イチゴキャラメル

 

 

 

 

 

「映画、あんまり面白くなかったでしょ」
「そんな事、なかったよ」
「そう? でも付き合ってくれたお礼に、コーヒーご馳走するね」
「ホント、やった!」

 無邪気な子供の声で蘭を見上げ、コナンはにっこり笑った。
 蘭も同じくにっこりと目尻を下げた。
 週末の午後、駅へと向かう大通りは大勢の人で賑わっていた。行き交う人の波を器用にすり抜け、二人ははぐれないようしっかりと手を繋いで歩いた。
 今しがた鑑賞した映画は蘭が以前から見たがっていたもので、封切の今日、誘われる前から、コナンはお供するつもりでいた。もちろん彼女が選ぶものだから、内容についてはある程度想像がついた。実際もその通りで、いくつかの場面では堪え難い甘ったるさに口の中が苦くなったが、全体的にコミカルに仕上がっており、幾度も起きる笑いのタイミングではコナンも素直に声を上げて笑った。
 ラストはもちろん大団円、いくらか強引にも感じられたが、登場人物の誰も不幸にならない、誤解は解け、収まるものは綺麗に収まり、楽しい明日を感じさせる…気持ちの良い映画だった。
 だから、本音を言えば少々趣味に合わない内容だったが、面白さを感じさせる場面がたくさん盛り込まれていて楽しく鑑賞出来たから、蘭の質問にもそんな事はなかったと素直に答えられた。
 けれど蘭の性質からすればそれでは気が済まないもので、何か埋め合わせをしたいと申し出るだろう事は、予測がついた。
 蘭の方も、コナンの言葉が全くのお義理ではなく半分本当なのは理解出来ていた。それでも、気が済まない。
 だから彼女は埋め合わせをしたいと申し出て、気の済まない彼女の気が済むよう、彼も素直に申し出を受ける。
 そうやって二人それぞれ、譲る部分は譲り、受け取るものを分け合った。
 立ち寄ったコーヒーショップで小一時間ほどお喋りに花を咲かせ、十二分に満喫した後、二人は帰宅した。
 帰宅後は、習慣になっているうがいと手洗いをきちんと済ませ、お互い笑いながら確認し合ってリビングに落ち着く。

「さっそく食べてみる?」

 そう言って蘭がテーブルに置いたのは、映画館の売店で面白そうだからと買った、映画館限定販売のスナック菓子。中身は、何の変哲もない大粒のポップコーン。味は、イチゴキャラメルとパッケージにある。

「うん、食べよう!」

 コナンは木製の菓子皿を持ってきた。
 蘭はそこにざらざらと中身を開け、まずは一つ、口に放り込んだ。続いてコナンも一つ摘まむ。
 おっかなびっくり噛みしめていた二人だが、思っていたよりは美味い…上等な味と食感に、笑顔で目を見合わせた。

「美味しいよ、蘭姉ちゃん」
「うん、結構いけるね」

 明日園子に教えてあげよう…袋を手に取り、蘭はじっと名前を覚え込んだ。

「来週ね、京極さんと見に行くんだって」
「え…へえ」

 返事をしながらコナンは、それは良かったと久々に会える二人に純粋に喜び、あの朴念仁があの映画を、と胸中で同情し、しかし冬の紅葉の前例があるのだからあるいは、と考え込んだ。
 急に何やら考え始めたコナンの、表情の移り変わりでそれとなく察した蘭は、小さく笑った。

「京極さんなら、どこでも付き合ってくれるわよ」
「うん、そうだね」
「好きな人と一緒にいられるだけで、嬉しいもの。私も、コナン君と一緒だとどこでも嬉しいし」
「ボクも、蘭姉ちゃんとどこか行くの好きだよ」
「ホント、嬉しいな」

 返事を受け取りにこにこと朗らかに笑う蘭の顔が、あーあ、という声と共に少し上向く。

「アイツも、コナン君くらい素直だったらなー」

 そして、目だけでちらりとコナンを見やる。
 その、いたずらっ子のような顔が無性に愛しくて、コナンはただじっと見つめた。
 蘭も同じくまっすぐに見つめ返した。途端に目の奥がじわりと滲む。想いを乗せひたむきに見つめてくる青い眼差しを受け取るほどに、胸がいっぱいになっていく。満たされていく。そして込み上げてくる。
 隙間もないほど重なりたいという欲求が。
 衝き動かされるまま、蘭は顔を近付けた。
 応えてコナンが手を伸ばす。頬に触れる。
 誘導する手に従い、蘭は少し恥ずかしそうに前屈みになって唇を寄せた。
 幾分異なるぬくもりが触れ合う。
 勢いに任せて舌を吸い、唾液を飲み込む交歓も好きだが、こうしてただくっついている瞬間も、蘭は好きだった。自然に伸びる手でコナンの小さな身体を抱き寄せ、穏やかな空気に浸る。
 と、コナンが動いた。添えるだけだった手で繰り返し頬を撫で、同時にしずしずと舌を口内に挿し入れる。
 入り込んできた舌を迎えて、蘭はねろりとなぞった。

「ん……」

 どちらのものか、淡い吐息が零れて消えた。
 それを合図に、二人はより深く、夢中で相手の舌を貪った。
 頬を撫でていたコナンの手が首筋に下りる。
 耳の後ろをすべる指先に蘭は身じろぎ、ぞくりと背筋を走る愉悦に小さくわなないた。

