恋愛お題ったー(簡易)
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より、
登場人物が「ゆれる」、「鏡」という単語を使ったお話を考えてください。
と出題されたので、鳥斉でひとつ挑戦。

要するに

 

 

 

 

 

 三連休初日の今日は全国的に晴れの予報でお出かけ日和だと、画面の中からお天気お姉さんがにこやかに伝えてくるのを、オレはだらんとソファーに寄りかかった姿勢で眺めていた。
 お天気お姉さんの服装はすっかり夏に染まり、露わになった腕や開放感あふれる胸元に思わず鼻の下が伸びる。
 背もたれに頭を乗せたまま、オレはゴロンと窓の方に向いた。
 晴天だ、いい天気だ、まさにお出かけ日和だ。
 確かにその通りだった。日当たりの良さも条件に入れて選んだ部屋だけあって、南向きの窓からは燦々と日差しが降り注ぎ眩しいほどの青空が望めた。
 ついつい目を細める。
 でもな。
 でもなー。
 オレは頭を反対側にゴロンと向けた。
 そこには自分の命とも言える愛しい人がいた。行儀よく腰かけて、奇麗なたたずまいで小説を読んでいる。
 この人…斉木さん、お出かけあんまり好きじゃないからなー。
 外に出るのが嫌いという意味じゃない、人の多い場所が嫌いということ。人が多ければそれだけ拾うテレパシーが増え、精神的に疲れてしまう。ついでに、超能力者である事が知れる危険性が増す。静かに目立たず生きたいこの人にとっては、人混みは行きたくない場所ぶっちぎり一位だ。
 家から出たくないわけじゃないけど、結局家でおとなしくしてるのが、一番ダメージが少ないんだよね。
 難儀だよね。

『別に、お前と出掛けたくないわけじゃないぞ』
「……あら」
 オレのつらつらとした他愛もない心の声を律義に拾い、斉木さんはそんな言葉を寄越してきた。
 ついにんまり頬を緩めてしまう。
 大丈夫ですよ斉木さん。ちゃんと知ってますから。
 そんな思いを込めて横顔を見つめる。
 斉木さんは文庫本に目を落としたまま続けた。
『全然楽しくない、こともないからな』
「ふふ、それもちゃんとわかってます」
 そうかよ、そうっスよ、なんてやり取りをしながら、オレはゲーム機を引っ張り出し起動させた。
「あ、ちゃんとヘッドホンしてやりますんで」
 非難する目付きじゃなかったけど、オレは配慮してそう告げる。準備していると、差した端から引っこ抜かれた。サイコキネシスで。
「あん、もう」
 可愛いイタズラだと振り返ると、コントローラーを構えた斉木さんが、オレが座ろうとしていた位置にどっこいしょと腰を下ろした。
「……え」
『気分転換に少し付き合ってやる』
「わー、じゃあ何やろうかな」
 オレはソフトを選び直し、いそいそと斉木さんの隣に座った。
「いざ尋常に勝負!」
『かかってこい』
「……ふふ」
『ふん』
 いい天気なのを横目に二人で家にこもりテレビゲームなんて、ある意味最高っス。

「かー、惜っしい!」
 負けたけど僅差だった、そこまで斉木さんに迫れた嬉しさと単純な悔しさとを口から発し、おめでとさんと斉木さんを見やる。
 それに対して斉木さんは複雑な顔。お前、これで楽しいかって訊くような顔。微妙な、本当にビミョーな差異でそれを読み取れるオレちょっとすごいね。
「まあほら、斉木さん、今日はめちゃめちゃ暑くなるって言ってたし、暑い中歩きまわるよりは、家でこうしてのんびり涼しく過ごした方が贅沢っスよ」
『……ふん。暑い中散々歩き回って喉が渇いて、そんな時に飲むよく冷えたいちごシェイクは全然嫌いじゃない』
「ふふ、もう可愛いんスから!」
 オレは肩を抱き寄せ、ほっぺにチューっとキスをした。
 うわあって顔されたけどめげないもんね!
「じゃあ後で、ひとっ走り買ってきてあげますよ」
 ……ふん
 気持ちたっぷりに微笑みかけると、斉木さんはわずかに鼻を鳴らした。
 そんな顔も可愛くて、オレはまた顔を寄せた。
『何度もしつこい』
 二度目はさすがにお断りされた。手のひらでぐいぐい顔を押され、首が折れそうになる。
「いだだだ、わかりましたよ、じゃあ次勝ったら、ご褒美のチューあげますね」
『いらない』

