Dominance&Submission
そっちこそ
風呂上がり、僚はソファーに膝を抱えて座り、差し出されたホットミルクのカップを受け取り礼を言った。 隣に腰かけ、自分よりいくらかハチミツの少ないホットミルクを啜る男に笑いかけ、カップを口に運ぶ。 音量を絞ってつけたテレビは、丁度ニュースの時間だった。本日の主な出来事を淡々と伝える様をしばし眺めた後、僚は元のように男に顔を戻した。 「すごく美味しい」 「それは良かった」 神取は片手を伸ばし、僚の頬を撫でた。 「なんだよ」 「手触りが良いから、つい触りたくなって」 気分を害したらすまんと真面目な顔で謝られ、ちょっとの軽口のつもりだった僚は、詫びの代わりに同じように男の頬を撫で、そっちこそ手触り良いと称賛した。 いや、君の方が、いやいや鷹久の方が、二人は笑顔で相手を褒めながら、互いに頬をぎゅうぎゅう撫でて戯れ、声を上げて笑い合う。 ひとしきり笑って、疲れた二人は自然に抱き合う形になった。 部屋着のゆったりとした布越しに、やがて互いの体温が伝わってくる。よくよく耳を澄ますと、鼓動も響いてきた。 しばし耳を傾け、神取は言った。 「あたたかいね。ホットミルクのせいかな」 「そっちこそあったかい」 気持ちいいと、僚はぴったりとくっついた。目を閉じたら、五分もしないで眠ってしまいそうだ。こんな風にだらしなく寄りかかっても受け止めてもらえる…なんてありがたいのだろうとしみじみ味わう。 頭を撫でられ、ますます眠気に包まれる。 「やめろよ……寝ちゃうって」 「構わんよ。ベッドまで運んであげよう。必要ならばトイレにもね」 もごもごと甘えてくる僚に頬を緩め、神取は言った。すると抗議の一打が背中を襲った。笑みを深め、よりしっかり抱きしめる。抱き返してくる腕の力が強まる。体温と腕の心地良さに、自分の方が先に眠ってしまいそうだった。 神取は耳元の安らいだ息遣いを聞きながら、そっと目を閉じた。 |