Dominance&Submission

独り占め

 

 

 

 

 

 バスルームで僚の身体の隅々を、孔の奥まで綺麗に洗い清め、再び枷と首輪をして、神取は最後にバスローブを着せベッドに寝かせた。
 僚はその間、誘導に従う最低限の動きだけをして、男に身を任せた。自分とは違う力加減で帯を結ばれるのは、むず痒いような、奇妙な嬉しさを感じる。きゅっと引き締められる感覚に淡い疼きが走る。
 僚を横たえながら、寒くはないかと神取は尋ねた。

「へいき……」

 おどおどと男に目を上げ、僚は小声で答えた。
 すると神取は、そう、と軽く目を細め彼の胸元に手を伸ばした。
 僚が身構えるより早く、胸の一点を指に摘まむ。

「!…」
「……こんなにここを尖らせているから、寒いのかと」

 僚は身を固くした。指は摘まむだけですぐに去ったが、かえってじんじんとした疼きがいつまでもしつこく残った。寒いからではなく、肌が過敏になっているせい。それが恐怖からくるのか期待からかは、僚にもわからなかった。
 どこか恨めしそうな眼差しに微笑し、神取はクローゼットから性具を一つ取り出した。男の手にあるそれに眼を眇め、僚は小さく喉を鳴らした。
 小さな先端から段々大きさを増してゆく球体を連ねた、アナルビーズだ。
 神取はそれにたっぷりローションを塗り付けると、何か云いたげに見つめてくる僚の視線としばし戯れた後、彼の後孔にあてがった。
 片足を大きく持ち上げられ、僚は反射的に力んだ。
 そういう反応をするだろうと予測していた神取は、愉しげに笑ってわざと先端で窄まりを弄った。

「う……」
「力を抜いて。ゆっくり入れるよ」

 やがて、はい、とかすれた声がして、わずかにそこが緩む。神取はわざとゆっくりと、形を覚え込ませるように一つずつじわじわ埋め込んでいった。柔らかな素材で出来ている球体の集まり、よほど乱暴にしない限り傷がつく事はない。
 始めは抵抗なく飲み込まれていったが、最後の一つ二つは少し力が要った。そしてまた、彼の内部の蠢きが、押し戻そうともしてきた。神取は手応えを愉しみながら、時間をかけて僚の中に全て収めた。
 途中何度も刺激されたせいだろう、僚の股間は反応していた。いくらか頭をもたげ、ひくつきながら次の刺激を待ちかねている。

「入れるだけでも、感じたかい」

 僚は気まずそうに顔を背けた。閉じようとする窄まりを何度もこじ開けられた事で、下半身が痺れるようにむず痒かった。堪えられないほどではないが、無視も出来ず、底の方でじくじくと波打っていた。

「では、身体に聞いてみようか」

 神取は足を掴み直し、ビーズをゆるゆると前後させた。

「……だめっ!」

 始めは口を噤んで堪えた僚だが、三度目に引き抜かれた瞬間背筋が強烈に痺れ、思わず声を上げる。
 締め付ける事で制御しようとする僚にふと笑い、神取は強引に前後させた。力んだ事で、つらくなるのは僚の方だった。よりはっきりと、内部で蠢くビーズを感じる事になるからだ。

「言い忘れたが、私の許可があるまで、射精は禁止だ」

 僚の眼差しが強張る。構わず神取は顔を近付け、先の状況に重ねるように、アナルビーズを動かしながら同じキスをした。
 男は、性具を動かす手もキスも決して激しくはせず、甘い蜜がねっとり絡むように僚を可愛がった。
 けれど刺激は的確で、嫌でも重なる状況、思い出させる刺激は、躾けられていると僚に思わせた。
 内部にある快楽の胤をごりごり擦られて感じるのはもちろん、男とのキスにも痺れるし、後孔から何かが出ていく時にキスされている状況もこの上なく僚を煽った。
 間隔を開けて配されたビーズが、後孔をこじ開けて通り抜ける。一つ抜ける度痙攣めいた震えが僚を襲った。男は殊更ゆっくり手を動かした。形、大きさを教え込むような動きはなんとも卑猥で、あからさまに劣情を煽ってくる。

「あっ…は、あぁ…ん、んんぅ」

 キスの合間に、僚は何度も熱を含んだ喘ぎを零した。
 手足に枷は巻かれているが、どこにも拘束されていない。僚は自由な両手を遠慮がちに持ち上げて男の肩に掴まり、鳴きながらおどおどと瞳を揺らした。
 まっすぐ見つめられて恥ずかしい、顔を背けたいが、何も言われていないけれども見ていなくてはいけない気がして、目を逸らせずにいた。
 ごり、と内部の良いところを擦られる。
 ああ、と思わず声を上げる。

