キスの後は

 

 

 

 

 

 

 

 

 朝から数えて五回目か、それとも帰ってきてから数えて五回目か。
 いや、六回目か、それとも。
 あやふやになった回数などどうでもいいと隅に投げやり、コナンは目の前の唇を貪った。
「んん……」
 しっとりと濡れた声が耳に届く。可愛らしい響きに、背筋が疼いてたまらない。
「やっ…もう……コナン君」
 困ったような、怒ったような表情で、蘭が肩を押してくる。
 そこでようやく、コナンは顔を離した。
 両頬に手を添えたまま、瞳を見つめ唇を見つめ…名残惜しそうに何度も目を行き来させる。
「………」
「な……なによ」
 何か伝いたげなのに何も言ってこないのが気になり、蘭は声に出して尋ねた。
 思えば、今日は朝からいつもと少し違っていた。
 こんなにキスばかり求められたのは…初めてかもしれない。
 理由は、分からなくもない。
 少し無理をしたせいで体調を崩し、風邪を引いてしまったのが半月ほど前。熱が引いた後も咳だけはしつこく残り、ようやく治まったのが一昨日。一度だけわがままを聞いてもらった後は、完治するまで我慢を重ねた。
 多分…お互いに。
 だから、彼がいつも以上に欲しがるのはよく分かる。
 自分だってそうなのだから。
 だからといって、買い物の荷物も何も放りっぱなしの、帰ってきたままの状態で、ベッドに上がる間も惜しんで始めてしまうのは、少しせっかちが過ぎるとは思うけれど。
「何か言ってよ……」
 いつまでも沈黙のままは落ち着かないと、蘭は口を開いた。
 けれどコナンはそれには答えず、再び顔を近付けた。
 軽く触れる。
 唇を舐める。
 唇をついばむ。
 舌を挿し入れる。
 舌で口内を舐める。
 次第に呼吸が乱れていく。
 自分のか、彼女のか。
 それでもお互い、離れる事はしない。
 コナンは頬に添えていた手で長い髪を梳き、指に絡めて遊びながら、尚もキスを続けた。
 オレ…おかしくなっちまったのかな……
 昂ぶって眩む頭の隅は不思議と冷静で、たがの外れた自分を観察していた。
 しかし余裕を保っていられたのもそこまでで、冷静だった片方もいつしか興奮に飲まれ蘭の唇に溺れていった。
「は…ん、ん……コナン君……」
 苦しげな声にますます身体が熱くなる。
 わざと湿った音を響かせて舌を舐めまわし、繰り返し吸い付く。
「あ、ん…あぁ……」
 喘ぎながらも蘭の舌は愛撫に応え、少しせっかちな動きでコナンのそれを求めた。
「コナン君……コナンく……」
 何度もコナンの背中をまさぐり、手のひらに感じる熱さに身を震わせ歓喜に浸る。
「んっ…ん」
 髪を指に絡め戯れていた小さな手が、耳へとおりて首筋を撫でた。
「は、ん……」
 途端にぞくりと肌を走る愉悦。
「んんっ……」
 喉の奥でうめき、蘭は小さく身震いを放った。
 指の触れた箇所から、ぞくぞくするほどの疼きが生まれ、呼応するように乳房の頂点が硬く尖り始める。
 ――恥ずかしいほど
 ああ…早くさわって……
 じんじんと脈打つそれをそっと彼に差し出し、蘭はごくりと喉を鳴らした。
 微かな身じろぎに気付いたコナンが、ゆっくりと手をおろす。
「はぁ、あ……」
 その動きだけで、期待だけで、蘭はたまらずに喉を反らせて喘いだ。
 ひと撫でするだけでいってしまそうなほど、身体が昂ぶる。
「…らん……」
 全身で欲しいと訴える女を前に、頭が真っ白になる。
 コナンはブラウスのボタンに指をかけると、上から一つひとつ外していった。気が急いているのか、時々指が震えた。もどかしい。思わずちぎり取ってしまいたくなるのを抑え、全てのボタンを外す。襟元をはだけると、下着を身につけただけの肌が露わになった。
 その様を、蘭はじっと見つめていた。
 視線に気付いてコナンは目を上げ、再び唇を重ねた。同時に直接肌へと手を伸ばす。
「ん、んふぅ……」
 触れた指先からじわりと広がるむず痒さに身じろぎながら、蘭はぴちゃぴちゃと舌を絡め吸った。
 キスの間も小さな手は動き、肩から首筋、鎖骨にかけて這いまわり、素っ気ない白のスポーツブラの上からそっとふくらみを撫でさすった。
