XXX-キスキスキス-イチゴ

 

 

 

 

 

いつものように手を繋いで買い物に出かける。

 

たくさんの色で溢れかえる町はとても賑やかでとても忙しなくて、

もうすぐ今年も終わりと、慌しい事この上ない。

つられて君も早足になるから、ついていくだけで骨が折れる。

恨めしそうに見上げても、君は気付かずにこにこと笑うばかり。

かと思えば急に立ち止まる。見ているのは、店先に並んだ綺麗な苺。

 

まるで光るように真っ赤に熟して、甘い香りを立ちのぼらせている。

 

一目で気に入った君は早速家に持ち帰り、苺を水に浮かべる。

買い物袋も放り出してと呆れて見ていると、目の前に一粒の苺が迫る。

「ね、すごく甘くて、いい匂いでしょ」

嬉しそうに輝く君の顔は、苺のすぐ向こう。

まるで、一つの苺に二人でキスしているようで、鼻をくすぐる瑞々しい

りもわからなくなる。

君の前に立ちはだかる真っ赤な苺。

お互いの距離はもうあと……

 

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