一夜目

 

 

 

 

 

 

 

 

 居間の灯りは、とうに消えていた。壁にかかった時計だけが静かに時を刻んでいる、深夜。
 同室の酔っ払いが隣で高らかにいびきを響かせる中、コナンは先日買った推理小説を読み進めていた。
 バイクのエンジンをふかすようなけたたましいいびきだが、今ではもうすっかり慣れた。それに、一旦物語に集中してしまえば、大抵の物音は耳に入らなくなる。その代わりに意識を埋め尽くす、綴られる文字から無限に膨れ上がる想像。
 ひと時の逆転。
 のめり込んでいた意識が、本を置くと共に現実に戻ってくる。
 途端に聞こえてくる凄まじい轟音にやれやれとため息をつき、コナンは布団の中で大きく伸びをした。
 寝る前にトイレと立ち上がり、部屋を出る。
 真っ暗な居間を手探りで進み、蘭の部屋の前を通り過ぎようとした時、扉の隙間からもれる明かりを目にし、コナンは立ち止まった。
 まだ起きているのかと行きはそれほど気にも留めなかったが、用を済ませ戻る時何かしら予感めいたものを感じ、コナンは思い切ってドアを開けてみた。
 目に飛び込んだ光景に、一瞬呼吸を忘れるほど驚く。
 そこには、椅子に座り、ぼんやりと机を見つめる蘭の姿があった。驚いたのは、彼女の手首に絡み付く、自ら巻いたと思われる胴衣の黒い帯。
 一瞬遅れて蘭が反応する。
「!…」
 大げさに肩を弾ませ、怯えた眼差しでコナンを見つめる。
「ご…ごめんなさい」
 言って蘭は背中を向けた。
 コナンは静かに閉めると、彼女の前に回り込み、俯く顔を見上げた。
「何してるの?」
 あどけない声に、蘭はかっと頬を染めた。
 聞かなくとも、見ればすぐに状況は理解できる。彼女の様子と、状況と、先日の事を考えれば、答えは一つしかない。
 それでもあえてコナンは無垢な子供の仮面を選び、蘭に問い掛けた。
 ことの最中は、あんなに乱れた姿を見せるのに。 
 可愛くて仕方がない。
 だから…いじめたくなる。
「ねえ、蘭姉ちゃん」
「……ごめんなさい。私――」
 先日の事が忘れられず、はしたない妄想に耽っていたことを、蘭は途切れ途切れに告げた。
「謝らなくていいよ」
 睫毛を震わせ俯く彼女の顎に指をかけ、コナンは自分の方に向けさせた。
「言ったでしょ、蘭姉ちゃんが好きだって」
 ぎこちなく見つめてくる瞳をまっすぐ捕らえ、言葉を続ける。
「すごくエッチでも、やらしくても……大好きだよ、蘭……姉ちゃん」
 心持ち声を低くし、そう告げる。子供の仮面はとうに外していた。
「あ……コナン君」
 今にも泣きそうに歪んだ唇に、ほんの少し、笑みが浮かぶ。
 何度繰り返しても恥じらいを忘れない蘭に、嗜虐心が疼く。
 逸る心をぐっと抑え、コナンは口を開いた。
「何か手伝える事はある?」
 蘭の頬に両手を添え、口付けの寸前まで顔を寄せそっと囁く。
「あ……」
 唇にかかる吐息にさえ感じてしまう。熱に浮かされ、潤んだ瞳で見つめながら蘭は言葉を綴った。身体が小刻みに震える。
「こ…この前みたいに……私を縛って」
 いやらしいお願いを紡ぐ唇に一旦目を向け、コナンは再び瞳を見上げた。
「……縛るだけでいいの?」
 鼓膜を犯す低い声音、頭の芯がびりびりと痺れる。蘭はひくりと喉を鳴らし、鋭く射抜く青い瞳を熱っぽく見つめ返した。
「触って……いつもする…ように、奥まで…全部」
 吐息を引き攣らせながら答える。
 言葉を受けて、視線の先にある少年の顔がゆっくりと笑みを浮かべた。
 底なしの残酷さを秘めた表情に、後悔にも似た感情が生じる。度を越えた恐怖は、いっそ陶酔をもたらした。瞬く間に全身が熱くなり、胸のふくらみの頂点が痛いほど張り詰める。
「舌、出して」
 自らの舌をちらりと覗かせ促すコナンに、蘭はおずおずと舌を差し出した。たったそれだけで、まだ触れてもいないのに、快感に喉が震えた。
 早くとねだる眼差しにくすりと笑い、コナンは差し出されたそれに自分の舌を絡めた。
「んっ……」
 触れた瞬間、蘭はびくりと肩を弾ませた。
 繰り返される湿った音に、二人の気分が高まる。
 しばし舌先で戯れ、充分愉しんでから唇を重ねる。
「ん…ふぅ……」
 むず痒さに怯えおどおどと縮こまる舌を追って深く口付け、コナンは執拗に裏側を責めた。
「うぅん…んむ……」
 くぐもった声が腰を直撃する。勢いよく這い上がってくる愉悦に酔いながら、飽きもせず舌を貪った。
「コ……コナン君」
 わずかに身じろぎ、囁くように蘭は言った。
「……なに?」
 唇の上で問い返す。
 ぎゅっと膝を閉じ、言いにくそうに口ごもりながら蘭はちらちらと視線を送った。
「もう…がまんでき、ないの……」
 しゃくり上げながらそう告げ、自ら戒めた手首をかざして訴える。
「ああ……ごめんね」
 親指で唇をそっとなぞり、コナンは口端を持ち上げた。
 目を奪う妖しい色気に、思わず涙が滲んだ。
 たった七歳の少年におねだりする自分は、端から見たらどんなに滑稽に映るだろう。
 胸を圧迫する羞恥さえも心地好くて、酔いながら蘭は目を閉じた。 

