Dominance&Submission
足音
帰り支度を整え、僚は一旦ソファーに座った。隣に腰かけた男と、来週の予定を確認する為だ。来週は試験期間なので泊まりは無理だが、チェロの練習は欠かしたくないと僚は言った。 「欲張りだけど……」 「欲張りなのは良い事だ。出来る限り協力しよう。では、金曜日はいつものように君を迎えに行き、食事の後にチェロの練習と、それでいいかね」 お願いしますと声を張る僚に、こちらこそと神取は応えた。 「では送ろう」 「うん」 頷き、僚は立ち上がった。ごく自然に男の手が肩にかかる。あの時のように心臓が跳ねるまではいかないが、身体がほんのり熱くなって、それが嬉しかった。左手で肩の手を掴む。 「来週はもっと泣かせてみせるからな」 「それは楽しみだ」 期待していると、神取は微笑みかけた。眼に負けん気を光らせる僚に、嬉しげに頬を緩める。 「では私は、試験の結果が良いように祈ろう」 「うん……頭が冴えるように祈って」 「君は、いつも冴えているよ」 大丈夫だと、神取は肩を叩く。僚ははにかんで応え、玄関に向かった。 きびきびとした足取り、静かな足音について、神取は歩を進めた。 次にあの足音が部屋に溢れるのは来週だ。少し寂しいが、それまで、祈って待つとしよう。 |