スマイル!-秋-

 

 

 

 秋は落葉、紅葉、結実の季節…
 ポアロのマスターから届いた、箱一杯の柿のお裾分け。
 ピカピカに熟れた山ほどの柿を前に、蘭の顔がニコニコとほころぶ。

「良かったね蘭姉ちゃん」

 さっそく一個むき始めた蘭に、コナンは傍でそう声をかけた。

「ふふ、こう言いたいんでしょ、コナン君」

 すると蘭は背中を向けたまま言葉を継いだ。

「蘭姉ちゃんは色気より食い気だね、って」
「え、そ、そんなつもりじゃ……」
「いいわよ、ちゃあんとわかってるんだから」

 調子付いた蘭の声に、コナンは苦笑いを浮かべるしかなかった。

「もう、そういうとこ新一にそっくり」

 むき終えた柿を四つに切りながら、蘭はふふと笑みを零した。

「ら、蘭ね……」

 困り果てるコナンをちらりと振り返り、蘭はいたずらっ子のように笑った。

「なんて、冗談よ、冗談」

 そしてお詫びの印にと、小さく切った柿を一つコナンに差し出した。

「すっごく甘くて美味しいよ」
「う、うん……」

 間近の無邪気な笑みからぎくしゃくと目を逸らし、コナンは柿を受け取った。
 彼女に見守られて食べる柿は、ほっぺたが落ちそうなほど甘かった。

 

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