ある夜の過ごし方

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ねえ、コナン君。ちょっと…お願いがあるんだけど」
 二人だけの夕飯――小五郎は調査と称して飲みに出かけてしまい不在――の後、片付けの手伝いを済ませいつものようにリビングで漫画雑誌を読みふけっていると、キッチンから顔を覗かせた蘭がおずおずといった風にそう声をかけてきた。
 家事の細々とした補助や買い物の類なら、今まで何度も引き受けてきたし、今更遠慮するものでもないのに…少し不思議に思いながら気軽に「うん、なあに」と外見に見合った声で返す。
「うん、あの…ちゃんとお礼はするから……」
 しかし蘭の口から出たのは、頼みごとの内容ではなくその先の話だった。
 軽く眉根に力を入れ見やり、コナンは雑誌を膝から退けて立ち上がると、一歩ずつ蘭に近付いていった。
 縮まる距離に、蘭は目を潤ませ俯いた。
 その様子から容易く推測できる先の事にコナンは、子供の仮面を外した素の顔でふと笑みを浮かべた。
「どんなお願い?」
 表情とは裏腹にあどけない声で、蘭の言葉を手繰り寄せる。
「あの…ね……」
 困ったように蘭は視線を泳がせた。

 

 

 

 誘われた彼女の部屋で準備を整えると、コナンは隣に座る蘭を見やり言った。
「じゃあ、始めて」
 促され、蘭はおずおずと手を動かし始めた。
 戸惑い、考え考え動く手は、しかしすぐに止まってしまった。
 待っても動き出さないと察知したコナンは、違う箇所に目線を誘導した。
「それが無理なら、こっちは?」
 細い人差し指が、別の箇所を示す。
 蘭はそちらに目を向けると、やや間を置いてごくかすかに首を振った。申し訳なさそうに俯く頬は心なしか赤い。
 コナンはちらりと顔をうかがった。
 少し潤んだ瞳はじっと一点を見つめ、その視線は自分が指す先を向いていたが、よくよくたどれば、指の方に焦点が合っているようだった。
「……蘭姉ちゃん」
 コナンの声に一瞬びくりと肩を弾ませ、蘭は慌てて首を振った。
「あ……出来ないの」
 恥ずかしそうに呟き、更に深く俯く。
「そっか、うーん……」
 コナンは折りたたみ椅子の背もたれに身体を預けると、別の場所へ行きかけた雰囲気を払うように出来るだけ軽い声でうなった。
「……ごめんなさい」
 身を縮ませて、蘭が小さく謝る。
「大丈夫だよ。基本さえ頭に入れば、すぐに解けるようになるから」
 今にも消えてしまうのではないかと思ってしまうほど落ち込む蘭に、コナンはすぐさま首を振った。
「……う、ん」
 喉につかえた声で頷く。
 目の前の、机の上に広げたノートにずらりと書かれた数字の羅列…苦手な数学を少しでも克服する為に彼が協力してくれた証を一つひとつ追いながら、蘭は小さく息を吐いた。

 どうしても分からないところがあるから、教えて欲しいの……お礼はするから

 自分で決めた約束事を反故にする後ろめたさと、色んな恥ずかしさが交錯して、赤くなった顔を戻せないままそう頼むと、彼はすぐに引き受けてくれた。
 わざわざ手書きで基礎問題まで作成してもらっておきながら、自分は、その先にあるお礼の事ばかりに頭がいってしまっている。

