Heat Capacity

 

 

 

 

 

 

 

 

「きつくない?」
 背後からの声に、蘭は俯いたまま大丈夫と頷いた。
 浅い呼吸を繰り返しながら、軽く手を握り開く。緊張の為か手のひらは汗でべとついていた。
 忙しなく、何度も手を握り直す様を見て、コナンは静かに声をかけた。
「やっぱり、やめようか?」
 問いかけに蘭は小さく首を振り、おずおずと肩越しに振り返った。
「こ…このままで、平気」
 潤んだ瞳が遠慮がちに向けられる。
 コナンは探る眼差しでしばし見つめると、正面に回り込んだ。
 移動するコナンを追って、蘭も首を前に戻した。
「平気、だよ……」
 そしてもう一度、かすれた声で言う。
 コナンは正面に立つと、あらためて蘭の姿を目に映した。
 四つ折にした大きなバスタオルの上に足を崩して座り、背は勉強机の脚に沿わせている。両手は、今は後ろに回している。半分は自主的に、半分は強制で。
 しばし眺めた後、一歩、足を踏み出す。
 その動きに蘭はびくと身を竦ませ、ぎくしゃくと目を床に落とした。
「あの……ありがとう」
「……縛られてありがとうなんて、蘭姉ちゃんてホントにエッチだね」
 わざとあどけない子供の声で綴り、コナンは軽く笑った。
「っ……」
 たちまち頬を真っ赤に染め、蘭は顔を伏せた。
 いたたまれず視線から身を隠そうとするが、両手を後手に縛られ、背後にある机の脚に括り付けられてしまった状況では、身体を縮め前屈みになるのが精一杯だった。
 しかも、何も身に纏っていないのだから、そんな事をしても隠した内にも入らない。
 横に崩した足を引き寄せ、秘所をかばうのがせいぜいだ。
「ご…ごめんなさい」
 今になって、自分の望んだ事…無意識に胸を隠してしまう手を縛って欲しいと望んだ結果のこの状況が、とてつもなく恥ずかしくなる。
「……可愛い、蘭姉ちゃん」
 首筋まで真っ赤にしてびくびく震える蘭にそっと囁き、コナンは頬に手を差し伸べた。
 触れた瞬間、蘭の身体が大きく跳ねた。
 反応にコナンがくすりと笑う。
 そして、口付けほどに顔を寄せ、唇の上で綴る。
「蘭姉ちゃんが恥ずかしそうにしてるの見るの、大好きだよ」
「あ……」
 その言葉に、蘭はうっとりと目を潤ませた。
 優しい響きに心が奪われる。
 どんなに強い支配者の貌をしていても、その一言だけはいつも、鼓膜を甘く犯す。
「覚悟は出来た?」
 薄い皮膚をくすぐる熱い吐息にぶるぶる震えながら、ごくわずか頷く。
「コ…コナン君……して……」
 お願い
 吐息だけで訴え、ぎこちなく目を上げる。
 して欲しいと言葉にしただけで、腹の底がぞくりと熱くなる。
 半ば無意識に膝をこすり合わせると、それははっきりとした疼きとなって背筋を駆け上った。
「あっ……」
 声をもらした途端、晒した胸の頂点が痛いほど張り詰めた。
「!……」
 浅ましい自分の身体にひどくうろたえ、蘭は息を引き攣らせた。唇をきつく噤み俯く。
 と、視界にコナンの手が入り込んだ。
 まっすぐ胸に伸びてくる。
 逃げる間もなく乳首を摘まれ、瞬間肌に走るぞくりとした感覚に蘭は大きくしゃくり上げた。
「…んん…だめ……」
 羞恥と嫌悪がないまぜになり、思わず拒絶の言葉を口にする。
 構わずコナンは、柔らかなふくらみの頂点で硬く起ち上がったそれを軽くつねった。
「あぅっ……!」
 いきなり強い刺激を送り込まれ、蘭は悲鳴まじりの叫びを上げた。抑えても、全身がびくびくとわななく。
 敏感な反応に薄く笑い、コナンは同じ責めを二度三度繰り返した。
 その度に蘭の背はしなり、たわんで、何とか手から逃れようと身じろぎを繰り返す。