 苦虫を噛み潰したような顔でオレを睨んで『いらない』と突っぱねた斉木さんだけど、実際する場面になると満更でもなさそうだった。
「斉木さんの勝ちー。じゃあ予告通り、ご褒美のチューをば」
『……さっさとやれ』
「んもう、期待してたくせに」
『やれやれ、今日がお前の命日になるのか……』
「わーごめんなさいごめんなさい、ほら、チューしてあげますからその左手引っ込めて!?」
『……まったく』
 まったくはこっちのセリフっスよ、なにもう、ちょっとした恋人同士のイチャイチャじゃないっスか。すーぐ殺気むき出しにするんだから。
「めっスよ?」
『滅するよ?』
「ぐっ……う?」
 意外な反応におかしさが込み上げるが、殺気のこもった左手で頭を掴まれ命の危機も感じて、どこに感情を転がしていいやらわからず変な汗を噴き出すしかなかった。
 ぐったりしながら、オレはほっぺにチュッとした。
「よし、次はオレがチュー貰うっスよ!」
『命なら貰ってやるぞ』
「……えっ!」
 それは果たして良い意味か悪い意味か。オレの血圧はまた急上昇と急降下を繰り返すのだった。

 ほのぼのしてるのかはたまた殺伐かよくわからなかったが、物騒な言葉を吐きながらも斉木さんはご褒美のチューは素直に受けてくれた。
 やっぱり嬉しいんだな、斉木さんも触れ合いは嫌いじゃないんだなって、胸が段々熱くなっていく。
 そうなると別のところも段々熱くなってきて、チューだけでは収まりが効かなくなってきた。
 斉木さんも始めはほっぺにチューだけ、その先はお断りと厳しめだったけど、強引に唇にチューしながら腕を撫でたり背中をさすったりする内に段々その気になってきたらしく、次第にとろんとした目付きになっていった。
「ふふ…かわいい、斉木さん」
『うるさいよ……変態』
 息も少し、上がってきている。それはオレも同じだった。そしてそれは、キスで盛り上がているのもそうだし、外の熱気がジワジワ室内を侵食してきているせいでもあった。
 つまり、恋人同士のイチャイチャでベタベタしてるのが汗でベタベタしてきたってわけ。

「じゃあ、続きは風呂場でしましょーか」
『……しない』
 オレの首に手を回しておいて、何言ってんだろねこの子は。
 心にもない言葉についにんまりしてしまう。
 オレはする気満々ですからね。
 とっくに消していたゲームには目もくれず、オレはしっかり足腰踏ん張って斉木さんをお姫様抱っこで持ち上げた。それなりに重量は感じるけども、多少は余裕で抱えられる。さすがオレ、寺生まれだね。
 斉木さんの方も、これが初めてじゃないしオレが意外にも力自慢なのを知っているので、適度にリラックスして身体を任せてくれた。
 心の中でへへんと鼻の下をこすり、一歩ずつ踏みしめながら浴室へと向かう。
『もしも落としたらお前の首落とすからな』
 そんな心配はちっともしてない癖に。ああもう、本当に可愛い人だな。
 素直に鼻の下を伸ばすと、斉木さんは脚をひと振りしていたずらっ子のように笑った。
「うわっとと。こら」
『ごめーん』
 そのくらいなら、耐えられるけどさ。わかってやってんだこの人。
 あああもう、本当に可愛い人だこりゃ!

 だから、リビングから浴室までほんの数歩の短い距離だけどオレはもう辛抱堪らん状態になってしまって、洗面所のドアを閉めるや噛み付くように唇にキスをした。
 せっかち束
 どっちが
「……ふふ」
 頭の中に届いた声にオレも同様に脳内で応える。すると、さもおかしいって感じで斉木さんが息をもらした。キスを続けたかったけど、どんな顔で笑ってるかも見たかったから、オレはちょっとだけ顔を離した。
 思ったよりもずっと、なんか…エッチ。
 目の奥がかーっと赤くなったように感じた。目の奥だけじゃない、全身が燃えるように熱くなる。
「……さいきさん」
『ほんと、お前熱い』
「あ……」
 オレの腕からするりと抜け出し、斉木さんは素早く服を脱ぎ去ると、さっさと浴室に入っていった。あんもう、オレが脱がせたかったし脱ぐにしてももうちょい色っぽくしてほしかったな。
 そんながっかりもありつつ、オレ自身、さっきより暑さでより汗ばんできていたので、何をするにもまずはこのベタベタを洗い流してサッパリさせてからだと後を追う。

