| …みたあとで |
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| 唇に触れるあたたかい感触に、蘭はゆっくりと瞼を持ち上げた。 心地好いまどろみを邪魔する突然のキスに抱いた怒りは、視界を独占する愛しい笑顔によってたちまち消え去った。 ――蘭 耳にするりと入り込んでくる優しい響きが、胸を甘く疼かせる。 「新一……」 自分でも恥ずかしくなるほど優しい声に、蘭はわずかに頬を染めた。 それを隠すように、新一の胸に顔を埋める。少しぎこちなく腕を背中に回し恐々と力をこめて抱きしめる。 不思議な感覚。 実際は指一本動かせず、頭の中だけで自分を思い描いているような、実感の伴わない強い抱擁。 まるで、夢を見ているみたいに…… ――蘭 耳元で、また声がした。直前に過ぎった微かな違和感はたちどころに失せ、至福が背筋を駆け上る。 「新一……！」 少し息苦しいくらいの力強い腕に酔い、蘭は喉を反らせた。 晒された白い喉元に、唇が触れてくる。 ちゅっと音を立てて吸い付く薄い皮膚に微かな吐息をもらし、蘭はわずかに身を揺り動かした。 喉元から肩口へ徐々に移る口付けを嬉しさで応えながら、愛しい人の背中を確かめるようにまさぐる。 ……どこかが、おかしい 手のひらに伝わるぬくもりははっきり感じるのに、何故か自分の両手は頭上にある気がして、自由に動かせるはずなのに同時に束縛を感じる矛盾に、蘭は微かな混乱をきたした。 不安を拭い去ろうと抱く手に力を込めれば、より矛盾は強まり、混乱はますます深まる。 「新一……？」 じわじわと込み上げてくる恐怖に、蘭は縋るように名を呼んだ。 「……あ」 直後、露わになった胸を手のひらで包まれ、またしても違和感は追い払われた。 身体の芯に響く快感に、蘭は深く溺れる事に決めた。 余計な事は考えまい。 今は、新一に抱かれることだけを思う。 「…あぁ……」 少し荒々しい愛撫に、蘭は素直に声を上げた。 たちどころに全身が歓びに包まれ、高みへと導かれる。 気持ちいい 気持ちいい 気持ちいい…… わずかな恥ずかしさと愉悦に、何を不安に思ったのか、その不安すらも跡形もなく溶けていく。 「くう…はあぁっ……」 乳首を柔らかく吸われ、身体中に広がる強い痺れに蘭は高い声で鳴いた。 ――もっと……声聞かせて 新一の手が下部に伸びる。 恥じらいながらも素直に足を開き、迎え入れる。 外と内に感じる新一の熱が、蘭を溶かす。 溶けて尚、違和感は傍らにあったが、もうどうでもよかった。 力強く押し入ってくる新一の猛りが最奥に達する度、蘭は悲鳴にも似た嬌声を上げて仰け反り、髪を振り乱した。 こんなにも乱れ狂う自分が恥ずかしくてどうしようもなかったが、愛しい人と一つになれた歓喜の前には、かないもしない。 もっと欲しい 「ああぁっ……」 もっと欲しい 「は…、あぁん……！」 もっと欲しい 「……んん、ぅ」 もっと…… 「新一……！」 両手を頭上で束縛された格好のまま激しく抱かれる歓びに、蘭は悲鳴を迸らせた。 しなやかな肢体は愛撫を受けて妖しくわななき、とめどなく蜜を滴らせて愛しい男を誘った。 内部を満たす鈍い痛みが、いっそ心地いい。 撫で上げる手の感触、乳首を吸う唇、甘く優しい声の全てが蘭に幸いをもたらす。 このまま身体がはじけてしまいそう…… 「ああああぁぁっ……！」 唐突に訪れた極みに、蘭は大きく目を見開いた。 強い眼差しが、しっかりと自分を捕えている。 小刻みにしゃくり上げながら、合間にただ一度だけ、愛しい人の名を呼ぶ。 「コナン……君――！」 |
| ぱっと目が覚めた。 まだぼんやりしている頭で、蘭はほぼ無意識に毎朝とる行動――枕元に置いた時計を確認した。 六時五分前。 今日は休日だが、調査で朝から遠方に出かける小五郎に合わせて念の為にセットしておいた目覚ましを解除し、一旦手を布団の中に引っ込める。 今日の朝は格別寒い。 ほんの一瞬出しただけで冷えてしまった手が、布団のぬくもりに包まれてじんわりとあたためられる。 ああ、気持ちいい しかし、いつまでもこうしていてはいられないと心を決め、大きく伸びをした瞬間、唐突に夢の内容が鮮やかに甦った。 息も忘れるほど驚き、蘭は身を強張らせた。 急激に早まった鼓動を耳の奥で聞きながら、おどおどと瞳を左右に動かす。 なんて…… 嫌悪にも似た羞恥に、頭の芯がかっと熱くなる。 全てを正確に覚えているわけではなかった。 