 けれど両手を封じられての抵抗は限界があり、どんなに身を捩っても追ってくるコナンの手からは逃れようもなかった。
 摘まれ、きゅっと力を加えられる度ぞっと弾ける刺激は、快感よりもむしろ嫌悪に近い。
 首筋に這い寄るぞわぞわとしたおぞ気。
「あぁ…やだ……やめて……」
 ついに耐え切れなくなり、蘭は濡れた声で弱々しく訴えた。
 すると意外にもコナンは素直に手を止め、あっさりと引っ込めた。
 啜り泣きに似た声をもらし、蘭は胸を喘がせた。
 覚悟は出来ていたはずなのに、実際触られるとどうしても嫌悪が先に立ってしまう。
 それでもしたくて、してほしくて、お願いまでしたのにこんなんじゃ……
「ごめんなさい……」
「ごめんなさいは、なしだよ」
 申し訳なさに呟くと、即座に言葉が返ってきた。同時に顔を持ち上げられ、蘭は戸惑いながらコナンを見つめた。
「そんな顔しないで。大丈夫だから」
 宥めるように笑いかけ、コナンはゆっくり顔を寄せた。
 近付いてくる唇を熱く見つめ、蘭は目を閉じた。
 熱を帯びた薄い皮膚が、自分のそれと重なる。
「………」
 甘えたような溜め息をもらし、蘭は肩を上下させた。
 コナンは口付けたまま、首筋から肩、腕や背中を手のひらで優しくさすってやった。
 きめの細かいなめらかな感触が気持ちいい。
 始めは落ち着かせる為に始めたのも忘れて、コナンは楽しむように何度も手のひらをすべらせた。その内にいたずら心が湧いてくる。爪の先でかすめるように背筋をなぞると、途端に蘭の口から軽やかな笑い声がもれた。
「もう、やめてよ」
 笑いながら、肩を揺すって抗議する。
「くすぐったい?」
「くすぐったい」
 分かっててやってるでしょ
 間近の眼差しに唇を尖らせ、蘭は言った。
「じゃあもっとくすぐっちゃおうかな」
「え、だめだめ!」
 言葉と同時にそろりと首筋を撫でられ、蘭は慌てて後じさった。といっても逃げられる範囲は狭く、少し顎を引くのが精一杯だ。
「くすぐるのはなし!」
 楽しげに笑い見つめてくるコナンをむくれた顔で見つめ、ぎゅっと唇を結ぶ。
「くすぐるの駄目?」
「だめ!」
 ばさばさと髪が踊るほど首を振り、蘭はきっぱりと言った。
「じゃあ、他の事ならいい?」
「え…、なんで……?」
「だって……」
 と、それまで無邪気な子供の面だったのが一転して支配者の貌に変わる。
 突如現れたそれに息を飲むと同時に、押さえ付ける力で頬を挟まれ、蘭は大きく目を見開いた。
 ひくりと喉が鳴る。
「……だって、こんなエッチなお願いする蘭姉ちゃんにはお仕置きが必要でしょ」
 まっすぐ向かってくる強い眼差し。
 見つめているだけで眦に涙が滲んでくる。
「コナン…くん……」
 わずかに怯えた声、震える喉。
 コナンは両手を首筋にずらすと、そっと喉元に唇を寄せた。舌先でちろりと舐め、接吻する。
「ん……」
 蘭の肩が瞬間跳ねる。口端で軽く笑い、コナンは二度、三度と繰り返し舐めた。
 ぞくり、ぞくりと広がっては消える淡い痺れに、蘭は肩をわななかせた。
 やがてコナンが離れても、蘭は同じ姿勢のまま動けずにいた。どうにか動く目でぎこちなく見やると、手に、見慣れた物があるのに気付く。
 それは、自分が毎朝顔を洗う時に使っているヘアバンドだった。
 何をするのかと問う間もなく、ヘアバンドで目隠しをされる。
「え…なにを……!」
 突如訪れた暗闇に引き攣った悲鳴を上げ、蘭は肩を竦ませた。
「言ったでしょ、エッチな蘭姉ちゃんにはお仕置きが必要だって」
 何とか振り払おうともがいていた蘭は、その一言でぴたりと動きを止めた。途端に込み上げてくる羞恥に、頬が熱くなる。
「あ、あ……」