「ん、あ…あふ……んんぅ」

 どこが感じるか知っている、どう触れば響くか分かっている…知り尽くしている小さな手が、それらを一つひとつたどりながら胸へと向かう。今に訪れる強い快感を脳裏に過ぎらせ、蘭は待ちわびる喘ぎをもらした。

「あん…あ、んふ…んん……」

 焦れてキスが少しおざなりになる蘭を口端で笑い、コナンは楽しげに唇を食んだ。ちゅうと音を立てて吸い付くと、思い出したように慌てて舌が動き出す。それをちろちろとくすぐり、形を覚え込むようにねっとりとねぶる。

「う、あう…あふ……んふぅ」

 コナンは胸元に下ろした手で、片方の乳房をぎゅっと掴んだ。

「んっ!」

 途端走る刺激に蘭は喉の奥で鳴いた。
 持ち上げるようにして掴まれた胸から、少し食い込んだ指先から、痛みにまでは届かない重たい快感がじわっと沁み入ってくる。
 キスに耽りながら、蘭は半ば無意識に口端を緩めた。待ち望んでいた刺激をようやく与えられたのもそうだし、何より彼のもたらす愛撫が好きだからだ。抱き寄せた背中を、少し遠慮がちに撫でる。もっとしよう、と。
 応えてコナンは柔らかな乳房に五指をすべらせた。

「あん…ん…んぅ、ん」

 更に蘭が応え、まだどこか恥ずかしげな喘ぎを途切れ途切れにもらした。
 弾力を確かめるように何度か大きく揉みしだかれると、それだけで身体が震えてしまう。ゆるく揺さぶられるのもたまらない。まだ触られてもいない頂点に疼きが響いて、恥ずかしくも尖ってしまう。
 この時もそうで、重たそうに揺すられるに従い下着の中で乳首がかたくなっていくのを自覚し、蘭はわずかに眉根を寄せた。
 見透かしてか、コナンの指がきゅっと突起を摘まんだ。

「だめっ……!」

 鋭く叫び、蘭は喉元をさらして仰け反った。
 探偵の耳がその声を聞き分ける。本当に嫌がってのもの…彼女のコンプレックスに触れたからか、それとも強すぎる刺激に驚いただけか、注意深く聞き分ける。慎重に様子を見守る。
 時間をかけるまでもなく、後者だと理解したコナンは、密かにほっとして愛撫の手に力を込めた。

「あ……やぁん……」

 布越しだからといくらか強めにきゅうっとつねると、たちまち蘭の唇から甘えた声が零れ始めた。

「ん、んく……あ…あん」

 自分がそんな声を出してしまうのが恥ずかしいのか、蘭は落ち着かない様子で右に左に首を振り、俯き、合間に湿った喘ぎをもらした。
 可愛い声、可愛い顔、それらを存分に愉しんでいると、刺激に呼応した突起がより存在を主張して尖り、コナンの手を欲しがった。
 自分ももちろんもっと欲しいと、コナンは薄色のセーターを捲し上げて下着を露わにし、その奥に触れたいと、蘭に目配せした。

「……寒くない?」

 脱ぎ始めた蘭に尋ね、コナンはちらりとエアコンを見やった。

「大丈夫…すぐ、熱くなるから……」

 囁くように返し、蘭はセーターを脱ぎ去った。

「そうだね」

 コナンはふと笑い、胸を覆うそれに手をかけた。
 蘭も同時に動き、上半身裸になる。承知の上でそうしたが、視線をぶつけられるのはやはり恥ずかしかった。今日はほとんど、嫌悪感はないのだが、一目で分かるほど興奮している自分の身を彼にさらすのはやはり恥ずかしく、つい前屈みになってしまう。
「もっと胸張っていいよ、蘭姉ちゃん。こんなに綺麗なんだから」
 言ってコナンは再び唇を寄せた。二度、三度、ちゅうと音を立てて薄い皮膚を吸い、彼女から戸惑いを拭い取ろうとする。
 綺麗だと褒められ、蘭は嬉しそうに申し訳なさそうにキスに応えた。
 その、まだ強い身をほぐそうと、コナンは静かに頭を撫でた。

「ん……」

 いい子、いい子とあやすコナンに蘭は喉の奥で小さく抗議するが、本当は嬉しくてたまらなかった。

「こ…コナン君」
「なあに?」
「そ……さわって」
「さわっていい?」
「うん…ぜんぶ、さわって……おねがい」

 おずおずと縋る蘭にふと笑いかけ、コナンは綺麗な形をした額に唇を押し付けた。
 おでこに触れるママのキスに淡く笑い、蘭は身を委ねた。
 柔らかな唇は鼻先におり、頬をくすぐり、徐々に下へ下へずれていった。
 身体の両脇に下ろした手を握りしめ、蘭は今か今かと喉をひくつかせた。
 間を置かず、膨らみの始まる箇所に唇がちゅっと吸い付く。

「っ……」

 ふっと息を吐くと、今度は指が触れてきた。

「あ、そこっ……!」

 すっかり膨れた乳房の頂点を、二本の指がきゅっと捕える。そのままこりこりと弄くられ、突然の強い愉悦に蘭はたまらないとばかりに身をくねらせた。

「ここ、気持ちいい?」
「あ、ああ……うん、ああ…きもちいい…あっ…あん!」

 しっとり艶を含んだ声で喘ぎながら、蘭はこくこくと頷いた。
 薄く目を閉じ、快感に浸って悶える蘭の姿をコナンはうっとり見つめていた。鼓膜を犯す嬌声、指先に感じる柔らかな乳房、何もかもが背骨を震わせる。熱に溺れる。飲み込まれ、コナンは乳房を慰めながらもう片方の手を下腹へ、スカートの奥、下着の中にもぐりこませた。

