お願いキスして

 

 

 

 

 

 小五郎とコナンの寝室にあるごみ箱、居間にあるごみ箱、洗面所にあるごみ箱諸々を玄関に持っていき、それぞれ分別しながら用意したごみ袋に入れていく。
 空になったごみ箱はまたそれぞれの場所へ、コナンはちょこまかと動いて戻していった。
 キッチンでは、蘭が掃除機をかけていた。居間も寝室も洗面所も終わり、残るはキッチンだけ。隙間ノズルやブラシ付きを次々駆使して、手際良く的確に隅々まで綺麗にしていく。
 その頃小五郎は浴室掃除に取りかかっていた。珍しく気合いが入ったようで、浴槽洗い場の床はもちろんのこと、普段はシャワーをかけるだけで済ませていた棚や隅角にも目を光らせ、文字通りぴかぴかに仕上げてやると奮闘していた。
 呼ばれて二人が見に行った時、この仕上がりなら自慢げにしてもいいだろうと素直に感心してしまうほど、風呂場は生まれ変わっていた。
 大満足で、小五郎はそのまま出かけて行った。意気揚々と弾む足取りの後ろ姿に、見送る蘭とコナンは顔を見合わせ同時に笑った。
「お掃除お疲れさま、コナン君。コーヒーでもいれて休憩しよっか」
「うん!」
 やかんを片手に振り返る蘭に頷き、コナンは流し台に歩み寄った。
 そして、今まさにやかんに水を入れようと流し台の前に立った蘭の前に割り込み、流れ出る水に手を伸ばした。
「ちょっと、もうコナン君」
 明らかに邪魔をするコナンに笑いながら抗議する。
「ボクが先に手を洗おうとしたのに!」
 真っ赤なウソを真剣につき、コナンも負けじと言い返す。
「もう、コナン君は……」
 まるで『子供』の態度がしょうもなく愛しくて、蘭は微苦笑でやかんを置くと、手が洗いやすいよう抱え上げてやった。
「はい、どうぞ」
「ありがと蘭姉ちゃん」
 ハンドソープで手を洗う様を何気なく見ていた蘭だが、ごく間近にあるコナンの頬が目に入った途端、その柔らかな肌が目に入った途端、衝動が沸き起こった。突かれるまま迷う事無くちゅっと口付ける。
「!…」
 可愛らしい不意打ちに一瞬動きを止め、緩やかに我に返り、コナンは軽く笑いながら言った。
「蘭姉ちゃんのエッチ」
 いたずらっ子の響きに途端かっと頬が熱くなるが、蘭は開き直って言い返した。
「こ…コナン君の方がエッチだもん」
 少しむきになった言い方が、コナンの胸を熱く弾ませる。
「もういいよ、下ろして」
 コナンの声にぎくしゃくと頷き、蘭は腰を屈めた。
 身体を起こそうとする前に、コナンの手がそれを引き止める。束の間戸惑い、蘭はしゃがみ込んだ。
 揃った目の高さにおどおどと瞳を揺らしながら、眼前の少年を見つめる。
「じゃあさ、確かめてみる?」
「何を……?」
「どっちがエッチか…確かめてみる?」
 するりと現れた支配者の貌に目の端を赤く染め、蘭は小さく頷いた。

 

 

 