 

 

 

 寝衣も下着も全て脱がせ、ベッドに横たわらせると、コナンはあの日と同じように蘭の手首をベッドに繋いだ。結ばずに、巻き付けた帯の端をしっかりと握らせる。
 これがどういう意味か、もう分かってるよね
 そう語りかける眼差しに、蘭は頬を染め頷いた。
 手首から肘、腕の内側にかけて指を這わせながら、コナンはくすくすと笑い言った。
「蘭姉ちゃんのこんな姿、新一兄ちゃんが見たら何て言うだろうね」
 新一の名に、蘭は身を震わせた。
「自分がいない間にこんな事してるって知ったら、驚くよきっと」
 肌触りを愉しむかのように手のひらで撫でながら紡がれる言葉に、蘭は眉根を寄せた。何か伝いたげに唇を震わせ、眼差しで精一杯訴える。
「ねえ、蘭姉ちゃん」
 脇をくすぐり、乳房の上で止まった手に、蘭は大きく胸を喘がせた。
「………」
 コナンはまっすぐ顔を見下ろしたまま、反応を確かめながらゆっくり手を動かした。
 親指と人差し指で、より敏感な右側の乳首をそっと摘み上げる。
「う、ん……」
 途端に広がる淡い疼きに、蘭は小さく身を弾ませた。
 触れる前から既に尖り始めていたそこが、更に存在を主張して硬くしこっていく。
 こんな小さな一点がそれほど感じるのかと、コナンはおもしろがって何度も指先で弾いた。
「あ…、あっ……やん」
 その度に蘭は息を乱れさせ、高い声をもらした。
「こうやって自由を奪われて、身体を弄られるのが好きなんでしょ」
 はっきり言葉で示され、蘭はぎゅっと唇を噛んだ。
「そうなんでしょ」
 小さな手に余るふくらみを鷲掴み、コナンは徐々に力を込めた。独特の弾力を持つ柔らかな乳房に、細い指が食い込んでいく。
「い……いたい」
 毒々しい鈍痛に、蘭は喉の奥でうめいた。
「じゃあ答えて」
 コナンは少しだけ力を緩め、すぐに強めた。再び握り、繰り返す合間に手のひらで乳首を刺激し、痛みとも快感ともつかない刺激を交互に与える。
「や…やめて」
 続け様に襲う緊張と弛緩に、蘭は困惑の声を上げた。痛みの方が勝っているのに、気紛れに加えられる刺激が、痛みさえも快感にすりかえる。
「やめて…お願い」
 どちらも身体が歓びとして受け取る事実に、蘭は身を捩って抵抗した。
 いや、うそ……違う
 指の跡が赤く残るほどきつく握られ、それすらも感じてしまった自分に、大きく目を見開く。
 コナンの手が再び、優しく乳首をいじくる。
 強い痛みの後の柔らかな刺激は、より大きな悦楽をもたらした。
「……あぁっ!」
 軽くこねられただけで、腰の奥が熱く疼いた。どろりとした欲望が溢れるのを感じ、蘭は喉を反らせた。
「……口を噤んでいれば、否定に繋がると思ってる?」
 親指の腹で丸くこね回しながら、コナンは言った。
 口調は柔らかく、表情も穏やかだが、一つ残らず逃げ場を奪われ追い詰められていくのを予感し、蘭は身震いを放った。
「…あ……はんっ……」
 くりくりといやらしく動く小さな指が、たった今感じた恐怖を愉悦にすりかえる。軽い目眩にも似た混乱に、蘭は引き攣れた喘ぎをもらした。
 散々刺激を与えられ敏感になった乳首、淡く色付いた乳輪さえもぷっくりと膨らんで、片方はなだらかな白い果実の上に、もう一方は指の跡がうっすら残るふくらみの上に、それぞれ天を突いて硬く起ち上がっていた。
「膝曲げて、足を開いて」
 右側ばかりで放って置かれた左の乳首を、根元から先端へと摘み上げながら、コナンは言った。
 言葉と同時に、数え切れないほど受け入れた手の感触が鮮明に甦る。途端に新たな蜜が溢れ出し、蘭はひくりと喉を鳴らした。
「蘭姉ちゃんの答えが見たいから、足開いて」
 見下ろす少年にしばしためらいを見せ、諦めて目を瞑ると、言われた通りおずおずと足を開く。
