Dominance&Submission
Suite
二つ目までは、声を上げながらも無抵抗で受け入れた僚だが、三つ目のローターを後孔に咥えさせられた途端、鋭い声で制止を訴えた。 ベッドの上、四つん這いの姿勢を崩してうずくまり、もう一度、お願い、許してと弱々しく呟いた。 「僚、四つん這いの姿勢に戻りなさい」 しかし、背後からの男の冷たい声に望みは断たれる。 戸惑っていると、鋭い痛みが尻を突き刺した。平手で打たれたのだ。 「僚、戻りなさい」 「……ごめんなさい」 容赦のない支配者の声にぐっと息を飲み込み、僚は言われた通り従った。 男に尻を向け、手を伸ばして身体を支える。悲しさ以外の理由で涙が滲んだ。鼻を啜る。 そうして四つん這いを保つが、いざ後ろにあてがわれるとどうしても腰が逃げてしまう。 背後で、男は笑った。 見透かされていると、僚は頬を熱くさせた。 男の側からも、この身体がどれだけ浅ましく変化しているか、見えているのだろう。 プラスチックの塊を咥え込まされ、今にも達しそうに勃起している様が、見られているのだ。 恐らくは次の刺激で、はしたなくもいってしまうだろう。 それが怖くて、嗤われるのが怖くて、僚は逃げてしまうのだ。 「でも、君はこれが欲しいだろう?」 男は微弱な振動を起こすと、少し遠いところ、腿の外側に押し当てた。 「…!」 びくりと僚の身体が反応する。 「沢山頬張って、その刺激で、いきたいだろう?」 僚は半ば無意識に首を振った。 「ほんとうに?」 神取はベッドに乗り上げ、僚に覆いかぶさるようにして手をつき、耳元に口を近付けた。顔を覗き込む。 すっかり緩んで、赤く染まり、浅い息に喘いでいた。 「……たかひさ」 わずかに顔をずらし、僚は男の名を呼んだ。 どうしたらいいのか、自分でもわからないと戸惑う顔が、しようもなく愛しい。 神取は目を見合わせたまま薄く笑い、頬に軽く唇を押し当てた。 どこかうっとりと目を潤ませる様に笑みを深める。 キスの余韻に浸る僚にそっと尋ねる。 「これが、欲しい?」 振動を切ったローターを、もう一度僚のそこに押し付ける。 身体が、芯からとろけてしまいそうに甘く曖昧な刺激に息を弾ませながら、僚はごく微かな声で恥ずかしいと答えた。 答えると同時に、男は僚の下部を強く握り締めた。 「うぐっ!」 不意の圧迫に驚き、僚は鋭い悲鳴を上げた。 瞬間的な痛みの隙をついて、男は三つ目の塊を内部に押し込んだ。 下部に強い痛みを与えたのは、挿入の刺激で達してしまうのを防ぐ為だ。 しかし、わけもわからず突然痛みを与えられ、僚は驚きと非難の入り混じった眼差しで男に問い掛けた。 「っ……」 僚の視線を受け止め、神取はふっと頬を緩めた。 甘く囁く。 「君が恥ずかしそうにしているのを見るのは、本当に愉しいよ、僚」 痛みで反射的に滲んだ涙を、瞬きでやり過ごし、僚はまっすぐに男を見上げた。 「君とこうしている時が、私は本当に楽しい」 そう言って僚の身体を抱き起こす。 「君は?」 「う、う……」 苦しげに僚は呻いた。 姿勢を変えた事で内部の塊がぶつかり合い、鈍い痛みが走ったが、鼓動を聞くように胸に顔を埋めてくる男に、痛みなど消えてしまう。 耳に届いた、男の深いため息…安心しきった息遣いに、喜びが満ち溢れて震えが止まらない。 潤んだ瞳で男を見下ろし、僚はぎこちなく顔を近付けて額に接吻した。 心地好い唇の感触に、神取は目を閉じて酔う。 「も…いきたい……鷹久ので……」 いかせて。 囁く僚に目を開き、神取は軽く首を傾げた。 「中のものは、そのままでいいのかい?」 首を振る。 「なら、どうする?」 「出すよ……」 恥ずかしさにそっぽを向き、真っ赤になって僚は答えた。 「手を使わずに、出してごらん」 言われた瞬間、僚の眼差しが驚きを表して揺れ動いた。仰のき、覚悟を決めようと肩を上下させる。 僚は思った。 こちらの考えなど、すべてお見通しなのだろうか。 