Dominance&Submission

いつでも優しい

 

 

 

 

 

 神取は自身を押し当て、ゆっくり孔を拡げていった。

「ああぁ――……」

 間延びした嬌声を上げ、僚はしなやかに仰け反った。散々指で弄った後だけに、内部はとろけそうに熱くなっていた。複雑に蠢く粘膜に絡み付かれ、神取も息が上がる。

「たまらない……」

 ため息に交えて吐き出す。
 神取のものが僚の狭い後孔に挿入されていく。
 限界まで拡げられる苦痛に僚は呻いたが、腰が抜けそうになる重苦しさに半ば無意識に笑みを浮かべた。ずっと、待ちかねていたのだ。息遣いを合わせて力を抜き、受け入れる。
 男のものを飲み込むのに合わせて身を震わせていた僚は、時折身体を強張らせて喘いだ。
 先端がいいところを抉るのだろう、浮かぶ表情は匂うほどの色気に包まれていた。
 とてもわかりやすい反応に神取は薄く笑みを浮かべた。

「あうぅ…うぅ」

 狭い器官を一杯に満たす怒漲に僚は顔を振りたくり、抱えた脚にぐっと指を食い込ませて込み上げる快楽に震える。
 根元まで押し込もうと、神取は腰を捩って進めた。

「うあっ!」

 ついに奥を突かれ、軽い痛みとともに痺れるような快感が全身を貫く。どうにも堪えきれず、僚は大きく口を開けた。発した声はごく短かったが、口を閉じられなかった。
 神取は腰を引き、奥まで押し入れた熱塊をゆっくりと引き抜き、また押し込んでいく。
 ただきついばかりでない後孔は、適度に神取を締め付け、抜き差ししやすいようにふっと緩む瞬間があった。
 そこを縫って、神取はなじませるように腰を動かした。ぶるぶるっと震える反応が可愛らしくてたまらない。
 脚を抱え、固まったように強張った指を丁寧にほどき、神取は自分の首に回させた。僚は自分の意思でしがみ付き、頬をすり寄せた。
 忙しない呼吸が神取の耳を炙る。

「きもちいい……すき」

 鼻を啜る合間に呟かれた僚の言葉に軽く目を閉じ、神取は大きく腰をうねらせた。
 僚はだらしない喘ぎをまき散らし、弱いところを徹底して抉ってくる男のものに喉を震わせた。いくらもしないで眼前に白い閃きが飛び散り、一瞬意識が途切れる。
 絶頂に震える内襞を神取は嫌というほど抉り抜き、泣き叫ぶのも構わず何度も彼を追い立てた。

「い、いや…も、ぉ……だめ、だめ――!」

 悲鳴と同時にがくがくっと腰を引き攣らせ、僚は低く唸った。続け様に追い詰められ、痙攣が止まらない。大きく開いた口で必死に呼吸しながら、すっかり緩んだ表情で男を見つめる。
 恍惚とした眼差しで熱っぽく見上げてくる少年に頬を緩め、神取は唇を塞いだ。まだ息が整わない僚だが、喘ぎながらも懸命に男と舌を絡め合わせた。そうしようとした。
 神取はわずかに身体を起こし、引き攣った呼吸を紡ぐ胸を優しく撫でた。僚はごくりとつばを飲み込んで、男にさすられる胸を見た後、男に目を上げた。男の大きな手に撫でられて、身体が楽になっていくのを感じた。
 ぐすぐすと啜るのもすっかり収まり、神取は微笑みかけた。僚も小さく笑い返す。
 神取は唇を寄せた。指を組み合わせて握りしめ、互いに舌を舐め合う行為に没頭する。