 

 

 

 風呂場で汗を流してサッパリしつつ、ちょこっと触りっこして気分を盛り上げたら、部屋に戻って本格的にするつもりでいた。
 実際は、二人してびしょ濡れの頭を揺らしながら立ちバックで斉木さんをひいひい言わせていた。
「言って…なっ……、あ、あぁっ、ん!」
 じゃあアンアンに訂正する。まあとにかく、シャワーを浴びながら唇にキスして頬っぺたにキスして首筋にキスして、すべすべの背中撫でまわしたりぽちっとふくれてきた乳首に吸い付いたりやってたら、お互い我慢出来なくなっちゃったのよ。部屋まで戻るのが。
『それはお前だけ――』
「うぁあっ、あ、あ……あ、あ、ん、んんぅ……」
 かろうじて発したテレパシーも半ばで途切れ、続きは甘ったるい喘ぎ声となって口からこぼれた。
 オレの動きに合わせて緩慢な善がり声を上げながら、斉木さんは頭を揺らした。
「もう、なあにさっきから反対のことばっか言って」
「おまえが…嘘いうから……んん、んんっ!」
「嘘なんか言ってませんよ」
 もー、身体はこんなに正直で、飲み込んだオレのこときゅうきゅう締め付けてくるのに。
 オレは、繋がった部分を凝視する。小さな孔を目一杯広げて出入りするオレのものと、精一杯広がってオレを受け入れる孔とを、じっくり見つめる。
 すげぇ光景。
「……きもちいいでしょ?」
「うっぐ……」
 斉木さんは喘ぎを噛み殺して黙したが、どうにかそうとわかるほど小さく頷いた。可愛らしさに、腹の底がゾクゾクっとした。

 斉木さんが寄り添っているのは鏡の前だった。オレは目線をずらし、鏡に映る自分たちを眺めた。
 勃起した斉木さんの雄が、鏡の中でゆらゆら揺れている。小刻みに突けば早く、ゆっくり押し引きすれば悠然と。不思議な舞を舞っているようだった。
 それはまるで――
「ね、ほら見て…早く触ってくれって、駄々こねてるみたい」
『くそ…わかってるなら、早く……』
「早く、なあに?」
 腰の動きをゆっくりしたものに変え、オレは囁く。
 動きと、囁きと、どちらもたまらないのか、斉木さんはおこりのように震えを放った。
「あふっ……」
『早く触れ、触って』
「……とりつか」
 少し拗ねた呟きと共にオレの手首を掴み、自分の股間に引っ張っていく。
 ああなにその声!…胸ぎゅーってなった。あそこもぎゅーってなった。
「かわい……」
 ねだられるまま、オレはそっと包み込んだ。
 そうだよね、だって最初にちょっと擦りっこしてから、ずっと斉木さんのは放置だったものね。オレはそっからずーっと気持ち良いままだけど、斉木さんはしんどいよね。
「うるさっ……ああー」
 甘い喘ぎがもれる。
 その声困るよ斉木さん…天にも昇る気分。
「触ってほしくて泣いちゃってる…かわいい」
 先端からタラタラ溢れる先走りを指先で舐め回し、こすりつけるように裏筋をさする。
 熱くてガチガチで、それなりにおっきい斉木さんの斉木さん。触りがいがある。この人もこんな風に欲溜めたりするんだ。オレに欲情したりするんだ。実感するとますます興奮する。
 だからオレは熱心に愛撫を加えた。ねとねとした先走り塗り付けながら扱いたり、指先で優しく竿を引っかいたり、先っぽ強めにグリグリしたり。
「あ、あっ……きもちいい」
「うん、きもちいいね。弄りながら突くと、斉木さんの中ギュって締まってたまんない……」
「うるさいよ……あがっ!」
 素直じゃないのが余計可愛くて、憎まれ口利くその口の中に指を二本突っ込む。
『やめろ馬鹿!』
 そうテレパシー飛ばしてくるけど、素直にされるがままって本当にかわいい。
 オレはしばらく、両の手で上と下といじくりながら突き続けた。
「えぁっ……へ、へ、あぇ……あっ」
「うわー……斉木さんやらし」
 二本の指に挟まれた舌の先からたらたらよだれ垂らして、扱かれる×××からもよだれ垂らして、斉木さんはだらしない喘ぎを垂れ流す。
 時々嫌がって身をよじるけど、オレはしつこく両方を蹂躙する。本当に嫌ならやめるし、斉木さんなら簡単に逃げられるけど、そうしないのは自分の情けないとこ見てほしいからでしょ。
 そうであれば、存分に見せてもらわなきゃ。見てあげなきゃ。
 全力で可愛がってあげなきゃ、オレじゃない。