何が恥ずかしくて、何が出来ないか、男は一度も見誤る事無く口にする。瞬間は無理だと思っても、ほんとうは出来てしまえる事がいくつもあった。それだけは恥ずかしくて絶対にしたくないと思った事でさえも。確かに、男の言う事なら、喜ぶ事なら、応えたいと思っている。それでも出来ないと譲れない一線を、男はたやすく乗り越える。そして、絶対に無理な事は要求しない。 嗚呼何故、こんなに恥ずかしいのに、こんなに胸が高鳴るのだろう。 僚は男から身体を離すと、肩に手を置き、わずかに力を込めた。 「受け止めてあげるから、出してごらん」 手のひらを僚のそこにあてがう。 鼻先が触れるほど顔を近付け、僚はじっと男の瞳を覗き込んだ。 互いの顔が、その真っ黒な瞳に映し出される。 僚は瞬きを繰り返し、強烈な羞恥と強烈な快感に染まった己の姿を手で遮った。 両目を覆い隠され、男は一瞬驚き、そして微笑んだ。 笑みを象る唇に、僚は自分のそれを押し付けた。 わずかに息を乱しながら、男の頬や鼻先に繰り返し口付ける。 恥ずかしい要求のお返しとばかりに、鼻先を甘噛みする。 男はその間ずっと、小憎らしいほどに優しい微笑を浮かべていた。 「出すから…受け止め……」 震える声を絞り出し、僚はゆっくりと手を退けた。男は頷き、静かに瞼を持ち上げて僚を見つめた。 僚はわずかに俯くと、眉根を寄せ、下腹に力を込めた。 排泄と同じ行為を、それが許された限定された空間とは異なる場所で、しかも人目に晒しながら、行う。 今までも何度か、要求された事はある。だが、どんなに回数を重ねても慣れる事はない。なにせ、実際と違うとはいえ、内部にあるものを出すのだから行為に何ら変わりはない。 要求され、応える度、常に、もし本当に粗相をしてしまったらという恐怖にかられていた。 男はそれらすべて…僚が浮かべる表情や声、吐息のすべてを、愉しんでいた。恥じ入り、一旦は拒絶しながらも、最後には応える僚が、愛しくてたまらなかった。 どんなに行為を繰り返しても、彼の中から恥じらいが抜け落ちる事はなかった。 時に怯えた表情を浮かべながらも、解放の喜びを素直に求める姿に、強く惹き付けられる。 「っ……」 僚の口から低い呻きがもれる。男は静かに見守っていた。 硬いプラスチックの塊が、慎ましく閉じられた小さな口をこじ開けて外に押し出される。 「はっ……」 食いしばった歯の合間からため息を零し、僚は唇をぶるぶると震わせた。 「…くっ、う……」 男の手のひらに、一つ目がぽとりと落ちる。 「あと…二つ」 頬に触れた囁きに、僚は眦を真っ赤に染め上向いた。男の肩を掴んだ手に一層力がこもる。丸く滑らかな塊が、入口近くまでおりてくる。 「あっ……!」 二つ目が顔を覗かせようかという瞬間、僚は短い悲鳴を上げて動きを止めた。出掛かっていたものが再度内部に飲み込まれる。 深い呼吸を繰り返しながら、僚はゆっくりと俯いた 困惑の表情を浮かべわななく僚をしばし見守り、神取は静かに声をかけた。 僚はすぐに答えようとはせず、再び問い掛けてようやく口を開く。 答えを聞いて、神取はふっと頬を緩めた。 「構わないよ。我慢せずに、いきなさい」 わざとゆっくり耳元に口を近付け、囁きを流し込む。 鼓膜に響く心地好い低音に、僚はぶるぶると震えを放った。我にかえり、慌てて首を振る。 「いきたいのだろう? だったら、それを出しながらいくところを、私に見せてごらん」 顔から火が出る思いだった。出すだけでも恥ずかしいのに、それが逆に快感となり達してしまいそうなのだ。この身体はどこまで貪欲なのだろうと、僚は自らを恨めしく思った。 排泄と同様の行為をしながら達するなんて―― だが、そうやって自らを恥じ入りながらも、腹の底から這い上がってくる強烈な欲求は止められなかった。それにもう、度を越えた痴態を一度は晒しているのだ。 あの時の絶頂感を、また…… 欲しがっていた。 