「あ、いや……」

 いつもより少しせっかちな動きにびくつきながらも、蘭はすぐに膝を開いた。
 ねちょっとぬめった音が、身体の内部で響いた気がした。
 そこで初めて自身の興奮の度合いに気付き、かっと頬を赤くする。
 同時にコナンの指がそこに触れ、蘭は気まずい時そうするように顔を背けた。
 しかしコナンは何を言うでもなく、指先を濡らす蜜をなすり付けるように花弁を前後に撫でた。

「ああ……あ…く、う……」

 撫でられるにつれぞくぞくと広がっていく快感に、蘭はためらいがちにうめいた。

 もう少し…もっと…強く……

 口に出来ない浅ましい願いを過ぎらせた直後、乳首を口に含まれる。

「ああんっ!」

 ねっとりと熱い粘膜の感触に高く喘ぎ、蘭はびくびくと身をしならせた。

「あん、ん……いい…あ、い、いい……んん」

 舌先でぐりぐりと力強く乳首を潰され、ずきんずきんと襲う刺激に目が眩んだ。もっとしてほしいと、ほんの少し乳房を差し出す。
 応えてコナンは、唾液に濡れた乳首を今度は親指で責め立てた。周りをくるくると撫でてからぐっと押し付け、そのままぐにぐにと嬲る。

「くうぅ!」

 鈍痛に蘭はびくんと肩を弾ませた。甘い毒のような痛みはすぐに愉悦に取って代わり、全身を駆け抜けて下腹に到達する。はっきりと、蜜が増したのが分かった。

「ん、は…ああ、あぁ…あ」

 蘭はもじもじと身じろぎ、何度も胸を喘がせた。小さな不満が生じる。下腹に伸びたコナンの右手。いつまでも優しく撫でるばかりで、わざと感じるところを避けている手に不満が生じる。

 もっと欲しいのに…あと少しなのに……

 蘭は恥を忍んで、腰を揺り動かした。気付いてもらえるよう、自分から押し付ける。
 ややあって、微かな笑い声が聞こえてきた。

「!…」

 瞬く間に頬を真っ赤に染め、蘭は後悔した。
 けれど、一度始めてしまったからには熱を解放するまで収まらない。このまま、中途半端なまま終わるなんて出来ない。
 だから早く…触ってほしい。

「触ってほしい?」
「……う」
「触らなくていい?」
「……さわって」
「どこを触ってほしいの?」
「く、う……あん」

 言えない代わりに、蘭は腰を引いて、自分の感じるところをコナンの指先になすりつけた。
 怒ったような泣き出しそうな顔で睨みながらも、淫らに腰を振って欲しがる女がたまらなく愛しい。コナンは震えながら笑みを零した。

「ここに欲しいの?」
「うん、うん……」
「このくらい?」
「ううん、もっと…ああ、もっとひどく……」
「ひどくしてほしいの?」
「……うん」

 今にも消え入りそうな声で蘭は答えた。焦らされ、膨れ上がった分を早く何とかしてもらいたいと頷く。
 コナンは親指を花芽にあてがうと、すぐ下にある骨に擦り付けるようにしてぐりぐりといびった。

「あぐ、くうぅ……!」

 反射的に蘭は腰を浮かせた。気持ち良さなどほとんどなく、涙が出そうなほどの痛みがあるばかりだが、それさえも興奮材料の一つになった。
 痛みに飛び上がり、けれどすぐにとろんとした目付きになった蘭を見て、コナンは少なからず驚いた。
 急所を痛いほど責められるのも好き…いつでも同じではないだろうが、一つ覚えた。

「蘭姉ちゃんはホントに、痛くされるのが好きだね」

 半ば称賛を交えて、コナンはあどけない子供の声で言った。

「ちがう…ちがうもん……コナン君が……」

 ずきずきと尾を引く痛みに耐えながら、蘭は何度も首を振った。
 と、下腹を責めていた手が一旦遠のく。
 途切れた刺激に少し不満げに目を上げると、滴るほど濡れそぼったコナンの手がすぐ目の前にあった。

「痛いのに、こんなに濡らして」
「っ……!」

 途端にかっと頬を朱に染め蘭は俯いた。

「それとも、最初からこんなにしてたのかなあ」

 コナンはくすくすと笑い交じりに言って、蘭の、何か云いたげにわななく唇に濡れた指先をなすり付けた。

「わ、分からないけど……たぶん……そう」

 自分の匂いに恥じ入って身を竦め、蘭は途切れ途切れに呟いた。
 彼女がこんな質問に答えるとは思っていなかったコナンは、もっと聞きたくなり、言葉を重ねた。恐らく彼女も、言いたい…晒したいだろうから。

「そうなんだ。どうして?」
「あ、の…それは……」

 蘭は首元まで赤く染めて口ごもった。

「なんで?」
「こ…コナン君とするって思うだけで……」
「……こんなになっちゃうんだ」

 再びコナンは、するりと手を下着の奥にもぐり込ませた。
 今度は優しくまさぐる。

「あ、あ…そう」

 そんな事を言ってくれる女に嬉しげに笑んで、コナンはあてがった手で大きく媚肉を揉み込んだ。痛い思いをさせてしまった事を詫びるように、愉悦を与える。ねっとりと蜜を湛えたそこが、動きに合わせてぬちゅぬちゅと妖しく音を立てた。

