謝れば済むと思って

 

 

 

 

 

 蘭の自室、ベッドの上で、コナンと蘭は向かい合い視線をぶつけていた。
 先に逸らしたのは蘭だった。仰向けに横たわった自分に跨り、何も言わずじっと見つめるばかりのコナンから、ぷいとばかりに目を逸らす。
 怒っていた、拗ねていた。
 きっかけは、半月ほど前園子に誘われ、コナンと共に昨日今日とで出かけた一泊二日の小旅行だった。
 彼女の別荘がある海辺の地で、花火大会を楽しむのが旅行の目的だった。
 予定の日の前日から、小五郎が町内会の旅行で出かける予定があり、留守番に少し不満を感じていた蘭とコナンは二つ返事で誘いを受けた。
 当日午前中に出発し、海の見えるレストランで昼食を取った後、別荘に到着。夕食時まで自由行動、夕食の後は、お待ちかねの花火大会…大まかな旅程はこうだ。
 レストランでの食事も、自由時間に園子を誘いコナンと三人で海辺を散策した事も、別荘での夕食会も、蘭には大満足の出来事だった。
 けれど肝心の花火大会だけが、盛り上がる事が出来なかった。
 大会自体は大盛況だった。絶え間なく湧き起こる歓声、拍手、最後まで大盛り上がりだった。
 それでも蘭が楽しめなかったのは、直前にコナンが仕掛けたある事が原因だった。
 それが、今、蘭が拗ねている怒っている理由だった。
 夕食後、一旦あてがわれた部屋に戻り出かける時間までをのんびり過ごしていた時の事。
 あろう事かコナンが誘ってきたのだ。
 どんなに駄目と宥めても、コナンは聞き入れず何度も胸をさすり、劣情を煽ってきた。

 しよう、蘭姉ちゃん……しよう。ダメ……?

 その時の熱っぽい囁き、唇に触れてきた吐息、間近に迫った青い瞳は、まだ生々しく残っている。
 もしあの時呼ぶ声がしなければ、はしたなくも一度肌を合わせてしまっていたかもしれない。
 そこまで思ってしまうほど、彼の誘いは強烈だった。
 それだけ、身体に刻み込まれていた。
 だからせめて、夜ならばと淫らにも思ってしまったのだが、コナンはそれ以後、手を繋ぐ事さえしなかった。花火大会の行きも帰りも、隣を歩くが手を繋ぐ素振りを見せるとすっと離れていった。
 機嫌を損ねてしまったのかと話しかければ受け答えは何ら変わりなく、ただ、触れる事だけしなかった。
 言いようのない寂しさとほんの少しの怒りが胸中に生じる。
 だから蘭は怒り、拗ねて、帰宅後会話もそこそこに部屋に引っ込みコナンを遮断した。
 そこに彼はやってきた。

 

 当り前の顔をして部屋にやってきたコナンに恨みがましい視線をぶつけるが、どうしても無碍には出来ず、ベッドに組み敷かれる事になった。
 せめてもの抵抗に、蘭はぷいとばかりに目を逸らした。

「なによ…ずっとほったらかにしてたくせに」
「……ホント言うとね、ボクもやせ我慢してた」
「……何よ、コナン君…意地悪ばっかり」
「ゴメンね」
「謝れば済むと思って」
「ゴメンなさい」
「……知らない。コナン君なんか」

 蘭は勢いよくそっぽを向いた。
 コナンは背けられた頬に恐る恐る手を当て、自分の方に向かせる。

「……やだ」

 またそっぽを向く蘭。

「怒らないで…蘭姉ちゃん」

 また、そっと自分の方を向かせる。

「やだ……怒ってるんだから」

 三度、そっぽを向く蘭に合わせてコナンもくいっと手首をひねる。

「……もう!」

 動きを見透かされていた事に蘭は怒るが、同時に少しおかしくて、唇の端に笑みが滲んでしまう。それが悔しくて引き締めるも、伺うようにおっかなびっくり見つめてくるコナンにいつまでも怒っているのも馬鹿らしくなり、蘭は小さく「もう」とうなった。
 コナンはそっと唇を重ね合わせ、すぐに離れた。小旅行の最中はどうしてもつかえてしまい上手く口に出来なかったひと言だが、今は気持と共にするすると出てきた。

