Dominance&Submission

溢れて仕方ない

 

 

 

 

 

 僚はベッドに仰向けに横たわり、ぼんやり天井を見つめていた。完全に寝入るのではなくうたた寝の最中のように、途切れ途切れではあるが意識がある状態であった。ただ、いつこうして寝転がったのか記憶があやふやで、今は何時だろうかと時計の方を向こうとした。そこで傍に人がいる事に気付き、ぎょっとする。その一瞬で、完全に目が覚めた。

「っ……鷹久」

 叫びそうになるのを慌てて飲み込み、僚は起き上がった。
 ベッドに寄り掛かって座り、目を閉じていた神取は、起きた僚に具合はどうかと笑いかけた。

「平気、うん……平気だよ。俺、どんだけ寝ちゃってたかな」

 実際は急に身体を起こしたせいで少々目がくらんだが、それだけで、だるさや憂鬱さといったものは一切なかった。目のくらみもすぐに消え去った。

「大丈夫、時計はあそこだね。ほんの五分ほどだ」

 だから心配する事はないと神取は頬を撫でた。僚は机の時計に気まずそうに唇を動かし、謝った。

「でも、ごめん……」
「いや、こちらが少々無理をさせたのがいけない。私こそ済まない」
「……ほんとだよ」

 僚は乗っかり、口端を曲げるようにして笑った。頬に触れる男の手を握り、軽く口付ける。散々好き勝手して泣かせた指だが、愛しくてたまらない。

「……服、ありがとう」

 いつの間にか元通りになっている部屋着に礼を言う。下部に不快感がないのは、男が綺麗に拭ってくれたからだろう。足をつけて立ってみると腰がいくらか軋むようであったが、この程度であれば一晩眠れば治るものだ。どこか心配そうに見上げてくる男に、何ともないと僚は笑んで肩を叩いた。

「まだいいなら、お茶のおかわり用意するよ」

 自分も喉が渇いたからと、男を引き留める言い訳をひねり出す。

「助かる、お願いするよ」

 差し出されたカップを受け取り、僚はすぐにとキッチンに向かった。
 二杯目を啜りながら、二人は向かい合って茶菓子を齧り、秋の夜のゆったりした時間を過ごした。

 

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