 わたし…なんて……

 声をかけられ、指で示されてすぐに気を取り直すもまたいつの間にか、違う考え、はしたない妄想に意識が傾いてしまい、いけないと禁じれば禁じるほどに身体が――

 奥が…熱くなってる……

 小さく唇を噛み、蘭はごくりと息を飲んだ。
 瞬きで断ち切り、今度こそと手にした鉛筆を握り直す。
 と同時に。
「鉛筆置いて、蘭姉ちゃん」
 少しかたいコナンの声が、行為を制した。
 息を飲んで見やると、強い視線がまっすぐにぶつかってきた。
「鉛筆置いて」
「あ……」
 手の中の鉛筆と机とを行き来する視線にびくりと震え、蘭はやる気を見せる為逆に握りしめた。
「いいから、一旦置いて」
 コナンの静かな声が再度重ねられる。
 唇だけで「ごめんなさい」と綴り、蘭はおずおずと従った。
 しばし沈黙が続く。
 ややあってコナンは口を開くと、試すような薄い笑みを浮かべ言った。
「蘭姉ちゃん……ボクに言われるのと、自分で正直に言うのと、どっちがいい?」
 その質問に、蘭は机の上に置いていた手を膝に乗せ、ぎゅっと握りしめた。顔を伏せ、何度も瞬きを繰り返す。見抜かれてしまった衝撃と、彼が誇るものは何かを考えれば当然とも言えるこの状況とが、胸の鼓動を早くさせる。
 彼はとっくに気付いていたのだ。
 どれだけの真実を見抜いてきた事か。
 目の動き、些細な仕草からも差異を感じ取れるのだから、隠し通せるはずがないのに。
「ごめんなさい……」
 呟くように謝り、短く切り揃えた爪が手のひらに食い込むほどきつく力を入れる。
「……どっち?」
 コナンは再度訊ねると、俯く蘭の顎に指をかけ自分の方に向かせた。
 咄嗟に蘭は目を閉じた。されるがまま顔を向け、おずおずと目を開けてコナンを見やる。
「ごめんなさい…わたし……」
 今にも消えてしまいたいほど恥じ入り、もう一度繰り返す。けれど浮かんでしまった期待は、消せそうになかった。
 しっとりと濡れた蘭の瞳が、見上げるコナンの姿をまっすぐとらえ瞬きを繰り返す。
 見つめ続ける事に堪えられず伏せられるが、また持ち上がって、羞恥と欲求の間をふらつきながら視線は注がれた。
 欲しがって盛る自分がどうしようもなく恥ずかしいのに、欲しい

 わたしは…きっと……

 胸に積もった罪悪感が目を眩ませる。なのに、欲求は膨れていくばかり。
 奥が痛いほど熱くて、疼いて、いっそ自分から慰めてしまいそうなほど熟れきっている。
「………」
 蘭の唇が、何か伝いかけては結ばれ、ためらいを繰り返す。

 まったく、この女は

 自分で言う方を選んだのに中々口を開けないでいる彼女を、コナンは少しずつ誘導していった。
「ねえ蘭姉ちゃん。どこが気になるの?」
「あ……」
 言いかけて、蘭はぐっと息を詰めた。
「言えないなら、じゃあ、指で差すだけでいいから教えて」
 コナンは両手で頬を包むと、あどけなさを残す声で続けた。
「そこを全部、触ってあげるから」
 一転して低い声音で綴り、ゆっくり顔を近付ける。
 驚く女の息づかいごと奪い、重ね合わせ、しばしそのままで熱を感じる。
 と、急に蘭が動いた。
 ひどくうろたえた様子で身体を離し、戸惑う瞳でコナンを見やる。
「っ……」
 そして、自分でもどうしたらいいのか分からないと言うように、眉根を寄せ、深く俯く。
 その拍子に、肩から黒髪がはらりと零れた。
 コナンは椅子の上に立つと、顔にかかる髪をそっと肩に上げ顔を覗き込んだ。
「……気持ち良いのはきらい?」
 間近の視線を一瞬だけ見上げ、蘭は床に目を落とし小さく首を振った。
「…でも……わたし……」
 どう言えばいいのか上手く整理がつけられず、混乱する。
「気持ち良くなるのは悪い事じゃないよ。それに、心も身体も楽になるでしょ」
 喉の奥で低く頷く蘭の額に、コナンは軽く唇を押し当てた。
「気持ち良いの、好き?」
 問いかけに蘭はこくりと頷いた。そして「でも」と続ける。
「でもはもういいから。何も心配しなくていいから。恥ずかしがらないで。ボクも蘭姉ちゃんと気持ち良くなりたいな」
 落ちたままだった蘭の視線が、おずおずと持ち上がりコナンをとらえる。
 まっすぐ受け止め、コナンは緩く微笑んだ。
「大好きだよ……蘭姉ちゃん」
 言葉に今にも泣きそうな笑みで、蘭は唇を寄せた。
「……わたしもよ」
 口付けの寸前に囁き、深く重ねる。
 しなやかに蠢く舌が互いのそれを求めて強く絡み合う。息継ぎに唇を離せば淫らな水音が滴り、熱い吐息がよじれて、二人の唇や頬を湿らせていく。
「あ…はぁっ……コナン君……」
 背中に回された細い腕を掴み、蘭は自らの胸に導いた。まだ戸惑いはあったが、耳の奥に残る「好き」の声が背中を押す。彼の手のひらに、思い切って乳房を差し出す。
 口付けたままコナンは笑みを浮かべ、促す手に従い優しく触れる。
「ん……」
 独特の張りを愉しみながら揉みしだくと、途端に蘭の口から甘い声が零れた。鼓膜に染み込む響きをもっとと欲して、コナンは唇を首筋へと下げていった。
「あ…んん……」
 弱い箇所を弄られ、肌にぞくりと快感が走る。奥へと繋がる刺激に、蘭は両膝に力を込めた。するとたちまち、熱く熟れたそこが迫り上がってくる錯覚に見舞われる。半ば無意識に腰を揺らし、与えられる愛撫に身を委ねる。
 コナンはもう片方の手を彼女の頬に添えると、上を向くよう促した。ぎこちなく顎が持ち上がり、白い喉が晒される。
「あ……」
 ひくりと震える喉元に唇を寄せ、ちゅっと音を立てて吸い付く。ついばむようなキスを繰り返しながら徐々に下へとずれ、時折舌を差し出してねっとりと舐め上げる。
 その度に蘭の肌に淡い緊張が走り、ひくつく喉にコナンは口端を緩め愛撫を続けた。
「あ…んん……くすぐったい」
 ふふと笑い、少し恥ずかしそうに蘭が呟く。
「じゃあ、こっちは?」
 言ってコナンは、人差し指で乳房の中心を丸くこねた。
「あっ……!」
 びくっと肩が跳ねる。
「……気持ち良い?」
 すくうように揉み上げながら、人差し指での刺激を続ける。