 そうだ…わたし……

 蘭は後ろ手に縛られた手をきつく握りしめ、いっそ消えてしまいたいと深くうなだれた。
 見るからに赤くなった頬に小さく笑い、コナンは手を差し伸べた。
 触れると、過剰なほど蘭の肩が跳ねた。
「あ…ごめんなさい……」
「謝るのはなしって言ったでしょ」
 コナンは頬に両手を添えると優しく引き上げ、言った。
「……うん」
 頷くが、蘭の身体から震えは取れない。
 そんな彼女の混乱を落ち着かせようと、コナンは熱くなった頬を軽くさすってやった。戸惑いを拭い取るように、繰り返し、繰り返し。
 やがて、呼吸が静まった頃合に、口を開き言い足す。
「でも、もし怖くて我慢出来なくなったら、その時はストップって言って。すぐに外すから」
「……うん」
「いいね、絶対に我慢しちゃダメだよ」
「わ……分かった」
 おどおどと頷く蘭に笑いかけ、顔を寄せる。
 唇が触れた瞬間、驚いて蘭の身体がびくんと震える。
 宥めるようにちゅっと軽く吸い、コナンは顔を離した。右手で頬を撫で、肌をたどりながらゆっくり手をおろす。
「あ、あ……」
 小さな手がどこへ向かっているか気付き、蘭はびくびくと肩を竦めた。
 怯えを隠せない彼女にふと笑いかけ、コナンは優しく言った。
「大丈夫……恥ずかしいのも嫌なのも全部忘れちゃうくらい、うんと気持ち良くしてあげる……」
 お仕置きにはならないけど
 囁きに蘭はぎこちなく唇を引き結んだ。
 目が見えないのは、こんなに怖い。
 その上手の動きも封じられて、余計に……
 でも…なんだろう。
 ひどく興奮している。
 彼とする時は、いつだって興奮する。
 恥ずかしいくらいに。
 でも今は、それが些細に感じるくらい、はちきれそうになっている。
 身体中が痛いほど張り詰めている。
 聞こえるはずのない空気の動きにまで耳を澄まし、蘭は浅い呼吸を繰り返した。
 見るからに強張った身体を、コナンはそっと抱きしめた。
 案の定蘭はびくんと震えを放った。
 思ったとおりの反応に小さく笑い、コナンは鼻先にちゅっと接吻した。
「………」
 蘭の喉が微かに鳴る。
 コナンは唇を頬にずらすと、ついばむように数回、顎に二度、首筋に三度、慈しみを込めて口付けた。
 キスの度蘭の身体は小刻みに震え、緊張を走らせた。
 見ると、彼女の形良い唇は今にも泣きそうに歪んでいた。
 目にした途端、優しく頭を撫でてやりたい気持ちと、いっそ泣かせてしまいたい気持ちとがぶつかり合う。
 後者を抑えきれず、コナンは勢いのまま彼女の胸に手を伸ばした。
 たっぷりとしたふくらみを確かめるように手を当てると、同時に蘭の口から短い悲鳴が上がった。
 そのまま数度、蘭はしゃくり上げるように喉を鳴らした。
 その、軽い混乱に見舞われた様を見て、コナンは我に返った。
 一旦手を離し、様子を窺いながら鎖骨の辺りに軽く触れる。痛い箇所を宥めるように少し強めにさすってやりながら、表情を確かめる。
 次第に、蘭の頬から緊張が薄れていった。
 頃合を見計らい、コナンは、さする手はそのままに乳房に顔を寄せた。口を開け、まっすぐ、淡く色付いた突起を目指す。
「やっ……!」
 吐息で感じ取った蘭は、うめきをもらし身じろいだ。
 少し迷いながらも、コナンは白い柔肉の頂点を口に含んだ。
 ひっと喉を鳴らし、蘭が仰け反る。
 激しい拒絶を予想していたが、蘭はただ硬直するばかりだった。
 直接見る事は出来ないが、息づかいから察して戸惑っているのは間違いないようだった。
 嫌悪感だけ、恐怖だけ感じているわけではない。
 内心ほっとし、しかしまだ早いと、コナンは唇も舌も一切動かさずそのままじっといた。
 時折、思い出したように蘭は肩を弾ませた。
 熱い粘膜に包まれた胸の先が、痛いほど脈動を刻んでいる。
 けれど、始めは嫌悪感だけだったそれが、段々と違うものにすりかわっていく。
 次第に落ち着きを取り戻す頭でそれを感じ取った蘭は、迷いながらも、顔を下に向けた。
 コナンの手は相変わらず腕や背中を撫でていた。
 上から下へ、ゆっくりゆっくり、穏やかに。
 どこまでも優しい動きに目の奥が熱くなる。
「コ……コナンくん……」
 蘭は口を開いた。
「い、いつも…みたいに……、して」
 喉の奥でつかえる言葉を途切れ途切れに綴り、ねだる。
 一拍置いて、ふっと空気が揺れた。
 笑ったのだと悟った直後、先端を軽く噛まれ、びりっと肌を走る強烈な痺れに蘭は息を飲んだ。
 後ろ手の拘束も忘れてもがく。
 身じろぐ様を愉しみながら、コナンは甘噛みを繰り返した。時折こりこりと転がし、きゅっと歯を立て、軽く引っ張る。
「やっ…いや……あぁ……あぁん!」
 手首に巻き付いた帯が軋む音を微かに聞きながら、蘭は続け様に嬌声をもらした。
「あぁっ…そんな……だめ、だめぇ……」
 とめどなくもれるしっとりと濡れた喘ぎが、コナンの息を乱す。
 甘えた声が出せるなら遠慮はしないと、もう片方の乳房も苛めにかかる。
 下から鷲掴み、大きく揉み上げ揺さぶり、撫で回す。口に含んだ方は、硬くしこった乳首の根元を咥え、ちろちろと舌で刺激する。
「や…いやぁ…コナンくん……あ、あ……」
 やがて乳輪までもふっくらと浮き上がり、舌で確かめて分かるほどになる。同時に女の肌からはうっとりするような熱気と匂いが立ちのぼり、コナンを包み込んだ。
「あぅ…あっ…やぁん……あぁ……!」
 頭上では、蘭の甘い喘ぎが途切れることなく続いていた。