「あん、あ……だってコナン君…コナン君の手……全部気持ちいいんだもん…優しいのも…、痛いのも…、全部きもちいい……ああぁ……ん!」
 どうして

 どうしてそんなに分かるのかと、蘭が視線で尋ねる。

「探偵はまず見るのが基本だからね」

 ふと頬を緩め、コナンは手を休めず答えた。

「どこをどんな風にいじると蘭姉ちゃんが悦ぶか……嫌がるのか――」
「やだ……!」

 些細な違いも見分けるほどに見られていた事に恥じ入り、蘭は慌てて顔を手で覆った。
 予想した通りの反応にコナンは笑みを深めた。

「後は、蘭姉ちゃんの声。息遣いもそうかな」
「う、う……」

 あまりの恥ずかしさに耳の先まで真っ赤に染めて縮こまる様が、たまらなく可愛いと、コナンは顔を隠す女の手にちゅっと唇を寄せた。

「蘭姉ちゃんが感じてる声聞くの、大好きだから」

 言いながらコナンはぬるりと中指を埋め込んだ。

「く……!」

 声を出すまいと我慢しても、刺激に身体は敏感に反応する。びくんと弾む女の肩に小さく息を乱し、コナンは根元まで押し込んだ指で深い場所をぐりぐりとくじった。

「く、ん…んん」
「この辺りをこんな風にいじられるの、好きでしょ」

 楽しげな声でコナンが訊く。
 頷きたがる自分を必死に抑え、蘭は身を強張らせたままでいた。
 答えがないのも構わず、コナンはくるりと指を下向きにして反対側をまさぐった。

「お尻の方に向かって強く抉られるのも、好きだよね」
「あぁあ……!」

 ずうんと響く重い快感につい、熱い吐息がもれる。蘭は慌てて奥歯を噛みしめた。それでも、乱れる息遣いは隠しきれない。せめてしっかりと顔を手で隠し、見せまいと抵抗する。

「こうやってお尻の方に拡げるように押されると、声が我慢出来なくなっちゃうんだよね」
「あぁっ……それ…ああ…あ、くうん……あう、ああぅ!」

 声が我慢出来ない、その通りなのを悔しがりながらも、蘭は唇からしとどに喘ぎをもらした。
 揺れる肢体を愉しげに眺めながら、コナンは強く擦り弱くかき回し、休みなく内襞を捏ねくった。
 女の、恥ずかしそうにしながらもどこかうっとりと緩んだ貌が見られないのはいささか不満に思うが、仕草だけでも満足するに値する。何より、埋め込んだ指に絡み付く感触が全てを物語っている。感じるところに触れる度、絶妙の柔らかさで締め付け、熱い蜜を溢れさせ、悦んでいる。
 顔を隠す手が小刻みに震えているのを見て、コナンは深いため息を吐いた。

 どうやって手を外させようか
 それともこのまま一度いかせてしまおうか
「気持ちいい? ねえ、どう…蘭姉ちゃん」

 中指に揃えて薬指も埋め込み、蜜をかき出すように大きくうねらせる。

「う、くっ……あはぁ……」

 蘭の口から、たちまち熱い吐息が零れる。
 抉るように捏ね回されると、それだけで身体が震え、声が我慢出来なくなる。
 彼と共に見つけ、一緒に育んできた快感なのだから当然だ。

「こ、コナンくん……」
「……気持ちいい?」

 感じている声を聞くのが好き…そう言った通り、コナンは決して自分だけの快楽で事を進めない。時に強引に見え、恐怖を感じさせる時もあるが、何より優先しているのはどうすればより大きな快感を与える事が出来るか。それだった。

「や、だめ……」

 わなわなと震えながら、蘭はためらいがちに右手を顔から離した。

「そんな音させちゃ……あ、あぁっ……だめ…だめぇ……」

 下腹で、休みなく動くコナンの手を止めさせようと、蘭は手を伸ばした。
 顔を見られるのは恥ずかしいが、淫らな音を聞かされる…自分がどれだけ興奮しているか露わにされるのはもっと堪え難いと、蘭は恥を忍んで動いた。
 右手でコナンの手首を捕えるが、昂った身体はすっかりとろけてしまい、思うように力が入らない。

「恥ずかしい?」

 言って、コナンはより大きな音が響くよう指をくねらせた。

「はずかし…やっ…い、いじわるしないで……ああ!」

 たまらずに蘭は左手も伸ばした。しかし右手と同じく、ただ添えるだけしか出来ない。

「おねがいだから……」

 潤んだ目で正面のコナンに縋り、蘭は哀願した。
 どうしてほしいかもう分かっているはずなのに、いっそ憎たらしいほど穏やかな表情で見つめるばかりのコナンを、蘭は恨めしそうに見やった。

「おねが…い……」

 コナンは強い笑みを浮かべると、立てた人差し指を女の震える唇に押し付けた。
 そっと囁きかける。

「しー…蘭姉ちゃん静かに」
「っ……」

 沈黙を言い付けられ、蘭は仕方なく息を飲んだ。
 今にも涙が零れそうに憐れに潤んだ瞳が、コナンの官能を妖しくまさぐる。

 嗚呼…そんな顔するから――もっといじめたくなる

「ほら…聞こえるでしょ。ほら…蘭姉ちゃんの感じてる音」
 すごく興奮してるね

 くすくすと声を零し、コナンは埋め込んだ指で内部をより大きく捏ねくった。動きに合わせ、ぐちょっぐぷっと猥雑な音が辺りに響く。
 その音を聞かせる為の沈黙と知り、蘭はきつく眉根を寄せた。
 一瞬過ぎった怒りはしかしすぐにうっとりと緩んだものに変わり、双方に揺れ動きながらも色っぽく溶けてコナンの目を釘付けにした。
 内襞を強く擦る強烈な刺激、そして音に翻弄され、蘭はおこりのように身体を震わせながら喘いだ。

「んんぅ……」

 女の唇から零れた吐息が、コナンの指をじりと焼く。
 蘭はしゃくり上げるように息を吸うと、唇に押し付けられたコナンの指を伸ばした舌で舐めた。

「!…」
 ……蘭!