思い出せるのは、ベッドに両手を縛られコナンに抱かれている自分のあられもない姿そして…… 身も心もとろけてしまいそうなほどの快感。 なんて夢を見てしまったのだろう―― ただただ自分が情けなくて、しばらくベッドから起き上がれなかった。 夢を見ても大抵は目覚めと共に忘れてしまうものなのに、こんな内容に限ってくっきりと蘇ってくる事に、自分の浅ましい本性が垣間見えた気がして、蘭はひたすらに自分を恥じた。 唇を噛む。 それでも恐る恐る、自分の身体に触れ確かめる。 ただの夢だと振り切る為か、それとも逆の意味で安心する為か、蘭は下着の奥に手を潜り込ませた。 数秒の沈黙。 忘れかけていた息を細く吐き出し、ゆっくりと起き上がる。 やや俯き加減で机の上のティッシュを一枚引き出し指先を拭うと、蘭は部屋を出た。 |
| 「気を付けてね、お父さん」 「おう、行ってくる」 「行ってらっしゃい」 まだ少し寝ぼけ眼の父を送り出し、蘭は玄関の鍵を閉めた。 リビングに戻ると、今しがた済ませた朝食の後片付けを手伝い、キッチンへ食器を運ぶコナンの後ろ姿が目に入った。 喉のすぐ下でどきんと鼓動が跳ねる。 思わず震えてしまった唇を引き結び表情を繕うと、蘭は歩き出した。 「お手伝いありがとね、コナン君」 出来るだけ自然に声をかけるが、そうする時は大抵相手と目を合わせていたのを、忘れてしまっていた。気付かないまま、流しに向かう。 平静を装いその実、頭の中は少しの余裕もないほど切羽詰っていた。 普段どおりに振る舞わなければと思えば思うほど、普段の自分が遠く霞んでいく。 駄目…気付かれちゃ駄目…… 「？…」 朝から、妙に自分の脇をすり抜ける視線に首をかしげながら、コナンは振り返った。 取るに足らない違和感だが、気になるといえば気になる。 それ以外はいつもと変わらないのにと、食器洗いに取り掛かる蘭の後ろ姿に何とはなしに視線を送る。 何か、気に病む事があるのだろうか。 真っ先に思い浮かぶのは自分の存在だ。 けれど蘭だって、いつもいつも自分の事ばかりを考えているわけではないだろう。 自分の事は、他に抱える多くの中の一つに過ぎないのだ。 それは少し癪だが、かといってそればかりなのも困りものだと、一人わがままに思考をめぐらす。 そうこう考えている内に水音がやみ、ややあって蘭が振り返る。 動きに合わせて、コナンは半ば反射的に目を上げた。 推理に没頭していた余韻を残す強い眼差しが、振り返る蘭の双眸を真っ向から捕らえる。 「！…」 夢で見た最後の瞬間と奇しくも重なる視線に、蘭は息を詰まらせた。 辛うじて保っていた不自然な自然さは脆くも崩れ去り、二人の間でしばし時が止まる。 「……何かあったの？」 心配そうなコナンの声にすぐ応えていれば、止まった時は再びなめらかに動き出しただろう。しかし、一度止まってしまった、しかも自分で止めてしまった以上は、ここからの流れを辿るしかない。 「あ…、の……」 夢の中、身体の隅々まで広がったはちきれんばかりの快感が、生々しく甦る。途端に腹の底がずうんと疼いた。 真っ赤になって俯き、わずかに膝をこすり合わせ立ち尽くす蘭に、コナンは少なからず驚いた。 ……そっちか！ 取り越し苦労に、まずほっとする。それがおさまると同時に、いたずら心が湧き上がってきた。 「………」 顔を伏せ、押し黙ってしまった蘭に微かな笑みを向け、コナンは一歩足を踏み出した。 蘭の身体がびくりと反応する。 困惑気味に忙しなく左右を見回し、おどおどと後じさるが、すぐに流しに阻まれ逃げ場はなかった。 一歩、また一歩と近付いてくる少年に無意識に息を詰め、蘭は天井を振り仰いだ。 充分に手の届く位置で、コナンは足を止めた。 直後、弾かれたように蘭は前に出た。 真正面に立つコナンの脇をすり抜け逃げる。 逃がすまいと、小さな手が蘭を追う。 「！…」 手首を掴まれ、蘭は立ち止まった。 喉が引き攣れ、うまく息が出来ない。 「っ……」何か伝いかけて開いた唇をわななかせながら、恐る恐るコナンに目を落とす。 私…なにを…… 顔が熱い、どうしようもなく。 今にも泣きそうに強張った蘭の顔をじっと見上げたまま、コナンはゆっくり手を離した。 「何かあったの、蘭姉ちゃん」 先刻とは違う響きで、同じ言葉を繰り返す。 きっかけがどこで生まれたのかは分からない。 分かるのは、彼女が望んでいるということ。 形はどうでも、男なら応えるべきだろう。 「…あ……」 蘭の口から、微かな吐息がもれる。 何もかも、見透かされている。 あんな夢を見た事も。 望んでいる事も。 何もかも。 だって彼は―― 蘭は覚悟を決め、ぎゅっと目を閉じた。 幾度かためらい、口を開く。 「コ……コナン君」 膨れ上がった緊張…期待に、自分の声がやけに遠く感じられた。 目を開き、まっすぐコナンを見つめる。 「……部屋に来て――」 辛うじてしぼり出すと、蘭は手を差し出した。 コナンは小さく頷き、差し出された手を握った。 |