「あ……」
 持ち上げるようにしてゆるゆると揉みしだき、軽く揺する。
「あぅ、ん……」
 わずかな刺激も乳首に響き、即座に腰の奥へと流れ込む。
 たちまち熱くなる中心に恥らうも、蘭はもぞもぞと膝をこすり合わせ快感に酔い痴れた。
「ひゃっ……」
 突如布越しに頂点を強く摘まれ、瞬間びりっと走った刺激に蘭は短く叫んだ。
「……舐められるのと、どっちが好き?」
 摘んだ二本の指でくりくりと弄くりながら、コナンは唇の上でそう尋ねた。
「どっちも……すき」
 おずおずと目を合わせ、蘭が答える。
 コナンはふと笑みを零すと、ふっくらした頬へ唇をずらし、ついばむような軽い口付けを繰り返しながら首筋を目指した。更に下へ、下へ。
「ん、ん……」
 肌に送り込まれる淡い疼きにも似た快感に喉の奥で鳴きながら、蘭は目の前の小さな身体にぎゅっとしがみ付いた。
 窮屈な腕の中もがくようにして、コナンは彼女の欲しがるそこ目指して唇を這わせた。
 片方ずつスポーツブラの肩紐を外し、布を押し下げる。
 露わになった白いふくらみを前に、コナンはかすれた声をもらした。しっとりと匂い立つ肌にくらくらと目眩が起こる。
 眩しそうに見つめたまま、コナンはひたりと手のひらを当てた。
「あ……」
 途端に蘭はぶるりと身震いを放った。頭の隅にちらりと嫌悪感が過ぎるのを見て見ぬ振りでやりすごし、目を閉じる。
 自分では隠したつもりだが、無意識に顔に表れてしまっていた。
 苦しいのを耐えるように眉根を寄せた表情に、コナンは何か伝いかけた口を噤み、ちゅっと乳房にキスをした。
「っ……」
 蘭の口からひっそりと溜め息が零れる。
 少しでも楽になるようにと、コナンは指と唇で両の乳房を慰めた。
 揉みしだく手は痛いほどの強さで荒っぽく、けれど口に含んだ乳首は優しく舌で転がし舐め上げ、二重の刺激を同時に与える。
「う、あぁん……や…あぁ」
 戸惑い混じりの喘ぎをもらし、蘭は緩慢に身体をくねらせた。
「やっ…だめ……コナンく……」
 口では拒むが、痛みよりも快感の方が勝り、引きずられる。
 いや…痛いのに気持ち良い……恥ずかしい……
 そうは思っても、腰の奥から熱いものが溢れてしまうのは止めようがなかった。
「気持ちいい……?」
 手荒に扱ってしまったのを詫びるように乳房を優しく撫でながら、コナンは顔を上げ訊いた。
「…うん……」
 蘭は素直に頷き、そっと笑みを浮かべた。
「気持ちいい……」
 呟き微かに開いた唇に吸い寄せられるようにして、コナンは顔を近付けた。
 触れてくる唇を受け止め、蘭は小さな身体を抱きなおした。
「ん、はっ……」
 何度目か分からないキスに、下腹の疼きが深まる。
 それを見透かしてか、コナンは口付けたまま手をそこへと伸ばした。
「足開いて……」
 キスの合間に言って、スカートの上から内股をそっと撫でる。
 ぞくぞくと伝わってくるくすぐったい疼きにわななきながら、蘭は少しずつ膝を開いていった。
 コナンの手がスカートを捲し上げる。たっぷり布を使ったロングのスカートでは下着こそ見えないものの、だらしなくめくられた様はそれより淫らに映った。
 急に恥ずかしくなり、蘭は顔を背けた。
 そんな彼女に一つ笑みを零すと、隠れている奥へ手を伸ばし、ショーツの上から指をあてがった。
「やっ……」
 戸惑いがちな声が蘭の口から零れる。
 反応を伺いながら、コナンは布越しに花弁をなぞった。秘裂にそって上下に動かし、時折大きく捏ねる。するとたまらないとばかりに蘭の腰が妖しく蠢いた。
「あぁ…コナン君……」
 抱きしめる腕に再び力がこもる。
「………」
 満足に抱き返してやれない事に募る苛立ちを無理やりに追い払い、コナンはそろそろとショーツの中に手を潜り込ませた。
「あっ…あぁ……」
 頬に触れる吐息が、くらくらと目眩を誘う。コナンは頭を抱き寄せると、閉じた瞼に繰り返し唇を押し当てた。震える睫毛がしょうもなく愛しい。
 接吻に溺れながら、探り当てた花弁を二本の指でゆっくり割り開く。そこは既に熱く濡れそぼり、刺激を待ち侘びて微かに震えていた。