「ぷぁっ……んむ!」
「……こんどはこっちに」
 散々舌べろをくすぐり指を抜く。少しほっとした顔が鏡越しに見え、無性にキスしたくなった。間髪入れずに唇を寄せる。乱暴に噛み付いてやりたい気分だったけど、泣きそうに緩んだ顔を間近に見たらやっぱり優しくってなって、斉木さんの好きなところだけ舐る事にした。
 一生懸命オレの方に首曲げて、オレも首伸ばして、お互い少し苦しい体勢だけど、下でも上でも繋がって、どっちもドロドロに熱くて…頭の後ろがビリビリ痺れてたまらなかった。
 斉木さんの好きなとこを舌先で舐めると、敏感に震えて応えてくれるのが純粋に嬉しい。ああ腰にくる。
「きもちいーね……」
 言ってから、声に出した自分に気付く。すぐ傍で控えめに斉木さんが頷いて、うわ素直だなって感激してる間に、ぷいっと前を向かれた。
 なにそれかわいい!
「……かわいい」
 今の今まで重ねていた唇の名残を追って、赤くなった斉木さんの耳たぶに口付ける。うるさいって首を振られたけど、それもかわいいですよ。
 口にする代わりに後ろを突くと、高い声が上がった。思わずにんまりと口を歪める。

 肘に片足を抱え、オレは大きく腰を使った。
「あーっ、あは…あ、とりつか……とりつかぁ!」
「すっげ…斉木さんの中ビクビクしてる、わかる?」
「し……、してなっあっああ、とりつか…とりつかぁ……」
 浴室内に反響する声がたまらない。まるで、四方八方から斉木さんにしがみつかれてるみたい。
 そんなに呼ばないで、これ以上煽んないでよ
 オレは力一杯腰を打ち付けた。
 ひどくやらしい水音が繰り返し響いて、そこに斉木さんの喘ぎが絡まって、ついでにオレのはあはあみっともない息遣いも合わさって、全部がドロドロに溶けて混ざり合っていく。
 どこまでも昂る気持ちを、音がするほど激しく叩き付ける。斉木さんの丸く柔らかな尻が一瞬拉げるほど腰を打ち付け、それで得られるたまらない快感にオレは夢中になった。
「あ、がっ……あぁ、つよい……い、ひぃ、ぐぅ!」
「強過ぎた?…苦しい?」
「うぅー……」
 はっとなって少し緩める。けれど斉木さんは即座に首を振り、もっと、もっと、って潤んだ目でオレを振り返ってきた。
 わぁ…喉のとこがゾクゾクってなった。まるでいやらしい手付きで撫でられたみたいに、首筋が熱く疼いた。
 オレに向く顔を片手で固定して、斉木さんの唇を塞ぐ。ぐちゅぐちゅ舌を貪りながら、斉木さんの望む強さで内部を何度も何度も突いた。
「ん、ぶっ、い、いひぃ…ちゅっ……ああ、いい」
「はぁ…斉木さん、強いのがいいの?」
「うん、ん、んん、ひ、ひっ……いい、くるしい」
「苦しいのがいいの?」
「うるさい……あっ!」
「ちゃんと言って、ねえほら、これがいいの?」
「くそ、くそ……とりつかぁ……」
 素直に認めるのが癪だから泣き顔で怒って、でも快感には勝てなくてすぐにだらしなく緩んで、それでまた焦れて。まるで子供が駄々こねてるみたい。
 絶え間なく移り変わる斉木さんの表情はどれもオレの心をくすぐり、昂らせた。
 名前呼んで縋ってくれたのはすんごく嬉しいけど、素直に気持ちいいって言わない子には、ちょっと意地悪したくなる。

