Dominance&Submission

しつこいくらいに義理堅い

 

 

 

 

 

 ぼんやりする意識の中、男の腕が優しくベッドに寝かせてくれるのを感じていた。それに礼を言う事も、目を開けるのさえ億劫で、僚は眠ってしまわない事だけ抵抗して横たわっていた。
 ようやく呼吸が元に戻ってきた頃、男の手がそっと髪に触れてきた。思わず身体がぶるりと震えるほどの喜悦に、僚はうっすらと微笑んだ。全身に幸せが満ちて、泣きたくなってくる。
 男に問う。

「からだ……へいき?」
「ああ、君のお陰で、とても良くなった」

 その代わり自分はこのありさまだと、僚は呆れた笑いを浮かべた。でもいいのだ。男が元気になったなら、それで充分だ。そこで僚ははっと目を見開き、股間に手を持っていった。

「痛むかい?」

 ちゃんとついているとほっとすると同時に、男が心配そうに聞いてきた。たちまち顔を赤くする。行動の理由を説明するのが恥ずかしい。
 口籠っていると、何らかの異常があるのだと察して男は動いた。

「確認するよ」
「違う違う……!」

 僚は慌てて身を起こした。男は、自分の行為で傷を負わせてしまったかとひどく深刻な顔をしており、それが、これから説明せねばならない内容と比べあまりに落差があるので、僚は余計言葉が出せなくなってしまった。
 何度か息を飲み込んで、観念したように大きく吐き出す。

「痛いんじゃ、なくて……」

 やっと射精出来た時、下半身の感覚が麻痺して、まるで一緒に溶けて流れてしまったように感じた、だから、半分馬鹿らしいとは思いつつも確認せずにいられなかったのだ。

「……そうか」
「……そう」

 だから何も心配する事はないと、僚は上目遣いにちらちらと見やった。

「大体、鷹久がいけないだろ」
「確かに私のせいだ。次からはもっと上手くやるよ」
「そういう事言ってんじゃなくてさあ」
「早速明日、試してみよう」
「こら、聞けって」
「聞いているとも」

 不満げな少年を抱き寄せ、神取はさも楽しいとばかりに笑った。
 優しく腰に回された腕を忌々しく睨み付け、僚はもごもごと口を動かした。いつもそうだ。いつもこうして、どこまでも優しく扱って甘やかしてくれる男に負けてしまう。
 だから本当なら、自分がもっと男にお返ししなくてはいけないのだ。今回のような機会は中々ないのだが。悔しくてもどかしい。

「それで……どうする?」
「……鷹久がしたいなら付き合うよ」

 どこでも、どんな時でも。内側に渦巻く激情を隠して、僚は渋々と言った風を装った。男を抱き返す腕に答えは出てしまっていたが。

「良かった」

 神取は穏やかに笑った。
 耳元の甘いひと言に微笑み、僚は目を閉じた。

 

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