 戯れに中指で軽く頂点の突起を弾くと、面白いように蘭の身体がよじれた。もっと見たいと、同じ責めを繰り返す。
「あぁ、う……」
 今にも泣きそうに緩んだ顔はぞっとするほどの色気を含み、コナンの目を釘付けにした。
「声…出して」
 言うやコナンは、三本の指をまとめてずぶりと突き入れ、親指と手のひらも使って全体を揉みまわし、内も外も残さず責めた。
「あっ…ああぁん……や……」
 待ち侘びた愛撫にたちまち身体が高みへと持ち上げられる。
「あ…あ…いい、気持ちいい……、あぁ…あん!」
 コナンにしがみ付き、蘭は悲鳴とも叫びともつかない声を上げ身悶えた。
「やっ……」
 もう片方の手が乳房をいじめにかかる。
「胸はだめぇっ……」
 快感が強すぎて耐えきれないと身をよじって抗うが、コナンは聞き入れず責め上げた。
「あ、んぅ…んん…あぁう……」
 指が食い込むほど揉みくちゃにされ、尖った乳首を何度も扱かれる。
 痛みと、それをこえる快感とに蘭は涙混じりの嬌声を迸らせた。
「はっ…はぁ……あぅん……」
 内部で奔放に動き回る三本の指が、更に蘭の喘ぎを紡ぎ取る。
「あぁ…いやっ……だめ…だめ……いっちゃう」
 ぐいぐいと抉るコナンの右手を掴み、蘭はいやいやと首を振った。
「だめ? いきたくない?」
 掴む蘭の手に構わず中をかき回し、同時に花芽を転がす。
「あぁん……いきた、い…あぁ……」
 慌てて首を振り蘭が答える。
「じゃあ手を離して」
 くすくすと笑い、コナンは言った。
「う、ん……でも…でも……」
 ためらう蘭に笑みを深め、手の動きを早めて極まりへと押しやる。
 嗚呼…もう……
「だめぇ…あぁっ……あ――!」
 大きく背をしならせ、鋭い悲鳴と共に蘭は絶頂を迎えた。
 びくびくと、不規則な痙攣が幾度も起こる。
 それが止むまで、コナンはどちらの手も動かさずじっと待った。
 力任せに握られた手首が少々痛むが、彼女の愛くるしい声と引き換えなら耐えるのも容易い。
「はっ…はぁ……あぁ……ん」
 忙しない息づかいが収まったのを見計らい、コナンは静かに口を開いた。
「大丈夫?」
「……うん」
 答えて、蘭ははっと気付き慌てて手を離した。
「あ……ごめんね」
 見れば、手首には五本の指の跡がくっきり残ってしまっていた。
「平気だよ」
 何ともないと、コナンは軽く笑ってみせた。
「ん……」
 けれど蘭は顔を曇らせたまま目を伏せた。そしてちらちらと上目遣いに目線を送り、何か伝いたげに唇を噛む。
 推理するまでもなく察したコナンは、触れるだけのキスの後、済まなそうに俯く蘭に口を開いた。
「ねえ……もう一回、させて」
 そう言って、まだ埋め込んだままの指を軽くひねる。
「やんっ……!」
 途端に蘭の口から短い悲鳴が上がり、同時に内部がきゅっと締まる。
 思わず声がもれた口を慌てて押さえ、蘭はおどおどと瞳を揺らした。
 見透かされたこと、浅ましく望んだ自分に胸が重くなる。
「じゃあ、こう聞くね。今の、気持ち良かった?」
 一拍置いて、蘭は頷いた。
「もう一回、してもいい?」
 それには答えず、途切れ途切れに告げる。
「でも、また…コナン君に痛い思い…させたら……」
 しかしコナンは最後まで聞かず、言った。
「そんなの、蘭姉ちゃんが気持ちいい証拠だから、何ともないよ」
 そして、まだ何か伝いたそうな唇に自分のそれを重ね、同時に下腹の指を軽く揺すり立てる。
「ん、んふ……うぅん……」
 塞がれた口から苦しげに声をもらし、蘭はゆるゆると腰をくねらせた。いったばかりで敏感になった身体には、わずかな刺激でも耐えがたい愉悦に変わる。収まりかけた火は瞬く間に燃え上がり、次の高みへと蘭を誘った。
「あぁ…コナン君……」
 ぶるぶると震えながら、蘭は仰け反った。
 そこでようやくコナンは顔を離し、けれど抜き差しは止めずに問い掛けた。
「蘭姉ちゃんは…したくない?」
「ん…や……」
 微かに聞こえる粘ついた水音に、蘭は目を潤ませた。
 そして長い長い沈黙の後、ぼそりと呟く。
「……したい、よ」
 ほっと笑みを浮かべ、コナンは再び口付けた。
「じゃあベッドに上がって」
 こくりと蘭が頷く。