「ん、ん……」

 ゆっくりとした抜き差しを味わいながらするキスは、僚にとろけるような夢見心地を与えた。男の手が、下腹を緩く包み込んでくる。時々思い出したように撫で回され、うっとりするような快感に脳天が甘く痺れた。口内で蠢く男の舌を吸い、僚は浸った。
 じわじわと身体が上り詰めてゆく。しかし、緩いままの愛撫ではあと一歩届かないのだ。目前でうろつく物足りなさに気付き、僚はわずかに身悶えた。自ら締め付け腰を揺するが、ただもやもやと切なさが募ってゆくばかりだった。

「……どうした」

 男の穏やかな声が、今だけは妙に腹立たしく感じられた。何でも、どんなに些細な違いでも見分ける目を持っているのに、わからないはずがない。

「………」

 前を弄る男の手に自分の手を重ねるが、男の手は一向に激しくなる気配を見せなかった。そのくせ、後孔に入り込んだそれは強烈な存在感を示し、無視も叶わず僚を泣かせた。
 男の、全てを貪り尽くすような激しい行為にすっかりなじんだ身体には、この状態ははっきりと苦痛であった。
 こんなものでは満足出来ない。もっと、声も涸れるくらい激しく求めてほしい。
 もじもじと身動ぎ、何かを訴えてくる僚の眼差しに気付かぬ振りで、神取は楽しげに笑い乳首を摘まんだ。

「うぁっ……」

 途端にびりびりっとした快感が全身を駆け抜ける。僚は殊更に後孔をきつく締め付け、男を煽った。しかし依然として動きは変わらない。

「どうして……」
「……僚」

 頬をひと撫でし、神取はそっとその顎をとらえた。

「どうしてほしいか、口で言ってごらん」
「……もっと、あぁ……はげしく、して」
「激しくしてほしい?」

 くりくりと乳首を弄りながら尚も聞く。
 こんな些細な戯れも耐え切れないと僚は腕をまさぐりながら、頭の芯が痺れるほど強く突いてほしいと喘いだ。

「いきたい……」

 どこか拗ねたような呟きにひと息笑い、神取は唇を塞いだ。息も止まりそうなほどたっぷりと口内を貪られ、僚はうっとりと宙を見つめた。

「いきたい?」

 唇にかかる吐息にぶるぶる震えながら、お願いと囁く。

「上においで」
「あ……」

 神取の腕が僚の背中に回り、抱き起こす。膝に乗せられ、自らの重みで深くまで貫いてくる熱いものに僚は高い声を上げ、ぐらぐらと頭を揺らした。

「しっかり抱いて……そう」

 しがみ付く僚の腕を確かめ、神取は腰を使って下から突き込み始めた。音がするほど激しく穿たれ、望んでいた力強さに僚は素直に歓びの声を上げた。無我夢中で男の身体をまさぐる。

「あ、あ、あ……あぁっ…いい、すごく」

 きゅうきゅうと絞り込んでくる僚の内襞を存分に味わい、神取は直前まで追い上げた。
 いよいよ迫った絶頂に僚の声が変化する。切羽詰まった息遣いに胸を喘がせ、がむしゃらにしがみ付いてくる腕ににやりと笑い、神取はそこで責めを緩めた。
 僚の口から不満げな呻きがもれる。神取はますます笑みを深めた。

「やぁだ……いきたい」

 自ら腰を弾ませ貪る。神取は手を回し、自身のものを咥え拡がった僚のそこに指を這わせた。

「だめっ…それ、だめぇ」

 うろたえた声で僚は手を掴んだ。しかし意地の悪い愛撫は続けられた。普段弄られるのはそこまでではないが、男のものを咥えてぎりぎりまで拡がったそこを指でなぞられると、背骨が震えるほど感じてしまう。
 いきたくてたまらなくなっている時に意地悪をされ、僚は鼻をぐすぐすと鳴らした。