「あっ……?」
 浅いところでゆるゆる抜き差しする動きに変えた途端、斉木さんは明確に不機嫌顔になった。更に、自分でか身体がそうかはわからないけど、後ろの孔でオレをぎゅっと包み込んできた。力加減が絶妙だから、危うく声が出そうになった。危ない危ない、オレが切羽詰まってちゃサマにならないよ。
「………」
 オレは出来るだけ素知らぬ顔で腰を動かす。斉木さんはますます不機嫌に。じれったそうに眉を寄せて、何か言いたそうな唇を舌で湿らせごまかす。
 もう。その顔も、身体も、こんなに素直なのにな。
 早く言っちゃえばいいのに。オレはちょっと意地悪な気分で浅い箇所をねちねち嬲った。
「う、……とりつか」
 うわっそれ反則、恨めしそうに上目遣いで呼びかけるとかずるいよ斉木さん。でもダメ、ぐっと我慢だオレ。
 わざとらしく入り口付近で動いて、斉木さんを降参させるんだ。それまで我慢だオレ。
 と、斉木さんはじーっと見つめていた顔をふんとばかりに正面に戻した。
 むむ、強情だねさすが斉木さんだね。
 でもね、鏡越しに見るって手があるんスよ。
 そう思って視線を移すと、下でも見てるとばかり思っていた斉木さんの視線と、音がしそうなほどかち合った。
「!…」
「あっ……!?」
 ドキッとした拍子に下腹が疼いて、自分でもわかるほど大きく脈打った。斉木さんにもダイレクトに響いて、エッチな声がもれる。さっきまでと打って変わって静かになってた中の高い一音が余計、オレを滾らせた。
「また、おおきく……っ」
 少しうろたえた声と、鏡に映る表情とに、オレは息を引き攣らせた。斉木さんも同じだった。受け入れてる分、衝撃は大きいだろう。たたらを踏むようによろけるから、オレは咄嗟に両腕を回して支えた。
 そうやって近くなった耳元に半ば反射で噛み付き、独特の弾力を楽しむように唇で食む。はっきり声こそ出なかったが、斉木さんの喉がひゅっと音を立て、面白いほどに身が固くなった。
 かわいい…ああかわいい。オレの斉木さん。
 オレは相変わらず浅い所をくすぐりながら、斉木さんに訊いた。
「ねえ斉木さん……これで、奥の奥、突いてほしいですよね?」
「……あぁ?」
 そんなわけあるかって声を必死に絞り出しているけど、オレの動きに合わせて腰振って…どうにかして奥まで入れようともがいてるの、バレバレっスよ。
「奥抉じ開けてぶち抜いて、いっぱい突いてほしいですよね?」
「ふ、うっ……あ!」
 一回だけ、音がするほど力強く打ち付ける。
 一瞬にして斉木さんの背がしなやかに反り返り、そのまま数秒、ぶるぶると痙攣した。
 ねえ斉木さん、すごく気持ちいいでしょ、それがずーっと続くんですよ、欲しいでしょ?
「好きなとこも一杯触ってあげますよ」
 乳首もち××も口の中も全部、可愛がってあげますから
 また浅い抜き差しにかえて囁く。
「くそ、くそっ……」
「ほら抵抗しないの。斉木さん?」
「……少しでも手を抜いたら……ゆるさないからなっ」
 震える声で強がる斉木さん…エッチすぎぃ!
 興奮のあまり奥歯がかちかち鳴ってしまった。
 もちろん、全力に決まってるでしょ。
「オレを誰だと思ってるんスか」
「とりつか……ぼくの」
「!…」
 ほとんど囁くような声に背筋がゾクゾクっとした。
 そう、アンタの鳥束零太ですよ