 コナンは一旦顔を離すと、蘭を見上げ、表情をうかがいながら乳房を揉みしだいた。
 唾液で濡れた乳首はぴんと張り詰め、早く触って欲しいと言いたげに震えていた。望むまま二本の指で摘み、根元から先端にかけて扱くと、たちまち蘭は泣きそうに口を歪め、熱い吐息をもらした。
「あぁ、あ…い……あ、あぁ…ん……」
 続け様の刺激に耐え切れず、くねくねと身悶える様に興奮がいや増す。
「……気持ちいい?」
 尋ねると、辛うじて分かるほど微かに蘭は頷いた。
「……自分で言える?」
「いい…気持ちいいよ……コナン…くん……」
 気持ちいい
 自らそれを口にした途端、腰の奥で熱いものが弾けた。紛れもなく快感だと自覚すると同時に瞬く間に背筋を駆け上がり、脳天をとろけさせた。
「ああぁ……」
 身体の内に渦巻く甘美な疼きを唇から溢れさせ、蘭はしなやかに肢体をくねらせた。忙しなく膝をこすり合わせ、もどかしげに腰を揺する。
「あ、あ、いい……あぅ……あぁん」
 開いた唇から絶え間なくもれる喘ぎはぞっとするほどの色気を含み、どこまでも甘く、背筋をぞくぞくとかきむしった。
 目も眩むほどの興奮に脳髄が灼け付く。
 もっと聞きたいと、コナンは昂ぶった気持ちをぶつけるように乳房を揉みくちゃにした。
「やっ…いた…いたい、よ……コナンく……や、やだ…あん…あ……」
 言いながら蘭は緩慢に身悶えた。
 痛いと訴える響きは拒絶ではなく、むしろもっとして欲しいと望んでいるようだった。
「蘭姉ちゃんは痛いのが好きなんだね」
 くすくす笑いながら言うと、即座に蘭は「違う」と首を振るが、逃げるどころかもっととねだる素振りを見せた。
「違わないでしょ」
 言って、摘んだ乳首を強くつねる。
「あぁうっ!」
 短い叫びを上げ、蘭はびくんと背を反らせた。
「ご、ごめんなさい……」
 涙声で赦しを請う。しかし心の片側では、もっと苛めて欲しい、息も出来ないほど強く支配されたいと望んでいた。
 気付けば、嫌悪も拒絶もすっかり消え去っていた。
 思い出そうとしても、気分が高まっている今はかけらも掴む事が出来ない。
 いつもそうだ。
 自分でも説明できない曖昧な感覚、なのに確実にある嫌悪感。
 それを消し去ってくれるのは、いつも。
「あぁ……こ…コナン…くん……」
 弱々しい声にコナンはようやく手を離した。
 薄桃に染まり、微かに震える乳房を、今度はいたわる手付きで撫でさする。
 痛みで敏感になった箇所を優しくさすられ、じわり、じわりとしみ込んでくる暖かさに、蘭はうっとりと溜め息をもらした。
「コナンくん……」
「……なあに?」
 聞き返し見上げると、言いにくそうに蘭は唇を引き結んだ。
 密かに笑い、コナンは目を落とした。
 何を要求しているか、おおよそは分かる。
「どうしたの、蘭姉ちゃん……」
 無意識に欲しがる一押しを与え、コナンは再度尋ねた。
「お、おねがい……下にも……ほし……」
 切れ切れに囁き、蘭は自ら膝を開いてねだった。
「下って、どこ?」
 まるで分からないとあどけない声で綴り、コナンはへその辺りを指先でくるくるとさすった。
「や……い、いじわる……!」
 くすぐったさに身じろぎ、蘭はすねた声を上げた。
「もう…いい」
 肩に頬がつくほど顔を背け、短く言い放つ。
 といって、本当に怒ったわけではない。
 彼が、本気で言わせようとしているのではない事は分かっている、いつもの他愛ないやりとりだ。
 ただ、一つ叶えたい望みがある。
 いつも優しい愛撫をくれる彼に、一つ。
「ごめんね蘭姉ちゃん、怒らないで」
 言葉と同時に頬にキスを受ける。
 じわりと広がる愛しさ。
 胸に落ちたそれが、身体中を満たしていく。
「謝るから…許して」
「……謝るだけじゃいや」
 まだ不機嫌な声で言うと、空気が、戸惑いを伝えてきた。
「どうしたら、機嫌を直してくれる?」
 見えなくても、どんな顔をしているか容易に想像できた。
「じゃあ、コナン君の……」
 蘭はためらいがちに口を開くと、コナンの声がする方に顔を向け、言った。
「コナン君の……舐めさせて」
 瞬間、頭の芯がかっと熱くなる。
 衝撃は、コナンも同じように受けていた。
 耳を疑う申し出に息が止まる。
 立ちくらみを起こしたように視界がぐるぐると回転する。
 頭の中が白く霞んで、物がうまく考えられない。
「だ……ダメ?」
 窺う声にコナンははっと我に返った。
 見れば、蘭の頬は真っ赤に染まっていた。それでも顔はまっすぐこちらを向き、じっと返事を待っている。
 慌てて、蘭の言葉を反芻する。
 情けないほど動揺しながら。
「え、あ……」
 辛うじて言葉を吐くと、聞き逃すまいとする蘭の耳がぴくりと動いた気がした。
 けれどどうしても声が出ない。
 しばし沈黙が続く。
 重たい静寂に耐え切れなくなり、蘭は口を開いた。
「い…いつも、私ばかり気持ち良くなってる……から……コナン君にも…、気持ち良くなってほしいの……」
 そこで一旦息をつき、ぎゅっと唇を引き結んだ後、付け加える。
「い、いやなら……」
「いやってわけじゃ……」
 寂しげな声音にコナンは慌てて首を振った。
 ただ恥ずかしいだけだ。
 身体に見合った自分のそれがただ恥ずかしい。
 しかし、頑なに拒むだけの勇気もない。
 どちらと問われれば…してほしい。
「じゃあ……舐めさせて。コナン君の……」
 わななく蘭の唇を見つめたまま、コナンはかすれた声で頷いた。
 そのまま半ば麻痺した状態で、服を脱ぎ始める。