「ゴメンなさい」
「……やだ。まだ怒ってるんだからね」

 紡がれる言葉は、先刻よりずっと柔らかな響きになっていた。

「ゴメンなさい」

 コナンはもう一度口付け、額と頬にも接吻した。別荘であんな風に誘ってしまった事を、本当は後悔していた。上手く謝れず、きっかけが掴めず、おかしな態度を取ってしまった事も含めて心から悔いて、接吻する。
 あたたかな接触が、怒りに凝った蘭の心をすっと溶かしていく。

「しらない……」

 優しく蘭が言う。ようやく収まった怒気が戻らぬよう、慎重に動きながら、コナンはキスを繰り返した。

「ああ……コナン君」
「……なあに?」
「……し、しよう」

 おずおずと目を見合わせ、蘭は言った。

「ダメ……?」

 答えの代わりにコナンは唇を重ねた。わずかに開いたその奥に舌を割り込ませ、愛しい女の口内をゆっくりねぶる。

「ん…あ、あふ……」
「う、ん……」

 やせ我慢していたという言葉通り、コナンもキスで昂る。
 噛み付くような荒々しいキスに少しおののく蘭。すぐに自分も応えて小さな舌に吸い付いて貪る。
 ぴちゃぴちゃと唾液を絡めながら舌を食み、唇に噛み付き、舐めまわす。

「んっ…ん、んぅ……ふぁ…ああ」

 途中何度も喘ぐように息を吸ってはまた吸い付き、二人は飽きもせず互いの舌を味わった。
 ようやく離れた時、蘭の目はすっかりとろんと潤んでいた。それを見つめるコナンの双眸も、のぼせたように熱い物に変わっていた。
 コナンの手が、蘭のブラウスのボタンにかかる。一つずつ外されていくのをしばし見つめた後、蘭は右手を持ち上げコナンの唇に触れた。
 そっとさするような動きにうっすら笑んで、コナンは目を見合わせた。

「ちょっとくすぐったい」
「ごめん…でも触ってたい」

 蘭が遠慮がちに言う。たとえほんのわずかな時間とはいえ、ずっと触れていなかったのだ。どこでも、触っていたい。
 なんて可愛らしいひと言…コナンはむず痒そうに口端を緩めると、蘭の手に自ら頬をすりよせ、それから指先にちゅっと口付けた。
 蘭は満足そうに微笑み、ゆっくりと愛しい男の頬をさすった。
 ボタンが全て外され、前をはだけられる。
 まだ下着が残っているが、全て見られたも同然の恰好に蘭がぴくりと反応を見せる。
 ほんのわずか、腹部が引き締まる。
 コナンはそこを手のひらでそっと撫でた。またきゅと反応する。

「っ……」

 同時に熱いため息がもれるのを聞きながら、今度は鎖骨の辺りから手をすべらせ、丸い膨らみを撫でる。
 心なしか、蘭の表情に苦しげな色が混じった。
 今、彼女を無理に圧迫しているものはない。とすると、彼女のコンプレックスが過ぎったという事だ。今すぐにでも襲いかかりたい見事な肢体を前にコナンは欲求をぐっと飲み込み、慎重に乳房に触れた。

「へ、へいき……しよう、コナン君」

 確かめているのを感じ取った蘭は、切羽詰まった声で告げた。
 コナンは顔を上げると、少し泣きそうな女ににっこり笑いかけた。左手を差し伸べ、宥めるように頬をさする。それから屈んで顔を近付け、ゆっくり唇を塞ぐ。
 いたわるような口付けに蘭は、自分がいつの間にかひどく緊張していた事を知った。片腕で抱きしめながら接吻され、強張りは瞬く間に解けていった。
 と、コナンの右手が乳房にかかる。
 嫌な気持ちは起こらなかった。蘭はほっと力を抜くと、自ら乳房を押し付けもう大丈夫だと云った。
 それでもはじめ、コナンの手はじれったいほど優しく動いた。嬉しさに目の奥がじわっと熱くなる。