 力尽くではなくゆっくり奥まで押し込み、オレは更にぐぐっと力んだ。
「ぃぎっ……!」
「まだっスよ。もうすこし……」
 最初の孔ほぐすのと同じように、こっちもじっくり柔らかくしてあげますからね。
 斉木さんの身体を抱え直すとオレは目を瞑り、深く突き込んだ姿勢で腰をうねらせた。
「あぅ……ぐ、ひ、ひぃっ…んぐ、んん……――!」
 途中から斉木さんは口を塞いで、声が漏れないようにと必死に堪える。
「くるしい?」
『声が汚いからだ』
 オレは即座に塞ぐ手を掴んだ。
「いいの、いいから、聞きたいから我慢しないで」
『いやだ…よせ』
「大丈夫、オレなんだから」
 自分で言ってちょっと笑いがもれてしまった。そうだよオレなんだよ、どんだけ汚かろうが大きかろうが、斉木さんのものならもれなく興奮する。
 好きってすごいよね。
 斉木さんはチラッと一瞬だけオレへと目線を送ってきた。いっぱいに涙を溜めて不安そうで、だからオレは、ひたすら大丈夫だと念じ続けた。
 好きだから。
 斉木さん好きだから。
 全部知りたい、全部欲しい、全部ちょうだい。
「よくばり……がっ、…あ?……あっひぃ!」
「うっく……きっつ…斉木さんすごい」
 不意に斉木さんの身体が強張り、飲み込んだオレを絞るように締め付けてきた。鈍く重い痛みに目の奥がチカチカした。
 絶頂を迎えたのは間違いない。きっかけは…オレでいいのかな。オレがいっぱい気持ちをぶつけたからその衝撃でいっちゃったのかな。ちょっとはうぬぼれていいかな。
 斉木さんは必死に鏡に寄り縋って、倒れないように踏ん張っていた。間延びした喘ぎを時折もらして、断続的に震えを放っている。
 その姿がしようもなく愛しくて、オレはきつくきつく閉じ込めるように抱きしめた。
「まだ、もっと奥に入れてもいい?」
「あぁっ、ふっ……う」
 戯れに小突きながら斉木さんの様子を伺う。身を強張らせたまま、斉木さんは何度も頷いた。余裕のない仕草はもちろん、早く寄越せと言わんばかりに絡み付いてくる内襞に思わず唸る。

 オレは更に捏ねる動きで腰を使った。
「あ、がっ…ひぃ、い、とりつか……!」
「もうすこし……おねがい」
「へい、……きっ」
 喉に詰まった声で呻きながら、斉木さんは健気にも受け入れようと足を踏ん張っていた。
 それでも時折ふっと力が抜ける事があって、オレは何度も抱えてはその背中にキスを落とした。
 お互い汗まみれの身体で、普通なら不快だって思うところだけど、今はそれすら興奮に繋がる。
「へんたい……あぁ、や、……ぁだ」
「そうっスよオレっスもん……はは」
「くそ、あ、あ、や……もう!」
「あー……もうはいりそー……」
 ぐねぐねと蠢く感触が伝わってくる。斉木さんの方はこれ、どんな感じなんだろう。
 辛うじてあった余裕と気遣いが、オレの中から徐々に薄れていくのがわかる。
 ふと見た鏡で、斉木さんと目が合う。
 斉木さんの顔はだらしなく緩んでいて、オレは下品な顔で笑っていた。
 ああひどいなって思った時、斉木さんが笑った。こういう時だけしか見せない、少し飛んでしまった潤みがちな目を細めて、口元もだらしなく開いて…いつもの冷たく噤まれた口とか倦んだ眼差しを知っているだけに、たっぷりの欲情を孕んだ今の微笑は、たまらなく心を抉った。
 全身に異様な熱が漲り、同時に力もこもって、最奥をぶち抜く結果となった。
「っ……――!」
 潰れた叫びが浴室に満ちて、まるで酔っ払ったような感覚に見舞われる。
 二重三重の衝撃で、オレは呆気なくいってしまった。
 腕の中で硬直する斉木さんをきつく抱きしめ、オレは思い切り奥に精液をぶちまけた。
「あー……っつぁー……」
「ひ、ぐ……あっお……あぁ」
 とりつか、とりつか
 うわ言のように繰り返し、斉木さんはまるで全身でしゃっくりするみたいに痙攣した。
 鏡に映る顔は幸せを滲ませ、うっとりと遠くを見ていた。
 オレがそうさせたのは非常に嬉しくもあり、不服でもあった。気持ちの向くまま、自分の方に曲げさせ見ろとばかりに顎を掴む。
 そうしたまま、オレは出してもまだ硬いままの自身で斉木さんの奥を突きまくった。