 ああ……いいの…いい……すごく

「んん…ん、気持ち……いい」
 ためらいがちに答え、蘭はしきりに瞬きを繰り返した。息が乱れ、上手く言葉が継げない。
「気持ちいい……、コ、コナン君……は……、きもちいい?」
 熱っぽい視線と共に聞かれ、コナンは小さく口を開けた。
 接吻ほどに唇を寄せ、薄い皮膚の上で答える。
「……気持ち良いよ。蘭姉ちゃんの声も…胸も…全部」
 そしてまた二人の唇が重なる。
 濡れた口端を舐め合い、舌の裏を舐め合い、背筋を走るぞくぞくとした愉悦に酔いながら、呼吸も忘れて貪る。
「あ、はぁ…はっ…はぁ……」
 蘭は小さな身体を抱きしめると、愛おしげに何度も背中をまさぐり、肌に伝わる体温に胸を喘がせ、尚も口付けに耽った。
 いつの間にか服の中にもぐりこんだ手が、這い登ってブラを押し上げ、剥き出しになった乳房を下から鷲掴む。
「あぁん……!」
 二度三度と大きく揉みしだかれ、小刻みに揺さぶられて、脳天を痺れさせる愉悦に蘭は大きく仰のいた。
 間を置かず、二本の指が乳首を摘みゆるゆると撫でさする。
「ひっ……あ、あぁ……」
 少し高めの声とともに蘭の身体が妖しくくねる。
「あ…そこ……あんん……」
 腰の奥で、じわりと蜜液が滲むのが感じられた。
「やぁ…ん……コナン君……」
 服の上からも分かるほどかたく尖った乳首を緩く押し潰し、大きな円を描いてこね回す。
「……他に触って欲しいところある?」
 言葉と同時に、コナンはもう片方の乳首に唇を押し当てた。
 部屋着にしているこの着古したシャツなら、少々汚しても許してくれるだろう…
「ひゃっ……!」
 布越しに伝わる熱い唇の感触に、蘭は鼻にかかった甘い声をもらした。直接吸われるのとは違う、じんじんと脈打つ奇妙な快感が背筋を痺れさせる。
「ねえ……蘭姉ちゃん」
 胸元に顔を寄せたまま見上げ、コナンは頬に手を伸ばした。指先でかすめ、撫で、肩におりて、腕を伝いながら手の先へとたどる。
 蘭は片手をほどくと、おずおずとコナンの手を握りしめた。
「どこに触って欲しい?」
 いまだ乳首をこねる手にびくびくと身を震わせながら、目線で誘導する。
 そして、かすれた呟きをもらす。
「し…下を……さわって」
 頬が熱い。火を噴きそう。一体どれだけ、赤くなってしまっているだろう。
 眦まではっきり朱色に染めた蘭に笑みを向け、コナンは言った。
「じゃあ、ベッドに移ろうか」
 やや間を置いて、蘭が頷く。

 

 

 

