午睡のあとは |
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静かな午後だった。 昼食の後、小五郎は表向き調査の依頼でそそくさと出かけて行った。 蘭は三階の自室でのんびり自分の時間を満喫していた。 コナンは同じく三階リビングで、佐文字シリーズの初期の上下巻を読み直していた。 物語に引き込まれ、推理に没頭する一回目、読み直しの二回目と異なる世界の広がり方は実に楽しく面白く、忘れかけていた細部との再会に心弾ませながら一息に読み通す。 大満足で本を閉じ、さあ何をしようかと大きく伸びをしたところで、蘭がおずおずといった様子で部屋から出てきた。 ごく自然に目を上げると、それに合わせてちらりと見やりすぐに逸らして、再び何か言いたげに蘭は眼差しを向けた。何度も瞬きを繰り返しながら、一歩また一歩と近付く。そして正面で足をとめた。 窺うようなその視線の含むところを即座に察し、コナンは口を開いた。 「朝、二回もしたのに……またしたくなっちゃったの?」 少し驚いた声を上げるコナンから目を逸らし、叱られた子供より尚身を竦めて蘭は立ち尽くしていた。 朝の一場面を思い出す。 |
それは夢の中から続いていたのかもしれない。 目覚めて、身体を動かしても顔を洗っても執拗に込み上げてくる疼きにおののき、抗えず、コナンが起きてくるのを洗面所に隠れて待っていた。 しばらくしてやってきたコナンに鏡越し無言でねだる。 見開いた瞳をすっと細め、薄く笑った顔が忘れられない。 抱き寄せる腕の中、声を出せないつらさに酔いながら続け様二度の極まりを得た。 それで一旦は熱も収まったのだが、今再び前触れなく疼きは舞い戻り、ただ座っているのさえ我慢出来ないほどになっていた。 悲しくて情けなくて、いっそ消えてしまいたかった。 途方に暮れコナンの前に立ってみたのだが、何と言ってよいやら分からずただ突っ立っているしか出来なかった。 |
「したくなっちゃったんだね」 ほてった顔と態度でコナンはすぐに理由を察し、小さく驚きの声を上げた。 「ごめんなさい……」 言って蘭はくたりと膝を折った。弾みで、眦からほろりと涙がひと粒零れ落ちる。 「泣いちゃうほど恥ずかしいのに…したくてたまらないんだ」 間近のあどけない声に必死に顔を背け、肩に埋めるように隠したまま蘭は微かに頷いた。 「はっきり言わないと分からないよ、蘭姉ちゃん」 「う……」 「ほら、ちゃんとこっち向いて、自分の口で言って」 小さな指が顎にかかる。力ではなく抗えず、蘭は目を伏せたまま顔を向けた。 「あ、あの……」 「どうしたいの、蘭…姉ちゃん」 「また…したくて、我慢でき…ないの」 「うん、それで?」 「お、おねがい…コナン君……して…、ください」 「一回でいい?」 頬だけでなく耳たぶも胸元も真っ赤に染めて、蘭はごく小さく首を振った。愛らしい顔は今にも泣き出しそうに歪み、しかしどこか妖艶な、揺らめく色気を立ち昇らせている。 「一回くらいじゃ、足りないか」 軽く嘲りを含んだ声が鼓膜を震わす。恥ずかしくて情けなくて…なのに低い含み笑いがぞくぞくするほど心地いい。 「た、たくさん……してほし……」 「どんな風に?」 曖昧なお願いではなく全て曝け出せと、優しくも息の詰まる詰問に蘭は喉を引き攣らせた。 早く触ってほしい…疼きが止められない。なのに何が欲しいのか一つ残らず吐き出さねばもらえない事に嘆き、その一方で激しく酔い痴れ、蘭はもつれる舌で眼前の支配者に縋った。 「い…いつもみたいに手を…縛って…動けなくして……」 「縛られるの、好きだもんね」 「っ……そ、それから…いつもみたいに…全部……、全部、何度も……!」 