 コナンは流しに背を預けて立つと、その前に蘭を膝立ちでおき、両手を流しの縁にかけさせた。
「なんだか蘭姉ちゃんに襲われてるみたいで……興奮する」
 強い顔付きでふと笑い、コナンは右手を上げた。
「蘭姉ちゃんはどんな感じ?」
 ほんのり赤く染まった頬に指先を滑らせ、もう一度聞きながら口付けほどに顔を寄せる。
「べ、別に……」
 唇に触れてくる吐息におどおどと瞳を揺らし、目を伏せ続ける。
「少し…ヘンな感じ」
 小さくわななく下唇にちゅっと音を立てて吸い付き、コナンは同じ言葉で聞き返した。
「少し、だけ?」
 嘘つきと含んだ響きで薄く笑い、唇の触れたところを指先で撫でる。
 次に頬に口付け、同じように指先でたどる。
 次に首筋。次に鎖骨を、唇で撫で指先で撫でる。
 その度にぞくり、ぞくりと淡く広がる疼きに蘭は身震いを放ち、流しにかけた手に力を込めた。
「手はそこから離さないでね」
「え…うん……」
 戸惑う蘭の瞳を受け取り、コナンはふと口端を持ち上げた。
 蘭の着ているボタンタイプのワンピース、その一つ目のボタンに手をかけ、上から順に外していく。
 その様子を蘭は強い目で見ていた。一つ外されるごとに喉がひくつき、上手く息も出来ない。
「蘭姉ちゃんは……」
 コナンは前をはだけると、下に身につけた白いスポーツブラに収まる乳房を軽くひと撫でした。
 少し視線を下ろすと、可愛らしいショーツ。その奥はもう少し後のお楽しみ。
「あ……」
 服の奥にもぐり込んだ小さな手に、蘭はわずかな声をもらした。
「こうして禁じられるのが…好きなんだよね」
 途端に全身がかっと熱くなる。違うと首を振りながら、蘭は顔を伏せた。
 と、それまで妖しく鼓膜をくすぐっていた支配者の囁きが、一変してあどけない子供のそれに取って代わる。
「そうだよね、蘭姉ちゃん」
 はつらつとした声を上げ、コナンは乳房に向かって話しかけた。
「ちょ…どこに喋ってるのよ!」
 思い掛けない行動に目を瞬かせ、蘭は羞恥と腹立ちの入り混じった複雑な声を上げた。
「ご、ごめんなさーい! だって蘭姉ちゃんのここ、すごく話しかけてもらいたがってたから……」
 わざとあどけない声でたどたどしく綴り、布越しに乳首をきゅっと摘まむ
「ひゃっ……!」
 瞬時に肌を走る淡い痺れ。首筋をぞくぞくと這い上るそれに小さくわななく。
「ほら…こんなに」
 今の今まで明るかったあどけない子供の青が、途端に支配者の冴えた蒼に変わる。低く響く声は鼓膜を甘く犯し包み込んだ。
 ただ一度摘ままれただけなのに乳房は目覚め、更なる刺激を欲しがって主張する。先端をかたく尖らせて早く早くとねだるそこをわざと避け、コナンはゆるやかに撫でさすった。
「う、ん……」
 じれったい刺激に蘭は顔を背け、早く触ってほしいとほんのわずか胸を差し出した。
 小さな身じろぎに気付いていながらあえて目を逸らし、コナンは布越しの柔らかな感触をただ撫で続けていた。焦れてもれる声はどこまでも甘く、コナンの腰を妖しく噛んだ。
「コナン…くん……」
 とうとう、我慢しきれないと蘭が鳴いた。肩に埋めるようにして顔を隠す様にふと笑みを零し、コナンはぐいとブラを捲し上げた。
「あぁ……」
 瞬間もれた溜め息は歓びだったが、直後、蘭は大きく肩を弾ませコナンの手を振り払った。
 胸を庇いうずくまる自分に驚き、蘭は顔をゆがませた。
「ごめ……わたしまた……ごめんなさい」
 言い終わると同時に女の目からぽろぽろと涙が零れた。
 コナンはすぐさま抱き起こすと、頭を引き寄せ、大丈夫だとゆっくり撫でてやった。
「もうやだ……いちいちうっとうしい……こんな」
「大丈夫、そんな事ないから。大丈夫だよ蘭姉ちゃん」
 後悔に沈む声を丁寧に打ち消しすくい上げ、コナンはまっすぐな髪に沿って手のひらを滑らせた。
「謝らなくていいよ」
「もう、なんで……わたし…わたし一生、こんななのかな……」
 コナンの肩の上で、零れる涙を指先で何度も拭いながら、蘭は不安を吐露した。
 こんなんじゃコナン君に嫌われちゃう……新一にも
 吐息に交えてもれた囁きにコナンは身体を離すと、取り出したハンカチで優しく涙を拭ってやった。
「……そんな事、あると思う?」
 不機嫌をはっきり声に表しコナンは尋ねた。
 まっすぐ向かってくる、痛いほど真剣な青い瞳に蘭は申し訳なさそうに眉根を寄せた。
「だって……」
 何といってよいやら分からず、視線を落とす。
「もう、蘭姉ちゃんは意地悪だなあ」
 やれやれと肩を竦め、コナンは軽い響きで言った。
「何があっても離れられないの知ってて、わざとそういう事言うんだから」
「え、ちがうよ……」
 戸惑って、蘭は眼を上げた。そこにはただ限りなく優しい眼差しだけがあった。