| 閉めた扉に寄り添うようにして、蘭は立ち竦んだ。 戸惑いながらちらちらとコナンを見やり、しかし何を言うでもなく唇を引き結ぶ。 「何か……」 不意に、コナンの低い声音が耳に飛び込んだ。 「……して欲しい事があるんでしょ」 子供らしからぬ貌を目にして、蘭の頬がぎくりと強張る。 ぎくしゃくと、ためらいがちに蘭はしゃがみ込んだ。 二人の目の高さがほぼ同じになる。 しばしそのまま、数秒が流れた。 伝いたくても伝えない言葉をどうにか紡ぎだそうとするように、蘭は口元に指を添え俯いた。 手助けになるかと、コナンはすいと手を伸ばし蘭の唇に触れ、間を置かず口付けた。 「っ……」 触れてくるぬくもりに、蘭はぎゅっと目を瞑った。 必要以上にかたく強張った唇をそっと舐めると、コナンはゆっくり舌を差し入れた。 「あ……」 小さな、けれどやけにはっきりとした声が蘭の口から零れる。 怯えて縮こまった舌を突付いて誘うと、恐る恐る応えてきた。コナンは口端で笑い、そろりと舐め上げた。 「んっ……」 ぞくっと背筋を駆け抜ける淡い痺れに、蘭はきつく手を握りしめた。口内でちろちろと蠢く小さな舌が、続け様に快感を送り込んでくる。次第にほどけていく緊張に、目の奥がじわりと滲んだ。 「…は、……」 より深く貪る舌に溺れかけ、次の瞬間、蘭ははっと目を見開いた。頬に添えられたコナンの手を掴み押しやる。 直前に力を抑えていなければ、勢いに任せ突き飛ばしていたかもしれない。 本当はもっと欲しいのに…… だから……嗚呼 相反する自分を抱え蘭は途方に暮れた。 「……やめる？」 いたわるようなコナンの言葉に、即座に首を振る。 「ち…違うの……！」 思いがけず強い声音になってしまった事を、蘭はすぐさま謝った。 「……？」 掴んだ手をぎゅっと握られ、コナンは小さく首を傾げた。 「お、お願いが…あるの……わ、私――っ」 気ばかり焦ってうまく言葉を紡げない蘭に微笑みかけ、手を握り返す。 いっそ泣きたくなる確かなぬくもりに、蘭は口端を歪めた。 「……わたし」 「落ち着いて、ゆっくり喋って。慌てなくていいから」 なだめるように手の甲をさするコナンに、小刻みにしゃくり上げ、吐き出す。 「………コナン君…お願い」 「うん」 小さく喘ぎながら、蘭は途切れ途切れに言った。 「……わ、私を……私を縛って――ほしいの……に、逃げられない…ように……」 言った側も聞く側も、衝撃的な一言に全身がかっと熱くなる。 「！…」 俄かには信じがたい申し出に、コナンは我が耳を疑った。 「それって……」 軽い混乱に見舞われ、何度も目を瞬かせながら聞き返す。 「……何されても構わないって事？」 「………」 言わなければよかったと、蘭は顔を背けた。深い後悔が胸に圧し掛かる。なんて女だと、軽蔑しているに違いない。 嗚呼、自分はなんて恥知らずなんだろう コナンに包まれた手を震わせ、蘭は唇を噛んだ。我を忘れ、自分勝手な頼み事で彼を困らせてしまった。血の気が一気に引いていく。 どうしよう…嫌われたくないでも…… 今すぐ消えてしまいたい。言うべきではなかった一言に渦巻く後悔が、今にも涙と溢れそうになった寸前。 「……いいよ」 呆気ない一言が耳を打つ。蘭は弾かれたように顔を上げた。 「いいよ、蘭姉ちゃん。その代わり――」 目が合うのを待って、コナンは続けた。 「泣いても嫌がっても、やめてあげないよ。それでもいい？」 子供の無邪気な貌のまま、コナンが笑う。 思いがけず間近にある瞳は、いつもと変わらず強い光を宿し、自分を映していた。 いつもと同じく、残酷なほど優しい笑みを浮かべて。 安堵はすぐに瞬間的な恐怖にとって変わり、それすらも今の蘭にとってはいっそ身震いするほどの陶酔感となる。 「……う…ん」 泣きそうに顔を歪め笑って、蘭は頷いた。そうして欲しい…それが欲しい。 「蘭姉ちゃんのエッチ」 くすくすと笑う声に、熱がどっと溢れる。 「……うん」 潤んだ瞳で熱心に見つめてくる蘭をまっすぐ見つめ返し、コナンは再び口付けた。 互いの腕が自然に相手の背中に伸びる。 しばらくの間、肌から伝わってくる鼓動のみを聞く静かな時が過ぎる。 少し後に。 「……蘭姉ちゃん。服、脱いで」 ゆっくりと綴られるコナンの言葉が、鮮やかに耳に響いた。 |