口にする度、まぶたの裏にその通りの自分が…淫らに泣き喚きながら求めるあられもない姿が過ぎって、あまりの昂奮に蘭はしゃくり上げた。その拍子にまたしてもぽろぽろと涙が零れる。 上手く息が出来ない。苦しい。なのに包み隠さず吐き出すのはとても気持ちよくて、彼がその通り全部してくれると思うと嬉しくて、恥ずかしさに消えてしまいたいのさえ心地よく感じてしまうのを止められなかった。 「いいよ何度もしてあげる…何も分からなくなるくらい、何度でも……」 言ってコナンは、伸ばした舌で丁寧に蘭の涙を舐め取ってやった。頬に伝う涙を何度も舐め上げ、赤く染まった瞼に口付け宥め、目じりに残る涙を吸い取る。 「あぁ……」 ほてった頬よりも熱い舌が、ねっとりと這う。その感触に小さく身震いを放ちながら、蘭は、すぐにも訪れる享楽の時間に細く長く息を吐いた。 |
衣服も下着も全て脱ぎ去り、蘭は自室のベッドに腰掛けた。 罪を認めた人と同じ動きで揃えた両手を差し出し、上目遣いにちらちらと正面の支配者…コナンをうかがう。 「お…お願い……」 「……いいよ」 今にも消え入る声で手首を縛ってほしいと差し出す蘭にふと笑い、コナンは応えた。 「あ……」 手首を保護する為の柔らかいタオル地のヘアバンドの上から、帯が巻き付けられる。一度ぎゅっと結び目を作る締め付けにびくんと反応し、蘭は熱いため息を吐いた。淀みなく作業を行うコナンへおどおどと目を向け、怯えるように…物欲しそうに見上げる。 「きつい?」 「ううん……へいき」 手首から目を上げ気遣う青い眼差しからさっと顔を背け、蘭は口早に答えた。 「じゃあ、横になって」 小刻みに頷き、四つ折りのバスタオルを腰下に少し不自由に身じろぎながら仰向けになる。 すぐに、有無を言わさず、拘束された両手を上に引き上げられる。その遠慮のない動きすら今の蘭には興奮剤の一つとなった。数回呼吸が乱れる。 ああ…もっと支配して…… 倒錯的な願いに腹の底が疼く。蘭はわざと腕に力を込め、少しの自由も残されていない事実に妖しく酔い痴れた。 「こ…コナンくん……」 帯の端を手渡すコナンに顔を向け、何か言いたげに唇を震わす。 「蘭姉ちゃん…すごくエッチな顔してる」 子供の演技からすこしずれた声音が、子供らしからぬ色気を帯びた眼差しが、しょうもなく涙を誘う。 瞳を潤ませ、蘭はただ見惚れていた。 「……食べちゃいたいくらい」 あどけなく綴り、コナンは片手で蘭の顎を鷲掴みにした。 「うっ……」 細い指が食い込み、わずかに痛みをもたらす。決して荒々しくはないが、いくらかの恐怖をもたらす力強さに蘭は身を竦め、何度も瞬きながらコナンを見つめていた。 片隅で怖いと思いながらも目が逸らせない。 もちろんそれは全て、彼が好きという想い。 小さく噛んだ唇を開き、ためらいながら告げる。 「た…食べて……」 ぜんぶあげる…… 熱い吐息交じりの訴えに薄く笑い、コナンは顔を寄せた。顎を押さえ付けたまま、文字通り食べにかかる。 「んぅっ…ふ、うぅ…んむ……」 縮こまる蘭の舌をすくい取り、何度も甘食みしては吸い上げる。 「ん、んん……ん」 鼻にかかった甘い声に、顎を押さえる手に力が入る。 息苦しさにか、小さくいやいやする動きを強引に封じ、なお深く口付ける。舌も歯も唇の内側もあまさず味わって、コナンは飽きる事無く口淫に耽った。 唾液を飲み込み、飲み込ませ、まだ足りないもっと欲しいと軽く噛み付きながら舌を絡める。 「は……」 ようやく顔を離した時には、息も上がり、わずかに目眩さえ感じていた。 眼下には、苦しげに肩で喘ぎ目を潤ませている蘭。 