Dominance&Submission

予約受け付けました

 

 

 

 

 

 地下の駐車場を出てすぐの信号で赤信号につかまり、神取は停止した。助手席に目を向けると、半分眠っているような僚がそこにいた。今にも閉じそうにとろんとした目で、正面をぼんやり見つめている。

「済まなかったね」
「え……だいじょぶだよ。だって、すごく…」

 途切れた言葉の続きを待つが、喋るのも億劫なほど疲れているのか、後は静かな呼吸が続くだけだった。
 しかし悪い言葉でないのは、ほんのりと緩む口元からうかがえた。

「済まなかったね」

 もう一度詫びて頬に手を伸べ、そっとさする。僚の笑みが増し、神取は幸せを感じた。
 青信号に替わり走り出してすぐに、隣から深呼吸が聞こえてきた。その安心しきった息遣いが無性に嬉しくて、神取は半ば無意識に笑みを浮かべた。
 深呼吸の後、声が聞こえてきた。
 今度はいつ、美味い肉をご馳走になろうかな

「ああ、とびきりの料理をご馳走するよ」
「そしたら、また、おかわりする?」

 シートにもたれたままごろんと首を曲げ、僚は聞いてきた。視界の端に見えるのは寝惚けたような眼差しだが、じりじりと燃えるような熱視線に炙られているようで、神取は息も止まる瞬間を味わう。

「……ああ、もちろん」
「よし…ふふ、予約受け付けました」

 ふわふわと笑う僚に、神取は参ったと微笑んだ。

 

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