| スポーツブラとショーツという下着のみの姿で、蘭はおずおずとベッドの端に腰を下ろした。すぐ前には、コナンが立っている。 恥ずかしさに顔を伏せ、蘭はちらちらと視線を送った。 「ホントに、いいんだね」 確認の言葉に、上目遣いで頷く。 コナンはにっこり笑うと、用意したタオル地のヘアバンドを二重に手首に巻き、その上から帯を結んだ。 これなら、多少暴れても傷は残らないだろう。 目の前で、自由を奪われた自身の両手にうっすらと頬を染め、蘭はおずおずとコナンを見やった。手を少し動かしてみる。きつさはないが、思うとおりに動かせない。その事実に、胸の鼓動が早まる。耳の奥で痛いほど響く。 「横になって」 小さく頷き、言われるままバスタオルを腰下に敷き横たわる。 「手を上に」 肘を押して促され、蘭はぎこちなく従った。ばんざいに近い格好になる。 コナンは帯の端をベッドの柵にくぐらせると、一回巻き付け、余った分を蘭の手に渡した。 これは、と眼差しで問い掛ける蘭に、コナンは言った。 「もしも何かあった時、すぐに起きられるように。それと……」 「……それと？」 ためらいがちに聞き返す蘭に笑みを向け、短く付け足す。 「内緒」 謎を残すコナンに、蘭はぎこちなく瞳を揺らした。いつも見せる子供の仮面とは違う貌が、胸に強く迫ってくる。惹きつけてやまない青い瞳をじっと凝視すれば、目の奥にじわりと涙が滲んだ。 慌てて目を逸らす。 そのまま壁紙に視線を沿わせ、言葉の意味に考えを巡らせた。少しの思考で、答はすぐに手に入った。 この状態なら、自分が帯を離せば、いつでも逃げる事が出来る。 束縛するのは、他でもない自分自身…… 理解した途端、蘭は目の奥が熱くなるのを感じた。 「嫌な感じしない？」 コナンはもう一度確認した。 「……へいき」 つかえながら応える。嫌な感じなんてしない。嫌じゃない。あるのはもっと…別の…… ひくりと喉を鳴らすと同時に、コナンの手が胸に触れてくる。蘭は続け様に息を吸った。 「ここ、もう硬くなってるね」 「！…」 言葉に、蘭の頬にさっと赤味が差す。 コナンは人差し指で胸の頂点をくすぐりながら、小刻みに震えを放つ肢体に笑みをもらした。 白い下着の中少し窮屈に見えるたっぷりとしたふくらみを、手のひらでやんわりと揉みしだく。 「ん…、あ……」 応えるようにもれる淡い喘ぎに、自然と笑みが深まる。もっと聞きたいと、コナンは厚めの生地の上から乳首を摘み、次第に尖っていく様を愉しみながらくりくりと左右にこね回した。 「んん……やっ……！」 コナンの手が動く度、下腹に痺れが走る。内股にまで響く痺れに、腰の奥が熱くなっていく。蘭は半ば無意識に膝をこすり合わせた。 まだ、布越しにほんの少しいじられただけだというのに、自身のそこははっきりそうと分かるほど濡れているのを感じ取り、蘭は唇を噛みしめた。 |
| もうやめて もっと触って |
| 相反する願いに、一瞬呼吸が途切れる。 「はんっ……！」 谷間に軽く吸い付かれ、蘭は驚きの声を上げた。 コナンはそのまま、匂い立つ肌に口付けを繰り返した。 途切れ途切れに触れる息遣いに深く愛しさを感じ、蘭は大きく身をくねらせた。ぞくぞくとした震えが背筋を駆け抜ける。 「あぁっ……！」 夢に重なっていく光景が、強い官能をもたらす。 腰の奥からとめどなく疼きが湧き上がってくる。 喘ぎながら、蘭はわざと両手に力を込めてみた。そうする事で、ベッドに拘束され自由に動けない自分が、よりはっきりとしたものになる。 脳天を直撃する強烈な愉悦に、喉が引きつれ上手く息が出来ない。 ひとしきり接吻しコナンは、ふくらみを覆い隠す布に手をかけた。 蘭の身体がひくりと反応する。 見るからに強張った四肢に一拍置いて、コナンはスポーツブラをまくし上げた。 張りのある白く瑞々しい乳房が、ついに露わになる。 いつ見ても、この存在感には圧倒される。 晒された事に、蘭はきつく目を瞑った。 「蘭姉ちゃん、頭上げて」 コナンは背中に手を回すと、姿勢を誘導しながらまくし上げた下着を手首の辺りまでずらした。必要以上に力んだ手足をなだめるように、乱れた髪を丁寧に梳いてやる。 