Dominance&Submission
月が昇るまで
リビングのソファーに身を沈め、僚は半分眠ったようにとろとろと過ごしていた。 隣には男が座り、自分をもたれさせるように腕を回して抱きしめている。自分は腕の重みや抱きしめられる心地良さにうっとりしているが、男の方は少し無理な体勢じゃないかと、僚は半分眠りながらぼんやり心配する。 「大丈夫?」 「何が、かね?」 「腕、痺れない?」 「ああ、大丈夫だ」 そうか、男が言うなら心配ないと、僚は安心してもたれた。 でもやっぱり心配がぶり返し、僚は再び口を開いた。 「まだ平気?」 「ああ、平気だ」 ゆったりした受け答えだが、何故だか強がりにも聞こえ、僚はふふと笑った。 「鷹久、寂しがりやだもんな」 「おや、見破られたか」 「ああ、まあね」 ぼんやり眠りながら、僚はくすくす笑う。男も笑って、伝わってくる身体の揺れが気持ちいい。 「一番は君だがね」 「えっ、俺は違うよ。鷹久にはかなわないし」 「いやいや、一番は君に譲るよ」 「なんのなんの、鷹久には遠く及びません」 「そうか……では、腕をほどこうか」 「うん……そうだね」 僚は一瞬後悔したが、出した言葉は戻せない、強気に言い返す。 「では、月が出る頃になったら、腕をほどこう」 「……へ」 男の返事がすぐには理解出来ず、頭の中で反芻し、窓の外を見て、ようやく言葉が口に上る。 「つまり、夜までか」 「そう、月が出るまで」 私は寂しがりやだから、と続ける男に、悔しいやら嬉しいやら、僚は入り混じった感情に顔をしかめた。 「……それも悪くないな」 「悪くないだろう」 「うん、じゃあ月が出るまでな」 「ああ、月が出るまで、こうしていよう」 抱きしめる男の腕が力を増す。抱き寄せられ、僚は素直に身を任せた。悔しいやら恥ずかしいやら入り乱れていた感情は解けていって、最後に嬉しさが残った。 |