 

 

 

「ん……」
 小さなうめきと共に自分のそれが彼女の口の中に飲み込まれていくのを、コナンは不思議な気持ちで見つめていた。
 今味わっている快感は本当に自分のものなのかと、夢見心地になる。
 なんて熱くて柔らかいのだろう。
 瞬きも忘れて見入る。
 蘭は前屈みでコナンのそれを口に含むと、舌全体を使ってちろちろとくすぐった。
 途端にコナンの背を甘い痺れが走る。とろけそうな感触に内股の震えが止まらない。
 浅い呼吸に胸を喘がせながら、コナンは唇の動きを凝視していた。
 やり場に困り下ろしていた手を持ち上げ、恐る恐る蘭の髪に触れる。
 時折、蘭の微かな呼吸が下腹をかすめ、それがまた腰を甘く痺れさせた。
 見守る前で、蘭は頭を小刻みに揺すり何度も傾けて、付け根やくびれを唇と舌で丹念に刺激する。そして袋ごとちゅるんと吸い込み、強く弱くついばんだ。
 たまらずにもれそうになるうめきを寸でのところで抑え、コナンは喉を引き攣らせた。
 髪を撫でる手につい力が入る。
 と、それまでぎこちなくも動いていた蘭がぴたりと動きを止め、しばし逡巡の後、ゆっくり顔を離した。
 突然の放棄、やはり嫌になったのかとコナンは息を詰めた。
 そんなコナンの視線を探して蘭は頭を上げ、言った。
「何か…言ってよ。き、気持ちいいとか、良くないとか……」
 思ってもない一言に、口から心臓が飛び出すかと思うほど胸が高鳴る。
「い、いいよ……」
 うるさいほどの鼓動を耳の奥で聞きながら、コナンはぶっきらぼうに言い放った。
 すると、少しすねたように寂しそうに唇を尖らせ、蘭は言った。
「それだけ……?」
 それだけって…これ以上はみっともなくて言えるかよ……声抑えるので精一杯だってのに
 しかし、じっと待っている蘭の不安そうな表情に勝てるはずもなく、思い切って口を開く。
 けれど中々言葉が出てこない。
 口を開けたまま視線を左右に泳がせ、途切れがちにぼそぼそと呟く。
「……気持ち良くて…嬉しくて……あ、頭がどうにか…なっちまいそうだよ……」
 嗚呼、顔から火を噴きそうだ
 穴があったら、間違いなく飛び込んでる。
 けれど、気持ちは満たされている。伝えた事に満足している。
 彼女の目隠しを残念に思いながら、ほっとしながら。
「よかった……」
 ひと息置いて、彼女の朱い唇が美しい微笑みを浮かべる。
 それを見た途端、またも胸が高鳴った。
 蘭が口を開く。目標を唇で確かめ、咥える。
 奥まで、根元まで飲み込まれていく自分のそれを霞んだ目でコナンは見つめていた。
 本当に、頭がどうにかなってしまいそうだ。
 蘭の舌はくねくねとしなやかに動き、巻きついたかと思えば小刻みに突付いてきて、たまらずに腰を揺すれば、合わせてキュッキュッと吸ってくる。
「ふ、う……!」
 尖らせた舌で先端をくじられ、電流を浴びたかのような強烈な快感にコナンは思わず声を上げた。
 ぞわりと背を伝う痺れに呼吸が乱れる。
 喘ぎながら目を落とすと、伸ばした舌で、ちろちろと袋を舐めているのが見えた。
「っ……!」
 実際の感覚と目に映るものとがあいまって、身体中がとろけていく。
 触れたそこから熱が伝わって、指先まで広がっていく。これほどの至福をくれる事が嬉しくて嬉しくて、気を抜いた途端大声で叫んでしまいそうだ。
 気付けば蘭の頭を胸に抱きしめていた。髪に顔を埋め、甘く広がる匂いを胸いっぱい吸い込む。
 そのまま腰を前後に揺する。
 端から見れば随分滑稽で異様な光景だろう。
 そんな事を思うと、余計興奮が増した。
「く、あ……」
 ひくつく喉でコナンはうめいた。
 蘭の唇を出入りする自分のものが、唾液と粘液とに濡れじゅぷぬちゅと卑猥な音を立てる。
 そこに時折、苦しげな、それでいて甘ったるい喘ぎが混ざる。
 彼女の口内を犯している証に息が上がる。絶頂が近付く。
「ら、らん……」
 更に強く頭を抱きしめ、腰を打ち付ける。
 ぶるりと背筋が震えた。
 直後、内部で滾っていたものを残らず吐き出す。
 下半身ごと持っていかれるような錯覚。
 自然と身体が震えを放った。
「んん……」
 喉を打つ熱さと勢いに蘭が短く声をもらす。
 それを遠くに聞きながら、コナンは射精の後の余韻に浸った。
 最後の一滴まで吸い尽くすように、蘭の唇が優しく動き扱く。そこに、口内のものを嚥下する動きも加わり、先ほどとはまた違う粘膜の締め付けにコナンはびくびくと内股を震わせた。