細やかな気遣いに触れ、蘭は身体から徐々に力を抜いていった。恐る恐る目を開けると、思いがけず間近に見下ろす眼差しがあった。 目が合うと同時に、コナンは疑問をぶつけた。 「どうして、無理に小さいのつけてるの？」 はっと口を噤む。言いかけてはためらい、しばしの沈黙の後、かすれた声で蘭は言った。 「き、嫌い…なの……自分の……」 「………」 少し考え、コナンは返した。 「ボクは、好きだよ。蘭姉ちゃんの身体」 「……す、き？」 「うん、好き。大好きだよ。蘭姉ちゃんも」 よどみなく告げられる言葉に、蘭は苦悩に似た表情を顔にのぼらせ、ぽろぽろと涙をこぼした。 泣いてしまうのは、自分でも分からない。 ただ、言葉が気持ちよかった。 小さい子供のようにしゃくり上げすすり泣く蘭に、コナンは神妙な顔で「好きだ」と繰り返した。 なんて事ない言葉に零れる涙が、たまらなく愛しい。 薄々気付いてはいたが、泣くほど嫌だったと知り、愛しさが増す。 彼女は怒るだろう。 けれど、こんなところも好きだ。 「ごめんね、泣かないで蘭姉ちゃん」 コナンはハンカチを取り出すと、濡れた頬にそっと押し当てた。 「うん……」 言葉を受け、蘭は大きく息を吸った。 「コナン君の…せいじゃ……ないの……」 涙を拭う手に、素直に目を閉じる。 気持ちが落ち着いた頃を見計らい、コナンは言った。 「……蘭姉ちゃんはホントに、泣き虫だなあ」 その言葉に蘭は少し怒った顔を見せたが、口にするのは甘える方を選んだ。 「……そうよ。だから…ずっと傍にいてよね」 くすんと鼻を鳴らし、最後は消え入りそうな声で告げる。 コナンはハンカチをしまうと、両手を蘭の頬に差し伸べ優しく包み込んだ。 「……ああ、約束する。誓うよ」 戸惑って揺れる濡れた瞳をしっかりと見つめ、静かに抱きしめる。 「コナン……君」 心地好い抱擁に、蘭は喘ぎながら頬をすり寄せた。 間を置かず、露わになった乳房に小さな手が触れてくる。同時に首筋を舐められ、二箇所からの刺激に蘭はゆるく首を振った。布越しとはまるで違う強い快感に、一気に熱が高まる。 しっとり汗ばんだ肌の感触を愉しみながら、コナンは愛撫に耽った。 天を向いて硬く尖った乳首を親指の腹でさすり、押し潰すようにこねる。 触れるか触れないかの絶妙な接触で乳房の輪郭をなぞられ、ぞくぞくする刺激に息を詰めれば、一転して強く掴まれ、痛みに喘ぐ前に押し出された頂点を人差し指が優しく撫でて相反する快感を与えてくる。 「あっ…、あふ……」 なめらかに繰り返される愛撫に吐息は乱れ、自然声が零れた。 「ひゃっ……！」 指での刺激に頭がぼうっと霞み始めた直後、不意に右の乳首を口に含まれ、蘭は一際高い声を上げた。 「や……やあぁっ……んん！」 ねっとりとあたたかい粘膜に包まれ、それだけでもたまらないのに、柔らかな唇とざらつく舌に翻弄され、蘭はびくびくと身をわななかせた。 「ん…くぅん……っ、あぁん……！」 自分の甘えた声が恥ずかしくて口を噤むが、舌先で乳首を突付かれ転がされて、わざと音を立てて吸われては、ひとたまりもなかった。 内股に広がる痺れが、より強烈なものになる。 嗚呼…早く触ってほしい 胸の内でもっととねだりながら、蘭は半ば無意識に膝を立てた。 目の端にそれを捕らえたコナンは、すかさず手を伸ばしぐいと開いた。 「……あっ！」 驚く声にゆっくり顔を上げ、抵抗する蘭を見下ろす。 熱っぽく潤んだ瞳が、何か伝いたげに見つめてくる。 「力を抜いて」 コナンは微笑みを浮かべ、優しく言った。 静かな声とは裏腹に、膝を掴んだ手の力は思いがけず強い。 蘭は何度も瞬きを繰り返しながら、おずおずと身体を弛緩させた。その気になれば、いくらでも振りほどける。それをしないのは、他でもない自分自身が望んでいるせい。 そして、まっすぐ見つめてくる強い眼差し。 新一と同じ―― もっと支配して…… 蘭は目を閉じ、期待にぶるりと身を震わせた。心持ち、膝を開く。 誘うように。 コナンは正面に移動すると、わざとあどけない声音で言った。 「見てください、は？」 「み――見て……ください」 拳をかたく握りしめ、蘭は声を絞り出した。顔が燃えるように熱い。 恥ずかしい 恥ずかしい 恥ずかしい…… ……でも 誘導するコナンに従うのは、思いのほか強い快感をもたらした。 それに、散々胸を責められすでに身体は昂ぶっている。どうしようもなく疼いて我慢できない。 「どこを？」 「っ……わたし、の……」 お願い…意地悪しないで 「私の？」 