魔女とお菓子と

 

 

 

 

 

 

 

 

 慌しく過ぎた昼間と、のんびり過ごした夕飯の後。



「…ふう」
 脱衣所の隅に置いた体重計の前で、蘭は小さくため息をついた。
 出来るだけ差異が少なくなるようにと、下着だけの姿になって軽く目を閉じ、開くと同時に険しく目盛りを睨み付け、右足をそろりと持ち上げる。
「蘭姉ちゃん、何やってるの?」
 いざ、足を置こうとした寸前、背後から、不思議そうな声が聞こえてきた。
 蘭は慌てて足を戻すと、肩越しに振り返った。
 脱衣所の戸口に立っているコナンに微苦笑を浮かべ、「な、なんでもないのよ」と大げさに手を振ってごまかす。
 が、見上げてくる眼差しはとっくに何もかも見抜いているようで、その上できょとんとした表情を浮かべているのがなんとも憎たらしい。
「ほ、ほら…今日、園子と一緒に二箇所もケーキバイキング行ったじゃない、それでね、それで……」
 何を言っているのか分からない、といった顔付きで一歩ずつ近付いてくるコナンに、蘭は途中で言葉を詰まらせた。

 ああもう、全部分かっているくせに!

 拗ねたように横目で睨み付け、そっぽを向く。
「…それで、体重が増えてないか確かめようとしてたんだ」
「……そうよ!」
 コナンの言葉にわざと刺々しく言い返す。

 

 昼間、たまたま二人になった時ぽろりと本音をこぼした。
 しばらく甘い物控えなくちゃ
 でないと……

 

「もしも増えてたら、新一兄ちゃんにからかわれちゃうもんね」
 そう言ってからかうコナンをじろりと睨み付ける。
「ホントよ! あいつ、そういう事だけは目ざといんだから!」
 蘭は、自分が今下着だけの姿になっているのも忘れた様子で、腰に手を当て、前屈みになってコナンに顔を近付けた。

 言いたい放題言いやがって……

 ぷりぷりと怒る蘭に、コナンは無理やりに笑顔を浮かべた。
 ちょっとからかうつもりだったのに、ここまで悪し様に言われるとは
 乾いた笑いを途切れ途切れに零す。と、ふと目に入った迫力のある胸の谷間に、瞬時に良い仕返しが思い浮かんだ。
「じゃあ、ボクに任せてよ」
 言うが早いか、ブラジャーの合間に手を滑り込ませ乳房を鷲掴みにする。
「っ……! ちょ、ちょっと!」
 驚いて身を引こうとする蘭の手を掴み強引にしゃがませ、口に人差し指を押し付ける。
「シッ! あんまり大きな声を出すと、おじさんに聞こえちゃうよ」
「!…」
 強張る蘭の瞳ににやりと口端を持ち上げ、コナンはゆっくりと乳房を揉み始めた。
「や、やだ……」
 恥ずかしそうに俯く蘭の耳元に顔を近づけ、そっと囁く。
「確かめてあげるから、黙ってて」
「何を……んんっ……、確かめるの……?」
 すくうように揉み上げられ、蘭はわずかに顔を上気させ聞き返した。
 小さな手が動く度、腰の奥がずくんと疼く。
「蘭姉ちゃんの身体だよ」
 言いながら、もう片方の手で腰のラインをつつっとなぞる。
「やっ……!」
 ぞくっと肌を走る感触に、蘭は肩を跳ねさせた。
 その反応にコナンは薄く笑みを浮かべた。手のひらにころころと当たる乳首を軽く摘む。
「ひゃんっ……!」
 瞬間びくんと仰け反るしなやかな肢体に、頭の芯が熱くなる。
「声は出しちゃダメだってば、蘭姉ちゃん。もう、しょうがないなあ」
 困ったように肩を竦め、コナンは口を塞いだ。
「や、んん……」
 唇を甘食みしながら乳首をくりくりと捏ね回し、次第に荒くなる蘭の吐息を受け止めるように更に深く口付ける。
「ん…あふぅ……んむ……」
 硬くしこった乳首をいやらしくいじくる指に、蘭はびくびくと身体をわななかせた。
 舌の裏を優しく舐められ、脳天に響く甘い痺れに思わず目の前の身体に縋り付く。
 肩からこぼれた蘭の長い黒髪が、コナンの耳をくすぐる。
 鼻先をかすめる甘い髪の匂いに、コナンは肩を大きく上下させた。たまらずに、もう一方の手をショーツの奥に潜り込ませる。
 蘭の身体が一際大きく震えを放った。
 コナンは一旦顔を離すと、唇の上で囁いた。
「声は出しちゃダメだよ」
 確かめるように瞳を覗き込み、少し潤んだ蘭の双眸ににっこりと笑いかけると、熱を帯びぷっくりと腫れた花弁をそろそろと押し開き指を滑り込ませた。
「ふぅ……ん――」
 案の定、強い刺激に声を抑え切れない蘭の口をすぐさま塞ぐと、逃げ惑う舌に軽く噛み付く。
「ぅん……んんんん……!」
 いやいやと首を振るのも構わずに指を進めると、既にそこは熱く熟れたっぷりと蜜を湛えていた。
 くちゅりと指先を埋める。同時に乳首を周りから責め、気紛れに突起をいじくっては、敏感な反応を見せる蘭にコナンは満足そうに笑みを浮かべた。

