Dominance&Submission

禁断症状

 

 

 

 

 

 散々に責め抜かれ、くたくたのへとへとになった僚は、男の手助けでどうにか事後のシャワーを浴びると、よろよろとソファーに向かい腰を下ろした。
 温かい飲み物を貰い、身体に染みる甘さにぼんやり浸る。隣では男が同じようにホットココアを啜っていた。僚はひと口ずつ味わいながら、見るとはなしに男の顔を眺める。
 いつもの男の顔。澄まして、少し冷たそうで、とてもそんな事しそうにない顔しながらその実、子供じみた悪戯が好きで、物知りで、憎たらしくていい男。
 目が合うと、必ず微笑むのだ。
 今もそう。ほんのり色付くように柔らかな表情になった男に、僚も同じように頬を緩めた。
 人に言えない遊びに耽る時、男の目はより一層輝きを増し、自分だけを映して鮮烈に煌く。ぎらぎらと欲望を滾らせて求められ、僚は深い官能を味わう。他では絶対に得られない充足感がそこにはあった。
 薬が切れて、禁断症状に陥った自分を、唯一癒してくれるもの。
 そしてまた、甘い毒のように自分を酔わせてもくれる。
 自分にとって男は薬で、毒でもあって、男にとっても自分はそれらである。抱き合っている時により強く思うが、こうしてぼんやり過ごしている時もまた、思い知らされる。
 この男がいないと駄目だと、しみじみと思うのだ。
 カップの中身が半分に減るまで啜ったところで、僚は一度大きく息を吐いた。ようやく疲れが抜けてきた。頭の中は妙な高揚感があってすっきりしていて何も問題は無いのだが、身体の疲れは別だ。空腹に似た脱力感に見舞われ、痒い鼻先をかくのも億劫になる。それが、ようやく解消された。

「美味しい」

 ため息交じりにそう伝えると、男は嬉しそうに目を細めた。

 

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