とろけるくらい愛してる
夕飯前と後の二人。

とろけるくらい愛してる

 

 

 

 

 

 斉木さんちに学校帰りに寄ったり休日に遊びに行ったり、結構な回数訪問してるけど、
 行ってもいい?
 うんいいよー、
 なんてすんなり事が運ぶのは中々稀で、邪魔されずに本を読みたいから駄目、一人で映画を見たいから断ると、素っ気なく遮断されるのが基本形、時には理由も言わず目も合わせずにささーっと消えてしまう事もあった。
 とはいえ毎度毎度、全部が全部断られているわけではなく、本や映画は後でも楽しめるからいいと受け入れてもらえる事もある。
 っち、またゴミ虫が来るのかよなんて顔をされる時もあるけど、オレはめげる事なく学校帰りに寄り道に誘ったり斉木さんちにお邪魔したりしてる。
 いつもこうしてオレからで、斉木さんから誘われるって滅多になくて、すぐ数え終わるほどだった。
 中々懐に入らせてもらえないのだ。
 知り合って、近付いて、学校で相談乗ってもらったり助けてもらったり、身体のあれやこれやあったり、色々してはいるけど、今一歩斉木さんに近付けないでいた。
 近付けた気がしないでいた。
 見えない奇妙な壁に阻まれてるような、すぐそこにいるのに遠いなと感じる事があった。
 その距離感はたとえばあの人の超能力の事であったり、たとえば過去であったり、色々だろう。

 

 考える事は多いし難しいが、それでも少しずつわかるようになって、近付けるようになってきた。
 まだまだわからない事もあるし、間違う事もある。
 でも、何か誤ってもこれまで縮んだ距離が離れるって事はなかった。
 こっちがこうやってああでもないこうでもないと試行錯誤するのと同じく、あの人もそうしていたからだ。
 最近になってようやくわかった。
 まったく、本当にわかりづらい人だ。
 無敵で、最強で、何でも見通すめちゃくちゃ怖い超能力者。
 オレには全く遠慮がなくて辛辣でずばずば切り付けられる事も多いけど、あの人なりに不器用に、オレに近付こうとしているのがわかるから、オレは離れられない。

 

 そんな斉木さんから珍しくお誘いがあった。
 しかも泊まりで。
 オレは大喜びで飛び上がりそうになって、はたと我に返った。
 あの斉木さんが誘うなんて何か裏があるに違いない。つい構えてしまった。
 そういう目で見てるのかと低い声で言われ、オレはしどろもどろになって言い訳した。
 どうにか機嫌を直してもらい是非ぜひ行きますと張り切って答えると、両親が泊まりがけで出掛けるのでその間の炊事係が欲しかったのだと、とってもいい顔で肩を叩かれた。
 なんスか…オレが想像したのとそう遠くないじゃないですか。
 どーせね、何かしらこき使われるんだと思ってたんです、その通りだった。
 でもオレはそれでも充分だ。
 ひと晩共に過ごす…斉木さんちにご飯作りに行く、夜も朝も一緒にいられる一緒に朝を迎えらえるとか、最高じゃないか。
 最高だよ斉木さん!
 また、近付けたかな。

 

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