「気持ちいいかい」

 楽しげに言われ、いたたまれず泣きそうな顔になる。

「こうされるのは好きじゃないか?」

 同じ動きを繰り返し、神取は薄く笑った。
 思わず腰が動いてしまう僚の反応を見るまでもなく、手応えでもう知っている。彼の身体は隅々まで知り尽くしている。

「あっ…うぅ……」

 全て暴かれている自分を恨めしく思いながら、僚はどうにも止められない腰を何度も震わせた。つい零れてしまう甘ったるい喘ぎがたまらなく恥ずかしくて、奥歯を噛みしめる。直後、男が口付けてきた。唇を大きく舐められ、たったそれだけで背筋にぞくぞくと愉悦が走った。

「舌を出して……吸ってあげるから」

 唇の上で囁かれ、くすぐったさにまた慄く。抗い難い低音に侵され、僚はぎくしゃくと舌を差し出した。
 神取はわざと下品な音を立てて僚の舌を吸い、同時に下の手を動かした。

「ん、あっ、あぅ……」

 行き来するビーズが内側から僚の性器を押し上げる。高まりに僚は男の口内で何度もよがり声を上げた。息苦しさに小鼻を膨らませる。
 それでも男はキスをやめてやらず、舌に吸い付いたまま、苦しむ様を存分に味わった。
 ようやく解放し、涙を滲ませてはあはあと喘ぐ僚をしばし楽しんだ後、下腹へと目を移した。きつく張り詰めて反り返ったそれは、動かす性具に合わせてびくびくとわなないていた。

「こうされるのが、好きなんだね」

 ごくかすかにだが、僚は素直に頷いた。いい子だと神取は頭を撫で、眦に接吻した。僚の口から、ため息ほどの喘ぎがもれた。

「またあとでしてあげよう」

 そう言って根元まで押し込み、手を離す。ずん、と奥を突かれ、いくらかの苦しさに僚は呻いた。しかし痛みを感じたのはほんの一瞬で、収まると今度は毒々しい甘さが身体に広がっていった。ついもじもじと腰を動かす。
 あっさり背を向けていってしまった男を、僚は恨めしそうに見やった。
 神取はベッドサイドに用意した分厚いハードカバーを手に取ると、椅子を移動させ、そこに腰かけて読書を始めた。
 僚は首を曲げ、じっと男を見つめた。
 また、あとで。あとっていつだろう。どれくらいあとだろう。身体はまっすぐこちらに向いて、しかし目線は書物に向けた男を、僚は切なく見つめた。ちょっとも目を上げない。すっかり物語に没頭している。少しおっかなくて、そこが素敵だと思う男の真剣な顔。
 ページをめくる指はとても優雅で、無駄がない。
 あとでまたあの指に触ってもらえる。でも、あとっていつだ。いつまでこうして我慢していればいいのか。
 僚は手の下にあるシーツを引っかくようにして手を握りしめた。

 

 

 

 書物は全部で八章からなり、一章読み終わるごとに、神取は休憩代わりに僚の身体に悪戯を仕掛けた。一度目と同じように、接吻しながら性具で後孔を蹂躙する。素早く前後させる事もあれば、一個ずつを実感出来るようじっくり動かす事もあった。
 いずれも煽るだけ煽って、達する寸前で愛撫を切り上げる。
 どんなに僚が切ない眼差しを向けても、読み終わるまでと神取は応じなかった。
 繰り返されるごとにどんどん射精欲が溜まってゆく。いきたくて、出したくてたまらなくなる。頭の中がそれで一杯に、支配されてゆく。
 始めの頃はじっと大人しく横たわっていられた僚も、次第にもじもじと落ち着きをなくし、明らかに喘ぎをもらしてシーツの上で妖しくのたうち出すようになった。
 絶えず声を出すようになった。唸っていると、少し気が紛れるのだ。読書の邪魔をしてはいけないと頭で思うのだが、自分をこんな風にしてほったらかしにしている男に訴えて何が悪い、妨害してやる、とも思っていた。
 神取は咎めない代わりに、一章読み切るまで決して僚に目を向けなかった。まるで見えない壁で遮断されて、姿も見えない音も聞こえないのかと、僚は喘ぎながら切なく嘆いた。
 七章目まで読み終えた男がようやく自分を向いた時、ほっと顔を緩ませ全身で喜んだ。覆いかぶさってくる男を抱き寄せ、自ら積極的に舌を吸う。足を開いて迎え、動かしやすいようにもした。