強制的に呼吸を制限されたせいで、頬がうっすら上気しているのが見えた。 詫びる意味でそこに唇を寄せる。 次の瞬間、肌から立ち上る甘い女の匂いに抱きしめられ、コナンは自制も忘れて首筋にしがみついた。 「あぁ……!」 喉元を襲う官能的な疼きに、蘭は小さく驚きの声を上げた。 「や…あぁん……!」 と、火傷しそうに熱い手のひらで両の乳房を覆われ、続け様に襲う快感に熱く喘ぎをもらす。 ひたりと当てられた手はすぐさま動き出し、しかし最も感じる頂点は避けて、くにゅくにゅと柔肉を揉みしだいた。 「あ、あ、あぁ……や、はぁ…んん」 じわじわと肌を這う少し切ない愉悦に首を振り立て、蘭はしとどに嬌声をもらした。 「あ…や、……いい……あぁ、ん……」 「気持ちいい?」 「うん…気持ちいい……、でも、あぁ……いや」 「でも…何がいや?」 緩んだ顔にほんの少し不満を浮かべる蘭にふと笑みを零し、コナンはただ頂点だけを避けてゆるゆると揉み上げた。 「あ…あ、だって……あぁん」 五指で膨らみをさすられ、軽く揺さぶられ、絶妙の力で揉みしだかれる。どれも息を飲むほどに気持ちいいけれど…蘭はかたく目を瞑り小さく首を振った。 「ここにくれないから…不満なの?」 笑いながら、コナンはふっくらと盛り上がった乳輪の外側を人差し指でくるりと撫でさすった。 「やぁ…ん、そ…う」 あと少しなのに…頂点に集中する痛いほど強い疼きにわななきながら、蘭は何度も頷いた。気付けば、伸ばしていた膝を片方ずつ折り曲げて身体に引き寄せていた。下腹から沸き起こる疼きが我慢出来ないと、腰を揺すり立てていた。 「本当に…エッチな蘭姉ちゃん」 その動きに気付き、コナンはくすくすと笑いながら戯れにきゅっと乳首を摘まんだ。 「やんっ……!」 途端に蘭の身体がびくんと跳ねる。 この小さな一点で彼女を支配出来るのが愉しくて、コナンは繰り返し指先に力を込めては緩め、何度も嬌声を紡がせた。 「やっ…、あん、あ、あ……ん!」 短い悲鳴と共に、蘭は緊張と弛緩を繰り返した。耳の後ろを、ぞわりぞわりと愉悦が駆け抜ける。 「い、いじわる…あん、や!」 腰の奥からとろとろと溢れてくる熱いものに蘭はもぞもぞと身を揺り動かしながら、楽しそうに手を這わせるコナンを恨めしげに見やった。 「触ってほしいところ触ってあげてるのに、まだ不満なの?」 つんと尖った乳首を親指で押し潰すように捏ね、残りの指で白い乳房をくにゅくにゅと揉み上げながら、コナンは目を向けた。 「だ…だって……」 「そう……じゃあ、もうやめるね」 「え…あ……」 言ってコナンはあっさりと手を退けた。 「あ…いや、いや……」 手首の戒めをほどこうとするコナンを必死に引き止める。渡さないとばかりに手の中の帯をぎゅっと隠す。そんな自分に驚きながらも、蘭は潤んだ瞳で見やった。 「どうして? 本当は、するの嫌なんでしょう?」 あどけない声が、不思議そうに聞く。 ここまで煽って追い詰めておいて、どうして…蘭は縋るように目で追い、弱々しく口を開いた。 「ごめんなさい…」 「何を、謝ってるの?」 「さ…さっきいじわるって…ごめんなさい」 「……それで?」 「し…したくてたまらないの…だから…お願い……お願い…コナン君」 ああ、もっと押さえ付けてほしい…… 愛らしい顔を泣きそうに歪め、蘭は熱っぽく訴えた。 コナンはゆっくり顔を近付けると、間近に蘭の目を覗き込み、吐息ほどに囁いた。 |
「……可愛い可愛い蘭姉ちゃん…大好きだよ」 |