 心地好い脱力感が全身に広がる。
 幾分呼吸が整った頃、コナンはゆっくり身体を離した。
 と、引き抜かれていくのを惜しむかのように蘭の唇がきゅっと吸い付く。
「うっ……」
 思いがけない行為にコナンは短くうめいた。
 それを、痛みのせいと勘違いした蘭は、慌てて口を離し、声のした方に顔を上げて小さく「ごめんなさい」と囁いた。
「あ、いや……」
 びっくりしただけ
 そう言いかけてコナンは、彼女の赤く濡れた唇に目をとめた。
 唾液と自分のものとでぬらぬら光る形良い唇が、ふるふると震えている。
 咥える為にずっと開いて力を込めていたから、少し疲れたのだろう。
 親指で軽くなぞってみた。
 接触に驚き蘭はびくりと震えたが、すぐに理解し、触れてきた親指にキスを返した。
 くすぐったい感触にふと笑い、コナンは優しく唇を撫でた。
 ここにさっきまで自分のものが入り込んでいたと思うだけで、また興奮が込み上げてくる。
 昂ぶるまま、蘭の唇を塞ぐ。
「んっ……」
 小さく驚きの声を上げた後、蘭は求められるまま舌を絡めた。
 しばしぴちゃぴちゃと、互いの舌を貪る音だけが部屋に響いた。
「あ、は……」
 どちらのものか分からない喘ぎ。
 お互い溶けて混ざり合った錯覚を胸の内で歓びながら、コナンはしっかりと腕を回し抱きしめた。
 甘える仕草で、蘭が身をすり寄せる。
「目隠し……取って」
 微かな呟きがコナンの耳朶を掠めた。
 請われるまま目隠しを外し、彼女の瞳が開くのを待つ。
 眩しさに瞬きを繰り返しながら、蘭は間近の瞳を熱っぽく見つめた。まっすぐ胸に迫ってくる支配者の眼差しに、たちまち背筋がぞわりと浮つく。
「あ……」
 ぶるぶると震えながら俯く蘭に小さく笑いかけ、コナンは胸のふくらみに手を伸ばした。
「あん……」
 五指で柔らかく揉みしだくと、淡い喘ぎが零れた。
 きゅっと乳首を摘めば、びくっと肩を弾ませて喘ぐ。
 コナンはしばし白いふくらみと戯れた後、そろりそろりと肌を伝って下腹に手を伸ばした。
「ん……」
 合せるように、蘭はおずおずと膝を割り開き顔を見つめた。
 期待に胸が痛いほど高鳴る。
「さ…さわって」
 望み通り、コナンはまっすぐ足の合間に手を挿し入れた。まだ花弁の奥にはいかず、外側からそっと確かめる。それでも、にちゃりと蜜が指先に触れた。
「……もうこんなになってる」
 言われ、恥ずかしさに蘭はおどおどと顔を伏せた。
「だ、だって……」
 言いにくそうに口ごもり、目を泳がせる。
 顔を真っ赤に染め、ちらちらと視線を送ってくる仕草がしょうもなく愛しい。
 コナンは唇を塞ぐと、同時に下腹の手を奥へ進めた。
「んんっ……」
 途端に鼻にかかった甘い声が口の中に零れる。
 うっとり聞きながら、捕らえた花弁を指で割り開き、中指でくちゅくちゅと秘裂をなぞった。
「う、あ…あん……」
 その度蘭の腰がぴくぴくと跳ねる。
 反応に満足し、コナンは束ねた二本の指をゆっくり奥に潜り込ませた。
「ん……!」
 蜜液にねっとり濡れたそこは抵抗なく指を飲み込んでいく。飲み込み、更に奥へと誘い蠢く。
 コナンは数度抜き差しを繰り返すと、指先で膣上部を大きく抉り、刺激を送った。すかさず親指を花芽に押し当て、くにゅくにゅと円を描いて転がす。
「ん、あぁ……や、ん」
 うめき、振りほどこうとする蘭の顎を掴んで固定し、コナンは強く舌を吸った。
「あっ…ふぅ……んん」
 上と下どちらにも強い快感を与えられ、たまらずに蘭は腰を波打たせた。動かずにいられない。なのに縛られ、押さえ付けられて、思うように動けない。もどかしさが、快感をより強いものにする。
「ん……や、はっ……」
 愛らしい顔を苦しげに歪ませ、蘭は幾度も腰を揺すった。
 口内で踊る小さな舌でちろりと舐められると、それだけで力が抜けそうになる。
 その上、弱い箇所を二点同時に責められて、頭の芯が白く霞んで何も分からなくなる。
 分からなくなる…
 とろんと潤んだ瞳で、蘭は間近の支配者を熱っぽく見つめた。
「口の中もこっちも、すごく熱くなってる……」
 コナンは顔を離すと、内部に埋め込んだ指をくねくねうねらせながら言った。
「あ、んん…だ、だって…あっ……コナンくんの指…き、気持ちいいから……」
 指先が、鋭敏な箇所を気紛れに抉るせいだろう。時折身体を跳ねさせながら、蘭は甘い喘ぎと共に囁いた。
「……気持ちいい? ここ?」