「もっと…しよう」

 耳元で囁き、蘭は小さな身体をその腕に抱いた。身体一杯で彼の熱を受け取った途端、腰の奥からどっと疼きが溢れた。我慢が出来ない、一気に欲求が膨れ上がる、

「あっ……あっ!」

 まるで見透かしたかのように、コナンの愛撫が一転して激しいものになる。ぐいとばかりにブラが押し上げられ、もみくちゃにする勢いで乳房に指が食い込む。

「あ、あ…やっ……ああ!」

 小さな手が左右の膨らみを等しく翻弄するのを、蘭は喘ぎながら見つめた。

「らん、ね……」

 少しかすれた声を耳にし、蘭は頷くように身じろいだ。
 コナンは手に余るほどの白い柔肉を何度も揉みしだくと、すっかり起ち上がった頂点に吸い付いた。口に含んだ乳首を歯で挟み、軽く引っ張る。

「あ、や…だ……だめ、そんなしちゃだめ……!」

 うろたえる女の声にうっとりしながら、少し乱暴に乳房を掴む。掴む、指先が埋まるほどに。

「や、いたい…コナンく……」

 ずきずきと沁みてくるのに、蘭にはそれも快感だった。痛いほどがむしゃらに求められていると思うと、嬉しさに目が眩みもっとしてほしくなる。
 蘭は無我夢中で、抱きしめた背中をまさぐった。

「あ、あぁ…そこ気持ちい……いい……ああ!」

 舌先でくにゅくにゅと乳首を弄ると、たちまち蘭は熱い吐息と共に喘ぎを零した。頭の芯まで痺れる甘い声。コナンは唾液に濡れた突起をそっと摘まみ、くりくりと転がしてはまたしゃぶった。

「あ…胸、気持ちいい……いいの……もっと…あぁん…あ、あ…もっとさわって…あぁ……やぁあ!」

 右と左と繰り返し吸われ、蘭はぶるぶると身を震わせた。とてもじっとしていられない。熱い粘膜にきゅっと吸い上げられる度、ぞくっとするほどの快感が首筋にまで這い上がってくる。
 蘭は頬を真っ赤に染め、喘ぎながら首を振り立てた。
 それに伴い、身体の芯が急速に燃え上がっていく。腹の奥がしようもなく疼き、耐えきれず蘭は膝を擦り合わせ身悶えた。
 女の甘える声がもっと聞きたくて、コナンはひたすらに目の前の白い膨らみを弄った。唇で乳首を食み、舌で舐め潰し、掴んだ乳房をゆるゆると揺する。
 音を立てるほど突起を吸うと、特に強く蘭は反応した。

「やぁっ! あ…もう、も…吸っちゃだめ! あ、あ……ううん…気持ちい…ん、でも……はあぅっ…あぁああ!」

 愛らしい顔が、今にも泣き出しそうに歪む。なのに唇から零れるのは腰に響くほどの甘ったるい嬌声、コナンは溺れ切った顔で愛撫に耽った。
 好き勝手揉みくちゃにしてしまったせいで、透き通るように白かった乳房は今うっすら桜色に染まっていた。蘭が身悶えるのに合わせて、ゆるゆる揺れている。コナンは一瞬悔いた顔をし、詫びを込めてゆっくり舌を這わせた。その間にも頂点への愛撫は続け、五指でまんべんなくさすっては、根元から先端へと扱き上げる。