肌の感触を楽しむように撫でさすりながら、コナンは言葉を繰り返した。 撫でられる事にか、それとも秘所を晒している事に対する羞恥か…まだ下着は身につけているものの、全て晒したのとさして変わりはない。 蘭は全身をぶるぶると震わせた。 「わ……、わたしの……」 口に出せない言葉に、強く唇を噛む。 「私のどこを見てほしいの？ 蘭姉ちゃん」 あくまでも、口に出す事を要求するコナンに、蘭は恨めしそうに目線を送った。あられもない格好の自分を見下ろして、薄く笑っている少年が目に映る。 「コナン……君」 助けを求めて、か細い声を零す。 熱のこもった視線を向けられ、コナンは密かにため息をもらした。 「……しょうがないなあ」 言いながら、コナンは片手を伸ばした。まっすぐ下部に差し伸べると、布越しに中心部分を突付く。 「んっ……」 途端にぴくんと跳ねる蘭に口端を緩め、上から下へ、優しくなぞる。 「言わないのは、言いたくないから？ それとも……見てほしいところがないから？」 上下に撫でながら、コナンは少しずつ指先に力を込めていった。はっきりそうとわかるほど、蘭のそこはしっとりとした熱を帯びていた。 蘭は大きく首を振った。 「あ…ある……っ」 目に見えて強張った蘭の膝を閉じられないよう掴むと、コナンは繰り返し指を蠢かせた。 「んん、うぅん……」 何かを探す動きでなぞるだけだったのが、やがてくにゅくにゅとこねるものに代わり、円を描いて蠢くコナンの人差し指に、蘭は不規則に腰を揺すった。 「じゃあ教えて。どこを見てほしいの？」 コナンはなぞる指を二本に増やすと、少し強めに押し当てた。 「くっ、ふ……」 たちまち広がる疼きに、蘭は小さく喘いだ。 慎ましく閉じた花唇の上でくにゅくにゅと指が動き、奥にある柔芽を刺激する。 繰り返し襲う耐えがたい快感の波が、迷う背中を後押しする。 「っ……！」 だめ……恥ずかしい―― いっそ言ってしまおうかと喉元まで出掛かるが、どうしても口に出来ない。身体はとっくに、限界を迎えていた。コナンに責められている箇所は燃えるように熱く、痛いほど疼いている。 それでも、それだけは言えない。 「……蘭姉ちゃん」 コナンの呼びかけに、蘭は顔を背けた。睫毛にうっすらと涙が滲む。 実のところコナンも、何が何でも聞きたいと思っているわけではなかった。むしろ、聞きたくはない。最後まで拒んでほしい。それでもあえて追い詰めるのは、言えずに羞恥を抱え戸惑う彼女を見たいからだ。 泣かせてしまうのは、もちろんやりすぎだが。 だから、早く降参してほしい。 嬉しくて泣く以外の涙は見たくないんだ。 「許して……言えない」 わがままに振り回され、蘭は涙をこらえて訴えた。 しゃくり上げる息と共に、全身が小刻みに震える。 仕方ないとばかりにコナンは笑みを浮かべ、ショーツを脱がしにかかった。 「………」 下着を脱がされ再び膝を開かされても抵抗せず、されるがままに身を任せ無言でねだる蘭に気持ちが昂ぶる。 いっそ喰いつきたくなるほど柔らかい女の稜線が、更に追い討ちをかける。 半ば無意識にため息をもらし、コナンは手を伸ばした。朱く熟れ蜜を滴らせる花弁に指を押し付ける。 「あっ……！」 徐々に進入してくる指の感触に、蘭は反射的に膝を閉じようとした。見越していたのか、コナンは即座にそれを阻んだ。 「ちゃんと開いてて」 戸惑ったような視線を向ける蘭に笑顔で言い付け、すっかり濡れそぼったそこに二本の指をあてがう。 「っ……」 触れた途端聞こえたぬちゅっと粘ついた水音に、蘭は真っ赤な顔で横を向いた。 「……あぁ」 ゆっくり入り込んでくる二本の細い異物に、思わず声をもらす。こらえても、腰が震えてしまう。 ほとんど抵抗なく進む指を根元まで埋め、コナンは同じようにゆっくりと引き抜いた。 たったそれだけで、指には透明な蜜がねっとりと絡み付いた。 離す間際、戯れに花唇をくすぐって声を上げさせると、コナンは再び蘭を見下ろす位置に移動した。 「ねえ、蘭姉ちゃん」 シーツに埋めるようにして顔を背けたままの蘭に呼びかける。 ややあって、蘭はぎこちなく顔を上げた。直後目にしたコナンの濡れた指に、眦まで真っ赤に染め唇を引き結ぶ。 「こっちはもうすごい事になっているのに、口に出すのはやっぱり恥ずかしい？」 何か言いかけて口を噤み、こくりと頷く。 「こんなに濡れてるよ。ほら」 鼻先に寄せられた指に、蘭はぎくりと肩を強張らせた。