 くすくすと笑い混じりに、親指で花芽を、埋め込んだ指で少し奥の方をくりくりとこねる。
「ひっ……!」
 一際強く震えを放ち、蘭は仰け反った。
「うん、そこ……あぁ……」
 答えた途端、コナンの指が二箇所を同時に責めてくる。
「あぁっ……そんな…だめぇ!」
 脳天を直撃する激しい痺れに耐え切れず、蘭はびくびくと身体を波打たせた。
「ふ、くうぅ……」
 瞬く間に迫ってくる絶頂を追い払うように何度も頭を打ち振り、抵抗する。
「……いきそう?」
 内部の締め付けが強くなったのを感じ取り、コナンは言った。
 問われ、蘭は二度ずつ三度ずつ首を振りながら「いや……」と涙声で訴えた。
「こんなに溢れさせてるのに、いやなの?」
 責める手はそのままに、コナンは軽く笑った。
「あぁ! だめ…だめぇ!」
 蘭のそこは、まるで粗相をした後のように内股までぐっしょり濡れそぼり、尚新しい蜜をもらし続けていた。
「こんなに感じてるのに」
 言いながら、充血して硬くしこった花芽を親指でぐりぐりと押し潰す。
「やああぁぁぁ!」
 途端に鋭い悲鳴が上がる。同時に中の指をきゅっと締め付けられ、その、複雑に絡み付く内襞の動きにコナンは息を跳ねさせた。もしも、今埋め込んでいるものが指ではなく自分のそれであったなら、今の絞り込みで射精していただろう。
 今は叶わないが、擬似的なものは、味わわされた。
 確実に。
 口から飛び出そうなほど心臓が高鳴っているのが、その証だ。
 少なからず屈辱を覚える。
 いや、後悔に近い。
 彼女を満足させる前に、自分だけなんて。
 コナンは手の動きを早め、むずかる彼女を追い込んだ。
「やっ…だめぇ!」
「だめじゃないでしょ…ほら…こんなに感じてる。気持ちいいでしょ」
 あやすように言われ、蘭は背筋がぞくりとざわめくのを感じた。
「あ、うぅ……」
 耳に滑り込んだ低音が、奥のほうで何度も繰り返される。その度、快感が増す。身体が弾けそうになる。
「ほら、ここも喜んでるみたいに……」
 囁き、コナンはきゅっと乳首を摘んだ。
「あぅっ……!」
 一際高い悲鳴を上げ、蘭は白い喉を晒し仰け反った。指の触れる場所全てがひと繋がりになってしまったかのような錯覚。どこかに刺激を受ければ残りの箇所も同じく引き上げられ、高まっていく。
 もう、どこがどうとも分からない。
 ぜんぶ触って……
 半ば無意識に、蘭は乳房を差し出した。
 全身でいきたいと訴える蘭に溜め息と笑みを零し、コナンは乳首にしゃぶりついた。わざと大げさな音を立てて吸い上げ、唇と歯とで甘食みを繰り返す。もう片方は大きく掴み、揺さぶり、骨にこすり付けるようにしてきつく揉みしだく。
「はっ…ああぁ、あ、あ…い、あ……」
 陶然とした表情で、蘭はしとどに喘ぎをもらした。
 身体中燃えるように熱いのに、愛撫に反応してさらに熱が高まる。
「あぅ、あぁ……コナンくん…コナンくん……」
 細く長い異物が、腰の奥で奔放に暴れている。
 敏感な箇所を執拗にこすり、くすぐって、高みへと持ち上げる。
「あ…だめ……い、いく……いっちゃう」
 泣きそうになりながら訴え、蘭は縛られた両手を何度も握り直した。
「我慢しないでいって」
 仰のいたまま、はあはあと肩で喘ぐ蘭にそう告げ、コナンは下腹の手を早めた。
「いや、いやぁ…だめぇ……!」
 バスタオルの上でくねくねと腰を踊らせ、蘭は引き攣った叫びを上げた。強い愉悦に身体がはちきれそうになり、たまらずに膝を閉じる。大人の手ならそれで拒絶も出来るが、小さな手では、抵抗にすらならない。どころか逆に、そうする事で自ら押し付ける形となり、蘭は困惑の表情で首を振った。
 構わず、コナンは絶頂へと蘭を追い上げた。
 ねじりながら抽送を繰り返し、奥をぐいぐいと抉ってはまた抜き差しに戻る。動かすごとに蜜が指に絡み、ぐちゅぐちゅといやらしい音を響かせた。
「もっ……だめ、いっちゃうぅ……」
 半ば我を忘れ、蘭は髪を振り乱し訴えた。
「いって……蘭姉ちゃん」
 促した直後、埋め込んだ指をきつく締め付けられる。搾り取る動きできゅっきゅっと収縮する動きに逆らい何度も突き上げながら、コナンはとどめとばかりに親指で花芽を強く押し潰した。
「!…いやああぁぁぁ!」
 叫びと共に全身を引き攣らせ、蘭はびくびくと繰り返しわなないた。
 その様を、コナンは息も忘れて見入っていた。
 先刻味わった絶頂を今に重ね、密やかな満足感に胸を喘がせる。