「んぅ…あぁ…あぁ……ああっ……!」

 絶え間なく続く狂おしいほどの愉悦に蘭はおこりのように身を震わせた。直後、びくんと身を竦める。腰の奥から、とろりと濃い物が溢れたのを感じ取ったからだ。

「あ、あ…あ」

 もじもじと腰を揺する。
 と、少し低い声が耳に届いた。

「蘭姉ちゃん…足開いて」
「え、あ……」

 言葉と同時に小さな手が下着の奥にもぐり込む。恥ずかしい有り様を知られる恐れと触ってほしい肉欲とがせめぎ合うが、蘭はすぐに片方に手を伸ばした。

「んっ……」

 這い進んでくる手に合わせ、蘭は足を広げた。指先はすぐに、ねっとり濡れた媚肉に触れた。

「あぅ……」

 何か言われるのではないかと蘭は身を縮めた。
 けれど今のコナンに笑う余裕はなかった。少しせっかちな動きで花弁を割り開き、半ば起ち上がりかけた柔芽を探る。

「あぁっ!」

 中指がそこをかすめた途端、蘭は高い悲鳴を上げて顎を上げた。

「蘭姉ちゃんのここ…すごいね。すごく濡れてる」

 火傷しそうに熱い蜜を塗り付けるようにコナンは指を動かし、じっくりと嬲った。

「あ…だ、だって……」

 昨日からずっと…こうして触られるのを待っていたのだ。その上乳房をいやというほど責められ、すっかり身体は燃え上がっていた。

「ああうっ!」

 コナンの手が本格的に動き出す。揃えた指先で膣口を撫でられ、手のひらで花芽を揉むように刺激され、更にはもう一方の手と口とで胸を弄くられ、弱い個所を余さず愛撫する動きにたちまち蘭は息を乱れさせた。

「や、やぁっ! だめ、そんなぁ……あ、いい…気持ちいい、ああ気持ちいい……もっと…いい! コナン君! ああぁ!」

 蘭は小さな身体をしっかり抱きしめ、何度も仰け反った。あっという間に絶頂へと押し上げられる。

「いい…く、あうぅ……だめ…いっちゃう…いっ…いきそ……あぁ! いく、あ…あぁ!」

 ひっひっと切れ切れに喉を引き攣らせ、蘭はしきりに喘いだ。

「……いつもより早いね」
「だってぇ…だ…て……あぁ、あ…ずっとしたかった…んだもん…コナンくん」

 忙しなく背中をまさぐり、喘ぎながら答える蘭の濡れた瞳を笑って見つめ返すと、コナンは再び乳房を口に含んだ。ちゅうっと吸い上げ、見せつけるように大きく舌を伸ばして乳首を舐める。

「ああ、だめぇ…そんなこと……」

 蘭は何度も瞬きを繰り返しながら、舌で転がされる自分の乳首を凝視した。くにゃりと潰され、すぐに起ち上がる興奮の証を見て取り、背筋がぞくぞくとざわめく。
 それほど強烈な光景だった。

「あっ…あああ! だめ――い、いくぅ! あああああぁ!」

 鋭い悲鳴を迸らせ、蘭はすぐにぐっと息を詰めた。
 身を固くする蘭に合図を受け取り、コナンは膣口を撫でていた指を二本、ぬるりと内部に埋め込んだ。根元まで押し込み、更に奥をぐいぐいと抉り上げる。

「あぐぅっ……!」

 蘭は横向きになると、コナンの手を合間に挟んだままきつく足を閉じ、うめきながら何度も身体を痙攣させた。
 頭の中がほとんど真っ白になる瞬間、それでも蘭は、しっかとコナンを抱きしめたままでいた。
 十秒…二十秒…次第に蘭の身体から力が抜けていく。

「あぁ…あ……」

 半ば放心した様子で、蘭がため息をつく。
 頃合いに、コナンは軽く身じろいでみた。

「あ…ごめん……」

 慌てて蘭は腕をほどいた。コナンの身体をくまなく見回し、異変がないか探す。

「大丈夫。ボク、結構頑丈だから」

 言ってコナンは、覗き込んでくる蘭の鼻先にちゅっと口付けた。

「それに蘭姉ちゃんの声と引き換えなら、骨の一本くらいは惜しくないかも」
「わ、わたしそんなに、バカ力じゃないもん……」

 言ってから不安になり、蘭はうかがうように上目遣いでコナンを見やった。
 腹を抱えて笑いたくなるほど、可愛らしい女。
 コナンは安心させるように見つめ返すと、埋め込んだままの指をくるりとひねった。

「ひゃう!」

 途端に蘭の身体がびくりと跳ねる。

「もっとしてもいい?」

 問いかけに蘭は目を閉じ、二度三度頷いた。

「しよう…コナン君。もっといっぱい……」
「してあげる。蘭姉ちゃんが泣いてもやめてあげない」
「い、いじわる…ああ、でも……」

 閉じた瞼の裏に浮かぶ、自分の痴態に蘭はびくびくっとわなないた。何度かそうして、コナンに責め抜かれた記憶が鮮明に蘇ったのだ。もう嫌だとどんなに泣いて許しを乞うても、本当に限界が訪れるまで解放してはくれなかった。それでいて彼はいつだって、本当に嫌がる事は強いてこない。ぎりぎりを見極めていじめてくる。全身で愛してくる。
 今日もまたそうされるのだと思うと、蘭は震えてしまうのをどうにも止められなかった。