「こんなに好きでたまらないのに」

 少し切なくも見える眼差し。
「あ…コナン君……」
 冷えかけた胸に火がともる。そして火がつく…舞い戻る。熱いものが。
 腰の奥を通り抜けた妖しい疼きに驚いて顔を伏せ、蘭はおどおどと瞳を左右に揺らした。
 急変した女の態度に再開を感じ取り、コナンはこっそり笑みをもらした。少し呆れる。大いに惹き付けられる。一旦始めれば際限なく求めるほど貪欲な癖に、その一方で片時も恥じらいを手放さない女に息が上がる。
 注意深く様子を見守りながら、コナンは頬に手を差し伸べた。
 彼女の抱えるコンプレックス、傷付きやすい部分がいつどこに出てくるか分からないから、慎重に優しく手を触れる。
「っ……」
 頬を包む両手に蘭は何事か呟いた。否定のそれでない事を聞き分けると、コナンは安堵して微笑んだ。
 彼女の視線が持ち上がるまで、辛抱強く待つ。
「コ…コナンくん……」
 熱っぽく囁いて、蘭はぎこちなく目を上げた。
「だいじょうぶ?」
 少し泣いた自分に合わせ、ゆっくり尋ねるコナンにまた目を潤ませて、蘭は頷いた。
「ごめんなさい……」
「もういいよ」
 謝る声に許す声が続く。
 そのまましばし視線を絡め合う。
 時に強く支配しても、その奥にある素はこんなにも優しく慈愛に満ちていると、あらためて気付く真実に蘭は己を恥じた。
 今日は…どこまでつれていってくれるんだろう

「蘭姉ちゃん…キスして」

 霞んで浮遊する思考が、その言葉ではっと引き戻される。腹の底がぞくりと疼いた。目を瞬きながら見つめれば、熱っぽく見上げる深い青とぶつかった。
 また身体の奥で疼きが波打つ。
 彼の方からキスをねだられた事…初めてかもしれない。

