テーブルクロス

ごちそうさまでした

 

 

 

 

 

 とある平日の夕飯時、家族揃っての晩御飯。
 明日の準備を済ませた僕は、階下からの母の呼びかけ…テレパシーによるそれに今行くと応じ、一階に向かった。

 テーブルにはすでに父と母がついていた。
 綺麗にきちっとクロスのかけられたテーブルには、今日の夕餉が並びほかほかと湯気を上げている。
「昨日はお留守番、ありがとねくーちゃん」
 鳥束君とご飯、楽しかった?
 屈託のない笑顔で尋ねる母に、僕は小さく頷く。

 何を食べたの?
 あらそれ、くーちゃんの好物ね、ふふ
 鳥束君、お料理得意なのね
 良かったわね、優しいお友達で
 お寺さんの息子さんだっけ、偉いよなあ
 礼儀の正しさもそうだし、楠雄も見習え……ひっ、に、睨むなよ楠雄……うん、お前もまあ、礼儀正しい…よ、うん
 あー……か、母さん、今日のシチュー、これもう最っ高に美味しいよ、さすが母さんだね、な、楠雄

 ああ、そこは同意する。心から。
 二人こそ、昨日は盛り上がったようだな、いつものごとく新婚顔負けに。

 昨日は、両親の何回目かのデート記念日で、二人は嬉々として外食に出かけた。
 それに乗じて、息子は男を引っ張り込み、親に言える二人での夕食と、親に言えぬあれやこれやを楽しんだ。
 両親は、自分が鳥束と特別仲良しなのをもう知っているが、さて、その先は……?
 まだ、言えない。
 昨日の事は特に言えない。

「いただきます」
 家族揃っての晩御飯が始まる。
 母は僕や父さんの反応に一喜一憂し、父さんはそんな母さんを最上級の言葉で褒め称え、料理に感激し、どちらもとても賑やかだ。

 先週から冬の装いに変わったテーブルを見つめ、僕は喉を詰まらせた。
 昨夜、ここで僕は鳥束と――。
 両親が泊まりで出かけるので一緒に夕飯をと、僕から誘った。
 夕飯の後、別の誘いも、自分から仕掛けた。
 何となく気が乗ったのだ。
 奴の作った僕好みの料理が、そう、口に合って、幸せに感じたからだ。
 だからテーブルに乗っかり、素っ裸で仰向けになって、でも際どいところは曲げた脚で上手く隠して、鳥束を挑発した。
 鳥束は目に欲望をぎらつかせて僕に圧し掛かってきた。
 身体中余すところなく、前面も背面も、頭のてっぺんからつま先まで手や舌を這わせ、僕を夢中で味わってきた。
 僕も同じく、奴の寄越す快楽に恍惚となって、後ろの孔を疼かせながら味わった。

「くーちゃん、おかわり、いる?」
 僕は静かに頷き、母さんにシチュー皿を手渡した。
 奴とも、何回もおかわりしたな。
 三回目の後僕が上になって、またいただきますをした。
「はいどうぞ」
 シチューを受け取り、手を合わせ、目の前のおかずと交互に口に運ぶ。

 更に気分が乗ったので、いつもは手でしてばかりの奴のものも、口に含んだ。
 その時点でもう数回の放出をこなしていたが、僕に食べられるとたちまち元気になった。
 奴はますます興奮し、以前見た動画を思い浮かべながら、愚かな質問をしてきた。
 その時も即座に言ってやったが、疲れるわ不味いわ、美味い訳ないだろうが。
「くーちゃん、今日のシチューそんなに美味しい?」
 母さんの問いには、素直に頷く。
 僕ら家族の為に腕によりをかけて作られたものだ、丁寧さと愛情とが感じられ、とても美味しい。
 奴のは美味くない。
 でも、僕にどれだけ興奮しているかがよくわかる見た目、巡る血の気に、舌で感じるのとは別の味わいが脳天をとろけさせたのは、間違いない。
 だから僕は、美味くないと答えながらも、奴がより感じる部分を熱心に徹底して責めた。
 超能力者だからわかる、どこをどうされるのが一番気持ち良いか全部わかるから、いかせるのは容易い。
 全部飲んでやると、奴は目玉が零れ落ちそうなほどに見開いて、喜んだ。
 だからだろう、出しても尚奴のものは硬いままだった。
 おかわりが欲しくて、僕は喉を鳴らした。

「あら、またおかわり? 嬉しいわあ」
 母は胸の前で手を合わせ、軽やかな足取りでキッチンに向かった。
 僕も嬉しい。母はいつも優しく、作る料理は天下一品だ。この味で育ったのだから、当然と言えば当然だが。
 奴の味はまるで違うけれど、同じくらい僕を虜にした。
 味わうと、何とも言えずホッとするのだ。
 奴の作る料理も、奴のブツも。
 だから、もういい加減股関節が怠くなってきていたが、食べずにいられなかった。
 何回もおかわりをしてたっぷり注がれていたが、まだまだ欲しい。
 僕は欲望に逆らわず、テーブルに寝転がった奴に跨り、奥まで一気に頬張った。
 奴の硬く漲ったもので中を蹂躙され、僕は忘我の境地を味わった。
 提供する奴の方も、度重なるおかわりで疲れ気味になっていたが、僕のとろけた顔を見るや力を振り絞り僕を悦ばせた。

「くーちゃんが食べてくれたお陰で、見て、すっかり空になったわ」
 そう言って母さんは嬉しそうに、空っぽになった鍋を見せてきた。
 やはり作り手としては、全部食べてもらえるのは至上の喜びなのだろう。
 奴もそういえば、そんな顔をしていたな。
 僕が奴の弁当を残さず食べた時、出された器を空にした時、最後の一滴まで搾り取った時…僕を、徹底的に食べ尽くした時。
 お互い、息も絶え絶えに疲弊しきって、思考も千々に乱れるほどやり尽くして、気を失いそうだというのに、顔には極上の笑みが浮かんでいたっけ。
 そして、奴の思考を読むに、僕も似たような顔をしていると、奴は語っていたっけ。
 確かに、腹が一杯になるほどたらふく食べた。
 疲れ切って何も考えられないほどになっていたが、嬉しさが身体中に満ちていたのは事実だ。
 くっついて抱き合って、それを実感する。
 最高に幸せな、食事の時間。

『ごちそうさまでした』
 僕は手を合わせ、静かに頭を下げた。

 

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