Dominance&Submission
早く来い来い
「次に会うのは、来年か――」 渋々帰り支度を進める中、それまで寂しい恋しいとずっと思っていたら、知らず知らず口に出てしまった。 言ってから一秒のち、僚ははっと口を噤んでちらりと男をうかがった。いつも男はよく見ているから、自分の気持ちなど全てお見通しだ。口にせずとも伝わるのを悔しがったり嬉しがったりするのはまんざらでもないが、口に出したものをどうこうされるのはたまらなく恥ずかしい。 一気に頭が熱くなる。 「そうだね。いつもの、一週間より早いがね」 腹の底もぐらぐらして嫌な汗がにじむようだが、それより男の表情に目が引き寄せられ、どこか楽しそうな顔付きに、恥ずかしさから腹立ちへと気持ちが飛び移る。 なんだ、今日の終わりを惜しんでいるのは自分だけか、なんで男はあんなに楽しそうにしているんだ。していられるんだ。 頭の熱さは怒りのそれへと変動する。 問い詰める僚の強い眼差しで感情を読み取った神取は、宥める意味で軽く両手を上げた。 「年賀状をね、出したから、届く日が楽しみでね」 ああと納得すると同時に、上昇したものがすとんと落ちる。 移り変わりについていけず一秒、たっぷり一秒僚は沈黙した。それから、あらためて嬉しさが込み上げるのを感じた。 「俺も出したよ」 そうだ、その楽しみがあった。まずは文字に乗せた心での挨拶があったのをすっかり忘れていたと、僚は急上昇する気持ちに振り回されながら返答した。 「そりゃますます楽しみだ」 にっこりと笑う男と同じ位置で喜んで、僚は頬を緩めた。 素直な気持ちを述べる。 「俺も楽しみ。待ち遠しいな」 「そうだね、歌の通りだ」 傍に歩み寄り、腰を抱き寄せる男にもたれかって、僚は顔を上げた。 本当に。 早くこいこい――。 |