「して……」

 蘭は恐る恐る目を見開き、間近にある支配者の青を瞳に映した。

「おねがい…コナンくん」

 一度達した興奮がまだ眦にうっすら残る蘭の瞳に淡く笑いかけ、コナンはゆっくり指を抜き去った。

「んぅ…!」

 声が出てしまうのは、抜きながらコナンが内部を抉るように刺激したからだ。襞の感触を楽しむかのように指先を折り曲げ、擦りながら手を引くコナンに熱っぽい視線をぶつけ、蘭は小さく震えを放った。
 と、コナンの右手が口元に押し付けられた。
 手の甲まで垂れた蜜で濡れそぼり、ぬるりと光る様に蘭は眼差しを強張らせた。
 コナンは薄く笑ったまま、なすりつけるように蘭の唇をなぞった。
 自分の匂いが色濃く残る右手に肩を竦め、蘭は口を開いた。そのまま恐る恐る舌を伸ばし、コナンの指を舐め始める。
 何度こうして、自分の匂いを舐め取った事だろう…蘭はくらくらと頭を眩ませながら、無心でおしゃぶりを続けた。小指から中指薬指と一本ずつ咥えては、綺麗に舐め取っていく。視界の端に、コナンの視線を感じる。見られている事に激しい羞恥を感じ、また一方で、見せつけて驚かせたい、露悪に耽りたい淫らな欲求を感じていた。
 後者がどんどん膨れ上がる。それにつれて、ようやく絶頂の波が引いた身体に新たな火がともり、瞬く間に燃え上がっていくのを蘭は止められずにいた。
 コナンは手をついて起き上がると、面白そうに嬉しそうに、いっそうっとりと蘭の口淫を眺めていた。
 人差し指を咥えられたのをきっかけに、戯れに指先で舌をくすぐってみる。

「ふぅ、ん……!」

 たちまち蘭の唇から切なげな声が零れた。逃げ惑い竦む舌を執拗に追いかけ、コナンはくりくりとくすぐった。

「やあぁ……」

 愛らしい顔が困ったように歪むのに、コナンは目を細めた。たまらない、なんて表情をするのだろう。
 じっと視線を注いだまま、今度は抜き差しする動きに変える。
 恨めしげに見上げながらも、蘭は健気に唇をすぼめ吸った。愛しい男のものを吸うように。
 しかしそれはすぐに中断された。

「……だめ!」

 蘭は短く叫び、もう耐えきれないとばかりに顔を背けた。喘ぐように息を吸う。
 そんなに彼女の呼吸を阻害していたのかとコナンは心配するが、潤んだ目とわななく唇から蘭の中にくすぶる劣情を見つけ、ほっとして、にやりと笑う。

「何がダメなの、蘭姉ちゃん」

 とっくに答えは手にしているのに、コナンは少し意地悪く尋ねた。
 蘭は強い目付きでコナンを見据えた。

「もう……分かってる癖に」

 彼の事は分かっている。見て分かる。とっくに答えを知っている顔、何度も目にしてきた。

「またいじわるする……」

 不満げに小さく尖った唇を、コナンは指先でそっとなぞった。ふっくらと瑞々しい感触に思わず笑みが零れる。

「わ…笑わないで……」

 浅ましさを嗤われたのだと勘違いし、蘭はたちまち首を竦めた。

「違うよ」

 囁き、コナンはそっと接吻した。

「ゴメンね、蘭姉ちゃん」
「……あ、謝れば…済むと思ってるでしょ」
「思ってない」

 いっそ熱っぽく見つめ、コナンはちゅっと音を立てて首筋に口付けた。

「ん……あん……」

 鎖骨の辺りに熱い唇が吸い付く。蘭は淡く声を零し、身体のあちこちに接吻しながら徐々に下腹へと向かっていくコナンをじっと見つめていた。
 脇腹の辺りに触れられた時、じいんとした疼きが身体の芯を駆け抜けた。

 早く、早く……

 我慢しきれず、もぞもぞと身動ぎ訴える。
 コナンの手が下着にかかる。言われずとも蘭は腰を上げて助け、脱がしながらも肌に幾度も口付けを続けるコナンに何度も目を瞬いた。
 足首にちゅっと吸い付かれると、ぶるりと身体が震えた。
 コナンはそのまま恭しく片足を持ち上げると、ふくらはぎから順に唇で食みながら中心へと向かった。