今まで知らなかった自分の匂いに、こらえ切れない羞恥が生じる。しかし同時に、おかしくなってしまったのではないかと思うほどの、好奇心も湧いた。 その指を舐めたら、彼はどんな顔をするだろう…… 「自分の舐めてみる？」 今まさに思い浮かべたものに触れられ、蘭は目を見開いた。激しい動揺に頭が一瞬真っ白になる。 それでも好奇心は消せず、戸惑いながらも蘭は口を開いた。 朱い舌が、自らの蜜に濡れた指を迎え入れる。 目眩を誘う淫らな光景に、コナンは口端を緩めた。 ゆっくりと抜き差しを始める。 「ん、ふ……」 それに伴い、蘭の口から微かなうめきがもれた。 火傷しそうに熱い吐息が、途切れ途切れに指をくすぐる。昂ぶる感情のまま、コナンは口内をかき回した。 「ん…ふぁ……」 少し苦しそうに息をつきながらも、蘭はおしゃぶりを続けた。こんなはしたない事と思う傍ら、乱れる自分を見て興奮してほしいとも願う。 「んん…んぐ……」 コナンにしてみればそれは、擬似的な口淫でもあった。見立てて、舌を絡め唇で扱く姿、ちゅくちゅくと響く卑猥な水音ともあいまって、二人の気分は際限なく高まっていく。 しばらくの間、部屋には二人分の荒い吐息と、淫らな水音だけが響いた。 名残惜しそうに舌をくすぐり、指が口内から引き抜かれる。 間際、甘噛みして、蘭は深いため息をついた。満足に息が継げなかったせいで、少し意識がぼんやりする。 蘭は天井を見つめたまま、緩慢に瞬きを繰り返した。 と、誰かの手が膝に触れた。ああ…理解した直後、不意に襲った鋭い刺激に高い悲鳴を上げる。 「やあぁっ！」 先刻の焦らす動きとは正反対の、的確に柔芽を責める小さな手に蘭はびくびくと全身を波打たせた。手の中の帯をきつく握りしめ、大きく頭を振る。 「くぅっ…コナン君……！」 すでに身体は直前まで追い詰められていたのか、少しの刺激で一気に絶頂まで引き上げられる。 「あうぅっ……お願い…、そのまま手を離さないで…お願い……！」 蜜をなすりつけくちゅぬちゅと柔芽を撫でる指に縋り付き、蘭は切羽詰った声を上げた。 「ああ、もういきそうなの？」 問われ、がくがくと頷く。 「どうなの蘭姉ちゃん。ちゃんと自分の口で言って」 「う、いっ……、くうぅ」 今にもはちきれそうに膨れ上がった快感が目の奥で幾度も閃き、上手く返事が出来ない。 「言わないなら手を離しちゃおうっかな」 「いや……いや！」 蘭は髪を振り乱した。 「じゃあ言って」 「コナン君……」 ひくりと喉を鳴らし、喘ぎの合間に訴える。 「ひ……いっ…、いく……いっちゃうの……もう…、だめぇ……！」 蘭は快楽にとろけた表情で喉を震わせ、目前に迫った絶頂に飛び込んだ。凄まじい力で高みに持ち上げられる。 「あああぁぁぁ……！」 一際高い声を張り上げ、蘭は大きく背を反らせた。 無意識に持ち上がった腰を追って、コナンは奥に指をねじ込んだ。根元まできつく埋め込み、更に強く突き上げる。 「ひぅっ！」 脳天にずうんと響く重苦しい突き上げに、蘭は四肢を引き攣らせた。 手足を突っ張らせたまま、しばし絶頂に酔う。 やがて、頂点を越えて緩やかに引いていく快感の波に、全身が不規則にわなないた。 びくん、びくんと震える白い裸体に、まだ力の残っている内から、コナンは指の動きを再開させた。 蘭はすぐさま、拒絶の声を上げた。 「い、いや！ だめ！ だめぇ！ 感じすぎちゃ……ふあぁ！」 腰をくねらせて訴えるが、コナンは聞き入れず、溢れた蜜をぐちゅっぐぷっと指に絡ませ抜き差しを繰り返した。 「すごくえっちな声。そんなに気持ち良い？」 手の動きは止めずに言う。 「…やめて、やめて……コナン君……許して！」 浮かせた腰をがくがくと揺すり立て、蘭は泣き叫んだ。 「や、いや…いやあぁぁ…ああぁあ……少しだけ……待っ――！」 強すぎる悦楽にとめどなく涙が零れる。 「ダメだよ。最初に言ったでしょ。泣いても嫌がってもやめてあげないって。それに、どこを見てほしいかちゃんと言わなかったでしょ」 その罰だよ 無邪気な笑み…いっそ残酷なほど優しい笑顔でコナンは言った。中に入れた指を激しく動かしながら、押し付けた親指で柔芽をこすり上げる。 「それ――だめえぇっ……！」 続け様に脳天を直撃する度を越えた快感に、身体がはじけそうになる。 「あぁ、あ……変になりそう――！」 鼻にかかった甘い声で鳴き、大きく胸を喘がせる。 「なっていいよ。変になった蘭姉ちゃん、見せて」 ぬちゅぐちゅと粘ついた音を立てて奔放に指を動かしながら告げる。 