「……キスして」

 頬に手を当て、一心に請うコナンに息が乱れた。
「コ…コナンく……」
 数えきれないほど肌を合わせ、数えきれないほど、際どい行為を重ねてきたというのに、キスしてほしいと囁くその姿はまるで…初心な青年のようだった。
 小さな手から伝わる熱に頬ずりし、蘭は何度も喘ぎながら顔を近付けた。
 微かに目を潤ませひたむきに見つめてくるコナンの青を覗き込んだまま、そろそろと唇を重ねる。
 触れ合う吐息、薄い皮膚の感触が、いっぱいに胸を満たした。
 いつも受けるばかりだった接吻を自分から与える事に、大いに興奮する。
 たまらずに蘭は動いた。
 コナンの顔を押さえ付け、唇を塞ぐ。吸い付く。舌で舐め上げ、何度も甘食み、吐息を飲み込む。
 そのたびごとに眩む目に蘭は大きく肩を上下させた。
「あっ……」
 するりとコナンの舌が入り込んできたのをきっかけに、二人は熱にまかせて貪り合った。
「ん…んふ……う」
 互いに腕を背中にまわし抱きしめ、愛しい気持ちを込めて撫でさする。
 すぐに骨に触れられるコナンの小さい身体に、蘭は思わず泣きそうになる。なのに彼は、強く抱きしめてくるのだ。
 こんなに好きだと心を込めて。
「ああ……」
 堪え切れず喜びの声をもらす。
 またすぐに口を塞がれ、しかし息苦しさも気持ちいいと蘭は夢中で舌を貪った。
 噛み付き合うような激しいキスが、唐突に途切れる。
 お互い喘ぎながら目を見合わせる。
 先にコナンが口を開いた。
「蘭姉ちゃんのキス…結構エッチだね」
「う…うるさいな」
 照れ隠しに唇を尖らせぼそぼそと呟く。
「!…」
 直後動きが止まる。
 コナンの右手が、むき出しの乳房を鷲掴みにしていた。
「してもいい……?」
「うん…がんばる」
 少し強張った顔付きで頷く蘭に小さく笑い、コナンは言った。彼女の反応は、どうしてこうも一つひとつが可愛らしいのだろう。
「頑張らなくていいよ……気持ちいいものだけ感じてて」
 小さな手に余るたっぷりとした乳房を、ゆっくり押し上げ揉みしだく。
「ふ……」
 緩やかに広がる快さの陰に、ちらちらと嫌悪が見え隠れする。どうしようとしばし戸惑い、蘭は、自ら流しの縁を掴み、身動き取れない状況に酔う事で押し流そうとした。
 やっぱり…わたし……エッチだ
 自ら枷をはめ制限する事で、興奮の方が勝る。羞恥に痛いほど身体が熱くなるが、コナンの与えるものにただ浸りたいと目を瞑り、吐息をもらす。
 ためらう事無く同じ姿勢に戻った蘭にコナンは小さく驚くが、彼女の中身を遠からず推測し緩く笑う。そしてそこまで欲しいなら、いつも通り…少しずつ与えよう。
 硬く尖りつんと上向いた乳首を五指で撫で、弾ける感触を楽しみながら繰り返す。
「や、んん……」
 左手は触れていた頬から首筋へとすべらせ、しっとり汗ばんだ肌の感触を指先で楽しむ。
「あ…あ……」
 二か所からの淡い痺れに蘭は緩く身をくねらせた。
「あん……!」
 不意に乳首を摘ままれ、短く叫ぶ。
 コナンは指にはさんだそれをくりくりと捏ねまわした。
