とろけるくらい愛してる
おやすみなさいの時間だよ。
鳥束君があんまり可愛い反応するもんだからちょっと調子乗っちゃったけど、斉木さんはものすげえ鳥束君LOVEです。

鳥束が中々寝なくてうざい、自分の安眠の為に寝かし付けてやるか、たまにはサービスな、て骨組みに肉付けしたら微妙になった。
けど本当の本当に、斉木さんは鳥束君LOVEなんですわかって下さい。

寝かし付け

 

 

 

 

 

 夕飯後の片付けが終わる頃、オレの舌からようやくとろける甘さが抜けた。
 なくなればなくなったで少し寂しい気がした。
 硬く布巾を絞っていると、斉木さんから、風呂は先にするか後にするか聞かれた。
「一緒に入るってのはないんスか?」
『出る頃、お前が五体満足かどうかの保証はないが、それでもいいならな』
 却下されるのを前提に言ったのだが、断るにしてももうちょっと穏便な言い回しがあるでしょうに、斉木さん……。
 オレは滲む涙を堪え、後に頂きますと答えた。
 というのも、斉木さんの入浴中に、キッチンを綺麗にしておきたいからだ。
 斉木さんママさんの城でもあるキッチン、いつも綺麗に保っているのがわかるから、出来るだけ元の状態に戻したいのだ。
 それから日々の習慣もある。どうもこういった事はやらないと気が済まない性分なのだ。
 そういった事を説明すると、斉木さんは何とも言い表しがたい顔になった。
『そうか、うん……本当に残念な奴だな、お前は』
「ええっ、何スか斉木さん。オレの何が残念なんスか」
『なんでもない。じゃあ後でな』
「……はい、いってらっしゃい」
 斉木さんの言いたい事、なんとなくわかるっスよ。
 風呂場に向かう斉木さんを見送り、オレは腕まくりをした。

 

 斉木さんと入れ替わりに風呂に入り、頭のてっぺんからつま先まで綺麗にしたオレは、ほかほかいい気分で軽快に階段を駆け上った。
 礼を言いながらドアを開けて、目に飛び込んだ光景に、オレは少なからず驚いた。
 なんと斉木さんがもうベッドに横になり、すっかり寝る体制に入っていたからだ。
 あっちの寝るじゃなく、就寝の寝るの方。
「ちょっとちょっと斉木さん、夜はこれからじゃないスか」
 オレは傍まで行って顔を覗き込んだ。
 一緒にくっついてテレビ見て、眠くなるまでいちゃいちゃするぞって楽しみに階段上ってきたのに。
『知るか。お前の布団はそっちな。じゃお休み』
「まってまって斉木さん待ってぇ」
 ごろりと壁の方に向く斉木さんに慌てて取り縋る。
 肩を揺すると、渋々といった感じで斉木さんは仰向けになってくれた。
「……ほんとに寝ちゃうんスか?」
『本当に眠いんだよ』
 確かに、こっちを見る斉木さんの両目はとろんとして今にも瞼がくっつきそうだ。
「じゃあじゃあ、オレ寝かし付けしてあげます」
『……はぁ?』
 添い寝して、斉木さんが寝るまで見守ってあげます。
『おいこら、勝手に入ってくるな。お前の布団はそっちだと言っただろ』
 斉木さんはぞんざいに床を指差した。
 床に、きちんと敷かれた一組の布団がある。
 ありがとうございます斉木さん、せっかく敷いてもらったのに申し訳ないですが、多分こちら使わないっス。
 という事で、オレはベッドに身体を潜り込ませた。あったかい、布団の中は斉木さんのぬくもりで一杯だ。
「まあそう遠慮せずに…て斉木さん、わりとマジで痛いんで蹴らないで、ねえ斉木さんてば」
 眠いって言う割には、ずしずし重いキックだな。
 出ていけとかかとキックを何度も当てられ、骨まで響く打撃にオレは段々涙目になっていった。
『遠慮じゃない本当にいらないんだよ。大体、お前の汁まみれの妄想聞きながら寝ろとか、なんの拷問だ馬鹿野郎』
「そんな嫌わないで……あ、ちょ! 顔面ダメ顔面ダメ!」
 蹴りでは埒が明かないと思ったのか、斉木さんは得意の顔面はぎを仕掛けてきた。
 オレは慌てて斉木さんの手首を掴んだ。
 ぐぐぐと指がめり込むがしかし、いつもほどの力強さはなかった。手のひらも熱っぽく、本当に眠いだのとわかる。
 謝って謝ってどうにか引きはがし、オレは提案した。
「ごめんなさいわかりました、じゃあ、明日の朝ご飯の話しましょう」
 それなら雑念も邪念も混じらないだろう。
「明日は、ええと、パンですよね」
 水を向けるが、斉木さんから返事はない。構わずオレは続けた。
 明日はオレがピザトースト、斉木さんは焼くだけ、それにスープとサラダとコーヒーゼリー。
『そうだな。じゃあお休み』
「ああもう、寂しいです斉木さん」
 オレは横向きになって腕を回した。ついでに片足もかけた。
 けれど斉木さんはしんとしたもので、呼吸一つ乱れない。
 これ以上は本当に安眠妨害、オレも目を閉じ、眠る事にした。
 けれど、斉木さんと同じ布団で寝るってのは思った以上にオレを興奮させた。
 寝なきゃ寝なきゃ、邪魔しちゃ駄目、静かに眠ろう。
 そう思えば思うほど、股間が騒がしくなっていった。
「……すんません」
 斉木さんが何か云ってくる気配がした。それより先にオレは謝る。
 もうほんと、すんません斉木さん。
 ちょっとトイレ行ってきます。
 オレは転がるようにしてベッドから出た。
 出ようとした。
 その肩を、斉木さんの手が掴んで引き止めた。

 

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