Dominance&Submission

いい勝負

 

 

 

 

 

 洗面台の前に僚を座らせ、神取はドライヤーを用意した。鏡越しに見える顔は風呂上がりにふさわしく赤くほてって、ぴかぴかと輝くようであった。もうそこまで眠気が来ているのか、今にも瞼が閉じそうにとろんとしている。時間をかけてはかわいそうだと、手早く髪を乾かす。
 風呂の中では、身体を洗うと称してたっぷりの泡を手に背中やわき腹をくすぐってくる余裕があったが、上がる頃には口数も少なくなり、今は、夢とのはざまにいるようだ。

「さあ、乾いたよ」
「ありがと」

 洗い立ての髪を撫でると、くすぐったくなるような声が聞こえてきた。何とも可愛らしくて、自然と頬が緩む。神取は腕に抱き上げると、ベッドまで運んだ。
 歩けると僚は不満を口にしたが、神取は微笑で受け流した。
 ベッドに寝かされ、僚は小さくため息をもらした。柔らかであたたかい敷布と、肌触りの良い毛布に包まれ、もう目を開けていられない。
 しかし、まだ隣に男が来ない。これでは眠れない。
 神取は傍に立ち、頭を撫でた。

「寝る前の戸締りをしてくるよ。寒くはないか」
「……寒い。早く戻って」

 声のする方に顔を向け、僚は目を閉じたまま言った。
 素直に甘える声に、神取は小さく息を飲んだ。いつもの、冗談交じりのそれとは違う響きに、自分でもおかしくなるほど胸が高鳴った。
 速やかに戸締り確認を済ませ、寝室に戻る。
 そっと覗き込むと、僚はすでに夢の中にいるようだった。起こしてしまわぬよう隣に横たわる。
 すると目を閉じたまま、僚は腕にしがみ付いてきた。半分眠っている身体は熱く、また胸がどきり弾む。

「………」

 嗚呼彼にはかなわない。
 それがたまらなく嬉しくて、神取は目を閉じた。

 

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