 小さな一点から全身に広がっていく甘い疼きは肌を這い腰に集中し、奥から熱いものを溢れさせた。たまらずに蘭は身を揺すり上向いては俯き、素直に快感に浸った。
「へいき?」
 少しぼんやり霞む頭に、低音が優しく入り込む。
「うん……もっと」
「もっと…どうする?」
 ふと空気を揺らして笑い、コナンは親指で頂点を押しつぶし捏ねた。
「あぁ……な…なめて」
 鎖骨の辺りに口付けちゅっと吸う唇を欲して、蘭は熱っぽく囁いた。
「お、おねが……」
 恥ずかしそうに眦を赤く染めながら、もっと欲しいと女がねだる。
 顔を離して見上げれば、期待と不安に揺れる眼差しでまっすぐ見下ろす蘭と目が合った。
「して……」
 そんな顔でお願いされてどうして断れるだろう。コナンはわずかに喉を鳴らし、焦らす事無く乳房のそれへ顔を近付けた。
 少し恐ろしげに蘭はその様を見ていた。
 今に触れる唇の熱さを思い浮かべただけで、激しく目が眩んだ。我慢出来ず声をまきちらす。
「ふぁ……ああぁ!」
 嬌声に合わせてぶるりと震える乳房が、コナンを煽る。熱に急かされるまま、噛み付かんばかりの勢いで乳首に吸い付く。
「うぁ……!」
 頭上の一際高い悲鳴に引き込まれ、コナンはちろちろと舌を動かし乳首を弄った。唾液に濡れ妖しく光るそれを指で転がし、また口に含んで舌で転がし、押し潰し、摘み上げる。
「ああぁっ…、だめ……い、あ、あぁ……」
 愛撫に応えて震える様は小憎らしいほど愛しく、コナンは執拗に小さな突起を責め立てた。
「あぁん……あ――あぁあ」
 じんじんと痛むほどの快感が、際限なく蘭を襲う。流しの縁を掴む手に力を込め、激しく髪を振り乱し喘ぐ。
「ひっ……」
 熱くぬめる舌と唇に馴らされたそこに硬い歯を当てられ、突然の強い刺激に蘭は鋭い悲鳴を上げ仰け反った。
 そのまま戯れに引っ張られる。
「ああ…ん……だめぇ……ああぁ……」
 甘えた声で緩く首を振り立て、挑発するように腰をくねらせる蘭に知らず知らず息が乱れた。今にも自制を失い痛みもかまわず与えてしまいそうになるのを慌てて飲み込み、コナンは眼を瞬かせた。
 その合間に、蘭の呼ぶ甘い声が零れた。
「あぁ…コナン君……」
「……どうしたの?」
 指の間に乳首を挿み、ゆっくり揉み上げながら聞き返す。
「し、したも……」
 何度もしゃくり上げた末、今にも消え入る声で蘭は囁いた。
「なあに?」
「や…下も…さわって」
 分かっているのに分からない振りをするコナンに少し拗ねた響きで、蘭は残りの言葉をぶつけた。
 尖らせた唇にくすりと笑い首を振る。
「まだダメ」
「ど…どうし……あん……!」
 ちゅうっと音を立て乳首を吸われ、蘭は弾むように背を反らせた。
「だってまだ…触り足りないんだもん」
 くりくりと乳首をいじめる小さな手に眉根を寄せ、いやいやと首を振る。
「んんっ……!」
「いたい?」
「い、いたくは…ないけど」
 もう我慢出来ないと、拗ねた目で見やる。こんなに煽って戻れないところまで引き上げておいて、どうしてまだくれないのと眼差しでぶつける。
「……いじわる」
 少し涙に滲んだ声が激しい目眩となってコナンを襲う。
 結局、支配しているようで自分はまだまだ……