「っ……」

 蘭はもう片方の足をおずおずと開き、コナンを誘った。
 唇が、とうとう脚の付け根に差し掛かる。

「ああっ……」

 小さくうめき、蘭は目を閉じた。すぐに来るだろう接触を思うと、それだけで達してしまいそうなほど身体は昂っていた。

「み――見てください……」

 いつもの合図を口にすると、ずうんと重苦しい疼きが下腹に生じた。下部が腫れたようにずきずきと痛む。違う、痛いのではなくて、待ち焦がれて熱を帯びているのだ。
 早く触って、鎮めてほしい。気も狂うほど、責め抜いてほしい。

「あぁっ!」

 恥知らずな願いを見透かしたのか、前触れなくコナンの指が内部に食い込んできた。拳を打ち付ける勢いで貫かれ、思わず蘭は叫びを上げた。しかしそれすらも今の蘭には心地良い刺激だった。
 欲しかった物をようやく与えられ、蘭はありったけの声を振り絞った。

「あっ! あぁっ! や、やぁ! ん、あう!」
「……いい声」
「やっ…はずかし…コ、コナンく……あっ…でも気持ちいい…あぁ! すごい…きもちい……あん! あぁっ! あっ!」

 蘭は何度も背を反らせ、強い力で抉ってくる異物に享楽の声を迸らせた。余りの激しさに、つい反射で足を閉じてしまいそうになる。
 コナンはそれを片手で阻み、なお強く内奥を突いた。きつく抉る。散々に深奥を蹂躙する。
 ぐじゅっぬちゅっと蜜をかき回す音にいやいやと蘭が首を振る。

「いやぁ…いやあぁ……ああ気持ちい…いい、いい! ああぅ! ああぁ!」

 それでいて素直に悦びの声を上げる女に陶然と笑みを浮かべ、コナンは尚しつこく内部を穿った。気持ちいいと叫ぶ通り、膣内はきゅうきゅうと収縮を繰り返し、異物に絡み付く動きをみせた。熱い蜜が後から後から溢れて、拳を打ち付ける度ぴしゃぴしゃと飛び散った。
 それほどに激しく自分のもので貫いている妄想に耽りながらコナンは、目の端でゆらゆらと揺れる蘭の足を掴んで引き寄せ、その健康的に張った肌にねっとり舌を這わせた。

「あぁ、あ……」

 思いがけない箇所にぬるりとした熱さを感じ、蘭は目を開けてぎくしゃくと見やった。
 首を曲げ、おっかなびっくり見つめてくる蘭と強く目を見合わせたまま、コナンは抱えた足に口付けた。

「……ぜんぶ好き」

 呟いたのは、ほとんど無意識だった。何を口走っているのかと内心うろたえていると、蘭が喘ぎながら必死に言った。

「あ、ああ…わたしも…んっ…す、すき」
 しんいち

 何とか言い切った直後、腰の奥でぐうっと熱い疼きが膨れ上がった。

「や…やあぁ! だめ、だめ、きちゃう…きちゃう!」

 蘭の声が切羽詰まった物に変わる。何度もわななき、擦り付けるようにして腰を蠢かせている動きにもう絶頂が近いと見たコナンは、ぐいとばかりに足を押しやってより大きく開かせると、奥深くまで埋め込み指先で何度も抉った。

「くぅう…だめぇ! ひっ…いく…いくぅ…いく――うああぁ!」

 激しく喉を震わせ、蘭は絶頂を迎えた。大きく背を反らせたまま、びく、びくと四肢をわななかせる。
 合わせて内部がきゅうっと締め付けを増し、不規則にふっと緩んではまた締め付け、咥え込んだコナンの指を離すまいと何度も吸い付いた。
 やがて蘭はがっくりと脱力し、気だるげに胸を喘がせた。
 コナンは抱えていた足をそっと床におろしてやった。
 まだ、内部の締め付けは続いていた。軽く引いただけでは離してくれそうにない。それは蘭が意図してやっているものではないと分かっていたが、興奮冷めやらぬコナンにはそれが、もっとしようと誘っているように思えてならなかった。
 やせ我慢という言葉通り、コナンもまた飢え、渇きを抱えていた。
 もっとしたい、何も分からなくなるまで。
 蘭の声に匂いに溺れて、何も分からなくなるまでもっと。
 食い付いてくる内襞に逆らって指先を折り曲げ、コナンは擦るようにして深部を探った。

