晴れる日もある

 

 

 

 

 

 朔也ははっとなって目を覚まし、自分が今どこにいるのか必死なって暗闇に目を凝らした。
 徐々にまわりの物が見えるようになる。
 時計の位置で、ここが自分の部屋だという事を確認する。

 そうか。あの後、気を失って……

 キッチンで男に抱かれた。記憶はそこまでしかない。
 いつベッドに入ったのか思い出そうとした時、隣に誰か横たわっているのに気付いた。
 ぎょっとなって横を見やる。
 隣には、静かな寝息を立てて男が眠っている。

「!…」

 息が詰まりそうになった。

「……鷹久」

 口の中でひっそりと、名前を呼ぶ。
 起こしてしまわないよう、小さな声で。

 まさか、いるとは思いもしなかった。
 いや、一度だって、声をかけずに帰ってしまったことはない。
 他人の事など滅多に気にかけたことのない自分でさえ心配してしまうほど、男はこんな自分の為に時間を割いていた。

 こんな、頭のいかれた汚い子供の為に

 胸が苦しくなる。
 目の奥から、今にも涙が溢れそうに。

 自分の中に寂しいという感情を植え付けたのはこの男

 ずっと傍にいて欲しいと思わせたのはこの男

 帰らないでほしい

 ずっと傍にいてほしい

 それが出来ないなら、もう二度と来ないでほしい

 でも――もう大丈夫

 少しずつ、変わり始めている

 いない日も、この中に感じる事がきっとできる

 何度悪夢に苦しめられても

 感じる事がきっとできる


 手は、とてもあたたかかった――

 

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