分に味わいながら、奥を目指して根元まで埋め込む。
 半ばに差し掛かったところで、僚は口から甘ったるい喘ぎをもらした。間延びした声を上げて仰け反り、内部を満たす怒漲に震えを放つ。
 神取には心地良いさえずりであった。

「熱くて……たまらない」

 少し苦しそうにしている僚に囁き、覆いかぶさって口付ける。二度三度と甘食みを繰り返し、舌を吸い、神取は上と下とを同時に味わった。
 僚はふらふらと腕を持ち上げ男の肩を掴むと、懸命にキスに応えようとした。しかし今は呼吸をするのが精一杯で、それすらも、狭い孔一杯に含まされた男のものに圧倒されて、思うように息を吸えないでいた。
 懸命に息を吸い、上下する胸を慈しむように撫でながら、神取は唇を頬へずらしていった。熱くとろける僚の粘膜が吸い付くように包み込み、あまりの心地良さに腰が引き攣るようであった。時折くらくらと目眩が襲う。その度に息が乱れた。今すぐにでも貪りたいが、こうしてじっとしたまま味わうのも、また格別であった。複雑に蠢き、ふっと緩んではまた締め付け、絞り込むように吸い付いてくるのだ。
 神取は深い官能に酔い痴れながら、愛撫を続けた。

「あ、んんっ……あ」

 耳朶に歯を当てると、なんとも可愛らしい声が零れた。もっと聞きたいと舌を這わせる。

「あ――あぁ、だめ! や、ああぁ!」

 ピアスをしたせいか、右より敏感になった左の耳を執拗に責められ、僚は慄いたように首を振り立てた。
 神取は頭を抱え込むようにして抵抗を封じ、一層濃厚に耳を舐った。
 逃げ場を奪われ、僚はひたすら嬌声を上げ続けた。耳に舌を差し込まれ、ぞくぞくっと背筋が疼いた。後ろに力がこもる度、咥えている男を感じてまた喉が震え、僚は続けざまに襲いくる強烈な快感に何度も叫んだ。
 せめて声を出して逃さないと、頭がどうにかなってしまいそうだった。
 男にはたまらない愛撫だった。夢中になって彼の耳を責める。その合間に腰を前後させ、締め付ける内部をこじ開けるようにして抉る。
 きゅうきゅうと絞り込んでくる内襞がたまらない。
 しゃくるように腰を動かしていると、それまで高い悲鳴だったのが何かを耐える呻きに移り変わり、同時に締め付けがより一層増した。押さえ込んでいた身体が断続的に震えるのを見て、達したのだとわかった神取は、にやりと口端を緩めると休む間も与えず次の高みへと引き上げる為、腰の動きを速めた。

「あっ…も……いやだ――!」

 鋭い悲鳴を上げ、僚は力の入らぬ手足をじたばたと動かして抵抗した。
 だめ、だめ。
 啜り泣き、肩を押しやろうとする。
 神取はその手を掴み組み合わせると、易々とシーツに押し付け封じた。僚はせめてもの抵抗に嫌だと顎を上げ、髪を振り乱した。
 動きに合わせて左耳の白金がちかちかと閃き、男の目を射す。ささやかな抵抗に、神取は楽しげに笑った。

「あぁ……おく――だめ!」
「好きなところだろう?」

 咳き込むように呻く僚に返し、神取は狙い定めて腰を使った。駄目、気持ちいい。声を迸らせ、僚は全身で悦んだ。
 強すぎる快感にのたうち、深い官能に溺れて、僚は何度も目を瞬きながらよがり狂った。
 更に悦ばせようと、神取は顔をずらして胸の左右の一点ずつを代わるがわる吸った。
 彼が好む場所だけに、締め付けがより一層強烈になる。射精を誘う動きに神取は思わず喘いだ。その下で僚は濡れた声を上げ、全身をびくびくと痙攣させた。鋭敏になった肌にねっとりと濃厚な愛撫を加えられ、休みなくもたらされる後孔への刺激と相まって、またも身体が絶頂へと上り詰める。
 男の身体の下でびくびくとのたうちながら、僚は熱いものを吐き出した。それでも神取は抜き差しをやめず、堪えきれず僚は喉を震わせた。絶頂に振り切れる身体を容赦なく揺さぶられ、涙がどっと溢れる。
 悶え狂う様に神取は満足げに唇を湿し、尚も最奥を穿った。吸い付いてくるような感触がたまらないのだ。僚は泣き叫び、何度も首を振り立てた。
 達してもまた強引に引き上げられ、休む間も与えず責めてくる男に頭がおかしくなりそうだった。しかし身体はしっかり男に順応し、自分でも恐ろしくなるほど貪欲に次の快楽を求めた。
 繰り返し迎えて、薄まった精液を吐き出す。もう何度目になるかわからない。身体も疲れ切って、呼吸すらもおぼつかないが、男に貪られるとたちまち敏感に反応して、喜び善がってしまう。
 恐ろしいほどの肉の喜びを与えてくれる男に、僚は半ば無意識に好きと唇を動かした。
 真上からじっと見つめ、神取はほのかに笑みを浮かべた。自分もだと応えると、急激に射精欲が込み上げてきた。汗と精液にまみれすっかりどろどろになった僚の熱塊を手に包み、先端を刺激した。

「やめろ――あぁっ!」

 僚は濁った叫びを上げ、男の動きを止めようと抵抗した。しかし、絶え間なく送り込まれる悦楽に全身が痺れ思うように力が入らない。ただなすがままに揺さぶられるしかなかった。
 射精を求めて激しく腰を突き込み、神取は最奥で動きを止めた。僚の先端から透明な液体が噴き出すのと、己が射精するのと、ほぼ同時であった。
 深い場所に熱いものを吐き出され、僚は喉を引き攣らせて仰け反った。
 絶妙な力で締め付けて痙攣する後孔をじっくり味わい、神取は静かに目を閉じた。濡れた手で震える僚の熱塊をゆるゆると扱き、最後の一滴まで搾り取り、ようやく手を離す。
 神取は目を開け、四肢を投げ出しぐったりと横たわる僚に視線を注いだ。力なく泣きじゃくっていたが、目が合うと、僚はにこりと頬を緩めた。そして、すぐ手が届く場所にある男の肌に触れ、力を込めた。引っ張るような動きに意図を察し、神取は覆いかぶさって抱きしめた。
 満足そうなため息が耳朶にかかる。神取も息を吐き出し、事後の気だるさにしばし身を委ねた。

 

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