 

 

 

 すぐに拘束をほどき、無理な姿勢を強いていた腕をさすっていると、ようやく落ち着きを取り戻したのか蘭が動いた。
「ありがとう…もう大丈夫」
 少しはにかんだ表情がしょうもなく愛しい。
 コナンは、引っ込めようとする腕を押さえ優しくマッサージを施した。
「……大丈夫だってば」
「あ……あんまり気持ち良くない?」
「そんな事ない、コナン君の手、すごく気持ち良いよ」
 慌てて首を振り、蘭はくすぐったそうに笑みを浮かべた。
「よかった」
 コナンも小さく笑う。
 と、急に蘭は表情を曇らせ、俯いてしまった。
「どうしたの?」
 さすりながら顔を覗き込むと、何か伝いたげにちらちらと視線を送ってくる。
 訳が分からず、再度尋ねると、蘭は言いにくそうにぼそぼそと綴った。
「わ、わたし……そんなに…エッチかな」
「え……」
 思わずぽかんと口を開いてしまう。
 さあ、困った。
 違うと言えば嘘だ、最中、あんなに激しく乱れておねだりしてくるのに…違うなんて言えない。
 それは向こうも分かっているはず。
 けれど彼女の聞き方は、あれは、違うと言ってほしいのに他ならない。
 さあ、どう答えればいいだろう。
「……だよね」
 迷い弱り果てていると、意外にも蘭は自ら認める言葉を口にした。
「あ、いや……あの」
 うろたえ、コナンはしどろもどろに首を振った。
 すると、それまで俯いていた顔を急に上げて、蘭は言った。
「え……!」
 しかし、勢いは一瞬で途切れた。
「え?」
 コナンは同じ言葉で聞き返し、続きを待った。
 見つめる先で、みるみる蘭の顔が真っ赤に染まる。
 訳が分からず、コナンはただ瞬きを繰り返すばかりだった。
 時計の長針が一つ分進むほど経って、ようやく蘭は言った。
 ぼそぼそと、辛うじて聞き取れる声で。
「エッチなのは……嫌い?」
 探るような上目遣いが胸を貫く。
 途端に、全身がかっと熱くなった。
 胸の内に愛しさが広がる。
「好きだよ、蘭姉ちゃん」
 コナンはふと口端を緩め、真っ赤になった頬にちゅっと口付けた。
「蘭姉ちゃんの全部が、好きだよ」
 自分の質問に自分で赤くなるそんな可愛さがたまらなく好きだ。
「わたしも…コナン君大好き」
 恥ずかしそうに笑いながら、蘭は伸ばした手でコナンの手をぎゅっと握った。
 コナンも握り返す。
 どちらの手も、心なしかいつもより熱かった。
「シャワー浴びて、さっぱりしよう」
「そうだね」
 笑いながら、二人はバスルームへと向かった。

 

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