Dominance&Submission

夜を貪る

 

 

 

 

 

 瓶に触れると、もう冷蔵庫にしまっていいくらいに冷めていた。二つの瓶を並べて冷蔵庫に収め、男に約束のものが出来上がったとメールを送る。
 例のブツが完成した、などとふざけた後で、僚ははっと時計を見た。まだ、仕事中だったかもしれないと心配が過ぎったからだ。男は、ちょっとやそっとのおふざけではびくともしない。いつもそれ以上のひねりを加えて返してくれる。だからつい、甘えてしまう。
 しくじっただろうかともやもや考えていると、明日、何時、取りに行くといった返信が来た。まさに取引メールであった。

「……え」

 驚きのあまり僚は声を上げた。会える嬉しさよりも驚きが勝る。携帯電話を握りしめ、部屋のあちこちを見回す。机の上、テーブル周り、ベッド、少し行ってキッチンも確かめる。なにせ、厳しい指導係が明日やってくるのだ、一分の隙も無く整えねば。
 隅々を確認していると今度は電話がかかってきた。男からであった。
 メールの返信についてならば、もちろんオッケーだ。
 つい弾みがちになる声をなんとか抑え、僚は明日の約束を取り付けた。
 通信を切った後、冷蔵庫に目を向ける。中に入っている瓶を見ずに見る。本当は一日だって早く渡したいと思っていたのだ。まるで気持ちが通じたかのように思え、長い事顔から緩んだ笑みが取れなかった。

 

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