「さすがに苦しそうだね。いきたくてたまらないだろう」

 神取は射精に結びつかぬよう、手加減しながら性具を動かした。しかしこれまで何度も寸前で取り上げられた身体には、ちょっとの刺激も大きく響くようだった。
 僚は低く唸りながら何度も頷いた。

「気持ちいいかい」
「いい……きもちいい」

 潤んだ目を何度も瞬かせながら僚は頷いた。始めてすぐは恥ずかしさに口ごもっていたのが嘘のように、どこが気持ちいいのか、どうされるのがいいか、聞かれる事に素直に答えた。

「少し激しくしたら、すぐにいってしまいそうだね。試してみようか」

 僚の顔がぱっと輝く。期待に満ちた目で見てくる少年に微笑みかけ、神取は再び口付けた。その間もゆっくりゆっくり、じれったいほど緩慢にアナルビーズで内襞をかき回す。内部から圧されるようにして、ねとねとした先走りが垂れる。
 これがいつ激しくなるのかと、僚は今か今かと待ち望んだ。
 長いキスから顔を離し、神取は軽く唇を舐めた。

「だが、せっかくここまで我慢出来たんだ、最後まで我慢しようか」
「そんな……いや」

 僚はいっそ悲痛な面持ちになった。愚図るように腰を揺すり、強く力んで性具を噛む。手応えに神取はくすりと笑い、性具から手を離した。

「いや……やだ!」

 続けてくれと、僚は濡れた声で喘いだ。
 神取は身体を起こした。縋る目をする少年の頬を撫で、優しく宥める。

「あと一章で終わりなんだ。もう少し、待っていてくれるかい」
「たかひさ……」

 僚は咄嗟に手を伸ばし、男の服を掴んだ。
 神取は殊更そっと包み、宥めるように撫でさすった。それから頬に差し伸べ、掴む形にそっと指先で触れた。

「良い顔だね」
「え……」
「君がそうして、苦しそうに悶えているのを見るのが、大好きだよ」

 僚は喉の奥で呻いた。ひどい、悔しい。そんな思いを押しのけて、どうしてか喜びが湧き上がってくる。喜びは震えとなって指先まで伝わっていった。男に完全に支配されている今の状況は苦しくて堪え難いものなのに、全身が喜悦で満たされてゆく。
 どこかうっとりとした顔で僚は口を開いた。

「変態……」

 浅い呼吸を繰り返しながら吐き出したひと言は、果たして自分に当てたのかそれとも男にか。

「そうだね……でも、違うよ」

 そして返された男の言葉は、己を言っているのか、少年に向けたものなのか。

「もう少し我慢したら、良い思いが出来るよ」

 僚は強張る指を解き、手を離した。
 屈んで少年の頬に口付け、神取は椅子に戻った。
 静かな部屋に、本を繰る音と、少年の荒い息遣いが響く。

 

 

 

 ついに男の手が本を閉じた。そのずっと前から、まるで熱病に侵された者のように忙しない息遣いを繰り返し、男の様子をじっと見つめていた僚は、手が本をベッドサイドに置くや否や男の顔をきっと見上げた。
 向けられた男の冷ややかな眼差しに、僚はごくりと唾を飲み込んだ。

「待たせたね」

 聞こえてきた静かな声は、本物だろうか、自分の妄想だろうか。
 椅子からベッドに移るのを、僚は瞬きもせず見守った。
 神取はバスローブの帯を解くと、片方ずつゆっくりはだけた。少年然としたしなやかな肢体は汗ばみ、匂い立つようだった。眺めまわし、満足そうにうっとり目を細める。
 股間には、ほっそりした身体つきにはいささか不似合いな、一杯に張り詰め反り返っている雄があった。いくらか凶悪な色に染まり、解放されるのを待ちわびて苦しそうに喘いでいる。

「初めてなのに、よくここまで我慢出来たね。僚はいい子だ」

 手の甲で頬を撫で、鍵盤に触れる時のように指先一本ずつで胸元をつつく。もうあと少し横にずれるだけで、彼の弱いところの一つに当たる。始めに一度摘ままれただけで、あとはほったらかしにされてきたのに、今まで散々繰り返された蹂躙によって乳首は性器同様硬く勃ち凝って、苛めてもらうのを待ち焦がれていた。
 神取はあえてそこには触れず、周りをくるくると指先でなぞった。たったそれだけで、僚の身体はおもしろいようにびくびくとのたうった。