「あっ、だめ…まだしちゃ……!」

 うろたえる蘭を無視して、浅い個所をごりごりと抉る。

「くうぅっ!」

 蘭の身体がびくびくっとわななく。

「こっちも、好きだったよね」

 言ってコナンは、くるりと手首を返すと、後孔へ向かって拡げるようにくじった。
 達したばかりで鋭敏になった部分を容赦なく責めるコナンに、蘭は何度も首を振りたくり涙交じりの声で叫んだ。

「だめ…それしちゃだめぇ!」
「お尻に響くの、好きだったよね」
「やっ…お、お尻だめぇっ……いく…ああ…また、またいっちゃう……!」
「何度でもいかせてあげる」

 コナンは強い声で告げ、また手のひらを上向きにすると、指を咥え込んだ花弁の少し上でひくひくとわなないている柔芽を親指で舐めるように転がした。

「あああぁぁ!」

 蘭は鋭い悲鳴を上げ、逃げるように腰をうねらせた。
 構わずコナンは花芽を責め立て、押し潰すようにぐりぐりといびった。
 普段ならば耐えがたい激痛に悶絶するところだが、絶頂寸前まで迫った身には狂おしいほど甘美な一撃だった。
 とどめとなり、蘭を貫く。

「だめ……だめぇ! そこ、それだめっ……いく、ああ…いく! い…くっ…コナンく…やああぁ!」

 がくがくと腰を弾ませ、蘭はぐっと歯を食いしばった。
 絶頂の激しさを見せつける蘭に同じく息を乱し、コナンは喘ぐようにしゃくり上げた。
 先刻より更にきつく指が締め付けられる。
 コナンはそこに強引に三本目の指を咥えさせ、ねじ込んだ。

「やめてぇ……も…すぐには…しないで……」

 蘭の瞳から、涙がひと粒ぽろりと零れる。
 苦しげに喘ぐ様に胸が痛むが、しどけなく手足を投げ出し、秘所を露わにして横たわる女のあられもない姿は憐れみを吹き飛ばし、コナンの頭を甘く痺れさせた。
 まだ、もっと。
 まだ足りない、もっとしたい。

「……してもいいでしょ、蘭姉ちゃん」

 言葉のすぐ後、コナンは強引に抜き差しを始めた。

「やっ! だめコナン君! ああ許して…もっ…ああぁ…おかしくなっちゃう!」

 耳に届くぬちゅっぬちょっと粘ついた水音に蘭は身を喘がせた。

「おかしくなるくらいしようよ……」
「いっ……やめてぇ…もうっ…も……あぁ! 変になる……なっちゃう!」

 もう身が持たないと泣き濡れるが、過敏になった内部を強く擦られると途端に疼きは舞い戻り、もっとしてほしい、いかせてほしいと思ってしまう。そんな自分におののきながら、蘭は嬌声を迸らせ快感に身悶えた。

「あぁ…す、すごいの…あぁ! コナンく…や、やぁ…ああ! あつい、あついの……中が……もっ……ああぁ!」

 もつれる舌で懸命に中が熱いと訴える蘭に、コナンは腰の奥が痺れるのを感じていた。息が少し苦しい。頭がくらくらと眩む。
 柔らかくうねり蠢く蘭の膣内が、時折ひくひくっと艶めかしい動きを繰り返す。
 極まりが近い事を感じ取ったコナンは、焦らさず追い上げようと三本の指で散々に深奥を蹂躙しながら顔を下部に近付けた。指を咥え一杯に拡げられた膣口は透明な蜜に塗れてぬらぬらと光り、時折ひくひくと蠢いた。苦しさに喘いでいるようでもあり、もっと欲しいと訴えているようでもあった。