「あぁ――! あ、あー、いってる、いってる!」
 だらしない叫びをまき散らし、斉木さんが泣きじゃくる。
 オレはあやすように唇を重ねて、喘ぐのに必死でちっとも応えない舌を吸って食んでを繰り返した。腰の動きはもちろん止めない。だって、あんまり気持ちよくて止まらない。
「ごめん……もうすこしだけ、ね」
「うぐっ…う、ふぅう……とりつかぁ」
「いますよ…いますから……もっとよくなろ…ね?」
 浴室の壁に追い詰め、激しく腰を突き込む。同時に前に回した手で乳首を摘まみ、揺すり、かたく尖った突起の感触を愉しむ。
 斉木さんは鏡にべったり貼り付くようにして立ち、オレの動きに合わせて名前を呼んだり善がったり忙しなく息を継いでいた。
 その息遣いが、ひっひっと引き攣ったかと思うと数秒止まり、オレにいったことを教えた。
「かっ…は……ああぁー……」
「またナカイキしちゃったの?」
 片手を下ろし確かめる。何度も射精してすっかりドロドロのぬるぬるになってた斉木さんの性器は、過ぎた快楽でいきっぱなしになっており、出さないまま達する事を繰り返していた。
「う、ふぅ……うるさいぃ」
「あ―泣かない泣かない。ね、きもちいいこと好きですもんね。いいよ、いっぱいいって」
 自分でもぞっとするほど甘い声が出た。
 もうちょい手前ならこんな喋り方、斉木さんはもちろんオレでも萎えそうなとこだけど、すっかり興奮しきった今はどっぷり溺れていて、オレも斉木さんも飛んでいた。
「……いい?」
 だから、鏡越しに斉木さんが不安そうに見てくるの、ちっともおかしなことじゃない。
「いいよ斉木さん、ほら、手伝ってあげるから、鏡にかけていいよ」
 オレが、幼児のおしっこ誘導するみたいになっても、ちっともおかしくない。
「いっぱい奥突いてあげますから、ほら、ね、思いきり出して、いって」
「ああ、やっ……なにかくる……で、出そう!」
 ぶるぶると全身を震わせながら、斉木さんは何度も頷くそぶりを見せた。
「出していいよ、潮吹き見せて…見せて。ほら斉木さん、いって!」
「やだっ…みんな――みるなよ、あひ、い、いい……!」
 がつがつと音がするほど腰を打ち付けながら、オレは激しく手を上下させた。斉木さんの手もそこに重なり、やだやだと首を振りながらも積極的に自身のそれを扱いた。
「あ、ぐぁ……あ、とりつか、とりつか!」
 とうとう斉木さんの膝が崩れ、くたくたとその場にしゃがみ込んでいく。それでもオレは腰の動きを止めず、追いながら最奥を執拗に抉った。
 うずくまる斉木さんを閉じ込めるような格好で覆いかぶさり、オレはひと際強く腰を突き入れた。
「いぐっ……ひいいぃ――!」
「う、は…すげ……あ、くぅ――」
 斉木さんの身体が不規則に引き攣り、数秒硬直した。手にした斉木さんのそこから、おびただしい量の熱いものが噴き出る。
 オレもまた息を詰めて唸りながら、奥の奥に熱をまき散らした。
 それで更に斉木さんの全身が跳ねるからオレは何度も頭を撫でて宥め続けた。
 大丈夫、大丈夫ですよ斉木さん。
 達して荒くなった斉木さんの息遣いは、まるですすり泣いているようだったから、オレは繰り返しいつまでも頭を撫で続けた。

 

 

 

 それから、お互いしっかり身体を洗って風呂から出て、髪を乾かして部屋に戻るまで、斉木さんは最低限の反応しかしなかった。
 立てるか聞いてもちょっと頷くだけ、気持ち良かったか聞いても目を逸らすだけ、だから、さすがにやりすぎだったかと反省してどうやって機嫌直してもらおうか考えていると、控えめに肩を寄せてきたりして、あれこれもしかして恥ずかしがりながら甘えてそれで更に恥ずかしくなってるのかな…どうかな?…と恐る恐る肩に手を回そうとしたら、遅いとばかりに掴まれ引っ張られた。
 はいすんません、迅速に肩を抱かせてもらうであります!
「もー、斉木さん大好きっ」
 そのままほっぺにチューすると、うざいなあ、だって。
 もーもー、自分から欲しがったくせに、なんて可愛い人だろうねー。
 オレはデレデレと目尻を下げて、もう一度ほっぺたに唇を押し付けた。
「好きっ!」
「………」
『僕も』
「――!?」
 無言でじろっと見やった後のテレパシー。
 いつもみたいに照れ隠しの『死ね』かと思ったらこれよ。
 危うく昇天するとこだった。