「さあ、どうしてほしい」
「いきたい…いきた……おねがい」
「どこでいきたい」
「尻の……鷹久ので」

 入れて。中抉って。いっぱいして。
 神取は身を屈め、口付けほどに顔を寄せた。小さく息を飲む僚の様子に口端を緩め、耳元にずらす。

「奥を突かれながら、思い切り出したい?」

 耳朶の低い囁きに僚はぶるぶるっと震えを放った。何度も頷く。思い浮かべるだけで身体中がたまらなく痺れた。切なさで一杯になる。自ら腰をがくがく跳ねさせる。
 男の手が性具を抜きにかかる。

「力を抜いて。これでいってはつまらないだろう」

 くすくす笑いながら引き抜く。僚は出来るだけ言うとおりにしようとするのだが、限界まで追い詰められた身体は思うようにいかず、後孔を拡げるビーズにいちいち反応した。
 そうなるように、神取はあえて手を動かした。彼がより長く感じるよう、じわじわと抜き出す。内部の痙攣が手に伝わってくるようだった。
 ようやく先端を抜き出す。長く細い息を吐き出し、僚は霞む目を瞬かせた。
 長い事咥え込んでいたものが無くなった僚のそこは、物足りなさを訴えるようにひくひく蠢いていた。
 神取は前方を緩めた。

「さあ、入れてあげるよ」
「ああ……たかひさ」
「ほら、いつもの格好になりなさい」
「ん、んん!」

 早く、早く。男の股間に目を釘付けにしたまま、僚は自ら脚を抱えた。
 ベッドが軋み、男の顔が近付く。後ろに熱いものがあてがわれ、僚はびくりと身を強張らせた。玩具で柔らかくほぐされていたが、それより大きく一杯に拡げられる感触は僚の涙を誘った。
 苦痛ではなく、快感のそれを一杯に湛え、僚は呆然と呟いた。

「あ、あ、あっ…や……い、いきそ……」
「まだ駄目だ。私がいいと言うまで、出してはいけないよ」

 そんな、と縋る眼差しにいっそ優しく微笑み、神取は少しずつ腰を進め埋めてゆく。彼の内部は、度重なる蹂躙で燃えるように熱くとろけて、ねっとりと包み込むようだった。今にも飲み込まれる愉悦に喉の震えが止まらない。自分の下で苦しそうに耐えている姿と相まって、油断するとすぐにでもいってしまいそうだった。そんな自分にふと笑う。
 ずぶずぶと、ひどくゆっくり入り込んでくる怒漲に僚は必死に息を詰めた。拡げられる後孔がぴりっと痛み、けれど堪えられないほどではない。むしろ甘美な刺激だった。男のものを受け入れているのだと思うと、自然涙が滲んだ。こじあけられる力強さに目の前が白く眩む。頭の中に、腰からどろどろに溶けてゆく自分が思い浮かんだ。

「あ、うぅ……」
「せっかくここまで我慢したんだ。まだ頑張れるね」
「あ、あぁ……むりっ」
「無理じゃない、出来るさ。ほら、もう少し我慢して」
「や、あぁ……!」
「ちゃんと我慢出来たら、うんとご褒美を上げるよ」

 じれったい進入の末、ようやく根元まで埋め込む。
 限界まで追い詰められ、それでもどうにか耐えて僚は言い付けを守った。睫毛を涙で濡らし、切なげに見つめてくる少年にうっとりと見惚れる。

「中も苦しそうだね。何度も締め付けてくる……気持ちいいよ、僚」

 今にも泣きそうなのに、たった一言で彼は眉根からふっと力を抜いた。
 彼の先端からは粘ついた汁が垂れ、腹に滴っていた。時折不規則にびくびくとわななき、きつく筋を走らせ張りつめ、今にも破裂しそうだった。

「がまんできた……い、いっていい?」

 ひっひっと喉を引き攣らせ、僚は何とか訴えた。
 神取は健気な少年を包むように優しく抱きしめ、いきなさい、と耳元に囁く。そして一度強く腰を打ち込んだ。

「……うあぁっ!」

 たったそれだけで僚は吐精した。何度も我慢を強いられ、限界まで抑え込まれた精液はどろりと濃く濁り、先端からだらしなく溢れて垂れた。
 その間ずっと目の前で強烈な白が明滅するのを呆然と見つめながら、僚はぶるぶると身体を震わせた。やっと訪れた瞬間だが、身体は変わらず重く痺れていた。まるで熱が引かない。
 下腹のそれもまだ硬いまま。当然だと神取は緩く笑い、手の中に包み込んだ。