「蘭姉ちゃん…もう一回キスして」

「え…どうせわたしの……エッチだし……」
 突然の言葉に面食らい、蘭はふいとそっぽを向くと先刻コナンに言われたそれを突きつけて拒んだ。

「お願い…キスして」

 しかし身体はすでに激しく滾り、少しの刺激も欲していた。そんな中淫らに熱心にねだられては拒みようもなく、蘭は肩を大きく上下させると引き寄せられるようにコナンに口付けた。
「すき……」
 自然もれる一言を唇の上で囁き、ついばむキスを次第に激しくしていく。舌を割り込ませ、奥にあるコナンの舌を誘うように舐め上げ吸い付く。
「蘭……」
 戸惑っていた言葉と裏腹の積極的な動きに小さく驚き、コナンは愛しい女の名を呼んだ。キスに耽る蘭を一度強く抱きしめ、するりと手を下に伸ばす。指先に伝わる艶めいた脇腹の感触に薄く笑い、逸る心のままさらにその下へ。
 コナンの手に合わせ、蘭は半ば無意識に膝を開いた。期待に思わず腰が揺れる。
「う……」
 俯いてうめきをもらす。ショーツ越しに花弁を撫でられ、それは高い悲鳴に変わった。
「ここにほしいの?」
 しっとりとした熱に濡れたそこをゆっくり前後に撫でながら、コナンは囁いた。
 蘭が頷く。
「触ってほしいの?」
 何度も首を振り立て、早く欲しいと蘭は喉を引き攣らせた。
「あぁ、あ…ほしい……」
 コナンの指がなぞるたび、痛いほど腫れたそこが我慢出来ないほどの強さで疼き、蘭を切なくさせた。熱さで今にも腰が抜けそうになる。ほしいと口でねだるのはたまらなく恥かしいのに、それが気持ちよくもあった。境界があやふやになる。
 もっと、もっと分からなくなりたい。
 いつもみたいに、めちゃくちゃに。
 早く…早く。
 不規則にしゃくり上げ、蘭は小さな手に腰をすり寄せた。
 強い刺激を求めて腰を揺らす蘭に息をひと飲みし、コナンはぐっと指先を押し付けた。
「ん、んん……!」
 甘い悲鳴が降り注ぐ。心地よく聞きながら、コナンは下着の奥へ手を潜り込ませた。
「はっ……!」
 欲しかったものをようやく与えられた喜びと、溢れた欲望に触れられる羞恥とが、ないまぜになって蘭を襲う。
「蘭姉ちゃん……ここ」
「言わないで……!」
 小さく驚くコナンの声をすぐさまかき消し、蘭は髪を振り乱した。
「でも…ここ……」
 ぽってりと腫れた花弁からねっとり溢れる蜜を指先に塗り付けながら、コナンはそっと揺り動かした。
「お願い……」
 ぎゅっと目を瞑り恥じ入る。
 その癖腰を妖しく蠢かせ、コナンを挑発する。
 だから好きなんだと、コナンは二本の指を突き入れた。間髪入れずぐいと抉り、蘭の口から悲鳴を上げさせる。
「うあぁっ……!」
 どこまでも愛くるしい声に満足げに胸を喘がせ、コナンは埋め込んだ指で内奥を擦り上げた。
「あ、あぁ…あぁん……」
 掴んだ手をわなわなと震わせ、蘭はしとどに嬌声をもらした。
 降り注ぐそれに甘く浸りながら、コナンは内部の指を二本から三本に増やしぐちゅぐちゅと蜜をかきまわした。
「い…い、コナン君…あ…気持ちいい……」
 素直な声に歓び、左右にひねりながらきつくゆるく抉る。動かすたびねっとり絡む蜜が溢れ二人の肌を濡らした。
「はあぁ……あぁ……!」
 耳に届く淫らな水音に顔を歪め、でも止められないと、蘭は半ば無意識にそこに力を込めコナンの指に噛み付いた。
「ああぁっ……」
 増した圧迫感その刺激に、自ら声をもらす。
 なんて可愛らしい事をするのかと、コナンは更に激しく指を蠢かせた。根元まで指を埋め込み尚強く突き上げ、同時に親指でぷっくりと腫れた花芽を転がし、何度も舐め上げる。
「や…だめ、いっちゃう……いや、いや……いっちゃう……!」
 身体の芯を駆け抜ける強烈な痺れに、蘭は切羽詰まった声を上げた。動きを制限されて…しているせいで逃げ場はないが、必死に腰を引き甘い声で拒む。
「いきたくない?」
「ちがうの……い、いきた…、たくさん……したい」
 コナンはくすりと笑って言った。
「ほら…やっぱり蘭姉ちゃんの方がエッチだ……」
「うん…いい……エッチで…いいから……、たくさんして」
 蠢く手指に合わせて腰をゆすり、蘭が懇願する。
「おねがい……たくさん……して」
「してあげるよ…蘭姉ちゃん……たくさん声聞かせて……」
 繰り返し揺すり立て突き上げ、最奥を指で抉る。
「ああ……いいよ…コナン君……い、い」
 気持ちいい
 気持ちいい
 もっと
 熱に浮かれ緩んだ笑みで蘭はもらした。
「あ…、あぁん、ん……んふぅ……」
 頭上から繰り返し降る女の熱い吐息にコナンは喘ぎをもらした。左手に掴んだ乳房をきつく揉みしだき、もう一方の乳首に吸い付き歯を立てる。引っ張る。
「あぅ…胸…だめっ……!」
 詰めた息で綴り、蘭は仰け反った。
 昂る熱のまま貪ろうとしていた己を辛うじて引き止め、コナンはすぐさま謝り身体を離した。
「あ、ちが……大丈夫…でもダメ…おかしくなっ……」
 コナンの勘違いを慌てて正し、蘭は力なく首を振った。
 感じすぎて振り切れてしまうと告げる女を見上げ、コナンは頬に手を添えた。
「ん……」
 燃えるように熱い手のひらに蘭はひくりと喉を鳴らした。