それまでの作った声ではなく、胸の内から湧く想いそのままに告げる。 「…あぁ……」 歓喜に身を震わせ、蘭は小さく口を開いた。 そこにコナンの唇が重なる。 すぐに離れ、また重なり、離れて女の薄い皮膚を舐め、くすぐり、重なって…少しずつ口付けを深めコナンは何度も蘭の口内を貪った。 「ん、ん、んん…んぅ…ふ、んむ……」 少し苦しげに満足そうにうめいて、蘭は口内で踊る舌と戯れていた。 やがてゆっくりと顔を離し、コナンは薄く笑った。 「蘭姉ちゃん…見せて。一番我慢出来ないところ、見せて」 「んん……」 蘭はごくりと喉を鳴らし、ゆるゆると足を開いた。 コナンの視線がそちらを向き、また笑みを浮かべる。 ぞっとするほどの色気をまとった妖しい微笑に、蘭は何度も目を瞬いた。 コナンは足の間に身を置くと、まっすぐ蘭に目を向けた。 「蘭姉ちゃん、お願いは?」 「あ、み…見て…見て下さい……」 まだどこかためらいの残る足…健康的に張った腿に指を食い込ませると、コナンは更に開かせた。 「やっ……」 思ってもない強さに小さくもらし、蘭は身をかたくした。 直後、いっそ小憎らしいほどあどけない声が耳に届く。 「……ああ、そっか!」 何かが分かったと云う明るい声に、蘭が訊こうとするより早く、強い刺激が身体の中心を襲った。 「あっ……!」 前触れなく指が埋め込まれる。 「あ…ああぁっ!」 揃えた二本の指が一息に根元まで突き入れられ、いきなりの圧迫に蘭は息を詰めた。 「こうやってボクを煽って、ひどくしてもらおうって…そういう魂胆なんだ」 「ちが……あぁ、あはぁ……んんん!」 入り込むやぐちゅぐちゅと内部をかき回す二本の指に翻弄され、蘭は何も言えないままただ喘いだ。 深奥を抉られ、拳を打ち付けるようにして激しく突き上げられる。 「蘭姉ちゃん…ひどくされるの好きだもんね」 「やっ……ちがう……あぁ、あぁ…あぁっ……!」 「気持ちいい?」 素直に頷き、すぐに首を振る。 「き、きもちい、い…でも…ちが…う、から……コナンく……ああぁ」 誤解をとこうと必死に訴える言葉を笑みで封じ、コナンは深奥を執拗に抉り上げた。 「あ…そこ…そこぉ、だめ……」 蘭の口から幾分低い声がもれる。同時に、指の動きがきつい収縮によって阻まれる。 「もういっちゃうの? 今日は早いね」 「あっ……だって……」 「したくてたまらなかったんだもんね……すごく濡れてたよ」 「やだっ……!」 「いやなの?……こんなにいやらしい音…させてるのに」 「言わないで……!」 音を立てないで 笑わないで 恥ずかしそうに身を竦めながらも、素直に腰を揺すりねだる蘭にふと笑みをもらす。 きりきりと締め付ける内襞に逆らって何度も突き入れ、溢れる蜜をかき回す。 「や…だめ…だめぇ……いく、いっちゃ……ああぅ!」 がくがくと腰を弾ませ、蘭は高い声で鳴いた。 「いっていいよ…蘭姉ちゃん」 絶え間なくもれる享楽の声に、コナンは目を眩ませた。 「あ…もう…もっ…いく……!」 食いしばった歯の合間からうめきをもらし、蘭は全身を突っ張らせた。 二本の指をがっちりと咥え込む媚肉を最後の最後まで抉り、深くねじ込んで、コナンは擬似的な絶頂に浸った。知らず内に息が止まっていた。思い出し、吐き出し、小さく喘ぐ。 息が整うにつれ、途絶えてしまった女の甘い声がまた聞きたいと欲求が起こり、コナンは右手に力を込めた。 「あぅ…やっ……!」 途端に蘭が抗議の声を上げる。 「いやぁ! だめ…待って!」 腰を揺すり立て引き止める蘭も、まだ痙攣を続ける内部も無視して、コナンはぐちゅっぐぷっと蜜を絡ませ抜き差しを始めた。 閉じようとする足を身体で阻み、片方は力ずくで開かせ、中心に快感を送る。強制的に。 「こういうの好きでしょ、蘭姉ちゃん」 「だめぇ…お願い、少しだけ待って……!」 「そんな声で泣いてもダメ。