いきり立ち、硬く反り返った僚の熱塊がびくんと揺れる。 僚は再び、下腹に力を込めた。視線を落とし、男の手を見つめる。 「あ…あぁっ……」 今にも泣きそうに…悦楽に顔を歪め、細く長いため息と共に僚は二つ目の塊を手の上に押し出した。 内部のいいところを圧迫し、小さな口をこじ開けて抜け落ちる塊に甘い声で鳴きながら、僚は我も忘れて腰を揺すった。続けて三つ目が顔を覗かせる。少しずつ、姿を現す。 柔らかく熟れた後孔が、名残惜しそうに塊を押し出した。 「っ……!」 声にならない声を上げ、僚はしなやかに背を反らせた。 三つ目が抜け落ちると同時に、僚のそこから白液が溢れ出る。黒い性具の筒を抜けて、とろりと、淫らに。 束の間硬直し、直後僚はぐったりと男に身を預けた。 力を失い抱き付いてくる僚を受け止め、腰を引き寄せる。 内部を満たしていたものがなくなり、不満と安堵に緩む僚のそこに、神取は己のものをあてがった。間を置かず腰を突き出す。 「うぁっ……!」 不意の侵入に僚は驚きの声を上げた。 反射的に拒絶するそこをやや強引に押し開きながら、神取は僚の腰を更に引き寄せた。先端の最も太い部分が徐々に僚の中に飲み込まれていく。 「あ…あ――!」 深奥を目指し少しずつ迫上がってくる塊に、腰が抜けそうになる。息が乱れ、何も考えられなくなる。 僚は無我夢中で男にしがみついた。 宥めるように背中をさする男の手に、わずかに気持ちが和らぐ。 ようやく根元に達したところで、神取は一旦動きを止めた。僚の息遣いが落ち着くのを待つ。 力任せにしがみ付いていた僚の腕が一旦緩み、再び抱きしめられる。 神取は抱き返した。 そのまま、しばしの時が流れる。 内部におさまった男の熱塊が、不規則に脈動を繰り返す。その度に僚は身体を震わせた。次第に呼吸がしずまる。 頃合を見計らって、男は静かに口を開いた。 「僚……」 呼ぶ声に、僚はゆっくりと身体を起こした。 ためらいがちに男の目を覗き込む。 優しく穏やかな眼差しに、胸が高鳴る。 「出しながらいくのは、どんな気分だい?」 答えられなかった質問を再びぶつけられ、僚は耳まで真っ赤にして顔を伏せた。 顎に指をかけ、顔を上げさせると、神取はもう一度聞いた。 「や…やってみりゃ、わかるよ……」 ぷいと顔を背け、ぶっきらぼうに答える僚に神取は笑みを零した。 「僚の感想を聞きたいんだ」 無視しようと努めたが、まっすぐ見つめられては、かなわなかった。 僚はぎこちなく向き直り、おずおずと上げた両手で男の頬を包み込んだ。 近付いてくる唇を受け止め、神取はさらに深く口付けた。 舌を絡める合間に零れる甘いため息は、どちらのものだろうか。 ごくわずかだけ離れ、視線を絡ませる。 僚は目を伏せ、目を上げて、鷹久、と呼びかけた。 「おねがい…これも、取って……ちゃんといきたい…おねがい」 「いきたい?」 「……う、ん…鷹久ので……おもいきり、いきたい――!」 熱く訴えながら、自ら腰を擦り付けてくる僚に、目が眩む。 男は一度強く腰を突き込んだ。 「あぅ!」 「そんな顔をされたら、もっと苛めてしまいたくなるよ」 「や、やだ――!」 僚の制止も聞かず、神取は激しく抱いた。抱き合って膝にのせた僚の身体を思う存分揺すり立て、浅いところも深い箇所も全て貪る。 「だ、だめ…やぁ、やだ……たかひ…さ…あぁ!」 両手で肩にしがみ付き、僚は熱い声で鳴きながら何度も首を振った。 癖のある黒髪がはらはらと男の頬を打つ。その淡い刺激と、自分の肉で得る強烈な愉悦とが、男を更に興奮させる。 抱き付いてくる身体を少し押しやり、神取はその顔をじっくりと眺めた。 今にも泣きそうに顔を歪め、それでいてどこかうっとりと酔っている僚の唇を塞ぎ、舌に噛み付く。 「んむ…んっ……た、たかひさ……もっ……いく、いきたい……」 「出せるのだから、遠慮することはない。思い切り出すといい」 「だ…て…あ、あ、あ……あぅ!」 