 身に付けていたものを全て脱ぎ仰向けに横たわった長い髪の女を見下ろし、コナンはその腕を取ると、ゆっくり頭上へと導いた。ばんざいに近い格好を取らせ、肘の辺りを掴んでベッドに押し付ける。
「っ……」
 怯えに似た表情で、蘭は目の前の顔を見つめた。
 力など関係なしに、こうして押さえ付けられるのは、思いの外強い…官能を生む。
 胸の先は痛いほど尖り、腰の奥からは、熱い雫がとめどなく溢れ出てくる。
 言葉に出来ないほどの快感が背筋を走り、今にもとろけてしまいそうになる。
 萎縮しながらもどこか陶酔の眼差しで、蘭は自分を支配する者の貌を熱っぽく見つめていた。
 やがてコナンが口を開く。
「……来週試験だから苦手な数学を教えてほしい、って、あれはこの為の口実?」
 その問いに蘭は即座に首を振った。
「ち、違う……けど、したかったのは……ごめんなさい……」
 その先が言えず目を潤ませて口ごもる蘭に頬を緩め、分かったと打ち切る。
「じゃあ蘭姉ちゃん、触って欲しいところをボクに見せて」
 片方ずつ手を取り、心配そうに見上げてくる蘭に柔らかな声で告げる。
「この前と同じ格好で」
 自分で足を抱えて、秘所を晒す格好で
 言われて蘭は、小さく唇を噛んだ。しばし考え惑い、やがてびくびくと手を伸ばす。
「コ……コナン君」
 破裂してしまうのではないかと思えるほど早まった鼓動を耳の奥で聞きながら、普段は服の奥に隠している箇所をはしたなく晒す。あまりの羞恥に息が出来なくなる…なのに、どうしてこんなに興奮しているのだろう。
 見られるだけでいってしまいそうなほど、身体が昂ぶっている。
 ――早く、早く。
「さ、わって……」
 ごくりと喉を鳴らし、蘭は言った。
 コナンは位置をずれると、閉じられないよう両足の間に身体を割り込ませ目を向けた。
 そしてゆっくり、顔を寄せる。
「あ、あ……」
 近付いてくる吐息だけで、勝手に腰が動いてしまう。
 抱える足に強く指を食い込ませ、蘭はひくりと喉を鳴らした。
 直後、痛いほど充血したその際に指が触れたのを感じ、ひっと息を飲む。
 コナンは両の親指を花弁の縁にあてがうと、大きく、痛みを与えない程度に割り開いた。
 微かに、粘ついた水音が耳に届く。
「いやっ…見ないで……!」
 そこまで暴かれるとは思ってもいなかった蘭は、上擦った悲鳴と共に腰をくねらせた。
「触って欲しかったんでしょ」
 すぐさま返ってきたコナンの言葉に、ぐっと息を詰める。
「それは……そんな風に…、しないで」
 弱々しく訴え、唇を噛む。足を閉じる事も、身体をひねって逃げる事も出来ない、せめてもの、抵抗に。
 耳たぶまで真っ赤に染め、必死に羞恥と戦っている蘭にコナンは静かに言った。
「蘭姉ちゃんのここ…すごく綺麗だよ」
 思いがけぬ一言に蘭は小さく震えを放った。
 何事か訴える眼差しをコナンは笑みで受け止め、目を落とした。ねっとりとした透明な蜜に濡れたそこは、うっすらと朱く色付き腫れて、ひくひくと、物欲しそうに喘いでいた。舌を伸ばし、ひと舐め、ふた舐め…充血してぽってりと腫れ上がった花弁の縁を優しく舐め上げる。
「ふう、ぅ……」
 ようやく与えられた刺激、まだ残る羞恥を片隅に蘭は途切れ途切れに息を吐いた。
 腰の奥から痺れが這い上がって、身体中に広がっていく。
「あぁ…あっ……ああぁ……」
 見る間に高まっていく気持ちのままに声を上げ、蘭は右に左に首を振った。
 段々と、淫らな水音が大きくなっていく。
「コナン君……、あっ…あん…あ……コナン…君……」
 啜り泣きに近い細い声で喉を引き攣らせ、蘭は幾度も名前を呼んだ。
 ごく浅い箇所を気紛れに行き来する指に腰をくねらせ、じれったさに唇を噛む。
「いや…いや……もっと……」
 ゆるゆると、入りかけては戻る指のもどかしさに、蘭はねだる言葉を口にした。
「……もっと…気持ち良くなりたい?」
 そう続けるコナンにごくわずか頷き、少し首を曲げて視線で縋る。
 素直な答えにコナンは笑みを零すと、手のひらを下にむけて二本の指を挿し入れた。ねっとりとした蜜に濡れた指は、すんなりと奥まで入っていった。
「あっ……」
 微かに眉根を寄せ、蘭が応える。
 コナンは根元まで埋めると、軽くねじり突き上げながら指先をそれぞれ動かして内部をくすぐった。
「く…あぁあ……んっ…う……」
 とめどなく溢れる喜悦の声が、鼓膜を甘く犯す。
 たまらずに、コナンは繰り返し奥を責めた。複雑に蠢き纏わりついてくる内襞を撫で上げ、時折強く突き入れる。
「あっ…あん…あぁ!」
 それにあわせてもれる鋭い悲鳴に、息も満足に継げない。もつれる心のまま、親指で柔芽を舐めるように転がす。
 途端に蘭の唇から一際高い声が迸った。
 同時に、内部がきつく締め付けてくる。
「あ…そこっ……コナン君……あぁん!」
 強すぎる刺激に蘭はいやいやと髪を振り乱し、大きく胸を喘がせた。
 コナンは一旦親指を離すと、緩い抜き差しを繰り返しながら訊ねた。
「ねえ…蘭姉ちゃん。中をこねられるのと、ここをこすられるのと…どっちが好き?」
 言葉に蘭は火照った顔でコナンを見やり、少しかすれた声で答えた。
「……どっちも好き」
「選ぶのは片方だけ」
 手の動きを止め、コナンは薄く笑みを浮かべた。
「……どっちも…好き」
 少し拗ねたように唇を尖らせ、呟く。
「蘭姉ちゃんの欲張り」
 クスクスと笑みを零しながらコナンは手の動きを再開した。
 ねじりながら緩やかに抜き差しを繰り返し、同時に親指で柔芽をくにゅくにゅと左右にこねる。
「あぁ…それ…そこぉ……」
「ここがいいの?」
 小刻みにこすり上げる親指に何度も頷き、ひくひくと喉を引き攣らせる。
 細い指が膣の上部を絶妙の力加減で抉るたび、蘭はびくんと身体を大きくしならせ、両手をぶるぶると震わせた。
「うあぁ…は、ああぁ……」
 互いの耳に届く粘ついた水音が、互いの息遣いを次第に荒いものに変えていく。
「あ、気持ち…いい……コナン君……」
「……気持ちいい?」
「うん――うん…あぁ……コナン君のゆび……きもちいい」
 素直に浸る蘭を愛しげに見つめ、コナンは更に刺激を与えた。
 奥を押し広げるように三本の指を蠢かせ、すっかり充血しきってぷっくりと勃ち上がった柔芽を、親指で休むことなく舐め上げる。
「あぁ、あ…ああっ……」
 それらの動きに合わせて、蘭は妖しく腰をくねらせた。奥の方に凝った塊が、熱く熟れて、今にも破裂しそうだ。
 極まりが…近付いてくる。
「お、親指……あ、あぁあっ……だめ…だめっ――!」
 駄目と言いながら、責められている箇所を自ら押し付けてくる蘭に目を上げ、コナンはふと笑みを零した。
 今にも涎を零しそうなほどとろんと緩み、絶えず熱い吐息をもらしている。
 何をこらえてか眉根は険しく寄せられ、頬も耳たぶも、目尻までほおずきのように赤く染まっていた。
「……だめ? もういきそう?」
 言いながら、親指の動きを早める。
「あはああぁぁぁ……!」
 悲鳴まじりの高い叫びを上げ、蘭は大きく背をしならせた。
 同時に内部の締め付けが増す。びくびくと痙攣めいた動きを繰り返し、咥え込んだ異物を奥まで飲み込もうと貪る。
 欲しがる動きに合わせコナンは何度も強く突き上げた。
「いや――だめ…コナン君……!」