「ああぁ…コナンく……しないでぇ……!」

 下腹にかかる吐息を感じ、蘭は必死に身悶えた。
 しかし口からもれる声はひどく甘く、せがむような響きを含んでいた。

「……ダメ? 蘭ねえちゃん」

 コナンは顔を上げて聞き返した。

「だめ、だめ……だめぇ……」

 蘭は涙の滲む目で懸命にコナン見つめ返し、緩慢に首を振った。
 駄目と言いながら、蘭は欲しがる動きをしてみせた。膣内に食い込む異物がより深く入り込んでくるよう自ら腰を蠢かせ、意識して下腹に力を込め、締め付ける。

「ああだめ…おねがい……!」

 蘭は絞り出すように叫んだ。

「こわいの…でも……い、いきた……いかせて! ああおねがい……んぅ…コナンくん……こわい!」

「怖い事なんてしない」

 コナンの真剣な声を耳にし、蘭は目を閉じて何度も頷いた。
 コナンは下部にまっすぐ顔を寄せると、腫れたようにぷっくり起ち上がった柔芽をちゅっと吸った。

「あぅっ!」
「……絶対しないから」
「し、しってる! しってるよ……あっ…し、しんい…!」

 火傷しそうに熱い舌で花芽を転がされ、蘭はがくがくと腰を跳ねさせた。

「あ、いっ…そこだめ……くうぅ…気持ちいい、ああ…ああ! あぁ! いく、いく、いや、いく!」

 的確に責めてくる舌に翻弄され、じっとしていられないと蘭は激しく身悶えた。

「あぁ…なか、しちゃだめ……かき回しちゃだめ、だめぇ……おねがぁ……も、もういっちゃうう!」

 指の動きも再開され、花芽を舐めしゃぶる音、ぐちゅっぐちゅっと穿たれる音に蘭は我を忘れて泣き叫んだ。
 身体の芯を流れていた痺れが唐突に大きく膨れ上がる。

「いやぁ! あああぁ! いく、いくぅ、コナンくん…もういっちゃう――ああああぁぁ!」

 高い声を放った後、蘭はぶるぶると四肢を強張らせ、一際強烈な絶頂に酔い痴れた。
 やや置いてがっくりと脱力する。
 ぐったりと横たわりはあはあと息つく肢体を前に、コナンも息を荒げていた。
 引き締まった腹部が忙しなく上下し、うっすら汗を浮かべて苦しげに震えていた。コナンはいたわるようにそこや、時折びくんと痙攣する足を優しく撫でてやった。ゆっくりさすりながら、きつい収縮を繰り返す内部を刺激せぬようそろりと指を抜く。

「あっ……」

 内部から引き抜かれる異物に蘭は半ば無意識にうめいた。

「こ、コナン君……」

 まだ荒い息が続く中、蘭は控えめに呼びかけた。

「どうしたの? どこか苦しい?」

 撫ででいた手をすぐに止め、コナンは顔を覗き込んだ。

「あ……ち、ちがうの」

 真剣さに満ちた眼差しを申し訳なさそうに受け取り、蘭は小さく呟いた。

「コナン君の…すごく気持ち良かった。撫でてくれる手も。うれしい」
 ありがとう

 少しとろんと潤んだ瞳で微笑み、優しい眼差しをくれる蘭に胸がほんのり熱くなる。コナンはそっと手を差し伸べ、乱れた髪をゆっくりすいてやった。

「蘭姉ちゃん、大好きだもん」
「……でもほったらかしてたくせに」

 呟いて蘭は小さく唇を尖らせた。素直なひと言はたまらなく嬉しかったが、それはそれ、これはこれ。

「ゴメンなさい」
「謝れば済むと思って……」
「思ってない」

 即座に答えるコナンをじっと見据えた後、蘭はさっと逸らせた。気まずい時そうするように、よそに視線をさまよわせる。

「じゃあ……」
「うん、なに? 何でもするから」
「……じゃあ」

 散々口ごもった後、蘭はそっぽを向いたまま囁くように言った。

「……も、もう一回…してもいい?」

 コナンは小さく驚き、それからゆっくり笑みを浮かべた。

「いいよ…今度こそ、泣いてもやめてあげないからね」

 蘭はおずおずと視線を合わせると、ほんの小さく頷いた。
 それからコナンを抱き寄せ、口付ける。

「怒ってるんだから……してね」
「分かった。エッチな蘭姉ちゃん」

 愛しい男の揶揄に目を潤ませ、蘭は再び抱き寄せた。

 

目次