「ほら、手伝ってあげるから」 「やだ、さわるな……やぁ!」 激しく首を打ち振る僚を無視して、熱茎を緩く握り込む。びくびくと手の中でわななくそれを、男は解放に向けて扱いた。 ひと際高い嬌声を迸らせ、僚は身を強張らせた。先端から、またいくらか白濁がたらりと滴る。 「どうし……もうとって……」 「……さっき、名前を呼んでくれなかったろう」 「あ、う……」 「とても寂しかったよ……遠くて」 「ごめん…ごめんね、たかひさ……たかひさ――」 ふらふらと両手を持ち上げ、僚は男の頬に触れた。相手に確かめるように、自分に言い聞かせるように、繰り返し名を呼ぶ。 頬に沁みる熱と、鼓膜を震わせる少年の声とにしばし酔い、男は目を閉じた。 「ゆるして、ごめん……」 「だから…そのお仕置きだよ」 「……たかひさ」 打ちひしがれているのに、どこか甘さを含んだ悲痛な声が、男を狂わせる。 「もっといって構わないよ、ほら……」 達したばかりで敏感になっている僚のそれを、尚も扱いて責め立てる。 「ゆるして、もぉ…やだ、おねがい……取って、とって……たかひさ!」 「いい声だ……もっと聞かせて。ほら、君の好きなところを責めてあげるから」 「やだっ……奥やだ……あぁ、あああああ――!」 「よく締まるよ……もっとだ、僚……」 泣き濡れ暴れる身体をきつく抱きしめ、今度は己の欲望を果たそうと腰を使う。 「だめぇ……あぁ――……」 啜り泣く僚に己が止められない。神取はより深くまで飲み込ませ、掠れた嬌声を聞きながら最奥に吐き出した。 熱いものが内部に広がる感触に僚の身体がびくびくとおこりのようにわななく。 ふと見れば彼のそこは、怒りを訴えるかのように不規則に揺れ、震えていた。 「とって……たかひさ」 「……良い顔だよ、とても」 笑って頬に手を差し伸べると、恥ずかしさからか僚はすぐに顔を背けた。慌てて頬に零れた涙を手の甲で拭う。その様子がたまらなく愛しくて、男は顔を寄せた。眦に残った涙をそっと吸う。 僚は目を閉じ、気持ち良さそうに喉を鳴らした。 たったそれだけで、男は再び熱が舞い戻ってくるのを感じた。 「んっ……」 己の中で膨らみ始めた男の熱に、僚が低い呻きをもらす。 嗚呼、もう、何もわからなくなるまで彼を抱きたい。 「動かないで」 そう言い付ける自分の方こそ、手が震えていた。 神取は苦笑いを零し、長く彼を苦しめていた最後の性具を抜き取る。静かに引き抜き、ベッドの脇に落とす。後で探せばいい。 もう、我慢出来ない。 唇に吸い付き、激しく舌を絡めながら彼を抱く。 「はぁっ…あ……」 とろけそうに甘い口付けに酔い痴れる僚をベッドに横たえ両足を腕に抱えると、神取は望み通り抽送を始めた。 「あぁ…くぅ……んっ……」 苦しいほどに心地好い突き上げに、甘い嬌声で応える。 「たか…ひさ……」 その唇を塞ぎ、目が合う度飽きる事無く口付ける。 「!…」 わずかもしないうちに、僚は絶頂を迎えた。ようやく、思う存分。しかし、それだけではまだ満足出来なかった。自ら足を絡め、男を誘う。 扇情的な僚の眼差しに見つめられては、断る事など出来ない。今度は這わせて後ろから、獣のように圧し掛かる。もっと、お願い…そうねだる僚を存分に追い上げる。 音を立てて腰を打ち付け、最奥まで飲み込ませる。高い悲鳴とよがり声が絶え間なく僚の唇から零れ、男を更に昂らせた。 「もうだめ、たかひさ――あぁっ……!」 甘い鳴き声を上げ、僚は白液を飛び散らせた。 手足を崩し、うずくまる僚の背に覆いかぶさり、男は耳の縁を舐めた。同時に、萎えてうなだれた僚のそれをゆるゆると刺激する。 「あ、やっ……」 「もう少し…いいかい……?」 間近に寄った顔に頬をすり寄せ、僚は小さく頷いた。 立て続けに射精を強制され、苦しさに胸を喘がせながらも、男の与える強烈な快感に声を上げてよがり、僚は全てを受け止めようとした。 解放の悦びに、二人の意識が快楽の波に飲み込まれる。 |