 コナンの目が驚きに小さく見開かれる。

「は、はあぁ……!」

 ぶるぶると身を震わせ、蘭は切なげに吐息を零した。
 こんなはしたない事をと一瞬自制するも、もっと見せたい、見てほしいと、昂る気持ちのまま舌を這わせる。
 蘭の舌がコナンの幼い人差し指を舐める。
 コナンの幼い親指が蘭の花芽を舐める。

「ああうっ!」

 ついに訪れた強烈な愉悦に蘭はびくびくっと肩を弾ませた。

「ここをいじられるのが、一番好きだよね」

 ひっひっと切れ切れに息つく蘭に笑いかけ、コナンは熟れた突起を絶妙の力加減でくにゅくにゅとねぶった。

「あぅ…ああう、ん……す、すき」

 とろんとした眼差しで蘭は素直に頷いた。息を乱しながらも指しゃぶりに没頭する。指先を咥え、強く吸い付き、伸ばした舌でちろちろとくすぐる。
 その、ひどくそそる動きの全てが、快楽にとろけきった表情が、コナンの腰を痛いほど熱く噛んだ。自分の指に与えられる刺激を己のそれへと移し錯覚し溺れ、大きく喘ぐ。わざと見せつけるかのように舌全体を使って指の付け根から先端へと舐められた時は、本当に自分のものをそうされたようで、たまらずに震えが走った。
 自然、女の媚肉を嬲る手に力がこもる。
 向こうがそうならこちらも負けじと、コナンは絶頂へ導く動きで内と外とをあまさず責め始めた。
 三本の指をずぶりと突き入れ、深奥を穿つ。

「あはぁ…」

 増した圧迫感に甘く喘ぎ、蘭はぶるぶると小刻みにわなないた。
 反応に満足げに笑うと、コナンは花芽を責め立て、同時に根元まで埋め込んだ指でぐりぐりと奥を抉った。

「あぁ……それ、だめぇ……!」

 高い悲鳴が蘭の形良い唇から放たれる。感じる個所を同時に責められ、身体がとろけてしまうと、女はいやいやと首を振った。

「またダメって言う……ダメじゃないでしょ」
「あ、ああ……ああぁ! あああ!」

 極まりが近いのか、いじくるほどに深い場所からたらたらと絶え間なく蜜が溢れ出る。喘ぎがより高いものに変わっていく。ぬめるそこを強く擦りながら何度も抜き差しを繰り返し、コナンは言葉を続けた。

「好きでしょ」
「あ、あは……あぁ…あっあっあぁっあっ……」

 ぴしゃぴしゃと滴を散らすように打ち付けられる度蘭は短く鳴き、たまらないとばかりに身をくねらせた。

「あぁ…コナンくん…あ、あぁあ…あ、好き…すき……いい…きもちいい……気持ちいい!」

 すぐそこまで迫った絶頂に身悶えながらも蘭は必死におしゃぶりを続け、コナンの指を咥えたまま低くうめきをもらした。

「あふぅ、いく…いくぅ…いっちゃうぅ……」

 そこで蘭ははっとなってコナンの指から顔を離した。我を忘れて、噛み付きそうになったからだ。もうほとんど頭は真っ白に染まっていたが、加減もなしに噛み付いたりなどしたらどうなるか…それくらいは、想像出来た。
 心配事がなくなってほっとした顔で、蘭はうっとりと笑みを浮かべた。
 ぞくっとするほど色気を含んだ貌に瞬きも忘れて見惚れ、そのまま、コナンは絶頂へと女を引き上げた。

「あぁっ…ああああぁぁ!」

 ついに訪れた瞬間、蘭はぐっと腰を突き出す形で身を強張らせた。
 合図にコナンはより強く指を蠢かし、絞り取ろうとするかのように締め付ける内部に逆らって、最後の最後まで抉り続けた。

「う、う…うう…ん……」

 針の振れた状態が続く間、蘭は抑えたうめきを切れ切れに零した。やがてゆるやかに引いてゆく熱に合わせて身体を弛緩させ、最後に、は、と息をつく。
 見守るコナンの眼差しを満足そうに見つめたまま、蘭は崩れるようにして仰向けに倒れ込んだ。

「だいすき……」

 深い呼吸の合間に、大切に綴る。
 余韻に浸る中零れるのがそのひと言の真実に、コナンはたまらなくなって頬を緩めた。そっと指を引き抜き、顔の傍まで近付いて、自分も好きだと静かに告げる。
 たちまち蘭の顔が幸せに満たされ、見るものの心を熱くさせた。
 こんな愛くるしい笑顔を自分だけ、一人占めにしていいのかと、無性に嬉しくなる。
 無論、誰かに見せる気などさらさらない。しかしそれでいて、誰かに自慢したいとも思う…愚かしさに笑いたくなる。
 コナンは浮き立つ心のまま、淡くほころんだ唇をそっと指でなぞった。
 触れてくる指にふふと少しくすぐったそうに笑いながら、蘭が指先にちゅっと接吻する。
 鼓膜を撫でる淡く優しい笑い声と熱く柔らかい感触とが、収まりかけた熱を再び煽った。
 たまらず、コナンは顔を近付けた。