だって蘭姉ちゃん、無理やり何度もいかされるの…好きでしょ」 浅い箇所での抽送を数回繰り返し、何度目かに強く突き入れる。そのままぐりぐりと深奥をくじりながら、親指で花芽を弄くる。 「あ…あぁ! それ…だめぇ! やぁ! あぁん!」 コナンの責めに合わせ、蘭は何度も鋭い悲鳴を上げた。度を超えた愉悦に脳天が白く痺れる。 「ここ、いじられるの、好き?」 親指で執拗に花芽を舐め上げ、コナンは笑みに混ぜて聞いた。聞かずとも、そこへの刺激に合わせ内部が悦びに震えきゅっきゅっと収縮している。 「あぁ…やだ、そこっ、ダメぇ…ダメなのぉ……!」 過敏になった身体にはつらいのか、蘭は絞り出すように悲鳴を上げた。 何とか逃れようとする身体を押さえ付け、コナンはくにゅくにゅと花芽を責め立てた。 「やぁ…いやぁ!」 休む間もなく与えられた愉悦に針はすぐに振り切れ、再び極まりの瞬間が蘭を襲う。 「も――ダメ…いくぅ!」 ぐっと腰を突き上げ、見せつけるような姿勢で絶頂を迎えた蘭を、コナンはただ茫然と見つめていた。 彼女が放つぞっとするほどの色香に飲まれ、息も満足に出来ない。 もっと見たい、もっと見せてほしい、もっと…たがが外れる。 はあはあと全身で息つく蘭の中心へと顔を寄せ、すっかり濡れそぼったそこにむしゃぶりつく。 「あぅっ! いやあぁ……」 頭上からの弱々しい泣き声に一瞬胸が哀れに痛んだが、舌にすくった甘い蜜に魅了され、我を忘れる。 「あぁコナン君……もう、もう許してぇ……!」 悲鳴まじりに鋭く叫び、蘭は何度も首を振り立てた。手首の拘束をほどこうと必死にもがく。もちろん、外れはしない。外す気はない…半ば無意識に手を握りしめ、自分自身で己を縛る。 「お…お願い……許して」 「……許さない」 たくさんしたかったんでしょ 低く呟き、声をかき消すようにコナンはわざと下品な音を立てて蜜を吸った。 「やだぁ! いや…あぁん……あぁ、くぅ!」 ねっとりと熱い粘膜が、腫れ上がった花芽を包み込む。その刺激で一気に高みまで持ち上げられ、腰の深くから湧き上がるぞくぞくするほどの愉悦に蘭は大きく背を反らせた。 「また…いく…、いっちゃう……!」 いつしか涙が零れ、幾筋も頬を零れ落ちていた。 それを認識すると同時に、蘭は胸の内に申し訳なさが舞い戻ってくるのを感じていた。勢いに任せて、彼のせいにしてしまった事を何度も謝る。 「あぁ…ごめんね…コナン君…ごめんね……好き、すき……」 とめどなく湧き上がる愛おしさを何度も囁き、こんな自分を…淫らでもいやらしくても好きだと包み込む男の名を呼ぶ。 「あぁ! だめぇ…もう…も――ああぁ…しんいち……しんい……」 ぐうっとせり上がる大きな悦びに身を委ね、蘭は四肢を強張らせた。 「ひぅ、いぃ……あ…あぁ――いく…いくぅ……いっちゃう……」 絶え間なくもれる女の甘い喘ぎに腰の奥が滾る。熱が集まる。痛いほど張り詰め、内股にまで震えが走る。 蘭…… 声もなく絶頂に浸る姿に己のそれを重ね、コナンは満足げに肩を上下させた。 なのに少しもしない内に、まだ見たいもっと聞きたいと貪りたがる欲求に見舞われる。そんな自分自身に驚きながらも、コナンは陶然とした表情で小さく笑みを零した。 自分もつまり、朝の二回では満足していなかったってことか… 呆れるが、興奮は収まらない。 彼女の中に突き立てたままの指をぐいとひねって声を上げさせ、始まりを教える。 「ひっ……だめぇ…も…もう…、だめ……」 切れ切れに喘ぎ、蘭は力なく首を振った。 「本当にもうダメ?……もうしたくない?」 それでも自分は止めないだろう…抑えの利かない昂りにごくりと喉を鳴らし、コナンは右手を揺すった。 