 部屋に戻り、どかっと床に座って大きなため息を一つ。
「あー最高だった。斉木さんの身体、やっぱいいっスわ」
『身体目当てだったのねっ』
「えっ……あっは! もおー、斉木さん」
 両手で自分の肩を抱いておののく乙女のポーズをするんだけど、顔はいつものまま、つーんと冷めたままなので、ギャップが可笑しくて腹がよじれた。
 斉木さんでもそんな風に乗ったりするんだね。ますますいいわ。
 楽しさに笑っていると、不意に両手で顔を挟まれた。
「はぅぐっ!」
『お前がヘラヘラ笑ってるとこ』
 思いがけず強い瞳に見据えられ、息を飲む。
 すんません、笑い過ぎましたか。
『全然嫌いじゃないからな』
「……はっ!」
 は?
 は!
 だからわざとノリを合わせてオレを笑わせてくれたのか。
 本当にアンタって人は。
「オレもっんぐ……、オレも大好きですよ」
 あんまり慌てたせいで変なしゃっくり出た。慌てて飲み込み言い直す。
 返事に斉木さんは『うむ』とばかりに一つ大きく頷いた。わあ堂々としちゃって、と感心したのも束の間、正面の顔がみるみる真っ赤になっていくではないか。
「えー……斉木さん!」
「……くっそ」
 慌てて片手で遮ってきた。
 えー、えー、なにその可愛い反応は!
 つい目を丸くする。
 もっとよく見ようとしたら、乱暴に身体押しやられた。
『うるさい見んな、風呂でのぼせただけだ』
 ……はい、そういうことにしておきます。

「じゃ、そんな斉木さんに、さっきの約束通りひとっ走りして、冷え冷えのいちごシェイク買ってきますね」
『僕も一緒に行く』
「え、大丈夫っスか、身体」
 のぼせはいいとして、かなり興奮してやりまくっちゃいましたからね、その…お辛くないっスか?
 心配を込めて頭のてっぺんからつま先までじっくり見回していたら、余計なお世話だと軽いゲンコツが降ってきた。衝撃でバチっと目から星が飛び出した。涙もちょっと飛び出した。
「いった……もー、乱暴者、めっすよ」
 怖い顔をしてみせるが、ふんとそっぽ向いて知らんぷりの斉木さん。
 まー憎たらしいこと。それでいて可愛いんだから参っちゃう。
『さっき言っただろ。暑い中散々歩き回って飲むよく冷えたいちごシェイクが、全然嫌いじゃないって。覚えが悪いな』
「こいつぅ〜」
 むっかつくー
 でもそれでいて以下同文で身体よじれちゃう。
「要するに、オレと少しでも長くいたいって事っスよね!」
『話聞いてるかおい』
「いででででっ取れちゃう取れちゃう!」
 耳たぶを引っ張られオレはまたも涙目になる。
 そんなオレを置いて、斉木さんは一人さっさと玄関へと向かった。オレは財布を引っ掴み慌てて後を追う。耳、ちゃんとついてるよな。
 靴を履き替える斉木さんに、オレは靴箱の上の鏡を指差した。
「じゃー鏡見て下さいよ、アンタ、自分がどんだけ嬉しそうな顔してるか、見てほらぁ」
 ちっと舌打ちの後オレの横に渋々並んだ斉木さん、鏡の中で明らかに目を揺らし、そのまま慌ただしく玄関を出ていってしまった。
「やっ……!」
 やだもう置いてかないで!
 せっかくの買い物デート、のんびり行きましょうよ。
 玄関を出る直前、自分も鏡を覗き込む。鏡の中の自分は斉木さんと同じく、ウキウキ嬉しそうな顔をしていた。
「……ふふ。ちょっと、斉木さんてばー」
 オレは大急ぎで玄関を飛び出した。

 

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