 

 

 

 服を脱ぎ、半ば無意識に胸を隠してベッドに座った蘭と向かい合う形で、コナンもベッドに上がった。
「うつ伏せて、腰上げて」
 言うと、蘭は一瞬ためらう素振りを見せたが、やがて小さくこくりと頷き、おずおずと言われた通りの姿勢を取った。
「う……」
 小さなうめきが蘭の唇から零れた。
 数え切れないほど晒してもまだ恥じらいを見せる姿に、頭の芯がかっと熱くなる。
「!…」
 向けられた下肢に我を忘れてかぶり付きそうになるのを寸でのところで抑え、コナンは丸いふくらみにひたりと手を当てた。乳房とはまた違う、なめらかな感触に胸が高鳴る。もう一方の手も添え、両の親指で、ゆっくりと花弁を割り開いた。
 朱色に熟れたそこが、透明な汁を滴らせ甘く誘う。
 誘われるまま、コナンは口付けた。
「う、あぁっ……!」
 熱い舌が触れた途端、蘭の背がしなやかに反り返る。
 敏感な反応に満足し、コナンはぴちゃぴちゃと舌を鳴らして舐めまわした。
「あっ…あぁん……」
 ふっくらと腫れ上がり綻んだ花弁を舌でなぞる度、蘭が甘えた声を上げて応える。
「あ…はぁ……、あん……」
 シーツにこすり付けるようにして、蘭は緩慢に首を振った。うなじにまで這い上がってくる甘い愉悦に喉を鳴らし、幾度も溜め息をもらす。何かに掴まっていないと、どこか遠くへ飛ばされてしまいそう…半ば無意識にシーツを握りしめ、うねり押し寄せる快感に身を委ねる。
「あぁ、ん……い…いいの」
 しなやかに四肢をくねらせ、蘭は溜め息とともにもらした。
 崩れた四つ這いのお陰で、コナンからも蘭の顔が見えるようになる。
 気付いて、コナンは口を離した。
 代わりに中指をそっと埋め込み、強く弱く内部を捏ねながら蘭の表情を伺う。
 緩んだ朱い唇からとめどなくもれる熱い吐息、鳴き声は甘く、上気した頬はなんとも艶めかしい。
「…蘭姉ちゃん……エッチな顔してる」
 告げると、蘭はすぐさま手で顔を隠した。
「やだ…見ないで……」
「見せてよ…エッチな蘭姉ちゃんもっと見せて」
 言って、手を伸ばし求める。
「ん……あぁ」
 求められる歓喜に胸を震わせ、蘭はそろそろと手を離し喘いだ。
 内部で踊る指が更に奔放に蠢く。
「あぁ、いい……コナン君……気持ちいい……」
 鼓膜を犯す粘ついた水音に耳たぶまで赤く染め、蘭はゆるゆると首を振った。
「……すごく綺麗」
 見とれ、半ば呆けた状態でコナンは呟いた。
「ん…なにが……?」
 喘ぎながら、蘭が聞き返す。
「全部だよ。蘭姉ちゃんの何もかも……」
「うれし……あぁ…コナン君……」
 一際大きく震えを放ち、蘭は微笑んだ。
 コナンは指を抜くと、再び顔を近付けた。とろとろと溢れる蜜を残らず舐め取り飲み込み、新たな蜜を欲して舌先で小刻みに刺激を送る。
 すると蘭のそこは、複雑な動きで応え、ねっとりと熱いものを滲ませた。
 つい興奮し、コナンはわざと下品な音を立てて吸い付いた。
「やだ…ばかぁ……」
 抗議の声を聞き流し尚も続けると、やめてと訴えるように蘭は腰を揺すった。
 しっかり掴んで押さえ付け、今度は小刻みに舌でくすぐる。
 唇で甘食みを繰り返し、時折本当に歯を当てる。
「ひっ……!」
 柔らかな刺激に慣れた頃不意に訪れる硬い歯の感触に、蘭は高い悲鳴を上げて仰け反った。
「あぁ、ん…いい……、きもちいい……」
 びくびくと不規則に身体をうねらせ、素直に声をもらして浸る。
 けれど、あと一つ物足りない。
 さっきは惜しみなくくれたのに、今は触ってもくれない。
「ん、ん……」
 焦れた身体が、無意識に足を開き訴える。
 触ってもらえるように。
 すると、ぬるりと舌が内部に入り込み、力強い動きで内襞を突付き始めた。
「あぁ…やあぁん……」
 腰の奥に響く疼きに甘えた声を上げながらも、蘭はいやいやと首を振った。
 更に強くシーツを握りしめ、何度も喘ぐ。
 あぁ…どうして……
 欲しいところに触れてくれない彼を恨めしく思いながら、蘭ははあはあと息を乱した。
「ん…コナン君……」
 我慢しきれずに名を呼ぶ。
 しかしコナンは答えず、同じ責めを繰り返した。
