Dominance&Submission

次は何を作ろうか

 

 

 

 

 

 金曜日のいつもの約束をして、さくらんぼジャムの土産を持った男を見送った後、僚はシャワーで身を清め、部屋に戻った。
 ベッドに座り、何かテレビでも見ようかと思うが、あまり気分が乗らない。今は静かに過ごす方が好ましい。
 しんとした部屋でぼんやり過ごしていると、五時を告げる鐘が遠く聞こえた。
 首を机の方に向け、自然と視界に入るカレンダーに目を凝らす。ついさっき、男と一緒にこれを見て、次は金曜日に会おうと約束した時の男の声が、脳裏にくっきり蘇る。
 僚の唇にほのかな笑みが浮かぶ。
 金曜日まで、男は何回あの瓶を開けて味わってくれるかな。どんな風に、味わうのかな。終わり際、またかちゃかちゃとスプーンを鳴らして、あの顔をするのかな。
 毎日色々な味わいで楽しんだジャムがとうとう尽きてしまい、男は小さく肩を落として別れを惜しんだ。その瞬間、胸にぎゅっと迫った感情が思い出され、僚は同じように胸が詰まるのを感じた。
 だから、次は何を作って男を楽しませようかと、頭を悩ます。
 どんなものでも、君が作ってくれたものは最高に美味しいと、手放しで絶賛してくれる男の為に、より腕を振るおうではないか。
 嬉しい悩みを頭に巡らせながら、僚はキッチンに向かった。夕飯の支度をしている内に浮かんでくるだろう。男にメールを打つのも手だ。
 これから旬のフルーツを思い浮かべ、どれで男を喜ばせようかと企みながら、僚は支度に取り掛かった。

 

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