Dominance&Submission

次も一緒に

 

 

 

 

 

 神取は口付けたまま、指先に力を込めた。

「んっ……!」

 反射的に強張る身体を狙って、最奥に突き込む。痙攣する頤をしっかり掴み、神取は尚も舌を舐った。

「あぁっ……」

 悩ましい声が鼓膜を震わす。ますます離れられなくなり、苦しげに息をつく僚を横目に、神取は乳首と後孔が繋がる快感を彼にたっぷりともたらした。指先に摘まんだ突起を意地悪く捻ると内部が複雑に蠢き、まるで絞るように包み込んできた。
 火傷しそうに熱い粘膜はそこだけではなく、必死に口付けに応えようとする僚の口内も、燃えるように熱かった。
 僚の目尻にとどまっていた涙が、とうとう頬に零れた。神取はすかさず吸ってやり、そのまま頬をついばむように接吻を繰り返した。
 柔らかい舌に眦を舐められ、むず痒さに僚はぶるりと震えを放った。恐る恐る目を開けると、間近に微笑む支配者の貌があった。ぼやける視界で懸命に男を見やり、うっすらと笑う。

「素直に言えたご褒美に、お尻を叩いてあげよう」

 言いながら神取は洗面台にもたれるように姿勢を誘導した。首を曲げ、怯えた眼差しを向けてくる僚に笑いかける。

「君の好きなものだよ」

 言葉と同時に手を振り下ろす。衝撃を与えると同時に腰を奥まで押し込む。ひゅうと息を飲み、僚は大きく仰け反った。
 神取は少年の尻がほんのり赤く色付くまで、同じ事を繰り返して責めた。
 尻で弾ける乾いた音と、衝撃と、背筋を貫く強烈な快感。
 僚はだらしないよがり声を上げて、悶え悦んだ。尻を平手でたたかれ激しく腰を打ち込まれ、更には乳首を捏ねられる。ほんの少しの痛みと快感とがないまぜになり、一気に身体が駆け上がる。ねちねちと粘膜をかきまわす音が耳を穿つ。そんな風に擦られているのだと鮮明に想像し、僚はますます顔を赤くさせた。

「だめ……いく」
「まだだめだよ」

 うっすら朱色に染まった尻を撫で、神取は乳首を摘まんだ。引っ張るようにして捏ねると、きゅうっと後孔が締まった。こじ開けるようにして抉る。

「や……い、いく!」
「まだだ」

 責める手を緩めず告げる。
 僚は切羽詰まった声を上げた。

「あぁ……でも、あっ…そんな…したら……あぁ!」
「もう少し我慢するんだ」
「あぁたかひさ……」

 ひっひっと喉を引き攣らせる。
 もう数え切れないほど、同時に責められる悦びを教え込まれ、身体はそのように出来上がっている。だというのに我慢なんて出来ない。

「も…おねがい」

 僚は濡れた声で首を振った。
 痙攣めいた僚の動きに限界を読み取り、神取はぎりぎりまで責めて、一旦緩めた。
 詰めていた息を吐き出し、僚は深くうなだれた。

「顔を上げなさい。鏡に映すんだ」

 支配者の言葉に一瞬びくりと肩を震わせ、僚はぎくしゃくと上向いた。いやらしく緩んだ自分の顔におののき、唇を震わせる。
 乱れた様に神取は密かに興奮を募らせた。

「い、いかせて……いきたい」
「いい顔だね」

 俯きたがる僚を、顎を掴んで制し、神取は乳首を優しく捏ねながらゆっくり腰を動かした。
 切なげな声をもらし、僚はじれったさに腰をくねらせた。
 彼の手が、己の下腹に行きかけては台の上に戻る、神取は鏡越しに気付いて、首筋に唇を押し付けた。

「これから、ここに立つ度、君のその顔を思い出すよ」
「あうぅ……へんたい、へんたい」

 啜り泣き、僚は鏡越しに睨み付けた。睨んだつもりだった。実際は、弱々しく泣きながら縋っているだけだった。
 悲しげに目を伏せる僚に微笑みかけ、神取は静かに言った。

「ああそうだ……でも違うよ」
「しってる……あっ!」

 いつものやりとりに神取はにやりとほくそ笑み、動きを速めた。

「や、あ…いく!」
「いいよ、いきなさい」

 思い切り出してごらん。
 言って、最初にくすぐられたきり放っておかれた僚の熱塊をそっと手の中に包み込む。先走りの涎が幾筋も垂れて、ぬるぬると表面を覆っていた。粘つくそれを、神取はにちゃにちゃと上下に扱いてまっすぐ追い上げる。

「ああだめ……だめ」
「いいよ、構わない」

 親指で先端を丸く舐める。よほど堪えるのか、僚の口から鋭い悲鳴が上がった。苦痛のないそれに気を良くし、神取は執拗に一点を責めた。あまりに強烈ゆえに、僚の腰が逃げがちになる。神取はどこまでも追いかけ、彼の悦ぶ箇所を何度も何度も、何度も撫でた。
 緩い癖のある黒髪を振り乱し、僚は泣き声を上げた。

「い、いく……いく!」
「見せてごらん」

 後ろから絶え間なく送り込まれる激しい官能と、前を扱く手に翻弄され、僚は間延びしたよがり声を上げ続けた。大きく仰け反り、たわませ、上り詰める熱に身悶える。
 それに合わせて内部も複雑に蠢き、咥え込んだ男の熱を煽った。

「く…う……」

 気を抜けば持っていかれそうになるほど吸い付かれ、神取はごくりと喉を鳴らした。狭い室内に溢れる甘い嬌声と、肉に受ける強烈な官能に、目の前が白く染まる。
 高い喘ぎを発していた僚の口から、一転して低い唸りが零れ落ちる。絶頂が目前だと察し、神取は一直線に追い上げた。

「あぁ…あ……はげし……いく…あうぅ!」

 僚はぐすぐすと鼻を鳴らし、ひと際大きく震えを放った。神取は洗面台に置かれたタオルを素早く掴み、今にもはちきれそうになった僚のそれを包み込んだ。

「う、う……!」

 不規則な痙攣を繰り返し、僚は白い中に熱を開放した。顔がほっと弛緩しているのは、我慢させられた末の開放に悦ぶのもあり、また、せめてタオルを汚すだけで済んだ事に安堵しているからでもあった。
 痙攣は内襞にも伝わり、男を射精させようと蠢いた。促す動きに素直に従い、神取はひときわ強く押し込んだ最奥で極まりを迎えた。
 薄いゴムを通してそれを感じ取った僚は、激しく喘ぎながらわななき、うっとりと頬を緩ませた。
 歓喜に満ちた表情を鏡越しに見つめ、神取は息を啜った。僚は目を見合わせると、よりはっきりと笑顔になった。無理やり息を整え、男の方へ首を曲げる。
 神取は労わりを込めて腕や背中を撫でながら、唇を重ね合わせた。
 二度、三度、湿った音が響く中、僚は好きと息をもらした。

「私も好きだよ」

 気持ちのままに告げると、目の奥がじわりと痛くなった。言葉を受けて、満面の笑みを浮かべる僚に、ますます泣きたい気持ちに見舞われる。
 腕の中の熱い身体と言葉が、男にこの上ない幸福感をもたらした。

 

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