 いっちゃう……

 蘭は息を詰めると、かすれた声でそうもらした。
「いいよ、いって……蘭姉ちゃん」
 へその辺りにちゅっと口付け、指に絡む蜜を更に激しくかき回す。
「やっ……あああぁぁぁぁ――!」
 身体を包み込む真っ白な絶頂に我を忘れ、蘭は細い悲鳴を放った。

 

 

 

 忙しなく繰り返されていた息づかいが、次第に穏やかなものに変わっていく。
 心地好い気だるさに浸っていた蘭は、まだ少し荒い息を飲み込みゆるゆると目を上げると、間近で、じっと様子を見守っていたコナンに恥じらい交じりの笑みを向けた。
「もう大丈夫?」
「うん…もう起きられる」
 目を伏せて応え、蘭はおずおずと言葉を続けた。
「ごめんね…わたし……今度はちゃんとするから」
 上目遣いに様子を伺う。
「少しは楽になった?」
「……うん。すごく…楽になったよ」

 ありがとう

 下を向いたままぼそぼそと唇の先で綴る。
「良かった。ねえ」
 声に蘭はちらりと目を上げた。
「蘭姉ちゃんはちょっとエッチな方が、ボクは好きだよ。多分……新一兄ちゃんもね」
「……もう」
 困ったようにコナンを見やるその顔は、熟れたリンゴのように赤く染まっていた。
 小さく笑って、コナンは頬にキスをした。

 

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