 耳には届かなかったものの、身体の内部で、粘ついた音が響いた。自覚した途端、確かめなくてもわかるほど濡れてしまっている自身のそこに、堪えがたい疼きが走る。
 嫌々従っている自分が、より一層拍車をかける。
 早く…いつもみたいに……苛めて欲しい 
 決して人には言えない欲望、新一にさえも秘密にしているという矛盾を含んだ行為が、息も乱れるほどの興奮を生む。
「み……み、見てください……」
 かちかちと歯を震わせながら、蘭は呟いた。恐る恐る目を上げると、薄く嘲笑を浮かべて冷たく見下ろす少年の青い瞳があった。強く胸に迫ってくる眼差しに、全身が淡い痺れに包まれる。
 コナンは脚が閉じられないよう身を割り込ませると、片手を膝に、もう一方を下部に伸ばした。何か伝いたげに唇を緩ませ、ひくひくと震えるそこに、そっと指を添える。
「んん……」
 待ち望んだ刺激に、蘭は小さくため息をついた。身体の力を抜き、指を受け入れる。
 二本の指は数回くちゅくちゅと花唇の縁をなぞると、熱い蜜を滴らせる奥へと潜り込んでいった。
「あ、あ……ん!」
 ようやく与えられたものに歓びの声を上げ、しかしすぐにはっと息を飲み、蘭は目を伏せた。
 耳に届いたコナンの含み笑いに、きつく手を握りしめる。
「ほら、聞こえるでしょ」
 ぐちゅぐちゅとわざと卑猥な音を立てて指を揺すり、コナンは続けた。
「蘭姉ちゃんのここ、おもらししたみたいに濡れてる。それに……すごく熱いね」
「いやっ……!」
 蘭は顔を真っ赤に染め、隠すようにシーツに埋めた。
「これが答えだよね」
 コナンは根元まで指を埋め込み、ぐいぐいと突き上げながら深奥を抉った。
「うぅ…あうぅ、ん……」
 強い圧迫感、絶え間なく聞こえる粘ついた水音に、蘭は妖しく腰をくねらせた。顔が燃えるように熱い。
 ……恥ずかしいのに、気持ちよくて、頭がどうにかなってしまいそう
 奥底は意に反して時折指を締め付け、その度に弾ける強烈な快感に、新たな蜜がどっと溢れた。
 もれ出る感触に背筋がぞっと震える。
「ねえ、蘭……姉ちゃん」
 囁くように声をひそめ、コナンは薄く笑った。
 いつしか滲んだ涙で霞む視界に少年の顔を捕らえ、蘭は小さく唇を噛んだ。しゃくり上げる息と共に、熱い喘ぎをもらす。
 コナンは喉の奥で笑うと、忙しなく上下する女の腹に手のひらを押し当て、その奥で指を蠢かせた。
「あああぁぁ……!」
 内側から柔芽を愛撫され、たまらずに蘭は高い悲鳴を迸らせた。
 だめ、身体がとろけそう……
「あ、ふぅ…くぅん……」
 切なげな声音と、快感に緩んだ表情が、コナンを更に昂ぶらせる。自ら膝を開きもっともっととねだる姿に、ふと、いたずら心が沸き起こった。
 まずは一度、いかせてから……
 自身の内に湧いた思い付きに密かに笑い、コナンは愛撫の手を早めた。
 内部に埋めた指を三本に増やし、更に親指で、熱を帯びぷっくりと腫れ上がった柔芽をくにゅくにゅと転がす。
「やぁっ、それ…ああぁ……!」
 的確に責める指の動きに、蘭は激しく身悶えた。突き出すように腰を反らせ、がくがくと弾ませる。
 続け様に襲う目も眩む愉悦が、一気に絶頂へと誘う。
 急激に高みへと持ち上げられ、蘭はかすれた嬌声を切れ切れに迸らせた。
「ああぁ……だめ…だめぇっ……、あ、あ…いく……いっ…ちゃう――コ、コナン君……!」
 眦に涙を滲ませ、蘭は縋るようにコナンを見つめた。
「いいよ。我慢しないでいって」
 優しい声音に、ぐっと息を詰める。
「くふぅ……んんんっ……!」
 隣室の人間を起こさぬよう声を抑えるのが精一杯だった。その分乱れに乱れ、あられもなく膝を開ききり大きく仰け反った格好で、蘭は絶頂を迎えた。