「あぁっ……まだ!」

 待ってほしいと訴える声を無視し、上下に動かす。いったばかりで敏感な雄を的確に責められ、僚はわずかもしないで精を吐き出した。
 溢れてくる精液を竿に塗り付けるようにして、神取は尚も扱き続けた。

「や、やめっ…あぅっ、く、くうぅ」

 続け様に苛まれ、僚は苦痛に顔を歪めて呻いた。
 怯えて拒む僚を微笑で一蹴し、神取は言った。

「管理すると言ったろう。私がいいと言うまで、いきなさい」

 それが射精管理だ。
 信じられないと僚は目を見張り、しかし言葉通り動き始めた男に喉の奥で鋭く叫ぶ。
 休む間もなく性器を扱かれ、腰を突き込まれ、絶え間なく快感を流し込まれる。時折乳首を噛まれる。ほんの軽く歯を当てるだけだが、過敏になった僚には雷に打たれるような衝撃。痛みと勘違いするのだ。いまや僚にとって痛みは甘美な刺激にほかならず、それが引き金となってまた射精する。
 それでも男の手は止まらない。

「い、いやだ……ひっ…あああぁ」

 しまいには何を喚いているのか自分でもわからないほど取り乱し、ひたすらよがり続ける。逃げようとのたうつ身体を押さえ付け、神取はおのれの怒漲で容赦なく僚の最奥を穿った。

「まだ、もっと……もっといきなさい」

 吐き出したものでどろどろになった僚の性器をねちねちといびる。外から、内側から刺激を受けて、僚のそれはびくびくと頭をもたげた。
 いやだ、もうやめて、許して、許してください。
 自分の下で泣き喚き許しを請う少年にうっとりと視線を注ぎ、神取は尚も責め立てた。美しく整った顔を涙で濡らし、発作を起こしたように苦しげに喘ぐ様はどんな官能にも勝った。
 一切痛みは与えない。
 傷や跡を残すのは好きじゃない。彼の可愛い泣き顔が見たいのだ。彼の感じるところを優しく撫で、奥を突き、乳首に接吻する。どれもとろけるような快感だが、行き過ぎた快感こそ苦痛。それでも神取は休まず与え続けた。
 涙で顔をぐっしょり濡らし、喘ぐ様に自身の射精欲がはちきれそうになる。欲望の赴くまま神取は腰を速めた。僚の性器からはひと時も手を離さず責め立て、ぬめりが足りなければローションを垂らして扱き続けた。
 竿を上下に擦られ、鈴口をまるく撫でられ、延々刺激を送り込まれる。僚は激しく悶え狂った。

「あ、あああ! もういやだ……だめ――だめぇ!」
「いいよ僚…最高だよ」
「た、たひさ…あうぅ、いや、いや……あ、あぁ…ひっ……も、おかしくなる!」
「いいよ、構わない……大丈夫だよ僚」
「ああ、あ……いく、いく――!」

 抱き縋ってくる身体を強く抱き返し、男は何度も何度も突き込んだ。彼の感じる部分を容赦なく擦り、抉る。僚の中は燃えるように熱く、それより熱い男の猛りが、狭まる内部をこじ開けるようにごりごりと穿った。

「あぁ……ああぁ――!」

 絶叫に近い嬌声を迸らせ、きつく仰け反って、僚はひときわ大きく身体をわななかせた。すっかり薄まった白いものを吐き出したそこを、神取は尚もぐりぐりと刺激した。
 濁った叫びを上げ、やめろと僚は抵抗した。神取は聞き入れず、がむしゃらに掴みかかる手を振り払って更に追いつめた。

「ひ……ひぃっ!」

 ひと際大きく叫び、僚は全身を引き攣らせた。痙攣は内部にまで及び、激しく打ち込まれる男のものを絶妙の力で締め付けた。神取はもう数回力強く腰を打ち付けると、最奥で動きを止めた。

「ぐうぅっ……」

 一番深いところに男の熱いものを浴び、慄いて僚はきつくのけぞった。同時に男に弄られていた先端から夥しい量の透明な液体を迸らせる。勢いよく噴き出したそれは互いの身体を濡らした。
 神取は最後の最後まで搾り取るように手を動かし、やがてそっと手を離した。同時に僚はがっくりと全身の力を抜いた。神取は内部から己を抜き去り、ゆっくり身体を起こした。
 苦しげに胸を喘がせ、僚はぐったりと四肢を投げ出していた。潤み切った目で男をしばし見つめた後、力なく目を閉じた。

 

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