 ひくつく内襞を丹念に舐め、抉り、小刻みに吸い上げる。
「あぁ……、いや…いやぁ……」
 拗ねた声音で、蘭は小さく腰を揺すった。
 そこでようやくコナンは顔を離し、答えの分かりきった問いを口にした。
「何がいやなの?」
 唾液と蜜とですっかり濡れそぼったそこを中指でくちゅくちゅと撫でながら、わざとあどけない声で顔を覗き込む。
「う、ん…いじわる……」
 熱に潤んだ眼差しで上目遣いに睨み、蘭は呟いた。
「……ボクが?」
 すぐさま蘭は頷いた。
「いじわる…コナン君いじわる――あぁん」
 言い終わらぬ内に、ぬるりと中指が埋められる。
「これだけじゃ気持ち良くない?」
 くすくすと笑い声を交えてコナンは問い掛けた。根元まで埋め込んだ中指で奥を強く弱くくすぐり、抜き差しを繰り返す。たちまち溢れる蜜の量が増え、的確に刺激を送り込んでいるのを示した。
 それでも蘭は首を振って否定した。
「…だけじゃ、いや……」
 濡れた唇を小刻みに震わせ、呟く。
「う…あぁん……コナン、くん……」
 意識してそこを締め付け、蘭は哀願した。
 見れば、今の行為がよほど恥ずかしかったのか、首筋まで真っ赤に染まっている。それでも目を逸らさず見つめてくる蘭に、コナンは手を止めた。
 恥ずかしそうにしている彼女をもっと見たくはあったが、腰が蕩けてしまいそうに甘い声でねだられては、聞かないわけにはいかない。
「……仰向けになって、蘭姉ちゃん」
 一旦指を引き抜き、次の姿勢を指示する。
 けれど蘭はすぐには動かなかった。どこか探るような目で見つめ、口を噤んでいる。
「触ってあげるから、仰向けになって」
「どこを……触ってくれるの?」
 ついとコナンから目を逸らし、拗ねた口調で蘭は聞き返した。
「蘭姉ちゃんの触って欲しいところを、どこでも」
「ほんとう……?」
 言って、蘭の視線がおずおずとコナンに向く。
「本当だよ」
 応え、コナンは薄く笑みを浮かべた。
「っ……!」
 現れた支配者の貌に蘭は小さく息を飲んだ。ぎくしゃくと頷き、仰向けの姿勢になる。
「仰向けになったら、触って欲しいところを、自分で開いて」
 小さく頷き、立て膝で開いた足に手を伸ばす。
「違うよ、そこじゃない」
「え……」
 蘭はびくりと手を止め、困惑の表情でコナンを見やった。一拍置いて言葉の意味を理解し、衝撃に目を見開く。
「そう、こっちだよ」
 コナンは手を取り、蘭の下腹へと誘った。
「いや…そんな……」
 慌てて手を引っ込め、胸に押し付けぎゅっと握る。
「あ……」
 恐る恐るコナンを見やり、何も言わない事に不安を感じながらも、蘭は動く事を拒否した。
 しばしの沈黙の後、コナンは口を開いた。
「ねえ……蘭姉ちゃん」
 立てた蘭の膝にそっと触れ、囁くように告げる。
「舐めさせて。お願い」
 コナンは下腹に顔を寄せると、へその脇にちゅっと口付けた。
「んん……」
 緊張にびくびくと震える蘭の腹部を、伸ばした舌でゆっくりひと舐めし、もう一度頼み込む。
「お願いだから…蘭姉ちゃん」
 ずるいよ…コナン君……
 そんな風にねだられたら、拒めない。
 蘭はじわりと滲む涙を瞬きでやり過ごしながら、ぎこちなく下腹に手を伸ばした。
「く、うぅ……」
 あまりの恥ずかしさに、頬が熱くほてる。
 自分で足を抱え、開いた事もあった。
 言われるまま自分で慰め、のぼりつめた事もあった。
 けれど、そこを自分の手で開いてねだるなんて…羞恥に何度も手が止まった。
 自然呼吸は早まり、喉が引き攣る。
 ああ…でも……ほしい…触ってほしい……
 恥ずかしさに耐え、蘭はついに自ら秘所を開いた。
「は…はずかしいよ……」
「……こんなにぐしょぐしょにしてちゃ、恥ずかしいよね」
 どこか楽しげに笑って、コナンが言う。
「いや……!」
 恥ずかしい…でもしてほしい
 けれど何より、こんな浅ましい自分の姿を見て
「き、きらいにならないで……」
 涙混じりの悲鳴を上げ、蘭はぎゅっと目を瞑った。
 直後、強張った指に熱く柔らかいものが触れた。
 それがコナンの唇だとすぐには分からず、恐る恐る開いた目で確かめた蘭は、はっと息を飲んだ。