「蘭……キスして」

 愛しい男の声が、名を呼び、キスしてとせがむ。
「あ、あぁ……」
 最奥で奔放に蠢く三本の指に熱く喘ぎながら、蘭は瞬きもせぬまま唇を寄せた。
「………」
 何か言いたげに口を動かす。
 切なげに眉根を寄せて、何事か呟く蘭に笑って頷き、コナンは頭を抱き寄せた。
 唇が重なる寸前、蘭は安心しきった顔で新一の名を綴った。
「ん…んふ……はっ……」
その先はぴちゃぴちゃと舌を絡めて会話し、互いの吐息を飲み込む。
「んん…いく……んぅ…いっちゃ……あぁう!」
 苦しげに喘ぎ、蘭は内奥を蹂躙する指に押されるまま頂点へとのぼりつめた。
「ああぁ…いく、いくぅ…あああぁぁ!」
 目の前の小さな身体にしがみつき、声の限り張り叫ぶ。
 コナンは倒れぬよう踏ん張り、しがみつく蘭を抱き返し一際強く突き上げた。己の物で貫いている錯覚に浸り、声も無く叫ぶ。
「!…」
 擬似的な絶頂が背筋を駆け抜けた。

 

 

 

 肩の上、荒く繰り返されていた蘭の呼吸がようやく鎮まっていく。
 深呼吸からいつもの息遣いに変わった頃合いに、コナンは埋め込んだままの指をくいと軽くひねった。
「ひゃ……」
 途端にもれる可愛らしい声。
「ね、もう一回聞かせてもらってもいい?」
 浅い個所を二本の指で緩く捏ねながら、コナンは顔を覗き込んだ。
「な…なにを?」
 刺激に震える身に恥じ入りながら、蘭はおずおずと目を向けた。
「もちろん……蘭姉ちゃんがいく時の声」
 途端に蘭の頬が朱に染まる。
「だって、エッチな蘭姉ちゃんは一回じゃ足りないでしょ」
「バカ……!」
 慌てて顔を背ける。がすぐに顔を戻し、深く俯いたまま小さく頷く。
「ど、どうせ……エッチだよ」
「顔上げて、蘭姉ちゃん」
 少し拗ねた蘭に優しく笑み、コナンは言った。
「その蘭姉ちゃんが好き…大好きだよ。だから、顔上げて」
 穏やかな声を上目づかいに見やり、蘭はそろそろと顔を上げねだった。
「……もう一回言って」
「好きだよ」
 目を見て言う。
「ほんとうに?」
「好きだよ」
 強く頷く。
「私だって好きだよ…大好き」
 目を閉じ、蘭は大切に綴った。
「ボクも好きだよ…蘭姉ちゃん」
 何度も、心を込めて好きを手向ける。

「だからお願い…キスして」

 熱い懇願に蘭ははっと目を見開いた。
「え…エッチな私とキスしたいって言うコナン君の方が、エッチじゃない」
「あ、ホントだ」
 今気付いたとびっくりして笑う顔が憎らしくて愛しくて、蘭は泣き笑いで顔を近付けた。
 二度目の始まりに、互いの胸が高鳴る。

 

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