 やだ…いつもよりすごく……感じる……!

 内部にもぐり込んだ小さな異物がくねくねと奔放に動く度、背筋を甘い衝動が駆け抜けて、今すぐにでもいってしまいそうになる。
 いつにも増して敏感な自身に戸惑いながらも、一度抱きしめてしまった腕はもうほどけそうになかった。

 ――身体が満足するまで。

 コナンは内部に埋めていた指をもう二本増やすと、薬指から順に動かして快感を呼び寄せた。
「やぁっ……んふぅ…んん!」
 鼓膜を犯す女の甘い喘ぎに、頭がくらくらする。もっと鳴かせたいと、コナンは逸る心のままぴちゃぴちゃと舌を絡め、届くぎりぎりまで埋め込んだ指を激しく動かした。
「ふぁっ……――!」
 背筋を駆け抜ける凄まじい愉悦に短い叫びを上げ、蘭は抱きしめる腕に力を込めた。はあはあと熱い吐息を交えながらコナンの舌を貪り、もっともっとと欲しがる。
 自ら腰をくねらせる様と、時折きゅうっと締め付ける内部に、コナンは極まりが近い事を悟った。
「……いきそう?」
 唇をずらして訊ねると、蘭は少し困ったような顔で笑みを浮かべ小さく頷いた。
 頬にかかる吐息が、火傷しそうに熱い。
「いく…、いくの……もういきそうなの……あぁ……し…、んん……」
 思わず新一の名を呼びそうになり、蘭はぐっと息を詰めた。大きく首を振る。
「蘭……」
 呼びかける声が、自分でもわかるほどひくついている。思わず苦笑いを零し、コナンは更に激しく指をうごめかせた。
 貪欲に締め付けてくる内部に逆らって指を揺すり立て突き上げ、とめどなく溢れてくる蜜をこすりつけるようにして柔芽を捏ね回す。
「あぁっ…いい……いく…いくの……い、く……もういっちゃうぅ……あぁああ……――!」
 目前に迫った極まりの瞬間に、蘭は顰めた声を上げ大きく仰のいた。
 食いちぎらんばかりに噛み付いてくる動きの中、コナンは強く突き上げとどめの一撃を与えた。
「っ……――!」
 もう、声も出せない。

 いい…すごく……!

 幾度も襲い来る大きなうねりに、蘭は繰り返し身体を痙攣させた。
 しどけなく緩んだ女の顔を、コナンは息をひそめて見つめ続けた。
 彼女の味わう頂点の真っ白な感触が、同じように訪れる。
 射精無しの絶頂に、一瞬だけ身体がわなないた。

 

 

 

 しばらく続いていた荒い呼吸がようやく収まった頃、コナンはゆっくりと身体を離した。
 ややあって、蘭がそろそろと顔を上げる。
「ちゃんと…確かめてくれた……?」
 拗ねたようにぶっきらぼうに訊ねる蘭に、コナンは小さく笑みを浮かべ、言った。
「よくわからなかったから、もう一度確かめていい?」
 その言葉に、蘭はちょっとだけ唇を尖らせ、上目遣いにコナンを見やった。
「……もう」
 唇だけで綴る。
 そんな蘭を宥めるように、コナンは頬に軽くキスをした。
「続きはお風呂の中でさ。いいでしょ、蘭姉ちゃん」
 しばし間を置き、真っ赤な顔で蘭はこくりと頷いた。

 

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