 とどめとばかりに、コナンは殊更強く突き上げた。一撃を受け、蘭はひゅうと喉を鳴らし応えた。
 二度、三度、白い肢体がわななく。
 陶然とした表情で、蘭は頂点に酔い痴れた。
 びくんびくんと痙攣を繰り返す身体から、徐々に力が抜けていく。
 最後まで残ったのは、内部の締め付けだった。
 時折思い出したように指を噛んでは、絶頂の余韻に浸る。
「あぁ……」
 満足しきった声で、ようやく蘭はため息をついた。
 そろそろか
 離すまいと締め付けるそこからコナンは静かに指を抜き去ると、間を置かず、花唇のすぐ下にある小さな窄まりにあてがった。
「ひぅっ……!」
 思いも寄らぬ箇所への刺激に悲鳴を上げ、蘭は全身を強張らせた。
「大丈夫、力を抜いて」
 言葉と同時に、コナンはゆっくりと指を進めた。
「あ、あ……っ!」
 おののき震える蘭の腹部を優しく撫で、尚も指を埋め込む。
「絶対痛くしないから」
 充分に濡れた子供の細い指ならば、痛みはないはず。
 実際、身体に痛みはなかった。あるのは、おぞましさと感覚的な痛み。
「なんで……き、汚い、そんなとこ――!」
 蘭は半ば混乱し、髪を振り乱して拒絶した。汚い、やめてと繰り返し訴えるが、コナンは聞き入れず、拒んで力むそこに逆らって指を進めた。
「あぁ……そんなっ……やめて…お、お願い……抜いて、抜いてぇ!」
 むず痒さとおぞましさが交互に襲ってくる。蘭は涙混じりに叫んだ。
「蘭姉ちゃん、大きな声を出さないで」
 不意に強い口調で言い付けられ、蘭はぐっと息を飲んだ。
 未知の感覚に翻弄され、頭がついていかない。
 怯えて泣きじゃくる蘭をなだめるように、コナンはそっと腹部を撫でた。
「大丈夫。力を抜いていれば、痛くないはずだから」
 出来るだけ異物感を抱かせないよう、慎重に根元まで埋め込む。
「ほら、全部入ったよ」
 指を飲み込み、不規則に収縮を繰り返す小さな口を見やり、コナンは顔を上げた。
 ひっひっと胸を喘がせながら、蘭は見つめ返した。
「痛い?」
 問われても、なんと答えていいかわからない。
 痛みはない。けれど……
「っ………」
 蘭はしきりに瞬きを繰り返した。
「痛い?」
 再びコナンは訊ねた。
 入ったきり、動きを止めた指に痛みは感じない。
 けれど……嗚呼 
「コナン……君」
 消えない異物感に、排泄欲がじわじわと押し寄せてくる。力を緩めたら、本当に粗相してしまいそうに思えた。
 蘭が怯えているのは、そのせいだった。
「答えたら抜いてあげる」
「いっ…痛く……、ない…けど……」
「けど?」
 コナンはわずかに指を引き、反応を確かめた。
「やっ…ぁ、変…なの……あぁあ!」
 擬似的な排泄に、頭が混乱する。
「どこが変なの?」
 コナンは再び指を押し込んだ。
「くうぅ……」
 押し出そうとする力に逆らって、じわじわと迫り上がってくる細い異物に、蘭は涙を零した。絶え間なく背筋を駆け抜けるえもいわれぬ感覚に、息が出来なくなる。
「ここ?」
 つい涙に興奮し、コナンは円を描くように強くこね回した。
「やああぁぁぁ……!」
 押し広げる指の動きに、腰が抜けそうになる。
 蘭は悲鳴まじりのため息をもらした。精一杯、声を抑えて。
「……気持ちいい?」
 小さな動きで抜き差しを繰り返しながら訊ねる。
「んん――……」
 強制的にほぐされていく事におののき、蘭は首を打ち振った。
「はぁっ…あぁ……コ、コナン君……」
 もつれる舌で懸命に名を呼ぶ。
「何……?」
 手の動きは止めずに聞き返す。
「こたえ……っ、こたえたから……もぅ…抜いて……」
「……痛くはないんでしょ?」
 内部で、ゆっくりと指を折り曲げる。といっても締め付ける力は強く、ほんの少し動かせただけだが、蘭には大きく響いた。