「いやああぁぁ……」 まるで失禁したかのように濡れそぼりひどい有様となった蘭の花弁を尚も嬲ると、拒み泣き濡れる声とは裏腹に熱い蜜がとろりと溢れて、コナンを誘惑した。 すっかりほどけて緩んだ朱い媚肉が、咥えた指を美味そうにしゃぶってひくついている。それはまるで、おいでおいでと手招きしているように…見えた。 「っ……」 喉の奥でうめき、誘われるまま顔を近付ける。 「ああぁ……」 秘所に触れた吐息に全身を大きくわななかせ、蘭は緩慢に身悶えた。 逃すまいと脚を掴み、コナンは口に含んだ柔芽をちろちろと舌で蹂躙した。 「くぅ…あぁん……いや、いや…いやあぁ……」 しゃくり上げる程に泣きながら、蘭は身を襲う度を超えた官能に溺れ狂った。 「いやじゃないでしょ。ほら…中はこんなに熱いよ…ほら…こんなにいやらしい音立ててる…わかる?」 「あぁ…わからな……やめ、て…もう、いや…あぁ……あぁん」 「ウソばっかり……ほら、ほら……奥まで入れると締め付けてきて…気持ちいいんでしょ」 弾みを付けて内奥を抉り、コナンは一度ずつ重苦しい突き上げを与えた。 最奥に達する度、蘭の内部はきゅうときつく食い締め、愛しい男のものを吸うように絡み付き愛撫した。 嗚呼…蘭……なんて―― 複雑に蠢く膣奥を自分のもので貫いていると、愚かしくも甘い錯覚に酔いながら、コナンはひたすら蘭の身体を貪った。 「ああ……奥、だめ……あぁ…くるし……だめ…だめぇ……あぁ――もっと……い、い」 「気持ちいいでしょ……ほら――ねえ……」 「あぁ、あぁ…コナンく……あ、いい…いいの……もっと…もっとぉ」 もはや自分が何を口走っているのか分からなくなっていた。手も足も疲れきって重く、今にも意識が途絶えそうなのに、身体の芯を甘くとろかす愉悦がただ嬉しくてもっと欲しいと思うのだ。 それは、その理由は…他でもない―― 「しんい…ち……あぁ…、しんいち……もう――いくぅ!」 何度目かの極まりに一瞬全てが白く包まれ、何も分からなくなる。 気付けば、両手の拘束はなくなっていた。自分で離したのか、彼がほどいたのか。 そして気付けば、ともに身を横たえきつく抱き合っていた。 身体の内部から指は抜かれていたが、物足りなさなど無く、抱きしめ合う腕がただ心地良かった。 「あぁ…しんいち……」 「蘭……好きだ」 優しく鼓膜に沁みる愛しい男の声に、蘭は大きな震えを放った。 「……わたしも」 応えれば胸に頭を抱き寄せられ、包み込む力強い腕に蘭はほっとして目を閉じた。 肌を通して聞こえてくる少し早い鼓動が、たまらなく愛しかった。同じように喜んでいる、昂奮している…このいっときを共に愉しんでいる事実にしょうもなく胸が熱くなった。徐々に徐々に緩やかになっていく肌越しの鼓動が、心地良い眠りをもたらす。抗わず、蘭は深く身を委ねた。 |
短い午睡から目を覚ますと、時計は三時を少し過ぎた辺りをさしていた。 「う…ん」 身じろぐと、寝返りも億劫なほど手足は重くだるかったが、朝から内部を苛んでいた甘い毒の様な疼きはすっかり消え去っていた。起き上がれないほど疲れているのに嬉しくて、笑みが零れた。 「大丈夫、蘭姉ちゃん」 ベッドに寄りかかって座っていたのか、ひょこりとコナンが顔をのぞかせた。 「うん…平気だよ」 「そう……でも、無理に起きなくていいよ。ちょっと、その…やりすぎちゃったから」 ゴメンねと、コナンは少々気まずそうに目を逸らした。 蘭も同じく気まずそうに笑って、首を振った。 「き、気にしないで。お願いしたの…わたしだし。それに…、き、嫌いじゃないし……するの…。コナン…君と」 最後の方は枕で顔を半分隠し、ぼそぼそと呟く。 