XXX-キスキスキス-日曜の午後に

 

 

 

 

 

テーブルの上に缶ジュースが二つ。

一つは私の。ピンク色のソーダに氷が一つ二つ、

グラスの縁にささったスマイルカットのオレンジがとてもおいしそう。

一つは君の。コーヒー豆で満たした白いコーヒーカップの向こうに、青い山がそびえている。

 

膝の上には好みの本。

君は分厚いハードカバーの洋書。目がチカチカする細かい英文を、難なくすらすらと読み進めている。

私は友達に借りた大きな雑誌。ページをめくると次々にカラフルな人たちが現れ、思い思いのポーズで冬の匂いを伝えてくる。

 

テーブルの上の缶ジュースを交互に、時々一緒に手に取って、よく晴れた日曜の午後を贅沢に飲み干す。

そのうち雑誌も飽きてきて、ちらりと君の様子を伺う。

君は気付かない。私は何気なく通り過ぎるふりを装って真後ろにしゃがみ、少し驚いた風の君に目隠しする。

 

「だーれだ?」

 

なんて、二人しかないのに誰も何もない。おかしくて私は笑った。

君の驚いた顔もおかしくて、また笑う。

何か変?

そろそろわかるかな。

君の目がテーブルにある私の缶ジュースを振り返る。手に取る。

ああ、わかっちゃった。私もさっき気がついたの。

大丈夫、ジュースとそう変わらないよ。

なんだかすごく楽しいから、いいでしょ。そんなに慌てないで。

お水もいらない。気分も悪くない。だから傍にいてよ。

 

「でないと食べちゃうぞー」

 

調子付いて君に抱き付く。支えきれずに倒れる君に覆い被さって、そのまま眠ってしまおう。

 

すぐそばにある君の頬がこんなに気持ちいい。

 

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