Dominance&Submission
次も一緒に
先程『罰ゲーム』で歩いた緩やかな上り坂を、車が慎重に進んでゆく。 小路から大通りに出て運転が安定したところで、今日は本当に楽しかったと僚は口を開いた。 「ほんとにありがとう」 「こちらこそ、最高に楽しかったよ」 いい思い出も、もらえた。 男の微笑に洗面台の鏡を思い出し、僚は小さく息を飲んだ。 「……そうだな」 唇を曲げて笑い返す。歯を食いしばった顔がおかしくて、神取は軽く肩を揺すった。僚はたっぷりじっとりねめつけてから、ふんと鼻を鳴らした。 しばらくして神取は口を開いた。 「次は」 「なに?」 本当に機嫌を悪くしたわけではないので、すぐに顔を戻して、僚は聞き返した。 「紅葉の時期に、招待しようかと思っている」 高速道への道を進みながら、神取は説明した。あの庭にもいくつか綺麗に染まる樹が植わっている、辺り一帯も中々見応えがあり、是非一緒に紅葉狩りを楽しみたいと思っている事を告げる。 「……次も一緒に?」 「そう。君さえよければ」 もちろんだと僚は力強く頷き、後ろを振り返った。見えるはずのない別邸に目を凝らし、またあの庭に行ける事を心から喜ぶ。ついさっきまで感じていた、どこかへ落ちてゆくような寒さが嘘のように消える。 身体を正面に戻し、男へ笑いかける。 「約束な」 「ああ。次も一緒に来よう」 神取は約束を確かにし、わくわくと顔を輝かせる少年に笑いかけた。 |