「………」

 間近に寄る綺麗な瑠璃色をまっすぐ見つめたまま、蘭は口付けを受けた。寸前、唇に触れた吐息に背筋が熱くざわめき、瞬く間に昂りが舞い戻る。わずかに腰がうねる。

「ん、んぅ……」
「あっ……」

 互いに互いの口内を甘食みし、ゆっくりと味わう。
 離れ際コナンはちゅっと上唇に触れ、囁いた。

「蘭姉ちゃん……足抱えて、開いて」
「………」
「いい?」
「……うん」

 二度目の始まりに目を潤ませ、蘭はおずおずと自分の足に手を伸ばした。けれど中々、開く事が出来ない。すっかり濡れてひどい有り様になっているだろうそこを彼に見せるのは、ひどく勇気が要った。その一方で、全部晒して嗤われたいとも思うのだ。
 彼に支配されたい。
 身体中、全てを。
 戸惑っていると、ショーツがするりと脱がされる。

「全部見せて…蘭姉ちゃん」

 正面に膝立ちになったコナンへ首を曲げて頷き、蘭はそろそろと足を開いた。全部見えるよう、大きく。
 そして告げる。

「み……見て、下さい」

 震える蘭の声をどこか遠くに聞きながら、コナンは眩む眼で懸命に見据えた。女の下腹を慎ましく覆う繊毛は今しがたの行為で淫らにぐっしょりと濡れて、極まりを迎えた跡生々しく、わずかに口を開いた花弁からは色付いた媚肉が恥ずかしげに覗き、ひくりと蠢いて、匂い立つほどにぬるぬると光っていた。
 こんな誘惑があるだろうか。
 半ば無意識に喉を鳴らし、コナンは誘われるまま手を差し伸べた。それだけでは我慢しきれず、顔も寄せる。

「んっ…!」

 コナンの動きに合わせ、蘭は全身をびくんと弾ませた。直後熱い舌が触れてきて、また身体が跳ねた。

「あはぁ……あん…あぁ、あああぁ!」

 ねっとりと花弁を這うコナンの舌に嬉しげに喘ぎをもらし、蘭は息を荒らげた。
 両の親指が花弁をゆっくり割り開く。全部露わにしてから、ねろりとゆっくり丁寧に舐めしゃぶる。

「くっ…はうぅ……」

 どこをどんな風に弄られ、舐められているか…蘭は一つひとつを、恥ずかしいとは思いつつも頭に思い浮かべてみた。彼に全部明け渡し、見られている、弄られている、舐められている――興奮をもっと味わいたいからだ。
 はしたないと自制しながら想像するのは、身体に受ける快感を更に増幅させた。震えが小刻みに起こり、ねぶる舌に呼応して、奥の方からとろとろと蜜が溢れ出た。
 それをコナンの唇が吸う。

「んんっ…あ、や…コナン君……!」

 わざと下品な音で啜られ、蘭は恥ずかしさに不自由な腰を揺すって抗議した。
 コナンは揃えた指先で膣口を上から下にくちゅくちゅと優しく撫でると、手のひらを上向きに指を二本埋め、軽く抜き差しを始めた。

「あぅ、あっ…あん…んん、ん……や、や…あぁ」

 蘭の身体はどれにも敏感に反応して震え、唇から甘えた声を溢れさせた。
 もっと聞きたいと、コナンは抽送を続けながら花芽にしゃぶりついた。

「ああ――!」

 途端にもれた高い悲鳴にくらくらと頭が眩む。それでもまだ足りなくて、コナンは口に含んだ敏感な突起を舌で縦横に弾いた。

「だめ、だめぇ…それだめっ…コナン君…だめぇ!」

 内部を擦られながら花芽を刺激されると、それだけでもういってしまいそうになる。蘭は涙交じりに首を振り立て、逃げるように腰をうねらせた。
 聞き入れず、コナンは責め続けた。
 ちゅ、ちゅと花芽を唇で何度も挟み、時折そっと歯を当てて刺激を送り込む。内部に埋め込んだ指は深奥でくねらせ、抜き差ししては、また奥をくじる。

「ああぁ……ほ、ほんとにだめ…だめ……ああきもちいい…気持ちいい……だめ…あああ……コナン君……コナンく……あぁ…新一…しんいちぃ!」

 蘭は抱えた足にぐっと指を食い込ませてしがみ付き、目前に迫った絶頂に声を撒き散らした。
 縋るように名を呼ばれ、コナンは全身に震えが走るのを止められなかった。
 より深く女の身体に溺れてしまう。
 息を乱して、甘い蜜を啜り突起を貪る。

「や――くる…きちゃう……いっちゃう……あ、あ…いく…いくぅ!」

 幾分低くなった蘭の声を合図と受け取り、コナンは三本目の指を咥えさせてぐいぐいと奥を穿った。内部が、絞り取る動きできゅうっと収縮する。逆らって、尚強く拳を打ち付け、絶頂へと導く。

「あう……ああああぁ!」

 一際高い悲鳴を上げて仰け反り、蘭は真っ白い絶頂に飛び込んだ。
 力んだ身体がびくんと跳ねる度、媚肉の奥からぷしゃあっと滴が放たれる。
 唇にかかったそれを反射的に舐め取り、コナンは陶然とした表情でひくつく花弁を見つめていた。突き入れた三本の指をがっちりと咥え込み、きつそうにしているのに、もっと欲しいとばかりにわなないている。