「んんんっ……!」
 手足を突っ張らせ、蘭はいやいやと首を振った。
 けれど口からもれた声はどこか甘く、完全な拒絶とはかけ離れていた。
 コナンは安堵し、どこまでが安全か確かめようと慎重に指をくねらせた。
「どうなの?」
「!…」
 執拗に繰り返される抽送が、おぞましさとは異なる感覚をもたらした。
 そんな……!
「いや、いやぁ!」
 一瞬でも感じてしまった自分自身に愕然とし、蘭はすぐさま否定した。
「いや……、コナン……君」
「嫌なの?」
 ぽろぽろと涙を零す蘭をまっすぐ見つめ返し、コナンは囁いた。
 はっきり頷く事が出来ず戸惑う女ににっこりと笑いかけ、言葉を続ける。
 もう少し、か
「……そうだよね。初めてだから、まだよく分からないよね」
 わざとあどけなく綴りながら指先をくいっと折り曲げ、内壁を突付く。
 途端に蘭はびくっと身を竦めた。
「じゃあ、好きになるまで毎日してあげるよ」
 信じられないと耳を疑う蘭の目の前で、少年は下部に顔を埋めた。
「や、めて…いや……」
 身体をよじって逃れようとするが、それより早く、小さな舌が蜜に濡れた花弁をぺろりと舐めた。
「ひぅ、ん……!」
 ちろちろと舌先で柔芽を転がされ、同時に後ろの指を動かされる。おぞ気と愉悦、どちらともつかない感覚に、蘭はもつれる舌で甘く鳴いた。
「あぁ、あんん…や…だめっ……コナン君…だめぇ」
 ねじりながら繰り返される抜き差し、柔芽を甘食みする唇に、身体がとろけていく。
 いや…そんな……いや…汚いのに
 気持ちいいと思うのを止められない。せめて口先だけでも否定しなければどうなってしまうか分からない。
「だめ…やめてぇ……だめ――ふあぁ……」
 蘭は緩慢に首を振りながら、再び襲い来る極みに享楽の声をもらした。
「い…や、いく……、いっちゃ……あ、あぁあ……たすけて……たすけ――新一…!」
 悲鳴混じりに名を呼び、涙で霞む向こうに見える新一に縋り付く。
 ――蘭
 微かに届いた愛しい人の声に、蘭は顔をほころばせた。見えない腕で、優しく抱きしめられたよう。
 直後、熱くぬめる舌が花唇の奥に力強く入り込む。
「っ…あぁ――……!」
 とどめの一撃に、蘭は混乱したまま絶頂を迎えた。
 急速に持ち上げられ、真っ白な高みに飲み込まれる。
 長く尾を引く嬌声が、は、と小さな吐息と共に途切れた。
 閉じた瞼から零れ落ちる涙を見つめ、コナンは大きく息をついた。

 

 

 

 窓の外が薄ぼんやりと明るくなり始めた頃。
 隣室に戻るのは億劫と、蘭のベッドで一夜を過ごしたコナンは、彼女より先に目を覚ますよう強く頭に留めた通り起きられた事にほっと安堵しながら、そっと隣を伺った。
 仰向けでわずかに唇を緩ませ、静かな寝息を立てている。額から鼻の頂点、綺麗な隆起を描き唇につながる輪郭を追えば、初めて寝顔を目にした時のように、眩しさに胸が高鳴った。
 昨夜の自分を思えばあまりにも初心な反応に、小さく笑う。それをくれるのは他ならぬこの女だと、自覚するほどに愛しさが募った。起こさないよう少しずつ身体を動かし見下ろす位置まで移動すると、キスの代わりに頬を寄せ、耳元に囁く。
「おはよう、蘭姉ちゃん……また今夜ね」
 そっと表情を伺うと、夢の中では楽しい事に変わったのか、口元に淡い笑みが広がっていく。
 胸を熱くさせる小憎らしいほど愛らしい微笑みに、思わず涙が滲む。
 名残惜しそうに唇をなぞり、コナンはベッドから降りた。
 部屋を去る間際振り返り、口の中で呟く。

 ――また、今夜

 

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