「くうぅ……」 抵抗の証に蘭は激しく首を振った。必死に声を抑えるが、乱れた息を殺すのは出来そうになかった。 「あ…はぁ……はぁっ……んんっ…！」 「我慢しないでいいからね」 熱い吐息をしとどにもらし、快感に耐える蘭の姿に笑みをこぼす。もっと声が聞きたいと、コナンは顔を近付けた。 「あ…あ――！」 親指に代わって柔芽を責めてくる舌が、思惑通り蘭を狂わせる。 頷くように、何度も首を振り立て蘭は息を乱れさせた。自ら足を開き、押し付けるように腰を差し出す。 「だめ……コナン君……、だめ……」 熱に浮かされたうわ言のように繰り返し、妖しく身をくねらせる。 両手が自由だったら、すぐに逃げられるのに…… 動きを封じられているせいで、どんなに辛い責め苦も甘んじて受け入れなければいけない…拘束するのは他でもない自分自身という事実、矛盾に、蘭は胸の内で酔い痴れた。 やがて、意識がぼんやりともつれていく。 何も分からなくなる。 快楽の、虜になる。 「ああぁっ…、コナンくん……コナンく……気持ちいい……気持ちいいよぉ……」 緩慢に身悶え、蘭は頭に思い浮かぶ言葉をそのまま口にした。 「いいの…すごく……あぁっ…気持ちいい」 手の動きはそのままに、コナンは顔を上げ見やった。 淫らに緩んだ朱い唇から、熱い吐息が絶え間なく零れる。息の合間に途切れ途切れに「気持ちいい」と繰り返す蘭が、たまらなく愛しい。 出来るなら、今すぐ触れたい。唇に触れたい。でも、遠い。 陶然とした表情で歓びの声を上げる蘭に微かな切なさを抱き、コナンは目を伏せた。 構わない。 自分がどうでも、彼女が気持ちよくなってくれればそれでいい。 それでいい。 「あ…、ふ――好き……大好き」 声に目を向ければ、潤んだ瞳で熱心に見つめてくる女の愛しい顔があった。 今にも泣きそうに困惑した表情で笑みを浮かべ、唇だけで「いく」と呟き、蘭は大きく仰け反った。 「んんん――！」 折れんばかりの収縮を繰り返す内部にコナンは強引に三本の指を押し込み、それぞれ抉るように動かし刺激した。 「っ……！」 度を越えた快感、蘭はひゅうと喉を鳴らし、全身をびくびくと痙攣させた。 続け様に快楽を与えられ、身も心をとろけていく。 まるで、夢を見ているみたいに…… 「コナン君……コ、コナン……君」 もつれて上手く喋れない舌で、繰り返し名を呼ぶ。 「ゆ…許して……おかしくな…ても……許して……」 しゃくり上げながら、蘭は必死に訴えた。 ――いいよ 遠く霞む耳に、声が届く。 「あぁっ……！」 直後、鋭い悲鳴が蘭の口から迸る。 「っ…だめ……」 何かをこらえる低い声を発し、蘭は全身を強張らせた。ほぼ同時に、花唇から勢いよく熱い雫を放つ。 「くふぅ……！」 もう一度ぷしゃあっと熱を吹き上げ、不規則に痙攣を繰り返し、蘭はがくりと腰を落とした。 女の荒く忙しない息遣いを聞きながら、コナンはゆっくり指を引き抜いた。 気付けば彼女と同じく、自分も息が乱れていた。 擬似的に迎えた絶頂が、気だるい満足感を生む。瞬く間に広がっていく幸福感に、思わず笑みが浮かんだ。 |
| 夢との境がはっきりしない目覚め。 ゆるゆると目を開き、徐々に見え出した光景に、蘭はぱちぱちと瞬きを繰り返した。 おでこがくっつきそうなほど近くに、眠るコナンの顔がある。 蘭は小さく息を飲んだ。 たった今まで見ていた夢の続きかと、頭が軽い混乱に見舞われる。 驚きに身じろぐと、気配を感じたのか、何事か呟いてコナンが無意識の反応を示す。 起こしては悪いと、蘭は慌てて息をひそめた。そこでようやく、夢の内容を思い出す。 たちまち込み上げてくる羞恥に、一人赤面する。 と、はたと自分の身体に気付く。 いつの間にか、全てが片付けられ元通りになっていた。使った胴衣の帯も、バスタオルも、そして着替えも、全て済んでいる。 それが彼…コナンによるものと知った時、申し訳なさと感謝の気持ちが同時に沸き起こった。 一番強かったのは愛しさだった。 眼鏡を外し、気持ち良さそうに眠る顔は、昔に見たまま。 確実に十年の歳月が過ぎているのに、まるで変わらない寝顔。 まだ夢を見ているのかもしれない。 全身に残る心地好い疲労感に、蘭はゆっくりと瞬きを繰り返した。 もう少し、眠ろう。 起こさないよう気を付けて身を寄せると、蘭は目を閉じた。 頬にかかるコナンの柔らかな寝息に、ふふと笑みを浮かべる。 どんな夢を、見ているのだろう。 |