「あ……」

 ためしに少し引いてみると、離すまいと慌てて締め付けてきた。それは単に絶頂の後の自然な動きだろうが、コナンには、まだ責めてほしいと言っているように見えた。
 わずかにもれた蘭の声でも違うと分かったが、欲望を抑えきれず、コナンはぐぐっと指を押し込んだ。

「あぅう…だめ」

 当然のように蘭は拒絶の言葉を口にした。

「だめぇ…まって…おねが……!」

 まだ内部の痙攣は続いていた。だから敏感になり過ぎて辛いのだと、蘭は腰を揺すり立て懇願した。
 しかしコナンはそれらを無視して、きつい中ぐじゅっぐぷっと蜜を絡ませ抽送を始めた。

「ひっ…いあぁ……だめ、コナンくんだめ……あぁあ! いやあぁ!」

 強引に送り込まれる痺れるような愉悦に泣き叫び、蘭は身体をひねって逃げようともがいた。
 しかし、小さな手、コナンの片手が内腿にかかるだけで身動きが取れなくなる。ただもう喘ぐしかなかった。
 七歳児の腕を振りほどくのはたやすい。けれど力は関係ないのだ。自分がしたいから、彼と一緒に貪りたいから、動かないのだ。
「ああぁ…いやあ…いやっ…ほんとにだめ、なのぉ…あぁん!」
 蘭は喉を引き攣らせ、悲鳴交じりの叫びを何度も上げて身悶えた。
 甘い、可愛らしい嬌声。
 聞くほどに興奮がいや増す。

「ダメって言わないの」

 コナンは息を乱して笑い、ずぶっずぶっと重苦しい突き上げを繰り返し与えた。

「あぅっ…ああ、あぁっ…ああ、あぅ、あっ、ああ!」
「蘭姉ちゃんはこうやって…無理やり何度もいかされるの、好きでしょ」

 コナンは押さえていた腿から手を離すと、すっかり腫れ上がり刺激を待って震える花芽をちょんとつついた。

「くうぅっ!」

 鋭敏になったそこへの瞬間的な刺激に蘭は大きく背を反らせ、四肢を強張らせた。

「ひ、ひっ…そこだめ…そこ…ああまた……またいっちゃう…いく…いく……!」
「全部見ててあげるから…いっていいよ」

 更に指先で何度も弾かれ、内部を拡げて抉る指の動きとあいまって、蘭を絶頂へと持ち上げた。

「だめだめっ…見ないでぇ……はずかし…ああ見ちゃだめ、ああぁ…やっ…コナンく……あああ、あぁ…しんいち……!」

 見ないでと髪を振り乱しながら、蘭は見せつけるかのように大きく足を開きぐうっと仰け反った。

「ああいく……――ああああぁぁ!」

 乱れに乱れた格好で絶頂に達した蘭は、鋭い悲鳴と共に針の振り切れる感覚に酔った。
 コナンは息も忘れて、ただ茫然と見つめていた。全身を小刻みに震わせ、女と共に極まりを味わう。
 脳天が真っ白に染まり、たまらなく心地良かった。
 踏ん張っていた身体から唐突に力を抜き、蘭は大きく胸を喘がせてうめいた。
 開いていた足は同じ側に倒れて崩れ、まだ尾を引く絶頂の余韻が走る度、びくんと痙攣めいた動きを見せた。
 その、しどけない恰好がまたコナンの頭を眩ませた。
 ひくっひくっと不規則に収縮を繰り返す内部から指を引き抜き、再び足を開かせると、滴るほどにぐっしょり濡れた手で腫れ上がった花弁をゆるゆると撫でる。

「あっ、や…だめ……」

 いったばかりなのにつらいと、蘭は眉根を寄せ緩慢に身悶えた。
 しかしコナンは笑みで無視して、手はそのままに覆いかぶさるようにして乳房へと顔を近付けた。

「だめ、んっ……!」

 蘭が身をよじって逃げるより早く、コナンは乳首を口に含んだ。くにゅくにゅと裾を揉みしだきながら音がするほどちゅうっときつく吸い、送り込まれる刺激にぶるりと震える女の身体に口端で笑う。

「や!……やん…胸、そんな強く……ああ!」

 白い喉をさらして仰け反り、蘭は伸ばした手でコナンの肩を掴んだ。けれどやはり、本気で押しやる事は出来ない。

「く…くぅ……」

 蘭は戸惑う手をそこに置いたまま、愛撫に身悶えた。
 少しすると、布越しに相手の鼓動が伝わってきた。
 自分と同じくらい興奮している鼓動が肌に響いてきた。
 ぬくもりがじわっと沁み込んできた。
 隙間もないほどの重なりを感じ取り、これが欲しかったと、蘭は半ば無意識に笑みを浮かべた。

「あはあぁ……」

 歓喜が唇から零れ落ちる。
 コナンは存分に乳首を吸って離すと、今度はふっくらと膨れた乳輪にちゅ、ちゅと接吻を繰り返した。下部に残した手は花芽を中心に撫で回し、時折摘まんだり軽く押し潰したりして遊んだ。