「いやぁだ……」

 何度も首を振り愚図る。それでも神取は執拗に指を這わせ、いつもは慎ましく閉じているそこ…今は自分を咥え、驚くほど拡がった孔にじっくりと指を這わせた。

「あぁ……お、おねがい」

 男の肩の上ですすり泣く。
 そこでようやく神取は手を離し、僚の身体をシーツに横たえた。
 恨めしそうに見上げてくる褐色の瞳にふと笑い、神取は唇を寄せた。僚はせめてもの抵抗にほんの少し顔を背けた。抗議を甘んじて受け、頬についばむようなキスを繰り返す。
 熱く柔らかな唇が触れるにつれ、ちっぽけな抵抗はすぐにほどけていった。僚は顔を戻し、深く唇を重ねた。するりと入り込んできた甘い舌を吸うと、男を咥えている後孔がたまらなく疼いた。中で脈動しているのが手に取るようにわかる。脳裏にうっすらと浮かぶ男の逞しいそれに喉が震えて仕方なかった。震えは全身に広がり、たまらなくなった僚は自ら押し付けるようにして腰を揺すった。
 不規則な痙攣と共に締め付けてくる内襞の熱さに誘われ、神取はキスしたまま腰を動かした。一回ずつ深くまで押し込み、更に腰を使ってぐりぐりと奥を捏ねる。何とも言えぬ快さそうな顔で、僚は善がり声を上げた。

「あぁ――おく、おく……きもちいい」
「ここが好き?」

 僚は頭を持ち上げ、何度も頷いた。吐息ほどにひっそりと囁く。

「いかせて……たかひさ」
「なにでいきたい」
「たかひさの……」

 そのものは口に出来ないかわりに、目線で示す。繋がった下腹を見やり、他に何があるのかと男に視線をぶつける。
 そして手繰るように手を動かして男の首にぎゅっとしがみ付き、どれだけ自分を感じさせるかすべてを口に出す。
 熱くて、硬くて、自分の中で時々びくびく震える。奥の方を突いてくると背骨が砕けそうになって、堪らなく気持ちいい。

「だいすき……」

 うっとりと呟く僚が、小憎らしいほど愛おしかった。
 神取は激情に突かれるまま強く突き上げた。たちまち鋭い悲鳴が僚の口から迸る。数度同じように悲鳴を上げさせ、どちらかといえば苦痛を与えた。僚は眉根を寄せ耐える表情になるが、抱きしめてくる腕は変わりなかった。
 変わりなく、強い力で抱きしめてくれた。
 自分も同じだと、ようやく気が晴れた神取は、じれったそうにしながらも自分の下で健気に耐えている僚を開放へと導いた。

「いや、あ……おく、あつい…ああ、あつい」
「……やめるかい?」
「だめ、いや……いく、いく……いって……たかひさ、なかで――!」

 ぐいぐいと力強く抉ってくる男の激しさにのたうち、善がって、僚は待ちわびた絶頂へと駆けた。混乱気味に叫んで、自分が何を口走っているかもう判別がつかなかったが、奥まで受け入れた男のものを絶妙の力で締め付け、同じようにいかせようと技巧を尽くす。
 神取は声もなく喘ぎ、燃えるように熱くなった身体を抱きしめて共に頂点を目指した。互いの身体の間で揺れる僚の熱塊を掴み、繰り返した射精と先走りとにぬるぬるになった竿をねちねちと上下に扱く。

「ひっ……ああぁ!」

 目前まで迫っていたのだろう、男の手淫がとどめとなり、僚はひときわ大きな絶頂の波にさらわれた。熱い白濁を噴き出すそれを尚も扱き、神取は音がするほど腰を打ち付けた。何度目かに最奥まで送り込んで動きを止め、欲望を放った。
 深い場所に浴びせられる熱いものに僚は恍惚の表情を浮かべ、針の振り切れる瞬間に浸った。
 しばらくの間身体を強張らせ、ある時ふと力を抜く。
 疲れ切った顔で荒い呼吸を繰り返す僚だが、口元には満足げな笑みが浮かんでいた。

 

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