「嫌いになんかならないよ」
 目を見合わせてそっと笑み、コナンは再び口付けた。
 今度は、開かれたその中心に。
「好きだよ…好き」
 熱っぽく訴えながら、キスを繰り返す。
「あ、あん……ん」
 その度蘭のそこはヒクヒクと震え、コナンの愛撫に甘い蜜をたらたらと溢れさせた。
「わたしも好き…あぁ…コナン君……」
 優しい接吻はいつしかぴちゃぴちゃと舌を鳴らす激しいものへと変わり、絶え間なく注ぎ込まれる強烈な刺激に蘭は濡れた声で身じろいだ。
 泣きそうに顔を歪め、何度も仰け反り、口からはしとどに喘ぎをもらして。
「あぁ…あはぁ……そこ…いいの……、あうぅん……」
 待ち望んだ愉悦に声が止まらない。
 蘭は自ら腰をくねらせ、突き出し、揺すり、存分に快感を貪った。
 降り注ぐ享楽の声にコナンもまた興奮を募らせた。
 蘭の指に自分の指を絡めて更に広げさせ、充血しきった花びらをあますところなく舐め上げる。
 そして、普段は慎ましく隠れているそれ…今は赤く腫れ上がった突起をちろちろと舌先で転がし、縦横に弾いた。
「あぁ…はぅ、んん……あぁん……!」
 熱い声がまたもれる。
 鼓膜を犯す。
 もっと聞きたい。
 欲望のまま、舌をねじ込む。
 ねっとりと絡み付く内襞を舌先で抉る。
 もう呼吸もままならない。
 もっと聞きたい。
 もっと……
「ああああぁぁ!」
 花芽に歯を立てると、一際高い悲鳴が上がった。
 声と、反射的に身を引く動きにはっと我に返るが、意外にも蘭はもっととねだった。
 間近に迫った極まりが、痛みさえ快感に摩り替えるのだろう。
「いいの…いい……して…もっとひどく…して……」
 はあはあと喘ぎながら、蘭が訴える。
 コナンは一旦顔を上げると、三本の指をねじ込み、深い場所浅い場所を丹念に捏ねながらあやすような声で聞き返した。
「もっとひどくしてほしいの?」
 問いに、蘭は首を曲げ、潤んだ瞳で見つめがくがくと頷いた。
「して…お願い……して」
「こんな風に?」
 目を見合わせたまま、コナンは親指で花芽を軽く押した。
「あぁうっ……!」
 途端に蘭はびくびくと全身をわななかせた。
「そう…いいの……、もっと…もっとぉ……」
 うわ言のように呟く。
「痛いのが好きなの?」
 言われるままコナンはぐりぐりと捏ねた。
「うぅ、ん…ちが…違う…コナン君……だから…あぅ……ん」
 答えに、純粋な愛しさと肉欲がないまぜになる。
 たまらずにコナンは下腹にむしゃぶりついた。
 我を忘れて力任せになりそうなのを寸でのところで抑え、けれど止められない激情の赴くまま蘭を貪る。
「はっ…くうぅ……あぁ――!」
 あまりの激しさに蘭は大きく仰け反った。ずきずきと肌の内側を這う痺れが、幾度も脳天を直撃する。
「コナン君……コナンく……」
 かたくしこった突起を歯でこりこりと転がされ、束ねた三本の指で内奥を抉られる。
 じゅぷくちゅと出入りする異物の動きは愛しい男のそれと同じ律動を刻み、緩く浅い箇所を舐めたかと思うと不意に奥まで達し、更に深いところを目指して突き入ってくる。
 ずうんと響く重苦しい突き上げも、次の瞬間にはとろけそうに甘い喜悦となる。
「いい…いく……いっちゃう……いっちゃうぅ……」
 度を越えた快感に泣きじゃくりながら、蘭は全身をぶるぶると震わせた。
「あぁん…新一……しんいち……」
 うねり押し寄せる絶頂が、二人…三人だけの秘密を曖昧にさせる。
 蘭は自分のそこにかけていた指をほどくと、下肢に顔を埋め愛撫する愛しい男の頭にそっと触れた。
「っ………」
 ……らん
 頬を撫で、髪を梳く指に愛しさが募る。
 コナンは指の動きを早めた。
「あぁ…もう……しんいち……」
 蘭の声が不意に低くなる。同時に内部の圧迫が増し、コナンの指をきつく食い締めた。
 止めの一撃を欲するそこへ、コナンは拳を打ちつけるようにして激しい抽送を繰り返し、花芽に歯を立てた。
 直後、腰の奥に衝撃が走った。
「ひっ……あああああぁぁ――!」
 瞬く間に押し寄せる絶頂の閃きに、蘭は声を迸らせた。
 浅ましくも自ら腰を突き出して押し付け、頂点で溺れる。