「ああ…く、あ、あ……やんっ!」

 唾液に濡れた乳首にふっと息を吹きかけられ、そんな刺激さえもたまらないと蘭は鋭い悲鳴を上げた。

「ああ…コナンくん……、だめ…だめぇ……!」

 媚肉をかき回され一気に絶頂まで引き上げられるのとはまた違った愉悦の感触に、蘭は目を潤ませて喘いだ。途切れることなく与えられる痺れるような快感が、背骨をぞわぞわとくすぐる。少しおぞ気にも似た悦楽。
 コナンの手が、舌が、感じるところをあまさず刺激する。脳天を甘くとろけさせてくれる動きがたまらなく気持ち良くて、気付けば蘭は撫でるようにしてコナンの背中をまさぐっていた。
 燃えるように熱い女の手が、コナンの細い骨を同じほどに燃え上がらせる。
 駄目と首を振りながら、嫌と涙に潤んだ声で訴えながら、少しも逃げずどころか更なる快楽を求めて抱き縋ってくる様がたまらなく愛おしいと、コナンは夢中になって享楽の時間に浸った。

「ん、ん…ああ…いい」

 ゆるやかに絶頂へと持ち上げられるのを蘭はうっとり受け止め、震えながらくねくねと身悶えた。

「気持ちいい…コナンくん……ああ、あああ……いい、きもちいい…ああぁ…もっと…もっとしてぇ……おねがい…あぁん…きもちいいよぉ」

 とろんとした声が、コナンの鼓膜を甘く犯した。脳を狂わせる何とも可愛らしいおねだり。自分がそうさせたのだと思うほどに息が上がった。振動は残らず下腹に集中し、痛いほどに張り詰める。早く解放したいと思う一方で、女が望むように一緒にもっとこれを味わいたいと、無限を求める。
 自分でもどうしていいか分からないまま、ただひたすらに目の前の乳房を貪り、濡れそぼった下部を慰める。快楽に耽る。すっかり、柔らかな弾力の虜になっていた。弄くるほどにぬるぬると溢れてくる熱い蜜に飲み込まれていた。触り方一つで零れる女の声が変わるのにも魅了される。肌から立ち上る甘い匂い、とろける熱に溺れ、コナンは眩む頭でそれらを味わっていた。

「ああ、コナン君……ああ…コナンく……ま、また……またいっちゃう…いっちゃうの……あああ!」

 不意に、切羽詰まった声で蘭はぐっと息を詰めた。覆いかぶさるコナンの背をしっかり抱きしめ、吐息だけで新一と呼びかける。
 うめくように頷き、コナンは殊更強く乳房に吸い付いた。膨らみを鷲掴み、頂点の突起にきつく歯を当てる。

「いたっ…、ああっ――やあああああ!」

 びりっと襲う痛みが引き金となって、蘭は極まりを迎えた。ぶるぶるっと全身を震わせ、細く長い悲鳴を迸らせる。
 骨を軋ませるほどに抱き付く蘭の腕に喘いで、コナンもまた真っ白な絶頂に脳天を痺れさせた。

 

 

 

 

 

 事後の、少し気だるい心地良さにとろんとして寝転がっていた蘭の口元に、不意に何かが押し当てられた。かさかさと少しかたい、甘い匂いのするもの。甘い匂い、イチゴ、そしてキャラメル。
 はっと目を見開くと、いたずらっ子のようにくすくす笑いながら、コナンがポップコーンをひと粒押し付けているのが見えた。

「むぅ…コナン君」

 つい反射で口の中に頬張り、それから蘭は起き上がって少し怒った顔をしてみせた。
 そこでまたはっとなる。
 一体これはどういう魔法なのだろうかと、いつの間にか元通り服を着ている自分に何度も目を瞬く。寝転がっていたのはほんの少しの間のはずで、意識もあったつもりなのに、全く気付かなかった。

「蘭姉ちゃん、もう一個、はい」

 ありがとうを渡すより先に、またひと粒ポップコーンが口元に運ばれる。

「ま、まだ口の中に……」

 だからつい、お礼よりそんな言葉が出てしまう。

「蘭姉ちゃん、はい」

 しかしコナンはくすくす笑って、いいからいいからと蘭の唇に押し付けた。
 もしこれで口に入れたら、すかさずまたひと粒食べさせてくるのだろう…思惑を読み取り、蘭は自分だってと菓子皿に手を伸ばした。
 が、それより早くコナンが奪ってしまった。

「あー、もう、コナン君!」
「ボクは自分で食べられるもん」

 言って、その通りコナンはひと粒口に放り込んだ。得意げな顔が何とも憎たらしい。

「蘭姉ちゃんは、自分でお着替えも出来ないから、ボクが面倒見てあげないとダメでしょ」
「あ、だから、それは……」
「だから、はい、蘭姉ちゃんあーんして」
「んん……」

 憮然とした表情で、仕方なく、蘭はもうひと粒口に入れた。もごもごと力なく噛みしめる。
 続け様に食べさせられるのかと思ったが、そんな事はなかった。

「えらい、えらい」

 代わりに小さな子供をあやす言葉をかけられ、蘭は思い切り唇を尖らせた。けれどそんなおふざけも、全ては彼の気遣いからくるものだと分かって、蘭はすぐに頬を緩めた。

「ねえ、私にもやらせてよ」
「えー、ボクは自分で食べられるもん」
「私だって、自分で食べられるもん」
「でもダメー」
「えー、コナン君のいじわるー」
「もうー、しょうがないなあ」
「いいじゃない」

 くすくすと笑いながらじゃれ合って、二人は互いにポップコーンを相手の口に運んだ。

 おいしいね
 うん、おいしいね

 そして無邪気に言葉を交わし、また笑い合う。

 

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