こそっとうかがい見れば、気のせいでなく赤い顔をしたコナンが、はにかんでうろたえて忙しなく視線を左右に揺らし、落ちつかなげに立っているのが目に入った。 少し可笑しくなる…愛しく想う。 「コナン君……」 蘭は込み上げる気持ちのまま口端に微笑を浮かべると、持ち上げるにはまだ重たい手をシーツの上這わせるようにしてコナンに差し伸べた。 「……うん」 伸ばされた手を優しく見やり、コナンはそっと握った。 触れ合った肌から溶け合う体温が気持ちいいと、二人同時にほっと息をつく。 「いつも、着替え…ありがとね」 着古した部屋着に整えられている上下を指し、蘭はにこりと笑んだ。 「ううん。ねえ、少しは楽になった?……て、疲れてるのに変だよね」 疲れさせたの…ボクだし 「疲れちゃったけど、でも、すごく楽になった。ありがとう……ねえ」 感謝の言葉に続く一言は少しかたく、コナンは二度三度目を瞬かせた。 「なあに?」 「今日はホントに…私、どうしちゃったんだろ……」 「そんなに不安そうな顔しなくても、大丈夫だよ蘭姉ちゃん」 「だって……」 分からなくて怯える蘭の頬をそっと撫で、コナンはもう一度大丈夫と宥めた。 「今日はきっとね、そういう日だったんだよ。ただそれだけ」 だから何も心配する事はないと、コナンは優しく撫でさすった。 「……うん」 「もしもね、また今日みたいな日が来ても、ボクがいるから」 「う…でも、今日のは…やり過ぎ」 ぎゅっと唇を結び、蘭は上目遣いにコナンを見やった。 「えー、蘭姉ちゃんからお願いしてきたのにぃ。それに、やってる最中はあんなに気持ちよさそうだった――」 あけすけなコナンの言葉をわあわあと叫んでかき消し、蘭はたっぷりの不満を込めて見やった。 「さっきだって、嫌いじゃないって――」 「わーダメダメ! た、確かにそうだけど…で、でも! あの……」 「気持ちいいって――」 「ダメ!」 「き……」 「だめー!」 何か言おうとする度、必死の形相で声を被せる蘭の様子が余りにおかしくて、コナンは今にもふき出しそうになるのを必死に懸命に飲み込んだ。 だからこの女が好きなんだ…こんなところも何もかも ならばとわざと仏頂面を作り、意地悪く反応をうかがう。 「……あっそ。じゃあボク、もうしーらない」 「え……そんな、それ…ウソ、だよね?」 途端に眉根を寄せ、蘭は縋るように見つめた。 「あ……」 コナンは言葉を飲み込んだ。 もう二言三言からかってやろうと思っていた。今の言葉に、エッチな蘭姉ちゃんと笑いかけてやろうと思った。しかし、一番弱い眼差しで見つめられては、とてもそんな事出来はしなかった。 「ウソだよ。ゴメンね」 代わりにぽっきりと完璧に折れて、彼女に謝るのだ。 「よかった…ありがとね、コナン…君」 「いや、うん……」 まったく、この女は 嗚呼、はにかむ顔の何と可愛らしい事…ほてる頬を隠すように、コナンはもごもごと呟きながらよそに顔を向けた。 「ねえ…もう少ししたら起きられると思うから、そうしたら一緒に晩ご飯の買い物、行こう」 「うん!」 「今日は何にしようか、コナン君」 「そうだなあ……」 少し考え込むが、すぐに浮かんできた。 「ハンバーグ!」 「ハンバーグ!」 いざ張り切って口に出すと、そこにぴったり蘭の声が重なった。 「……当たった!」 くすくすと楽しげな声が続く。 言い当てられたのは照れ臭かったが、無性に嬉しくて、コナンは声を合わせ笑った。 「ようし、じゃあ今日はとびっきり美味しいの作るから、コナン君お手伝いお願いね」 「うん、まかせて!」 張り切る声と同時に繋いだ手をぎゅっと握るコナンがただ愛しくて、蘭は穏やかに微笑んだ。 |