 

 

 

 ゆっくりと静まっていく熱を横たわったままぼんやりと見送っていると、頬に何か柔らかいものが触れてきた。
 はっとなって目を開けたそこには、神妙な顔で見つめるコナンの顔があった。
「あ…コナン君……」
 呟き、蘭は小さく笑みを浮かべた。
 すると安心したようにコナンも小さく笑み、もう一度頬に口付けた。
「……気持ちいい」
 ふふと笑ってキスを受ける。
 と、コナンの腕がそっと頭を抱きしめてきた。
 胸に広がる充足感に溜め息をもらし、蘭も同じく抱き返した。

「ねえ…今の何回目か知ってる?」
 くすくすと笑いながら言う。

「え…い、いや…数えてたの?」
 小さく驚き、コナンは聞き返した。

「ううん、私も分かんない」
 いたずらっ子の声で蘭が言う。

 からかわれたと気付き、コナンはむすっと唇を引き結んだ。

 蘭はもう一度軽やかに笑い、少しむくれた唇にちゅっと触れ、耳元で「大好き」と囁いた。
 優しい接吻と囁きが、胸の隅々まで染み込んでいく。
 コナンは頬を緩めると、答えの代わりに蘭の髪を優しく撫でた。
 穏やかな時間が、ゆっくりと流れていく。

 

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