one day-何にもない夜-

 

 

 

 

 

 何にもない夜、つまらない。

 見たいテレビもない、つまらない。

 毎月買う雑誌の発売日は再来週、つまらない。

 手持ちの本もあらかた読んでしまった、つまらない。

 つまらないから、二人でお喋りをしよう。

 二人でするお喋りは楽しい、とても楽しい。

 でもふと、声が途切れる。

 二人でひとしきり笑い合った後、すとんと訪れる静寂。

 

 そうだコナン君、コンビニに行こうよ

 ちょっとお菓子でも買って、食べながらテレビを見ようよ

 いいね、行こう行こう

 

 蘭が言ってコナンが賛同して、二人は揃って外に出た。

 いつものように手を繋ぎ、通りの向こうのコンビニへいざ。

 

 そうだコナン君、競争しようよ

 コンビニまで競争しよう、負けたら欲しい物を一つおごること

 え、蘭姉ちゃんそれ本気

 

 蘭が言ってコナンがうろたえて、その間に蘭はもう駆け出していた。

 全速力の高校生に、どんな小学生がかなうというのか。

 やっと追い付いて、コナンはふくれっ面で見上げて、蘭はにこにこと笑顔で見降ろした。

 

 何おごってもらおうかな

 ………

 

 これだからこの女は…コナンはふてくされて肩をすくめた。

 蘭は素知らぬ顔でコナンを従え、奥の棚で足を止めた。

 

 じゃあコナン君、これ、おごって

 ……え、これ

 

 蘭が選んだのはコナンの好きな物。蘭はあまり好んで買わない物。

 これだからこの女は…コナンは笑って肩をすくめた。

 

 そう、これ

 わかった、じゃあ僕は、これ買おうかな

 

 コナンは蘭の好きな物を一つ選んだ。

 二人は笑顔で頷いて、レジへと向かった。

 

 ありがとう、コナン君

 ありがとう、蘭姉ちゃん

 

 それぞれ買った物をコンビニの外で交換して、笑い合う。

 そして来た時と同じように手を繋ぎ、今度は競争なしで、のんびりと家路につく。

 何にもない夜、帰ったらテレビを見よう。

 美味しい物を食べながら。

 

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