XXX-キスキスキス-ショート

 

 

 

 

 

それは冷たい雨の降った翌日に起こった。

 

小ぶりの雨だからと、傘も差さず帰宅したのがまずかった。

昨日と打って変わって晴天の日に、一人ベッドの中。

「具合はどう、蘭姉ちゃん」

昼時、様子を見にきた彼に横になったまま大丈夫と軽く首を振る。

こういう時、起き上がるのを彼は嫌う。とにかくうるさい。

なので、余計なお小言をもらわないよう大人しく横になっている。

と、小さな手が額に伸びた。

「うーん……」

まだ少し熱があるのは自覚していたから、思わしくないと顔をしかめる彼に苦笑い。

今度はおでこを寄せてくる。

それからほっぺた、唇。

少しひんやりして気持ちいい。

「……ちょっと高いね」

「うん…でも、今日一日寝てれば直るから、心配しないで」

最後にもう一度額に触れてきた手を軽く握り返し、笑ってみせる。

「じゃあ、ボク隣にいるから、何かあったらすぐに呼んでね」

「ありがとう」

真剣な余りおっかない顔になる彼に笑って頷き、立ち去る背中に小さく手を振る。

扉が閉まって数秒。

 

そこではたと、気付く。

 

昔からの習慣で繰り返していた事が、今突然、別の意味を持ってしまった。

 

ベッドの中で一人慌てふためく。

 

やだなあ、頭がくらくらする

 

風邪のせいかな

 

それとも……

 

唇の触れた額を押さえ、長い事考え込む。

 

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